ダークエネルギーとは何か、宇宙の膨張が加速していると分かった超新星の観測

宇宙はふくらみ続けています。ふつうに考えると、重力にひっぱられて、ふくらむ速さはだんだん落ちるはずです。ところが1998年ごろ、遠くの超新星を調べた2つのチームが「速さは落ちるどころか、上がっている」という結果を出しました。この加速を起こしているものを、ダークエネルギーと呼びます。
3行でわかる
- 宇宙の膨張が加速していることは、遠くの超新星の観測でわかり、2011年のノーベル物理学賞になった。
- ダークエネルギー(膨張を加速させている、正体のわからないもの)は、宇宙の中身の約68%を占める。
- その正体は、まだわかっていない。2024〜2025年のDESIの結果は「時間とともに弱まっているかも」と示すが、確定ではない。
01 わかっていること宇宙の膨張は本当に加速しているの?
加速しています。遠くの超新星が、加速のない宇宙で予想されるより暗く(遠く)見えたことから、1998〜1999年に2つのチームが別々に示しました。この発見に2011年のノーベル物理学賞が贈られています。
ダークエネルギーは、「宇宙の膨張を加速させているもの」につけた名前です。正体がわからないので「ダーク(見えない・わからない)」と呼びます。
名前は似ていますが、ダークマターとは別ものです。ダークマターは重力で物を集めます。ダークエネルギーは逆に、宇宙を広げる向きにはたらきます。
Planck衛星の観測によると、宇宙の中身のうち約68%がダークエネルギーです。私たちが知っているふつうの物質は約5%しかありません。
02 どうやってわかったのか超新星で、なぜ加速がわかったの?
明るさのそろった「Ia型超新星」を、明るさのものさしに使いました。本当の明るさがわかれば、見かけの暗さから距離がわかります。遠くの超新星ほど、予想より遠くにあったのです。
Ia型超新星は、星の燃えかす(白色矮星)が爆発するものです。光り方の変化(明るさの山の幅)を使って明るさをそろえると、距離を測るものさしになります。距離と、光がどれだけ引きのばされたか(赤方偏移)を比べると、昔と今の膨張の速さの違いがわかります。
わかっているRiessら High-Z Supernova Search Team(1998、The Astronomical Journal)[1]
遠くのIa型超新星16個と近くの34個を比べると、遠くの超新星は、加速のない宇宙で予想されるより平均で10〜15%遠くにありました。膨張は今、加速していると結論づけました。
どうやって: 超新星の明るさの変化を測り、距離を出しました。ちりによる減光や、超新星の性質の違いなど、ほかの説明も検討しましたが、どれも結果を打ち消せませんでした。
わかっているPerlmutterら Supernova Cosmology Project(1999、The Astrophysical Journal)[2]
別のチームが42個の遠い超新星を調べ、同じ結論に達しました。宇宙を広げる成分(宇宙定数)がプラスである確からしさは99%でした。
どうやって: 赤方偏移0.18〜0.83の超新星を、近くの超新星と合わせて分析しました。2つのチームが独立に同じ答えを出したことが、結果の信頼を高めました。
わかっているPlanck Collaboration(2020、Astronomy & Astrophysics)[3]
生まれてまもない宇宙が出した光(宇宙マイクロ波背景放射)を全天で測りました。標準的なモデルでは、ダークエネルギーは宇宙の中身の約68%(0.6847)になります。
どうやって: 超新星とはまったく別の方法です。それでもダークエネルギーが必要だという点で一致しました。
有力な仮説DESI Collaboration(2025、Physical Review D)[4][5]
1,400万を超える銀河とクエーサー(明るく光る遠い銀河の中心)の3年分の地図から、ダークエネルギーが時間とともに弱まっている可能性が示されました。ほかのデータと合わせた確からしさは2.8〜4.2シグマです。
どうやって: 銀河の並び方に残る決まった間隔(バリオン音響振動)をものさしにして、過去約110億年の膨張を測りました。物理学で「発見」と呼ぶ目安の5シグマには届いておらず、検討が続いています。
03 数字と例えでいうとダークエネルギーはどれくらい多いの?
宇宙の中身を100円に例えると、ダークエネルギーが約68円、ダークマターが約26円、星や私たちをつくるふつうの物質は約5円です。宇宙のほとんどは、正体のわからないものです。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| ダークエネルギー | 約68%(0.6847)[3] | 100円のうち約68円 |
| ダークマター | 約26%[3] | 100円のうち約26円 |
| ふつうの物質 | 約5%[3] | 100円のうち約5円 |
| 遠くの超新星のずれ | 予想より10〜15%遠い[1] | 100m先と思った街灯が、110〜115m先にあった |
ダークマターとふつうの物質の割合は、Planckの論文の値(物質の密度と、宇宙の膨張の速さ=ハッブル定数67.4 km/s/Mpc)から計算しました。
04 まだわかっていないことダークエネルギーの正体は何?
正体はわかっていません。いちばん簡単な考えは「空間そのものがもつ、変わらないエネルギー(宇宙定数)」ですが、DESIの結果は「変化しているかもしれない」と示しています。
- 変わらないのか、変化しているのか宇宙定数なら、ダークエネルギーの濃さはいつも同じです。DESIの結果は変化を示しますが、データのどこかに未知の誤差がある可能性も、論文自身が書いています。
- そもそも何でできているのか空間のエネルギーなのか、新しい種類の場なのか、重力の法則のほうを直すべきなのか。答えは出ていません。
- 宇宙の未来はどうなるのかダークエネルギーの性質しだいで、宇宙の終わり方が変わります。くわしくは宇宙の未来の記事で書いています。
DESIは観測を続けています。結論は、データが増えてほかの観測とも合うかどうかで決まります。
05関連する記事
06よくある質問
ダークエネルギーとダークマターの違いは?
ダークマターは重力で物を引き寄せ、銀河をまとめる見えない物質です。ダークエネルギーは宇宙全体の膨張を加速させるもので、はたらきが逆です。どちらも正体はわかっていません。
宇宙の膨張が加速しているとわかったのはいつ?
1998〜1999年です。RiessらとPerlmutterらの2つのチームが、遠くのIa型超新星を観測して別々に示しました。2011年のノーベル物理学賞は、この発見に贈られました。
ダークエネルギーは弱まっているの?
まだわかりません。DESIの2025年の結果は、ほかのデータと合わせて2.8〜4.2シグマで「弱まっている」ほうを示しましたが、発見の目安の5シグマには届いていません。
ダークエネルギーは身の回りにも影響するの?
地球や太陽系、天の川銀河は重力で強く結びついているため、今のところ膨張で引きはなされることはありません。ダークエネルギーの影響が目立つのは、銀河どうしがはなれた宇宙全体の大きさで見たときです(ダークエネルギーが今の性質のままの場合)。
出典
- Riess, A. G. et al. (1998). Observational Evidence from Supernovae for an Accelerating Universe and a Cosmological Constant. The Astronomical Journal 116, 1009-1038. https://doi.org/10.1086/300499
- Perlmutter, S. et al. (1999). Measurements of Omega and Lambda from 42 High-Redshift Supernovae. The Astrophysical Journal 517, 565-586. https://doi.org/10.1086/307221
- Planck Collaboration (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics 641, A6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833910
- DESI Collaboration (2025). DESI DR2 results. II. Measurements of baryon acoustic oscillations and cosmological constraints. Physical Review D 112, 083515. https://doi.org/10.1103/tr6y-kpc6
- Fermilab / Berkeley Lab (2025). New DESI results strengthen hints that dark energy may evolve. https://news.fnal.gov/2025/03/new-desi-results-strengthen-hints-that-dark-energy-may-evolve/
- Caldwell, R. R., Kamionkowski, M. & Weinberg, N. N. (2003). Phantom Energy: Dark Energy with w<-1 Causes a Cosmic Doomsday. Physical Review Letters 91, 071301. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.91.071301
- The Nobel Prize in Physics 2011. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2011/summary/


