宇宙の始まりと終わり

宇宙はどれくらいスカスカなのか、1立方メートルに原子は何個

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スーパーコンピューターで計算した宇宙の大規模構造
Photo: NASA's Scientific Visualization Studio - null / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

宇宙全体をならすと、1立方メートルの箱に原子が何個入っているでしょうか。答えは「1個もない」です。Planck衛星の観測から計算すると、平均で約0.2個、つまり5立方メートルに1個ほどしかありません。この記事では、その数字の出し方と、まだ見つかっていない物質の話までを書きます。

3行でわかる

  1. Planck衛星の観測(2018年)の値から計算すると、宇宙の平均の濃さは、ふつうの物質だけで1立方メートルに陽子約0.25個分。原子の数にすると約0.2個で、約5立方メートルに1個。
  2. 宇宙の中身の割合は、ふつうの物質が約5%、ダークマター(見えない物質)が約26%、ダークエネルギーが約69%。星になっているのは、ふつうの物質の約6%だけ。
  3. 地上の空気より約10の26乗倍薄く、地上の実験装置で作られたとても薄い真空の例より、さらに数百万倍薄い(計算)。ふつうの物質の約3割は、どこにあるのか長く見つからなかった。

01 わかっていること宇宙の平均の濃さはどれくらい?

宇宙全体をならした濃さは、ふつうの物質(原子でできた物)だけで1立方メートルに陽子約0.25個分です。ダークマターなどを全部合わせても、陽子約5個分の重さにしかなりません。

この数字は、Planck衛星が宇宙背景放射(ビッグバンの名残の光)を観測して求めた値から計算できます[1]。宇宙の膨張の速さ(ハッブル定数)から「臨界密度」という基準の濃さが決まり、各成分はその何%かで表されます。

Planckの値では、ハッブル定数は秒速67.4キロ毎メガパーセク、物質は全体の31.5%です[1]。ここから計算すると、臨界密度は1立方メートルあたり約8.5×10のマイナス27乗キログラム。陽子1個の重さで割ると、約5.1個分です。

02 どうやってわかったのか見えない物質まで、どうやって量ったの?

宇宙背景放射の小さなむらの模様を調べると、ふつうの物質とダークマターの量を別々に読み取れます。さらに銀河や星、ガスを数えた研究や、高速電波バーストを使った研究で確かめています。

わかっているPlanck Collaboration(2020年、Astronomy & Astrophysics)[1]

宇宙の中身を表す値を、とても細かく決めました。ふつうの物質の量を表す値は0.0224、ダークマターは0.120、物質全体は31.5%、ハッブル定数は秒速67.4キロ毎メガパーセクです。

どうやって: 空全体の宇宙背景放射の温度のむらと偏り(偏光)を測り、むらの大きさごとの強さを理論と比べました。この記事の濃さの数字は、これらの値からSEADICEが計算したものです。

わかっているFukugita・Peebles(2004年、The Astrophysical Journal)[2]

宇宙にあるエネルギーと物質を約40種類に分けて数えました。星(ふつうの星・白色矮星・中性子星など)になっている物質は、臨界密度の約0.27%で、ふつうの物質全体(約4.5%)の約6%です。残りの大部分は、銀河のまわりや銀河と銀河の間の薄いガスです。

どうやって: 銀河の明るさの観測や、星の数の分布、ガスの観測など、多くの研究の値を集めて足し合わせました。ガスの量は直接見えにくく、誤差が大きいと書かれています。

有力な仮説Shullら(2012年、The Astrophysical Journal)[4]

近くの宇宙でふつうの物質を探して数えると、銀河と銀河団が約18%、銀河間の比較的冷たいガスが約28%、十万度を超える薄いガスが約25%で、約29%がまだ見つかっていない、という結果でした。

どうやって: 遠くのクエーサーの光が途中のガスに吸収されるようすを紫外線で調べ、ガスの量を見積もりました。誤差が大きく、見積もり方によって割合は変わります。

有力な仮説Macquartら(2020年、Nature)[3]

高速電波バースト(数ミリ秒だけ光る遠くの電波)を使って、銀河の間のふつうの物質の量を量りました。結果は、宇宙背景放射から予想される量と合っていました。

どうやって: 電波が薄いガスの中の電子を通ると、周波数によって届く時間がずれます。そのずれと、どの銀河から来たかで決めた距離を比べました。使えた電波バーストの数はまだ少なく、誤差は大きめです。

03 数字と例えでいうとどれくらいスカスカなの?

地球と同じ大きさの体積に、宇宙の平均の濃さでふつうの物質を詰めても、約0.5ミリグラムにしかなりません。地上の空気の約10の26乗分の1の薄さです(計算)。

くらべるもの1立方メートルあたり身近な例えでいうと
地上の空気(0度・1気圧)分子 約2.7×10の25乗個[6]宇宙の平均より約10の26乗倍(1億の3乗のさらに100倍)多い(計算)
地上の実験装置の真空の例(約マイナス267度に冷やした容器)水素 約140万個より少ない(上限)[5]宇宙の平均は、この上限よりさらに約500万倍薄い(計算)
宇宙の平均(ふつうの物質)陽子 約0.25個分。原子にすると約0.2個(計算)約5立方メートル、つまり1辺約1.7メートル(大人の背の高さほど)の立方体に原子1個
宇宙の平均(全部の成分)陽子 約5.1個分の重さ(計算)そのうち約69%はダークエネルギー、約26%はダークマター
地球と同じ体積に入るふつうの物質約0.46ミリグラム(計算)米粒1つ(約20ミリグラム)の約40分の1

原子の数は、ふつうの物質の重さの約75%が水素、約25%がヘリウムとして計算しました。ダークエネルギーは物質ではありませんが、エネルギーを重さに直して足しています。

実験装置の真空の数字は、反陽子(陽子の反物質)を405日閉じこめても消えなかったことから出した上限です[5]。測った値ではなく「これより少ない」という値なので、実際の差はもっと小さい可能性もあります。また、これが世界でいちばん薄い真空かどうかは、この記事では確かめていません。

04 まだわかっていないこと宇宙の中身で、まだ謎なのは何?

宇宙の濃さの約95%を占めるダークマターとダークエネルギーの正体は、わかっていません。ふつうの物質でさえ、どこにどれだけあるのかの数え上げは、まだ終わっていません。

05関連する記事

06よくある質問

宇宙空間1立方メートルに原子は何個ある?

宇宙全体をならすと、1立方メートルに約0.2個です。Planck衛星の観測(2018年)の値から計算した平均で、約5立方メートルに原子1個の割合になります。銀河の中はもっと濃く、銀河と銀河の間はもっと薄くなります。

宇宙は地上のどんな真空よりも薄い?

平均の濃さでくらべると、そうです。冷やした容器で反陽子を1年以上閉じこめた実験では、残っている水素は1立方メートルに約140万個より少ないとされました。宇宙の平均は約0.25個分なので、それよりさらに数百万倍薄い計算です。

宇宙のうち、星になっている物質はどれくらい?

星になっている物質は、宇宙の全成分の約0.27%、ふつうの物質の約6%です(Fukugita・Peebles 2004)。ふつうの物質の大部分は、銀河のまわりや銀河と銀河の間にある薄いガスです。

宇宙の中身の割合は?

Planck衛星の観測では、ふつうの物質が約5%、ダークマターが約26%、ダークエネルギーが約69%です。ダークマターとダークエネルギーの正体は、まだわかっていません。

出典

  1. Planck Collaboration: Aghanim, N., et al. (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics 641, A6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833910
  2. Fukugita, M., Peebles, P. J. E. (2004). The Cosmic Energy Inventory. The Astrophysical Journal 616, 643–668. https://doi.org/10.1086/425155
  3. Macquart, J.-P., Prochaska, J. X., McQuinn, M., Bannister, K. W., et al. (2020). A census of baryons in the Universe from localized fast radio bursts. Nature 581, 391–395. https://doi.org/10.1038/s41586-020-2300-2
  4. Shull, J. M., Smith, B. D., Danforth, C. W. (2012). The Baryon Census in a Multiphase Intergalactic Medium: 30% of the Baryons May Still Be Missing. The Astrophysical Journal 759, 23. https://doi.org/10.1088/0004-637X/759/1/23
  5. Sellner, S., Besirli, M., Bohman, M., et al. (2017). Improved limit on the directly measured antiproton lifetime. New Journal of Physics 19, 083023. https://doi.org/10.1088/1367-2630/aa7e73
  6. NIST. CODATA Value: Loschmidt constant (273.15 K, 101.325 kPa). https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?n0std