星と銀河

銀河の渦巻きはなぜ消えないのか、密度波説とまだわからないこと

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2本の大きな腕を持つ子持ち銀河M51
Photo: NASA and European Space Agency / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

渦巻き銀河の腕は、きれいならせんを描いています。ところが、銀河は内側ほど速く1周します。腕が星の列だとすると、ぐるぐる巻きついて、すぐに渦が見えなくなるはずです。それなのに、なぜ宇宙には渦巻き銀河がたくさんあるのでしょうか。

3行でわかる

  1. 腕が同じ星の列なら、内側と外側の回る速さの違いで、およそ1億年以内に巻き込まれてしまいます。これを「巻き込みの問題」と呼びます。
  2. 1964年のリンとシューの密度波説は、腕は星の混雑した場所で、星は腕を通り抜けていくと考えました。
  3. 最近のシミュレーションでは、腕は消えては生まれ直すという見方が有力です。ただ観測では、どちらとも決着していません。

01 わかっていること渦巻き銀河の腕は何でできているの?

腕は、星やガスがまわりより多く集まった場所です。腕が同じ星の列のままだと、銀河の回り方のせいで短い時間に巻き込まれて消えるため、腕は「ずっと同じ星の集まり」ではないと考えられています。

渦巻き銀河は珍しくありません。市民参加の分類プロジェクト「ギャラクシー・ズー」によると、大きな銀河のおよそ3分の2が渦巻き銀河です [2]。私たちの天の川銀河もその1つです。

銀河の円盤は、内側の星ほど短い時間で1周します。運動会のトラックで、内側のレーンの人ほど早く1周するのと似ています。

もし腕が同じ星の列なら、内側が先に回って列はどんどん巻きつきます。計算では、およそ1億年以内に巻き込まれます [2]。これが「巻き込みの問題」です。腕では星も多く生まれており、そのしくみは星はどうやって生まれるのかで書いています。

02 どうやってわかったのか巻き込みの問題はどう説明されてきたの?

大きく2つの説があります。腕は形だけが長く保たれる波だという密度波説と、腕は数億年ほどで消えては新しく生まれるという説です。シミュレーションは後者を支持し、観測の答えは割れています。

わかっているドブスとババの総説(2014年、Publications of the Astronomical Society of Australia)[2]

腕が星の列だとすると、回る速さが毎秒200キロの銀河では、10億年後に腕の傾き(ピッチ角)が約1度まで寝てしまいます。実際の銀河の腕は、これよりずっと開いています。

どうやって: 銀河の回り方から、腕がどれだけ速く巻きつくかを計算しました。渦巻きの腕は1850年にロス卿がM51で初めて描き、それ以来の研究をこの総説がまとめています。

有力な仮説リンとシュー(1964年、The Astrophysical Journal)[1]

腕は星の列ではなく、星やガスが混み合った「密度の波」だと考えました。星は腕に入ると少し詰まり、また抜けていきます。形だけが、ほぼ変わらず長く保たれるという説です。

どうやって: 銀河の円盤を、星やガスが連続して広がるものとして重力の式を解きました。高速道路の渋滞にたとえられます。渋滞の場所は残っても、中の車は入れ替わっています [2]。

有力な仮説セルウッド(2011年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[3]

これまでのシミュレーションでは、どれも腕は短い間に変わっていました。太陽の近くの星の動きの分布も、腕が消えては生まれ直す説とよく合うとまとめています。

どうやって: 長持ちする2本腕が保たれるはずの銀河のモデルを計算し直すと、腕が3本などに変わり、すぐに形が崩れました。一方で、ほかの銀河の観測からは決め手がないとも書いています。

有力な仮説フォイルら(2011年、The Astrophysical Journal)[4]

近くの12個の渦巻き銀河を調べましたが、密度波説が予想する「ガスと若い星の位置のずれ」は、どの銀河でも系統的には見つかりませんでした。単純な密度波は渦巻きの主な説明ではないと結論しています。

どうやって: 腕が長持ちする波なら、ガス、生まれたての星、少し年をとった星が、腕を横切る向きに順番に並ぶはずです。電波・赤外線・紫外線の地図を重ねて、その並びを探しました。

03 数字と例えでいうと腕はどれくらいの時間で巻き込まれるの?

星の列の腕なら、巻き込みにかかる時間はおよそ1億年以内です。宇宙の年齢138億年の100分の1にも届かない、宇宙の時間ではごく短い時間です。

項目値身近な例えでいうと
星の列の腕が巻き込まれる時間およそ1億年以内 [2]宇宙の年齢の約0.7%
10億年後の腕の傾き(星の列の場合)約1度 [2]ほぼ円に重なった、ぎっしり巻いたぜんまい
腕が多く短い銀河の腕の寿命数億年ほど(シミュレーション)[2]人類の歴史よりはずっと長いが、銀河の一生では一瞬
2本の大きな腕を持つ銀河の腕の寿命10億年ほど(シミュレーション)[2]腕が多く短い銀河の腕より長持ち
何らかの2本腕の構造を持つ銀河約60% [2]渦巻き銀河の半分以上

宇宙の年齢との比べはこの記事で計算したものです(1億÷138億)。

04 まだわかっていないこと渦巻きの正体で、まだ決着していないことは?

腕が長く保たれる波なのか、消えては生まれ直すものなのかは、決着していません。銀河の種類によって答えが違う可能性もあります。

05関連する記事

06よくある質問

銀河の渦巻きは、どちら向きに回っているの?

多くの渦巻き銀河では、腕の先が回転の後ろ側にたなびく向きで回っています。腕の先を後ろに引きずるような形です。総説によると、このことは1943年にハッブルが指摘しています。

太陽は天の川銀河の腕の中にいるの?

太陽系は、天の川銀河の円盤の中を回っています。密度波説では、星は腕に入っては抜けていくので、太陽もいつまでも同じ腕の中にいるわけではないと考えられています。

渦巻きのない銀河もあるの?

あります。楕円の形で腕のない楕円銀河は、大きな銀河のおよそ3分の1を占めます。銀河どうしの合体の途中にある銀河も数%あります。

出典

  1. Lin, C. C. & Shu, F. H. (1964). On the Spiral Structure of Disk Galaxies. The Astrophysical Journal 140, 646. https://doi.org/10.1086/147955
  2. Dobbs, C. & Baba, J. (2014). Dawes Review 4: Spiral Structures in Disc Galaxies. Publications of the Astronomical Society of Australia 31, e035. https://doi.org/10.1017/pasa.2014.31
  3. Sellwood, J. A. (2011). The lifetimes of spiral patterns in disc galaxies. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society. https://doi.org/10.1111/j.1365-2966.2010.17545.x
  4. Foyle, K., Rix, H.-W., Dobbs, C. L., Leroy, A. K. & Walter, F. (2011). Observational Evidence Against Long-Lived Spiral Arms in Galaxies. The Astrophysical Journal 735, 101. https://doi.org/10.1088/0004-637X/735/2/101
  5. Martínez-García, E. E. & Puerari, I. (2013, arXiv). Reviewing the observational evidence against long-lived spiral arms in galaxies(学会講演録、査読論文ではない). https://arxiv.org/abs/1310.1973