天の川銀河はどんな形なのか、太陽系はどこにあるのか

私たちは天の川銀河の中にいるので、外から全体を撮った写真は1枚もありません。よく見る全体図は、観測をもとに描いた想像図です。それでも星までの距離と動きを1つずつ測ることで、形がわかってきました。中心に棒のような構造がある渦巻の円盤で、太陽系は中心から約2万6700光年の場所にあります。
3行でわかる
- 天の川銀河は、中心に棒のような星の集まりを持つ「棒渦巻銀河」。平たい円盤に渦巻の腕があり、直径は約10万光年。
- 太陽系は中心から約2万6700光年、オリオン腕という小さな腕の近くにある。秒速約247kmで、約2億年かけて中心のまわりを1周する(計算)。
- 円盤のふちは反ったように曲がっている。渦巻の腕が何本でどうつながっているか、銀河の向こう側の形は、まだはっきりしていない。
01 わかっていること天の川銀河はどんな形をしている?
天の川銀河は、中心に棒のような星の集まりがある、平たい円盤の渦巻銀河です。円盤のまわりを、星がまばらに散らばるハロー(銀河を包む丸い広がり)が囲んでいます。
天の川銀河の性質をまとめた2016年の総説(多くの研究を整理した論文)は、天の川銀河を「棒渦巻銀河」としています[5]。中心には、横から見ると箱やピーナツのような形のふくらみ(バルジ)があります。星の多くは、平たい円盤に集まっています。
円盤には渦巻の腕があります。若い重い星のまわりのガス約200か所の位置を測った研究では、腕は4本の可能性が高いとされました[2]。円盤の大きさは、NASAによると直径約10万光年です[7]。
夜空に見える天の川は、この円盤を内側から見た姿です。円盤の方向を見ると、たくさんの星が重なって、帯のように見えます。
02 どうやってわかったのか中にいるのに、どうやって形がわかったの?
星やガスまでの距離を、地球の公転を使った三角測量で1つずつ測り、立体の地図を作りました。ESAのガイア衛星は、約18億個の星のデータを公開しています。
有力な仮説Reidら(2019年、The Astrophysical Journal)[2]
若い重い星のまわりのガス約200か所の距離と動きから、天の川銀河は4本の腕を持つ渦巻である可能性が高いと示しました。太陽のいる場所で銀河が回る速さは、秒速約236kmでした。
どうやって: 米国の電波望遠鏡VLBAと、日本の国立天文台のVERAで、年周視差(地球が太陽のまわりを回ると、近い天体の見える位置が少しずれる量)を測りました。腕のかけらや枝分かれもあり、4本で決まったわけではありません。
わかっているGRAVITY共同研究(2019年、Astronomy & Astrophysics)[1]
太陽系から銀河の中心のブラックホールまでの距離は、8178パーセク(約2万6700光年)でした。誤差は0.3%ほどです。
どうやって: 中心のブラックホールのまわりを16年で1周する星S2を、27年間追いかけました。軌道の見かけの大きさと、実際の速さを比べて距離を求めました。
有力な仮説Poggioら(2020年、Nature Astronomy)[3]
円盤のふちは、つばの反った帽子のように曲がっています(ワープ)。その反りの向きが、銀河が回る向きにゆっくり回っていることがわかりました。原因は、まわりを回る小さな銀河が近づいたことだと考えられています。
どうやって: ガイア衛星の第2版データから、年老いて大きくふくらんだ星(巨星)約1200万個の動きを調べました。回る速さの測定には大きめの誤差が残っています。
有力な仮説Helmiら(2018年、Nature)[4]
太陽のまわりのハローの星の多くは、昔ぶつかって飲み込まれた別の銀河「ガイア・エンケラドス」のかけらでした。この合体はおよそ100億年前で、円盤の形づくりにも影響したと考えられています。
どうやって: ガイア衛星のデータで、星の動き・成分・年齢を調べました。ぶつかった銀河の重さは、天の川銀河の約4分の1と見積もられています。
03 数字と例えでいうと太陽系はどこにあって、どれくらいの速さで回っている?
太陽系は中心から約2万6700光年、円盤の端までのほぼ半分の場所にあります。秒速約247kmで回り、中心のまわりを1周するのに約2億年かかります(計算)。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 天の川銀河の直径 | 約10万光年[7] | 直径12cmのCDに縮めると考える |
| 中心から太陽系まで | 約2万6700光年[1] | そのCDの中心から約3.2cmの場所 |
| 若い重い星が集まる層の厚さの目安 | 約19パーセク(約60光年)[2] | CDの縮尺で約0.07mm。コピー用紙1枚より薄い |
| 太陽系が回る速さ | 秒速約247km(銀河の回転約236km+太陽自身の動き)[2] | 東京から大阪(直線で約400km)まで約1.6秒 |
| 中心のまわりを1周する時間 | 約2億年(計算) | 太陽が生まれてから約46億年で、およそ23周 |
| ガイア衛星の第3版データの星の数 | 約18億個[6] | 日本の人口の約15倍 |
1周の時間は、Reidらが測った太陽の回る角度の速さ(1キロパーセクあたり秒速30.32km)から計算しました。使う値によって少し変わり、NASAの子ども向けページでは約2億3000万年としています[7]。NASAによると、太陽はオリオン腕という小さな腕の近くにあります[8]。
04 まだわかっていないこと天の川銀河の形で、まだ謎なのはどこ?
渦巻の腕が本当に何本で、どうつながっているかは決まっていません。中心をはさんだ銀河の向こう側は、ガスやちりにさえぎられて、距離を測れた天体が少ないためです。
- 腕は何本で、どうつながっているのか4本の腕が有力ですが、腕のかけらや枝分かれもあります[2]。中心の向こう側は、測れた天体が少なく、腕のつながり方がはっきりしません。
- 円盤の反りは何が原因なのかまわりを回る小さな銀河との接近が有力です[3]。ただ、反りの回る速さの測定には約3割の誤差があり、ほかの原因も否定しきれていません。
- 天の川銀河の重さの大部分はどこにあるのか銀河の回る速さなどから、見える星やガスだけでは足りない重さがあると考えられています。その正体は、ダークマターの謎としてまだ解けていません。
05関連する記事
06よくある質問
太陽系は天の川銀河のどこにある?
太陽系は、天の川銀河の中心から約2万6700光年の場所にあります。直径約10万光年の円盤の、端までのほぼ半分のところです。NASAによると、オリオン腕という小さな腕の近くにあります。
天の川銀河の写真はなぜ外から撮れないの?
私たちは天の川銀河の円盤の中にいて、銀河の外へ出た探査機もないためです。よく見る渦巻の全体図は、星までの距離や動きの観測をもとに描いた想像図です。
太陽系は天の川銀河の中を回っているの?
回っています。Reidら(2019年)の測定値から計算すると、太陽は秒速約247kmで動いています(銀河の回転の速さ約236kmに、太陽自身の動きを足した値)。この速さから計算すると、中心のまわりを1周するのに約2億年かかります。
天の川銀河の腕は何本?
電波望遠鏡で若い星のまわりのガス約200か所を測った2019年の研究では、4本の腕を持つ可能性が高いとされました。ただし腕のかけらや枝分かれもあり、銀河の向こう側は見えにくいため、まだ決着していません。
出典
- GRAVITY Collaboration: Abuter, R., Amorim, A., Bauböck, M., et al. (2019). A geometric distance measurement to the Galactic center black hole with 0.3% uncertainty. Astronomy & Astrophysics 625, L10. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201935656
- Reid, M. J., Menten, K. M., Brunthaler, A., Zheng, X. W., et al. (2019). Trigonometric Parallaxes of High-mass Star-forming Regions: Our View of the Milky Way. The Astrophysical Journal 885, 131. https://doi.org/10.3847/1538-4357/ab4a11
- Poggio, E., Drimmel, R., Andrae, R., Bailer-Jones, C. A. L., et al. (2020). Evidence of a dynamically evolving Galactic warp. Nature Astronomy 4, 590–596. https://doi.org/10.1038/s41550-020-1017-3
- Helmi, A., Babusiaux, C., Koppelman, H. H., Massari, D., et al. (2018). The merger that led to the formation of the Milky Way's inner stellar halo and thick disk. Nature 563, 85–88. https://doi.org/10.1038/s41586-018-0625-x
- Bland-Hawthorn, J., Gerhard, O. (2016). The Galaxy in Context: Structural, Kinematic, and Integrated Properties. Annual Review of Astronomy and Astrophysics 54, 529–596. https://doi.org/10.1146/annurev-astro-081915-023441
- ESA (2022). Gaia Milky Way stars(Gaia 第3版データの概要). https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2022/06/Gaia_Milky_Way_stars
- NASA StarChild (2000). Does the Sun move around the Milky Way? https://starchild.gsfc.nasa.gov/docs/StarChild/questions/question18.html
- NASA Science. The Milky Way Galaxy. https://science.nasa.gov/resource/the-milky-way-galaxy/


