宇宙の始まりと終わり

宇宙の大規模構造とは何か、銀河が網の目に並ぶ理由

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ハッブル宇宙望遠鏡が写した銀河団Abell 3827
Photo: ESO / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

銀河は、宇宙にまんべんなく散らばっているわけではありません。銀河の立体の地図を作ると、銀河は糸のように連なり、その間には銀河がほとんどない大きな空洞が広がっています。この網の目のような形を、宇宙の大規模構造(コズミック・ウェブ)と呼びます。

3行でわかる

  1. 銀河は、糸(フィラメント)・壁・結び目(銀河団)がつながった網の目に並び、その間には空洞(ボイド)がある。1980年代の銀河の地図づくりで、この形が見えてきた。
  2. 網の目の種は、生まれたばかりの宇宙にあった10万分の1ほどのわずかなむらだと考えられている。重力が、濃い場所に物質を集めて網の目に育てた。
  3. シミュレーションの分析では、物質の約半分が糸に集まり、空洞が体積の約8割を占める。糸の中のガスを直接とらえた例は、まだ限られている。

01 わかっていること宇宙で、銀河はどう並んでいるの?

銀河は、糸のように連なる「フィラメント」、平たい「壁」、糸が交わる結び目の「銀河団」に集まっています。その間には、銀河の少ない「ボイド(空洞)」が広がっていて、全体は網の目や泡のように見えます。

1986年、銀河までの距離を測って地図にした研究で、銀河が泡の表面に並ぶように分布し、泡の中はほとんど空っぽに見えることが示されました[1]。

この形を「コズミック・ウェブ(宇宙の網の目)」と呼んで説明したのが、1996年のBondらの論文です。銀河団が網の結び目になり、近くの銀河団どうしを、いちばん太い糸がつないでいると説明しました[3]。

網の目の種は、ビッグバンから約38万年後の光(宇宙マイクロ波背景放射)に残る、10万分の1ほどの温度のむらだと考えられています。ESAは、このむらを、のちに銀河が育つ場所の「種」だと説明しています[7]。

02 どうやってわかったのか網の目の形は、どうやって調べたの?

銀河までの距離を1つずつ測って立体の地図を作る観測と、見えない物質も含めて重力の働きを計算するシミュレーションで調べました。どちらも同じような網の目の形を示しています。

わかっているde Lapparent・Geller・Huchra(1986年、The Astrophysical Journal Letters)[1]

空の細長い帯の範囲で、銀河までの距離を測って扇形の地図にしました。銀河は泡の表面に並ぶように分布し、泡の中には明るい銀河がほとんどありませんでした。

どうやって: 銀河の光を分けて、光の波長ののび(赤方偏移)から距離を求めました。題名は「宇宙の薄切り(A slice of the universe)」です。

有力な仮説Bond・Kofman・Pogosyan(1996年、Nature)[3]

網の目は、生まれたばかりの宇宙の濃さのむらの中に、すでに「芽」として含まれていて、重力がそれをくっきりさせたと説明しました。いちばん太い糸は、近くにある銀河団どうしを結ぶとしています。

どうやって: 銀河の観測やシミュレーションに見られる網の目を、初めの宇宙のむらから、どこに糸や結び目ができるかという理論で説明しました。

わかっているSpringelら(2005年、Nature)[2][8]

「ミレニアム・シミュレーション」で、ダークマター(光を出さず重力だけを及ぼす見えない物質)の動きを計算しました。構造は重力によって、小さいものから大きいものへと順に育ちました。

どうやって: 1辺が20億光年を超える立方体の中に100億個を超える粒子を置き、スーパーコンピューターで1か月以上かけて計算しました。中には約2000万個の銀河ができました。

わかっているEisensteinら(2005年、The Astrophysical Journal)[4]

4万6748個の銀河の並び方を調べると、ある決まった距離(約4.8億光年)だけ離れた銀河の組が、少し多くなっていました。生まれたばかりの宇宙を伝わった音の波の跡が、今の銀河の並びに残っていたのです。

どうやって: スローン・デジタル・スカイサーベイで、明るく赤い銀河の距離を測り、2つの銀河の間の距離ごとに組の数を数えました。

有力な仮説Cautunら(2014年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[5]

今の宇宙では、物質の約50%が糸に、約24%が壁に、約11%が銀河団に、約15%が空洞にあると計算されました。体積では、空洞が約77%、壁が約18%、糸は約6%、銀河団は0.1%未満です。

どうやって: ダークマターのシミュレーションの中を、形の特徴から糸・壁・結び目・空洞に分ける方法で分類しました。観測で数えた値ではありません。

有力な仮説梅畑豪紀ら(2019年、Science)[6]

宇宙の年齢が約20億年のころ(赤方偏移3.1)の、生まれつつある銀河団SSA22で、銀河と銀河の間を100万パーセク(約330万光年)以上つなぐガスの糸が、光っている様子をとらえました。

どうやって: 水素が出す紫外線の光(ライマンアルファ線)の広がりを地図にしました。糸の位置と動きは、星を作っている銀河の位置とそろっていました。

03 数字と例えでいうと網の目は、どれくらいの大きさなの?

網の目の種のむらは10万分の1ほどで、深さ1mのプールなら0.01mmの凹凸です。今の宇宙では、体積の6%しかない糸に物質の約半分が集まり、体積の77%を占める空洞には15%しかないと計算されています。

項目値身近な例えでいうと
種になったむら温度の差が約10万分の1[7]深さ1mのプールの水面に、0.01mmの凹凸があるくらい(計算)
糸(フィラメント)物質の約50%、体積の約6%[5]宇宙を100部屋の家にすると、6部屋に物の半分が詰まっている
空洞(ボイド)体積の約77%、物質の約15%[5]100部屋のうち77部屋あるのに、物は15%しか置かれていない
銀河の並びに残る音の波の跡100h-1メガパーセク[4]約4.8億光年(計算)。アンドロメダ銀河(約250万光年)までの約190倍
ガスの糸の長さ(SSA22)100万パーセク以上[6]約330万光年以上。アンドロメダ銀河までの距離より長い
ミレニアム・シミュレーションの大きさ1辺20億光年超、粒子100億個超[8]世界の人口(約80億人)より多い粒子で計算

4.8億光年は、ハッブル定数を67.4(h=0.674)として、100h-1メガパーセクを約148メガパーセクに直し、1メガパーセク=約326万光年で計算しました。アンドロメダ銀河までの距離は「アンドロメダ銀河は天の川銀河にぶつかるのか」の値です。

04 まだわかっていないこと宇宙の網の目で、まだわからないことは?

糸の中にある薄いガスは、直接見えている場所がまだ限られています。シミュレーションのもとになるダークマターの正体もわかっておらず、物質の何割が糸にあるかも、分け方を決めたうえでの計算値です。

05関連する記事

06よくある質問

宇宙の大規模構造とは?

銀河が、糸(フィラメント)・壁・結び目(銀河団)がつながった網の目に並び、その間に銀河の少ない空洞(ボイド)が広がっている、宇宙全体の形のことです。コズミック・ウェブ(宇宙の網の目)とも呼ばれます。

銀河はなぜ網の目に並ぶの?

生まれたばかりの宇宙に、10万分の1ほどのわずかな濃さのむらがあったためと考えられています。少し濃い場所は重力で周りの物質を集め、長い時間をかけて糸や結び目に育ちました。

ボイド(空洞)には何もないの?

まったく空ではありません。シミュレーションの分析では、空洞は宇宙の体積の約77%を占めますが、そこにある物質は全体の約15%です。銀河は少ないものの、薄く物質が残っています。

宇宙の大規模構造はどうやって調べるの?

たくさんの銀河までの距離を測って立体の地図を作る観測と、ダークマターを含めて重力の働きを計算するシミュレーションで調べます。2005年には、4万6748個の銀河の並びから、宇宙の初めの音の波の跡も見つかりました。

出典

  1. de Lapparent, V., Geller, M. J., Huchra, J. P. (1986). A slice of the universe. The Astrophysical Journal Letters 302, L1. https://doi.org/10.1086/184625
  2. Springel, V., White, S. D. M., Jenkins, A., Frenk, C. S., et al. (2005). Simulations of the formation, evolution and clustering of galaxies and quasars. Nature 435, 629–636. https://doi.org/10.1038/nature03597
  3. Bond, J. R., Kofman, L., Pogosyan, D. (1996). How filaments of galaxies are woven into the cosmic web. Nature 380, 603–606. https://doi.org/10.1038/380603a0
  4. Eisenstein, D. J., Zehavi, I., Hogg, D. W., Scoccimarro, R., et al. (2005). Detection of the Baryon Acoustic Peak in the Large-Scale Correlation Function of SDSS Luminous Red Galaxies. The Astrophysical Journal 633, 560–574. https://doi.org/10.1086/466512
  5. Cautun, M., van de Weygaert, R., Jones, B. J. T., Frenk, C. S. (2014). Evolution of the cosmic web. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 441, 2923–2973. https://doi.org/10.1093/mnras/stu768
  6. Umehata, H., Fumagalli, M., Smail, I., Matsuda, Y., et al. (2019). Gas filaments of the cosmic web located around active galaxies in a protocluster. Science 366, 97–100. https://doi.org/10.1126/science.aaw5949
  7. ESA. Planck and the cosmic microwave background. https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Planck/Planck_and_the_cosmic_microwave_background
  8. Max Planck Institute for Astrophysics. The Millennium Simulation Project. https://wwwmpa.mpa-garching.mpg.de/galform/virgo/millennium/