ビッグバンの証拠は何か、宇宙マイクロ波背景放射と元素の割合

夜空のどの方向にアンテナを向けても、同じ弱い電波が届きます。温度にするとマイナス270度ほど。これは、宇宙がかつて熱く詰まっていたころの光の名残です。ビッグバンは想像ではなく、こうした「残り物」を測って確かめられてきました。
3行でわかる
- ビッグバンの主な証拠は2つ。宇宙全体から届く電波(宇宙マイクロ波背景放射)と、水素とヘリウムの割合です。
- 電波の温度は2.726K。宇宙が約38万歳のときに出た光が、引き伸ばされて冷えたものです。
- 熱い始まりより前のインフレーションは有力な仮説で、0秒やその前のことはわかっていません。
01 わかっていることビッグバンが本当にあったと言える理由は?
宇宙が昔とても熱く、そこから広がって冷えてきたことは、観測で確かめられています。全方向から届く電波と、軽い元素の割合が、どちらもこの考えの予測と一致するからです。
ビッグバンとは、爆弾のように1点から物が飛び散ったことではありません。宇宙全体が熱く詰まった状態から、空間そのものが広がってきたという考えです。
熱いものは光を出します。宇宙が冷えて透明になった瞬間の光は、今も宇宙を満たしているはずです。そして生まれて数分の宇宙では、水素からヘリウムがつくられたはずです。この2つの予測が、両方とも観測で見つかりました。
02 どうやってわかったのかどんな観測でビッグバンを確かめたの?
1965年に偶然見つかった電波が、熱い宇宙の名残だとわかりました。その後、人工衛星が温度を精密に測り、元素の割合の観測とも合うことが確かめられています。
わかっているペンジアスとウィルソン(1965年、The Astrophysical Journal)[1]
アンテナの雑音を調べるうちに、説明のつかない約3.5Kぶんの電波を見つけました。どの方向からも同じ強さで、季節でも変わりませんでした。
どうやって: アメリカ・ニュージャージー州の大きなホーン型アンテナで、波長7センチほどの電波を測りました。同じ号に載ったディッケらの論文が、これを熱い宇宙の名残と解釈しました。
わかっているフィクセン(2009年、The Astrophysical Journal)[2]
宇宙マイクロ波背景放射(宇宙全体から届く電波)の温度は2.7260K。誤差は0.0013Kしかありません。
どうやって: COBE衛星の測定器FIRASのデータを、WMAP衛星のデータで較正し直しました。
わかっているシュタイグマン(2007年、Annual Review of Nuclear and Particle Science)[3]
宇宙が数分の年齢のとき、30分足らずの間に軽い元素がつくられました。計算では、重さで約25%がヘリウムになり、重い元素の少ない銀河にあるガス雲の観測(約24%)と2σ(誤差の2倍)以内で合います。
どうやって: 重い元素が少ない、星にほとんど汚されていないガスでヘリウムや重水素の量を測り、計算と比べました。重水素の量も計算とよく合っています。
有力な仮説グース(1981年、Physical Review D)[5]
熱いビッグバンの直前に、宇宙が一瞬で大きく引き伸ばされたとする「インフレーション」を提案しました。宇宙がどこでも同じ温度である理由などを説明できます。
どうやって: 理論の提案です。決め手とされる原始重力波(インフレーションでできる空間のさざ波)は、2021年の解析でもまだ見つかっていません[6]。
03 数字と例えでいうとビッグバンの名残はどれくらい冷たいの?
宇宙マイクロ波背景放射は2.726K、つまりマイナス約270度です。出たときは約3000Kでしたが、宇宙が約1100倍に広がる間に、光の波も引き伸ばされて冷えました。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 背景放射の今の温度 | 2.7260K [2] | マイナス約270.4度。絶対零度まであと3度弱 |
| 光が出た時期 | 宇宙の誕生から約38万年後 [4] | 宇宙の歴史138億年を1年にすると、元日の最初の約15分 |
| そこからの広がり | 赤方偏移 約1090 [4] | 宇宙が約1100倍に広がった。2.726Kの1091倍で、出たときは約3000K |
| 最初のヘリウム | 重さで約25%(計算)[3] | できたてのガス100グラムのうち、約25グラムがヘリウム |
04 まだわかっていないことビッグバンの「前」はわかっているの?
わかっていません。確かめられているのは、熱い宇宙が冷えていく途中からです。0秒の瞬間、その前、インフレーションが本当に起きたかは、まだ答えが出ていません。
- 0秒の瞬間とビッグバンの前時間を巻き戻すと、密度も温度も計算上は無限大になります。そこを説明するには、重力と極小の世界の物理をまとめた理論が必要ですが、まだ完成していません。
- インフレーションは本当に起きたのか多くの観測と矛盾しない有力な仮説ですが、原始重力波は見つかっておらず、上限が決まっただけです [6]。
- リチウムの量が合わない古い星で見つかるリチウムは、計算の3〜4分の1ほどしかありません [3]。星の中で減ったのか、計算の前提に足りないものがあるのか、決着していません。
05関連する記事
06よくある質問
ビッグバンは爆発だったの?
爆弾のように一点から物が飛び散ったのではありません。宇宙全体がとても熱く詰まった状態から、空間そのものが広がってきたという考えです。どこか1か所に中心があるわけではありません。
ビッグバンの前には何があったの?
わかっていません。観測で確かめられているのは、熱い宇宙が冷えていく途中からです。0秒の瞬間やその前を説明するには、重力と極小の世界の物理をまとめた理論が必要ですが、まだ完成していません。
インフレーションはビッグバンと同じ?
同じではありません。インフレーションは、熱いビッグバンの直前に宇宙が一気に引き伸ばされたとする有力な仮説です。1981年にグースが提案しましたが、決め手となる原始重力波はまだ見つかっていません。
出典
- Penzias, A. A. & Wilson, R. W. (1965). A Measurement of Excess Antenna Temperature at 4080 Mc/s. The Astrophysical Journal 142, 419. https://doi.org/10.1086/148307
- Fixsen, D. J. (2009). The Temperature of the Cosmic Microwave Background. The Astrophysical Journal 707, 916-920. https://doi.org/10.1088/0004-637X/707/2/916
- Steigman, G. (2007). Primordial Nucleosynthesis in the Precision Cosmology Era. Annual Review of Nuclear and Particle Science 57, 463-491. https://doi.org/10.1146/annurev.nucl.56.080805.140437
- Planck Collaboration (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics 641, A6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833910
- Guth, A. H. (1981). Inflationary universe: A possible solution to the horizon and flatness problems. Physical Review D 23, 347-356. https://doi.org/10.1103/PhysRevD.23.347
- BICEP/Keck Collaboration (2021). Improved Constraints on Primordial Gravitational Waves using Planck, WMAP, and BICEP/Keck Observations through the 2018 Observing Season. Physical Review Letters 127, 151301. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.127.151301


