天の川は肉眼で見えるのか、見える場所と季節

天の川は、望遠鏡がなくても肉眼で見えます。ただ、2016年に発表された夜空の明るさの世界地図では、世界の3人に1人以上が、天の川の見えない明るい空の下に住んでいました。日本では人口の約7割です。見えないのは目のせいではなく、空が明るすぎるからです。
3行でわかる
- 天の川は肉眼で見える。見えるかどうかを決めるのは、町の明かりで空がどれだけ明るくなっているか(光害)。
- Falchiら(2016年)の計算では、日本の人口の70.4%が自宅から天の川が見えない空の下に住む。ただし、そうした場所は国土の7.1%だけ。
- 日本で見やすいのは夏の夜。月明かりのない晴れた夜に、明かりの少ない場所で目を10分以上慣らすと見つけやすい。
01 わかっていること天の川は肉眼で本当に見える?
天の川は肉眼で見えます。見えないのは、町の明かりが空を照らし、天の川の淡い光が空の明るさに埋もれてしまうためです。
天の川は、私たちのいる天の川銀河を内側から見た姿です。銀河の円盤にある無数の星の光が重なり、夜空を横切る淡い光の帯に見えます。形の話は天の川銀河の形の記事にまとめています。
この光はとても淡いので、空が少し明るくなるだけで見えなくなります。町の明かりが空を明るくすることを光害(ひかりがい・こうがい)といいます。Falchiらの世界地図の境目の値から計算すると、町の明かりが足す明るさが自然の夜空の約4倍を超えると、天の川は見えなくなります[1]。
02 どうやってわかったのか天の川が見えない人の割合は、どう調べたの?
人工衛星が宇宙から撮った夜の明かりの量をもとに、地上から見た空の明るさを計算し、3万5000件以上の地上の測定で合わせ込みました。そこに人口の地図を重ねて割合を出しています。
わかっているFalchiら(2016年、Science Advances)[1]
天の川は、世界の3人に1人以上から隠れていました。ヨーロッパでは60%、北アメリカでは約80%の人が、天の川の見えない空の下に住んでいます。世界の人口の約83%が、光害のある空の下で暮らしています。
どうやって: 人工衛星Suomi NPPの夜の明かりのデータから空の明るさを計算し、3万5000件以上の地上の測定で調整しました。計算は衛星が通る深夜1時ごろの空に合わせています。著者らは、夜の早い時間はもっと明るいと書いています。
わかっているCinzanoら(2001年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[2]
最初の世界地図では、世界の人口の約5分の1が、すでに肉眼で天の川を見られなくなっていると見積もりました。アメリカでは3分の2以上、EUでは半分以上です。
どうやって: 1990年代の人工衛星の夜の明かりの画像から計算しました。2016年の地図とは使った衛星や計算のしかたが違うので、数字をそのまま比べて「何倍に増えた」とは言えません。
有力な仮説Kybaら(2023年、Science)[3]
2011年から2022年にかけて、肉眼で見える星の数が減っていました。その減り方は、空が1年に約9.6%ずつ明るくなっていることに当たります。人工衛星で測った地上の明るさの増え方(1年に約2%)よりずっと速い結果です。
どうやって: 世界の市民が星図と見比べて「どこまで暗い星が見えたか」を報告した5万1351件の記録を分析しました[3][4]。衛星より速い理由は、照明の色や光の出る向きが変わったためと著者らは考えていますが、まだ確かめきれていません。
03 数字と例えでいうと日本では何割が見えず、いつ見やすい?
日本の人口の70.4%は、自宅の空で天の川が見えない明るさの場所に住んでいます。一方で、そうした明るい場所は国土の7.1%だけです。少し移動すれば、見える空は残っています。
下の表は、Falchiら(2016年)の国別の表から、日本の行だけを取り出して並べ直したものです[1]。「人工の明るさ」は、自然の夜空の明るさ(1平方メートルあたり174マイクロカンデラ)に、町の明かりが足した分です。
| 空の明るさの段階(人工の明るさ) | 日本の人口のうち | どんな空か |
|---|---|---|
| 自然のまま(自然の空の1%以下) | 0.0% | 光害がほぼない空。日本の国土では0.1% |
| わずかに明るい(1〜8%) | 0.1% | 天文学の観測にも向く暗い空 |
| やや明るい(8〜50%) | 3.2% | 天文学では「汚れた空」と見なされ始める |
| 明るい(50%〜約4倍) | 26.3% | 天の川がまだ見える可能性が残る |
| 天の川が見えない(約4倍〜約17倍) | 40.5% | 自宅からは天の川が見えない |
| とても明るい(約17倍以上) | 29.9% | 明るすぎて、目が暗さに慣れきれない |
人口の割合は、論文の表の「この明るさを超える人の割合」の差から計算しました(合計100%)。「約4倍」「約17倍」は、論文の境目の値(688と3000マイクロカンデラ)を自然の空の明るさ174で割った数です。
Kybaらの「1年に約9.6%」が続くと、空の明るさは約7〜8年で2倍になります(計算)[3]。Kybaは「星が250個見える場所で生まれた子は、18歳になるころには100個ほどしか見えなくなる」と説明しています[4]。
見る季節も大切です。日本でいちばん見やすいのは夏の夜です。夏は天の川銀河の中心の方向(いて座)が夜空に出るため、天の川が濃く明るく見えます。冬の天の川は中心と反対の方向なので淡く見えます。
| 季節 | 天の川が通る星座 | 見え方 |
|---|---|---|
| 夏(8月中旬の夜9時ごろ) | はくちょう座・たて座・いて座[5] | いちばん濃い。いて座のあたりは南の低い空。夏の大三角の中を通る |
| 冬(1月中旬の夜9時ごろ) | ペルセウス座・ぎょしゃ座・ふたご座・いっかくじゅう座[6] | 淡い。冬の大三角の中を通る |
星座の組み合わせは、環境省が毎年行う夜空の観察で使う星図(国立天文台作成、東京の空)によります[5][6]。いて座が南の低い空にあることは、星の位置から計算して確かめました。
04 まだわかっていないこと天の川の見えにくさは、この先どうなる?
夜空が今どれくらいの速さで明るくなっているかは、測り方によって答えが違い、まだはっきりしていません。LED照明に替わることが、空を明るくするのか暗くするのかも、条件しだいです。
- 空が明るくなる本当の速さ人工衛星の測定(1年に約2%)と、人の目で星を見た記録(約9.6%)とで、明るくなる速さが合いません[3]。地球全体を見ている今の衛星は、白いLEDに多い青い光(波長500ナノメートルより短い光)を測れないことが理由の一つかもしれない、と著者は話しています[4]。
- 日本の今の割合この記事の日本の数字は2014年の衛星データから計算された値です[1]。その後に照明が変わった分は入っていないので、今は違う可能性があります。
- 一人ひとりの見え方の違い同じ空でも、年齢や目の慣れ方、その夜の空気の澄み具合で見え方は変わります。地図の境目は平均的な目を想定した目安です[2]。
05関連する記事
06よくある質問
都会でも天の川は見える?
大都市の中心ではほぼ見えません。Falchiら(2016年)の計算では、日本の人口の70.4%が自宅から天の川が見えない明るさの空の下に住んでいます。ただし、そうした明るい場所は国土の7.1%だけなので、町から離れれば見える空は残っています。
天の川がいちばんよく見える季節は?
日本では夏の夜です。夏は天の川銀河の中心があるいて座の方向が夜空に出るため、天の川が濃く明るく見えます。冬の天の川は中心と反対の方向を見るので淡くなります。
天の川を見るには、目を何分慣らせばいい?
環境省の夜空の観察の案内では、暗い場所で10分以上目を慣らすと、かすかな星が見えてきて観察しやすくなるとしています。その間はスマートフォンの画面など明るい光を見ないようにします。
月が明るい夜でも天の川は見える?
満月に近い夜は、月の光で空そのものが明るくなるため、町の明かりと同じように天の川は見えにくくなります。月が出ていない夜や、新月に近い時期を選ぶと見つけやすくなります。
出典
- Falchi, F., Cinzano, P., Duriscoe, D., Kyba, C. C. M., Elvidge, C. D., Baugh, K., Portnov, B. A., Rybnikova, N. A., Furgoni, R. (2016). The new world atlas of artificial night sky brightness. Science Advances 2, e1600377. https://doi.org/10.1126/sciadv.1600377
- Cinzano, P., Falchi, F., Elvidge, C. D. (2001). The first World Atlas of the artificial night sky brightness. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 328, 689–707. https://doi.org/10.1046/j.1365-8711.2001.04882.x
- Kyba, C. C. M., Altıntaş, Y. Ö., Walker, C. E., Newhouse, M. (2023). Citizen scientists report global rapid reductions in the visibility of stars from 2011 to 2022. Science 379, 265–268. https://doi.org/10.1126/science.abq7781
- NSF NOIRLab (2023). Stars Disappear Before Our Eyes, Citizen Scientists Report(Kybaら2023年の論文についての公式発表、noirlab2302). https://noirlab.edu/public/news/noirlab2302/
- 環境省(2024・2025年)夜空の明るさ調査 肉眼観察シート(天の川観察シート。星図は国立天文台)。2024年8月版: https://www.env.go.jp/content/000240701.pdf
- 同 2025年1月版: https://www.env.go.jp/content/000268112.pdf


