宇宙の大規模構造とは何か、銀河が網の目に並ぶ理由

銀河は、宇宙にまんべんなく散らばっているわけではありません。銀河の立体の地図を作ると、銀河は糸のように連なり、その間には銀河がほとんどない大きな空洞が広がっています。この網の目のような形を、宇宙の大規模構造(コズミック・ウェブ)と呼びます。
3行でわかる
- 銀河は、糸(フィラメント)・壁・結び目(銀河団)がつながった網の目に並び、その間には空洞(ボイド)がある。1980年代の銀河の地図づくりで、この形が見えてきた。
- 網の目の種は、生まれたばかりの宇宙にあった10万分の1ほどのわずかなむらだと考えられている。重力が、濃い場所に物質を集めて網の目に育てた。
- シミュレーションの分析では、物質の約半分が糸に集まり、空洞が体積の約8割を占める。糸の中のガスを直接とらえた例は、まだ限られている。
01 わかっていること宇宙で、銀河はどう並んでいるの?
銀河は、糸のように連なる「フィラメント」、平たい「壁」、糸が交わる結び目の「銀河団」に集まっています。その間には、銀河の少ない「ボイド(空洞)」が広がっていて、全体は網の目や泡のように見えます。
1986年、銀河までの距離を測って地図にした研究で、銀河が泡の表面に並ぶように分布し、泡の中はほとんど空っぽに見えることが示されました[1]。
この形を「コズミック・ウェブ(宇宙の網の目)」と呼んで説明したのが、1996年のBondらの論文です。銀河団が網の結び目になり、近くの銀河団どうしを、いちばん太い糸がつないでいると説明しました[3]。
網の目の種は、ビッグバンから約38万年後の光(宇宙マイクロ波背景放射)に残る、10万分の1ほどの温度のむらだと考えられています。ESAは、このむらを、のちに銀河が育つ場所の「種」だと説明しています[7]。
02 どうやってわかったのか網の目の形は、どうやって調べたの?
銀河までの距離を1つずつ測って立体の地図を作る観測と、見えない物質も含めて重力の働きを計算するシミュレーションで調べました。どちらも同じような網の目の形を示しています。
わかっているde Lapparent・Geller・Huchra(1986年、The Astrophysical Journal Letters)[1]
空の細長い帯の範囲で、銀河までの距離を測って扇形の地図にしました。銀河は泡の表面に並ぶように分布し、泡の中には明るい銀河がほとんどありませんでした。
どうやって: 銀河の光を分けて、光の波長ののび(赤方偏移)から距離を求めました。題名は「宇宙の薄切り(A slice of the universe)」です。
有力な仮説Bond・Kofman・Pogosyan(1996年、Nature)[3]
網の目は、生まれたばかりの宇宙の濃さのむらの中に、すでに「芽」として含まれていて、重力がそれをくっきりさせたと説明しました。いちばん太い糸は、近くにある銀河団どうしを結ぶとしています。
どうやって: 銀河の観測やシミュレーションに見られる網の目を、初めの宇宙のむらから、どこに糸や結び目ができるかという理論で説明しました。
わかっているSpringelら(2005年、Nature)[2][8]
「ミレニアム・シミュレーション」で、ダークマター(光を出さず重力だけを及ぼす見えない物質)の動きを計算しました。構造は重力によって、小さいものから大きいものへと順に育ちました。
どうやって: 1辺が20億光年を超える立方体の中に100億個を超える粒子を置き、スーパーコンピューターで1か月以上かけて計算しました。中には約2000万個の銀河ができました。
わかっているEisensteinら(2005年、The Astrophysical Journal)[4]
4万6748個の銀河の並び方を調べると、ある決まった距離(約4.8億光年)だけ離れた銀河の組が、少し多くなっていました。生まれたばかりの宇宙を伝わった音の波の跡が、今の銀河の並びに残っていたのです。
どうやって: スローン・デジタル・スカイサーベイで、明るく赤い銀河の距離を測り、2つの銀河の間の距離ごとに組の数を数えました。
有力な仮説Cautunら(2014年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[5]
今の宇宙では、物質の約50%が糸に、約24%が壁に、約11%が銀河団に、約15%が空洞にあると計算されました。体積では、空洞が約77%、壁が約18%、糸は約6%、銀河団は0.1%未満です。
どうやって: ダークマターのシミュレーションの中を、形の特徴から糸・壁・結び目・空洞に分ける方法で分類しました。観測で数えた値ではありません。
有力な仮説梅畑豪紀ら(2019年、Science)[6]
宇宙の年齢が約20億年のころ(赤方偏移3.1)の、生まれつつある銀河団SSA22で、銀河と銀河の間を100万パーセク(約330万光年)以上つなぐガスの糸が、光っている様子をとらえました。
どうやって: 水素が出す紫外線の光(ライマンアルファ線)の広がりを地図にしました。糸の位置と動きは、星を作っている銀河の位置とそろっていました。
03 数字と例えでいうと網の目は、どれくらいの大きさなの?
網の目の種のむらは10万分の1ほどで、深さ1mのプールなら0.01mmの凹凸です。今の宇宙では、体積の6%しかない糸に物質の約半分が集まり、体積の77%を占める空洞には15%しかないと計算されています。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 種になったむら | 温度の差が約10万分の1[7] | 深さ1mのプールの水面に、0.01mmの凹凸があるくらい(計算) |
| 糸(フィラメント) | 物質の約50%、体積の約6%[5] | 宇宙を100部屋の家にすると、6部屋に物の半分が詰まっている |
| 空洞(ボイド) | 体積の約77%、物質の約15%[5] | 100部屋のうち77部屋あるのに、物は15%しか置かれていない |
| 銀河の並びに残る音の波の跡 | 100h-1メガパーセク[4] | 約4.8億光年(計算)。アンドロメダ銀河(約250万光年)までの約190倍 |
| ガスの糸の長さ(SSA22) | 100万パーセク以上[6] | 約330万光年以上。アンドロメダ銀河までの距離より長い |
| ミレニアム・シミュレーションの大きさ | 1辺20億光年超、粒子100億個超[8] | 世界の人口(約80億人)より多い粒子で計算 |
4.8億光年は、ハッブル定数を67.4(h=0.674)として、100h-1メガパーセクを約148メガパーセクに直し、1メガパーセク=約326万光年で計算しました。アンドロメダ銀河までの距離は「アンドロメダ銀河は天の川銀河にぶつかるのか」の値です。
04 まだわかっていないこと宇宙の網の目で、まだわからないことは?
糸の中にある薄いガスは、直接見えている場所がまだ限られています。シミュレーションのもとになるダークマターの正体もわかっておらず、物質の何割が糸にあるかも、分け方を決めたうえでの計算値です。
- 糸の中のガスは、どれだけ見えているのか宇宙のガスの多くは、銀河の間で壁や糸の形になっていると考えられていますが、観測で示すのは難しいとされてきました[6]。光るガスの糸がとらえられたのは、SSA22のような限られた場所です。
- ダークマターの正体網の目を育てた重力の多くは、ダークマターによるものと考えられています。けれども正体はわかっておらず、地下の実験でもまだ捕まっていません(ダークマターとは何か)。
- 物質の何割が糸にあるのか約50%という値は、1つのシミュレーションと1つの分け方で求めたものです[5]。どこからどこまでを糸と呼ぶかで、数字は変わりえます。
05関連する記事
06よくある質問
宇宙の大規模構造とは?
銀河が、糸(フィラメント)・壁・結び目(銀河団)がつながった網の目に並び、その間に銀河の少ない空洞(ボイド)が広がっている、宇宙全体の形のことです。コズミック・ウェブ(宇宙の網の目)とも呼ばれます。
銀河はなぜ網の目に並ぶの?
生まれたばかりの宇宙に、10万分の1ほどのわずかな濃さのむらがあったためと考えられています。少し濃い場所は重力で周りの物質を集め、長い時間をかけて糸や結び目に育ちました。
ボイド(空洞)には何もないの?
まったく空ではありません。シミュレーションの分析では、空洞は宇宙の体積の約77%を占めますが、そこにある物質は全体の約15%です。銀河は少ないものの、薄く物質が残っています。
宇宙の大規模構造はどうやって調べるの?
たくさんの銀河までの距離を測って立体の地図を作る観測と、ダークマターを含めて重力の働きを計算するシミュレーションで調べます。2005年には、4万6748個の銀河の並びから、宇宙の初めの音の波の跡も見つかりました。
出典
- de Lapparent, V., Geller, M. J., Huchra, J. P. (1986). A slice of the universe. The Astrophysical Journal Letters 302, L1. https://doi.org/10.1086/184625
- Springel, V., White, S. D. M., Jenkins, A., Frenk, C. S., et al. (2005). Simulations of the formation, evolution and clustering of galaxies and quasars. Nature 435, 629–636. https://doi.org/10.1038/nature03597
- Bond, J. R., Kofman, L., Pogosyan, D. (1996). How filaments of galaxies are woven into the cosmic web. Nature 380, 603–606. https://doi.org/10.1038/380603a0
- Eisenstein, D. J., Zehavi, I., Hogg, D. W., Scoccimarro, R., et al. (2005). Detection of the Baryon Acoustic Peak in the Large-Scale Correlation Function of SDSS Luminous Red Galaxies. The Astrophysical Journal 633, 560–574. https://doi.org/10.1086/466512
- Cautun, M., van de Weygaert, R., Jones, B. J. T., Frenk, C. S. (2014). Evolution of the cosmic web. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 441, 2923–2973. https://doi.org/10.1093/mnras/stu768
- Umehata, H., Fumagalli, M., Smail, I., Matsuda, Y., et al. (2019). Gas filaments of the cosmic web located around active galaxies in a protocluster. Science 366, 97–100. https://doi.org/10.1126/science.aaw5949
- ESA. Planck and the cosmic microwave background. https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Planck/Planck_and_the_cosmic_microwave_background
- Max Planck Institute for Astrophysics. The Millennium Simulation Project. https://wwwmpa.mpa-garching.mpg.de/galform/virgo/millennium/


