アンドロメダ銀河は天の川銀河にぶつかるのか

アンドロメダ銀河は、約250万光年先から天の川銀河に近づいています。2012年、NASAは約40億年後に正面からぶつかると発表しました。ところが2025年、最新の観測で計算し直した研究は、今後100億年で合体する確率は約50%と報告しました。答えが揺れているのは、アンドロメダの横向きの動きが、まだ正確に測れていないからです。
3行でわかる
- アンドロメダ銀河が近づいているのは確か。2012年の研究では、約39億年後に最接近し、約59億年後に合体すると予測された。
- 2025年の研究は、大マゼラン雲とM33(さんかく座銀河)の重力も入れて計算し直し、今後100億年に合体する確率を約50%とした。
- 答えは横向きの動きの測定しだいで、まだ決着していない(査読前の論文には、もっと高い確率を出した計算もある)。
01 わかっていることアンドロメダ銀河は本当に近づいている?
アンドロメダ銀河が近づいていることは確かです。NASAによると、約250万光年先から、時速約40万km(秒速約110km)で天の川銀河に近づいています。
アンドロメダ銀河は、天の川銀河のとなりにある大きな渦巻銀河です。こちらに向かってくる速さは、届く光の色(波長)のずれから測れます。
難しいのは、横向きの動きです。横に動いていれば、正面からはぶつからず、すれ違うかもしれません。ガイア衛星で測った横向きの動きは、秒速約57kmでした。地球から見た角度に直すと、1年に約2億分の1度という、ごくわずかな動きです(計算)[3]。
もしぶつかっても、星どうしがぶつかることはほとんどありません。NASAは、銀河の中の星と星はとても離れているため、衝突しないと説明しています[6]。
02 どうやってわかったのかぶつかるという予測は、どう変わってきたの?
2008年と2012年の研究は、数十億年後に衝突し合体すると予測しました。2025年、ほかの銀河の重力と新しい観測を入れた再計算で、合体の確率は約50%に下がりました。
有力な仮説Cox & Loeb(2008年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[2]
2つの銀河は、数十億年以内、太陽の寿命のうちにぶつかる可能性が高いとしました。合体のあと、太陽は銀河の外側(中心から30キロパーセク、約10万光年より外)へ飛ばされる可能性が高いとしています。
どうやって: 当時わかっていた距離・速さ・重さをもとに、星やガスの動きをコンピューターで計算しました。
有力な仮説van der Marelら(2012年、The Astrophysical Journal)[1][6]
約39億年後に最初に最も近づき、約59億年後に合体すると計算しました。最接近の距離が25キロパーセク以内という「正面衝突」になる確率は41%でした。
どうやって: ハッブル宇宙望遠鏡でアンドロメダの横向きの動きを測り、その誤差の範囲で何通りも計算しました。横向きの動きが小さいので、ほぼまっすぐ向かってくると考えられました。
有力な仮説van der Marelら(2019年、The Astrophysical Journal)[3]
ガイア衛星のデータで横向きの動きを測ると、以前の推定より少し大きく、ハッブルの値と合わせて秒速約57kmでした。アンドロメダは、まっすぐより少しずれた向きで近づいていることになります。
どうやって: アンドロメダ銀河の中の明るい星を選び、遠くのクエーサー(とても明るい銀河の中心)を目印にして、銀河全体の動きを測りました。秒速57kmの誤差は約±30kmと大きめです。
わかっていないSawalaら(2025年、Nature Astronomy)[4][7]
今後100億年の間に、天の川銀河とアンドロメダ銀河が合体しない確率は、ほぼ50%でした。50億年以内にぶつかる確率は約2%で、合体するなら70億〜80億年後が最も起こりやすいとしています。
どうやって: ガイアとハッブルの最新の観測を使い、M33と大マゼラン雲の重力も入れて計算しました。M33は合体を起こりやすくし、大マゼラン雲は起こりにくくすることがわかりました。
わかっていないWuら(2026年、arXivで公開された査読前の論文)[5]
Sawalaらと同じ計算方法で、ガイアの測定のくせを補正した最新の横向きの動きを使うと、合体の確率は90%、合体までの時間は約65億年(中央値)になりました。
どうやって: 横向きの動きを測定の幅の中で変えると、確率は64.7%から100%まで動きました。雑誌に掲載された査読済みの論文かどうかは、確認できていません。
03 数字と例えでいうと研究ごとに、予測の数字はどう違う?
予測の時期と確率は、使った観測と、計算に入れた銀河の数で大きく変わりました。どの研究でも、早くて数十億年先の話です。
| 研究 | 使ったもの | 予測 |
|---|---|---|
| Cox & Loeb(2008年)[2] | 当時の距離・速さ・重さ | 数十億年以内にぶつかる可能性が高い |
| van der Marelら(2012年)[1] | ハッブルで測った横向きの動き | 約39億年後に最接近、約59億年後に合体 |
| Sawalaら(2025年)[4][7] | ガイアとハッブルの値、M33と大マゼラン雲の重力 | 100億年以内に合体する確率は約50%。50億年以内にぶつかる確率は約2% |
| Wuら(2026年、査読前)[5] | 補正したガイアの値 | 合体する確率は約90%、中央値で約65億年後 |
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| アンドロメダ銀河までの距離 | 約250万光年[6] | 今見ている光は、約250万年前に出た光 |
| 近づく速さ | 時速約40万km(秒速約110km)[6] | 東京から大阪(直線で約400km)まで約4秒 |
| 今の速さのまま進んだ場合 | 約68億年(計算) | 実際は重力で速くなるため、2012年の計算では約39億年で最接近 |
04 まだわかっていないこと結局、ぶつかるかどうかはいつわかる?
合体するかどうかは、まだ決まっていません。アンドロメダの横向きの動きと、まわりの銀河の重さがまだ正確に測れていないためで、もっと精密な測定が必要です。
- 横向きの動きの正確な値Wuらは、決着には1年に2マイクロ秒角(約18億分の1度、計算)以下の精度が必要だとしています[5]。今の測定では、確率の答えが大きく揺れます。
- まわりの銀河の重さ大マゼラン雲やM33の重さと動きが変わると、2つの大きな銀河の軌道も変わります[4]。銀河の重さの多くは見えないダークマターで、その量にも幅があります。
- 太陽系はどこへ行くのか2012年の計算では、太陽系は今より合体した銀河の中心から遠くへ移る可能性が高い(85%)とされました[1]。ただ、合体そのものが起きるかが決まっていないため、これも見通しの1つにすぎません。
05関連する記事
06よくある質問
アンドロメダ銀河は天の川銀河にいつぶつかる?
2012年のvan der Marelらの計算では、約39億年後に最接近し、約59億年後に合体するとされました。ただし2025年のSawalaらの再計算では、今後100億年に合体する確率は約50%で、合体するなら70億〜80億年後が最も起こりやすいとされています。
2025年の研究で、衝突しないことになったの?
いいえ。衝突しないと決まったのではなく、今後100億年に合体する確率が約50%で、どちらとも言えないという結果です。2026年に公開された査読前の論文では、補正した観測値を使うと約90%とされ、まだ決着していません。
アンドロメダ銀河とぶつかったら地球はどうなる?
NASAは、銀河の中の星と星はとても離れているため、星どうしは衝突しないと説明しています。2012年の計算では、太陽系は合体後の銀河の中心から、今より遠い場所へ移る可能性が高い(85%)とされました。
合体したらどんな銀河になる?
NASAや2008年・2012年の研究によると、2つの渦巻銀河は合体して、全体が丸みを帯びた楕円銀河になると考えられています。合体が起きるかどうか自体は、2025年以降の研究でまだ決まっていないとされています。
出典
- van der Marel, R. P., Besla, G., Cox, T. J., Sohn, S. T., Anderson, J. (2012). The M31 Velocity Vector. III. Future Milky Way M31–M33 Orbital Evolution, Merging, and Fate of the Sun. The Astrophysical Journal 753, 9. https://doi.org/10.1088/0004-637X/753/1/9
- Cox, T. J., Loeb, A. (2008). The collision between the Milky Way and Andromeda. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 386, 461–474. https://doi.org/10.1111/j.1365-2966.2008.13048.x
- van der Marel, R. P., Fardal, M. A., Sohn, S. T., Patel, E., et al. (2019). First Gaia Dynamics of the Andromeda System: DR2 Proper Motions, Orbits, and Rotation of M31 and M33. The Astrophysical Journal 872, 24. https://doi.org/10.3847/1538-4357/ab001b
- Sawala, T., Delhomelle, J., Deason, A. J., Frenk, C. S., et al. (2025). No certainty of a Milky Way–Andromeda collision. Nature Astronomy 9, 1206–1217. https://doi.org/10.1038/s41550-025-02563-1
- Wu, H., Huang, Y., Zhang, H., Sun, G., Shao, S. (2026). The Fate of the Milky Way–Andromeda System: To Merge or Not? arXiv:2603.22863(査読前の論文). https://arxiv.org/abs/2603.22863
- NASA (2012). NASA's Hubble Shows Milky Way is Destined for Head-on Collision. https://science.nasa.gov/missions/hubble/nasas-hubble-shows-milky-way-is-destined-for-head-on-collision/
- Durham University (2025). New study casts doubt on the likelihood of Milky Way collision with Andromeda. https://dur.ac.uk/news-events/latest-news/2025/06/new-study-casts-doubt-on-the-likelihood-of-milky-way-collision-with-andromeda/


