ダークマターとは何か、見えない物質があると考えられている理由

宇宙にある物質のうち、星やガスのように光で見えるのは6分の1ほどしかありません。残りは光を出さず、重力だけで存在がわかる「ダークマター」と考えられています。見えないのに、なぜあると言えるのでしょうか。
3行でわかる
- ダークマターは、光を出さず重力だけを及ぼす見えない物質です。量は普通の物質の約5倍と見積もられています。
- 銀河の回り方、銀河団による光の曲がり方、宇宙の背景放射という別々の観測が、どれも見えない物質を示しています。
- 正体はわかっていません。地下の実験で探していますが、まだ1つも捕まっていません。
01 わかっていることダークマターは本当にあるの?
見える物質だけでは説明できない重力があることは、いくつもの独立した観測で確かめられています。その重力のもとが「見えない物質」だという考えが、研究者の間で最も有力です。
物は重力で引き合います。だから、星やガスがどれだけ速く動いているかを測れば、そこにどれだけの重さがあるかがわかります。
測ってみると、見えている星やガスを全部足しても、重さが大きく足りません。足りない分を埋める、光を出さない物質。これがダークマター(暗黒物質)です。
02 どうやってわかったのか見えない物質をどうやって見つけたの?
重力の働きを3つの方法で測りました。銀河の回る速さ、重い天体が光を曲げる様子、そして宇宙の背景放射のむらです。どれも見える物質だけでは合いません。
わかっているNASAの解説より(ツビッキー、1933年)[5]
かみのけ座銀河団の銀河は、見える物質の重力では引き止められないほど速く動いていました。ツビッキーは、見えない物質があると考えました。
どうやって: 銀河団の中の銀河の動く速さを測り、見える物質から考えられる重さと比べました。
わかっているルービンとフォード(1970年、The Astrophysical Journal)[1]
アンドロメダ銀河の67か所のガスを、中心から約8万光年まで測りました。中心から4〜14キロパーセク(約1万3000〜4万6000光年)では、内側に含まれる重さが距離にほぼ比例して増えていました。
どうやって: ガスが出す光の色のずれ(ドップラー効果)から回る速さを求めました。その後の多くの銀河の観測とあわせ、外側にも見えない重さがあると考えられるようになりました。
わかっているクロウら(2006年、The Astrophysical Journal Letters)[2]
2つの銀河団がぶつかった「弾丸銀河団」では、重さの中心と、普通の物質の大部分である高温ガスの中心がずれていました。ずれは8σ(誤差の8倍)で、偶然とは考えにくい大きさです。
どうやって: 遠くの銀河の形がわずかにゆがむ様子(重力レンズ)から重さの分布を描き、X線で見えるガスの位置と比べました。著者らは、重力の法則を変えるだけでは説明できないとしています。
わかっているプランク・コラボレーション(2020年、Astronomy & Astrophysics)[3]
宇宙の背景放射のむらから、ダークマターの量は普通の物質の約5.4倍と求められました。
どうやって: 宇宙が約38万歳のときの光の温度のむらを全天で測り、宇宙の中身の割合を計算しました。銀河とはまったく別の時代・方法での測定です。
わかっていないLZ実験(2023年、Physical Review Letters)[4]
5.5トンの液体キセノンで60日間ダークマターの粒を探しましたが、信号は見つかりませんでした。
どうやって: 地下深くの装置で、粒がキセノンの原子にぶつかったときのかすかな光を待ちました。見つからなかったことで、粒の性質の候補が絞られています。
03 数字と例えでいうとダークマターはどれくらいあるの?
宇宙の物質を6つに分けると、見える普通の物質は1つ、ダークマターが5つほどです。宇宙全体のエネルギーで見ると、ダークマターは約26%、普通の物質は約5%です。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| ダークマターと普通の物質の比 | 0.120 : 0.0224(約5.4倍)[3] | 物質が6キロあれば、見える物質は1キロ弱 |
| 宇宙全体に占める割合 | ダークマター約26%、普通の物質約5% [3][5] | 残りの約7割はダークエネルギー |
| アンドロメダ銀河で測った範囲 | 中心から24キロパーセク [1] | 約7万8000光年。光でも7万8000年かかる |
| 弾丸銀河団のずれ | 8σ [2] | 測定の誤差の8倍。偶然ではまず起きない差 |
04 まだわかっていないことダークマターの正体は何?
正体はわかっていません。未知の粒だという説が有力ですが、どの候補も見つかっていません。重力が働くこと以外、どんな性質を持つのかも決着していません。
- どんな粒なのか原子をつくる粒とは別の、未知の粒だと考えられています(有力な仮説)。重い粒の候補を探すLZ実験でも、まだ信号はありません [4]。
- 重力の法則のほうが違う可能性見えない物質を考えず、重力の法則を変えて説明しようとする説もあります。ただ弾丸銀河団のずれは、この考えでは説明しにくいとされています [2]。
- 重力以外で普通の物質と関わるのか光を出さないことはわかっていますが、ほかの力でごくわずかに関わるのかは、まだわかっていません [5]。
05関連する記事
06よくある質問
ダークマターとダークエネルギーは同じもの?
別のものです。ダークマターは重力で物を引き寄せる見えない物質で、銀河をまとめています。ダークエネルギーは宇宙の広がりを加速させている何かで、どちらも正体はわかっていません。
ダークマターは私たちの周りにもあるの?
天の川銀河もダークマターに包まれていると考えられているので、地球の周りにもあるはずです。そのため地下の実験装置で、ダークマターの粒が原子にぶつかる瞬間を探していますが、まだ見つかっていません。
ダークマターはブラックホールのこと?
同じではありません。ブラックホールは普通の物質がつぶれてできた天体です。宇宙の背景放射の観測からは、ダークマターの量は普通の物質の約5倍と見積もられ、普通の物質とは別のものと考えられています。
出典
- Rubin, V. C. & Ford, W. K. Jr. (1970). Rotation of the Andromeda Nebula from a Spectroscopic Survey of Emission Regions. The Astrophysical Journal 159, 379. https://doi.org/10.1086/150317
- Clowe, D. et al. (2006). A Direct Empirical Proof of the Existence of Dark Matter. The Astrophysical Journal 648, L109-L113. https://doi.org/10.1086/508162
- Planck Collaboration (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics 641, A6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833910
- LZ Collaboration (2023). First Dark Matter Search Results from the LUX-ZEPLIN (LZ) Experiment. Physical Review Letters 131, 041002. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.131.041002
- NASA Science. Dark Matter. https://science.nasa.gov/dark-matter/


