宇宙はどれくらいスカスカなのか、1立方メートルに原子は何個

宇宙全体をならすと、1立方メートルの箱に原子が何個入っているでしょうか。答えは「1個もない」です。Planck衛星の観測から計算すると、平均で約0.2個、つまり5立方メートルに1個ほどしかありません。この記事では、その数字の出し方と、まだ見つかっていない物質の話までを書きます。
3行でわかる
- Planck衛星の観測(2018年)の値から計算すると、宇宙の平均の濃さは、ふつうの物質だけで1立方メートルに陽子約0.25個分。原子の数にすると約0.2個で、約5立方メートルに1個。
- 宇宙の中身の割合は、ふつうの物質が約5%、ダークマター(見えない物質)が約26%、ダークエネルギーが約69%。星になっているのは、ふつうの物質の約6%だけ。
- 地上の空気より約10の26乗倍薄く、地上の実験装置で作られたとても薄い真空の例より、さらに数百万倍薄い(計算)。ふつうの物質の約3割は、どこにあるのか長く見つからなかった。
01 わかっていること宇宙の平均の濃さはどれくらい?
宇宙全体をならした濃さは、ふつうの物質(原子でできた物)だけで1立方メートルに陽子約0.25個分です。ダークマターなどを全部合わせても、陽子約5個分の重さにしかなりません。
この数字は、Planck衛星が宇宙背景放射(ビッグバンの名残の光)を観測して求めた値から計算できます[1]。宇宙の膨張の速さ(ハッブル定数)から「臨界密度」という基準の濃さが決まり、各成分はその何%かで表されます。
Planckの値では、ハッブル定数は秒速67.4キロ毎メガパーセク、物質は全体の31.5%です[1]。ここから計算すると、臨界密度は1立方メートルあたり約8.5×10のマイナス27乗キログラム。陽子1個の重さで割ると、約5.1個分です。
02 どうやってわかったのか見えない物質まで、どうやって量ったの?
宇宙背景放射の小さなむらの模様を調べると、ふつうの物質とダークマターの量を別々に読み取れます。さらに銀河や星、ガスを数えた研究や、高速電波バーストを使った研究で確かめています。
わかっているPlanck Collaboration(2020年、Astronomy & Astrophysics)[1]
宇宙の中身を表す値を、とても細かく決めました。ふつうの物質の量を表す値は0.0224、ダークマターは0.120、物質全体は31.5%、ハッブル定数は秒速67.4キロ毎メガパーセクです。
どうやって: 空全体の宇宙背景放射の温度のむらと偏り(偏光)を測り、むらの大きさごとの強さを理論と比べました。この記事の濃さの数字は、これらの値からSEADICEが計算したものです。
わかっているFukugita・Peebles(2004年、The Astrophysical Journal)[2]
宇宙にあるエネルギーと物質を約40種類に分けて数えました。星(ふつうの星・白色矮星・中性子星など)になっている物質は、臨界密度の約0.27%で、ふつうの物質全体(約4.5%)の約6%です。残りの大部分は、銀河のまわりや銀河と銀河の間の薄いガスです。
どうやって: 銀河の明るさの観測や、星の数の分布、ガスの観測など、多くの研究の値を集めて足し合わせました。ガスの量は直接見えにくく、誤差が大きいと書かれています。
有力な仮説Shullら(2012年、The Astrophysical Journal)[4]
近くの宇宙でふつうの物質を探して数えると、銀河と銀河団が約18%、銀河間の比較的冷たいガスが約28%、十万度を超える薄いガスが約25%で、約29%がまだ見つかっていない、という結果でした。
どうやって: 遠くのクエーサーの光が途中のガスに吸収されるようすを紫外線で調べ、ガスの量を見積もりました。誤差が大きく、見積もり方によって割合は変わります。
有力な仮説Macquartら(2020年、Nature)[3]
高速電波バースト(数ミリ秒だけ光る遠くの電波)を使って、銀河の間のふつうの物質の量を量りました。結果は、宇宙背景放射から予想される量と合っていました。
どうやって: 電波が薄いガスの中の電子を通ると、周波数によって届く時間がずれます。そのずれと、どの銀河から来たかで決めた距離を比べました。使えた電波バーストの数はまだ少なく、誤差は大きめです。
03 数字と例えでいうとどれくらいスカスカなの?
地球と同じ大きさの体積に、宇宙の平均の濃さでふつうの物質を詰めても、約0.5ミリグラムにしかなりません。地上の空気の約10の26乗分の1の薄さです(計算)。
| くらべるもの | 1立方メートルあたり | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 地上の空気(0度・1気圧) | 分子 約2.7×10の25乗個[6] | 宇宙の平均より約10の26乗倍(1億の3乗のさらに100倍)多い(計算) |
| 地上の実験装置の真空の例(約マイナス267度に冷やした容器) | 水素 約140万個より少ない(上限)[5] | 宇宙の平均は、この上限よりさらに約500万倍薄い(計算) |
| 宇宙の平均(ふつうの物質) | 陽子 約0.25個分。原子にすると約0.2個(計算) | 約5立方メートル、つまり1辺約1.7メートル(大人の背の高さほど)の立方体に原子1個 |
| 宇宙の平均(全部の成分) | 陽子 約5.1個分の重さ(計算) | そのうち約69%はダークエネルギー、約26%はダークマター |
| 地球と同じ体積に入るふつうの物質 | 約0.46ミリグラム(計算) | 米粒1つ(約20ミリグラム)の約40分の1 |
原子の数は、ふつうの物質の重さの約75%が水素、約25%がヘリウムとして計算しました。ダークエネルギーは物質ではありませんが、エネルギーを重さに直して足しています。
04 まだわかっていないこと宇宙の中身で、まだ謎なのは何?
宇宙の濃さの約95%を占めるダークマターとダークエネルギーの正体は、わかっていません。ふつうの物質でさえ、どこにどれだけあるのかの数え上げは、まだ終わっていません。
- ダークマターとダークエネルギーの正体重力の効き方や宇宙の膨張からあることはわかっていますが、何でできているかは不明です(くわしくはダークマター・ダークエネルギーの記事)。
- 見つかっていないふつうの物質はどこにあるか近くの宇宙での数え上げでは、約3割が見つかっていないという結果がありました[4]。高速電波バーストの研究は、銀河の間の薄いガスにあると示していますが[3]、どんな温度・形で散らばっているかはまだ調べている途中です。
- 宇宙の膨張の速さの食いちがいこの記事の数字はPlanckのハッブル定数をもとにしています。近くの星から測ると、もっと大きな値が出るため、どちらが正しいかで臨界密度も少し変わります(ハッブル・テンションの記事)。
05関連する記事
06よくある質問
宇宙空間1立方メートルに原子は何個ある?
宇宙全体をならすと、1立方メートルに約0.2個です。Planck衛星の観測(2018年)の値から計算した平均で、約5立方メートルに原子1個の割合になります。銀河の中はもっと濃く、銀河と銀河の間はもっと薄くなります。
宇宙は地上のどんな真空よりも薄い?
平均の濃さでくらべると、そうです。冷やした容器で反陽子を1年以上閉じこめた実験では、残っている水素は1立方メートルに約140万個より少ないとされました。宇宙の平均は約0.25個分なので、それよりさらに数百万倍薄い計算です。
宇宙のうち、星になっている物質はどれくらい?
星になっている物質は、宇宙の全成分の約0.27%、ふつうの物質の約6%です(Fukugita・Peebles 2004)。ふつうの物質の大部分は、銀河のまわりや銀河と銀河の間にある薄いガスです。
宇宙の中身の割合は?
Planck衛星の観測では、ふつうの物質が約5%、ダークマターが約26%、ダークエネルギーが約69%です。ダークマターとダークエネルギーの正体は、まだわかっていません。
出典
- Planck Collaboration: Aghanim, N., et al. (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics 641, A6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833910
- Fukugita, M., Peebles, P. J. E. (2004). The Cosmic Energy Inventory. The Astrophysical Journal 616, 643–668. https://doi.org/10.1086/425155
- Macquart, J.-P., Prochaska, J. X., McQuinn, M., Bannister, K. W., et al. (2020). A census of baryons in the Universe from localized fast radio bursts. Nature 581, 391–395. https://doi.org/10.1038/s41586-020-2300-2
- Shull, J. M., Smith, B. D., Danforth, C. W. (2012). The Baryon Census in a Multiphase Intergalactic Medium: 30% of the Baryons May Still Be Missing. The Astrophysical Journal 759, 23. https://doi.org/10.1088/0004-637X/759/1/23
- Sellner, S., Besirli, M., Bohman, M., et al. (2017). Improved limit on the directly measured antiproton lifetime. New Journal of Physics 19, 083023. https://doi.org/10.1088/1367-2630/aa7e73
- NIST. CODATA Value: Loschmidt constant (273.15 K, 101.325 kPa). https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?n0std


