星座と星空

冬の大三角とは何か、冬の星がきれいに見える理由

約9分で読めます

オリオン座の方向の夜空
Photo: kronerda / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

寒い冬の夜、空を見上げると明るい星がぎっしり並んでいて、「冬の星はきれい」と感じる人は多いはずです。その中心にあるのが「冬の大三角」。冬の星がきれいに見えるのは、空気のせいなのか、星のせいなのか。気象庁のデータと星のカタログで確かめてみました。

3行でわかる

  1. 冬の大三角は、オリオン座のベテルギウス、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンを結んだ三角形。正式な星座ではない。
  2. 冬の星がきれいな理由の1つは、明るい星が冬の夜の空に集まっていること。1.5等より明るい1等星のうち東京の空に昇る16個(地平線すれすれのカノープスを含む。除くと15個のうち7個)のうち8個が、1月9日〜2月26日に夜9時の南の空を通る(SEADICEが星のカタログから計算)。
  3. もう1つは天気。東京では1月の水蒸気の量が8月の約6分の1で、雲も少ない。ただし日本海側は冬に雲が多く、どこでも冬がよく見えるわけではない。

01 わかっていること冬の大三角とは、どの星のこと?

冬の大三角は、ベテルギウス・シリウス・プロキオンの3つの明るい星を結んだ三角形です。正式な星座ではなく、見つけやすいように結んだ星の並びです。

シリウスは夜空でいちばん明るい恒星で、明るさは−1.44等です[9]。プロキオンは約11.5光年、シリウスは約8.6光年と、どちらも太陽のご近所の星です[1]。

一方、オリオン座の肩で赤く光るベテルギウスは、約550〜720光年も先にある、年をとってふくらんだ巨大な星です[4][5]。三角形の3つの星は、空では同じくらいの明るさに見えても、距離は60倍以上ちがいます(計算)。

冬の大三角の近くには、すばる(プレアデス星団)も見えます。日本での呼び名の由来はすばるの記事で紹介しています。

02 どうやってわかったのか冬の星がきれいに見えるのはなぜ?

明るい星が冬の夜に見える方向に集まっていることは、星のカタログから数えて確かめられます。太平洋側で冬に水蒸気と雲が少ないことは、気象庁の平年値で確かめられます。

わかっているSEADICEの集計(ヒッパルコス衛星のカタログ[1][9]から計算)

一般に1等星と呼ばれる、明るさ1.5等より明るい21個の星(ケンタウルス座α星は1つと数える)のうち、東京から地平線の上に昇るのは16個(カノープスは地平線すれすれ)。そのうち8個が、1月9日から2月26日の間に夜9時の南の空を通りました。

どうやって: 各星の位置から、東京(東経139.69度・北緯35.69度)で夜9時に南の空を通る日を2026年について計算しました。季節は、夜9時に南の空を通る月で分けました(12〜2月を冬とする)。

わかっている気象庁の平年値(1991〜2020年)[7]

東京の1月は、蒸気圧(空気中の水蒸気の量の目安)が4.5ヘクトパスカルで8月の26.2の約6分の1、雲量(空をおおう雲の割合、0〜10)は4.3で8月の7.4より少なめです。新潟の1月は雲量9.0と、ほぼ曇りです。

どうやって: 気象庁が30年分の観測から求めた月ごとの平年値を、4つの都市で比べました(03の表)。

有力な仮説Schoch(1924年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[6]

古代バビロニアの記録では、明け方にシリウスが初めて見えた日の太陽の沈み具合は平均約7.8度で、エジプトのアレクサンドリアのプトレマイオスが使った11度より浅く、バビロニアでは4日早く見えていました。シュホは、アレクサンドリアでは地平線の近くにいつも霧の層があったためだと考えました。

どうやって: バビロニアの記録に残る星の見え始めの日付から、そのときの太陽の位置を計算して比べました。空気の状態で星の見え方が変わることを示す古い例です。

わかっているBondら(2017年、The Astrophysical Journal)[2]

シリウスは2つの星のペアです。明るいシリウスAは太陽の2.063倍の重さで、白色矮星(燃えつきた星の芯)のシリウスBは太陽の1.018倍の重さ。2つは50.13年で回り合っています。

どうやって: ハッブル宇宙望遠鏡の約20年分の画像と、19世紀からの約2300回の位置の記録を合わせて、軌道を求めました。

わかっているKervellaら(2004年、Astronomy & Astrophysics)[3]

プロキオンAの直径は太陽の2.048倍でした。重さは太陽の1.5倍より1.4倍に近く、星の一生の「安定して燃える時期」の終わりにさしかかっていると結論しました。

どうやって: ヨーロッパ南天天文台のVLTの光干渉計で星の見かけの大きさを測り、ヒッパルコス衛星の距離と合わせて本当の大きさを求めました。

03 数字と例えでいうと冬の空は、ほかの季節とどれくらい違うの?

東京の空に昇る1等星(1.5等より明るい16個、カノープスを含む)は、冬(12〜2月の夜9時の南の空)に8個、夏に4個、春と秋に2個ずつです。東京の1月の水蒸気は8月の約6分の1ですが、新潟の1月はほぼ曇りです。

季節(夜9時に南の空を通る月)東京で見える1等星数
冬(12〜2月)アルデバラン、リゲル、カペラ、ベテルギウス、カノープス、シリウス、プロキオン、ポルックス8
春(3〜5月)レグルス、スピカ2
夏(6〜8月)アークトゥルス、アンタレス、ベガ、アルタイル4
秋(9〜11月)デネブ、フォーマルハウト2

ヒッパルコス衛星のカタログ[1][9]からSEADICEが計算しました。カノープスは東京では南の地平線の上、最大でも約1.6度にしか昇らず、見えることはまれです。カノープスを除くと、冬は15個のうち7個になります。季節の分け方を変えると数は少し変わりますが、冬に明るい星が集まる傾向は同じです。

都市(平年値)1月の蒸気圧8月の蒸気圧1月の雲量1月の日照時間
東京4.5 hPa26.2 hPa4.3192.6時間
大阪5.8 hPa26.1 hPa6.2146.5時間
新潟5.6 hPa25.9 hPa9.056.4時間
札幌3.4 hPa20.2 hPa8.290.4時間

気象庁の平年値[7]です。雲量は0(雲なし)〜10(全天が雲)で表します。どの都市でも冬は水蒸気が少なくなりますが、雲の量は太平洋側と日本海側で大きく違います。

項目値身近な例えでいうと
シリウスまで約8.6光年[1]今見ている光は2017年ごろに出た光(計算)
プロキオンまで約11.5光年[1]今見ている光は2014年ごろに出た光(計算)
ベテルギウスまで約550〜720光年[4][5]シリウスの60倍以上遠い(計算)
シリウスAとBが回る周期50.13年[2]前に同じ位置に来たのは1976年ごろ(計算)

04 まだわかっていないこと冬の大三角で、まだ解けていない謎は?

シリウスの2つの星が昔どう関わり合ったのか、ベテルギウスまでの正確な距離と一生の段階は、まだ決着していません。空気の澄み具合が星の見え方をどれだけ変えるかも、場所や日によって違います。

05関連する記事

06よくある質問

冬の大三角はどの星?

オリオン座のベテルギウス、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンの3つの明るい星を結んだ三角形です。正式な星座ではなく、見つけやすいように結んだ星の並びです。

冬の大三角でいちばん明るい星は?

おおいぬ座のシリウスです。ヒッパルコス衛星のカタログで−1.44等と、夜空の恒星でいちばん明るい星です。距離も約8.6光年と、とても近くにあります。

冬は本当に空気が澄んでいるの?

東京の平年値では、1月の空気中の水蒸気の量(蒸気圧)は4.5ヘクトパスカルで、8月の26.2ヘクトパスカルの約6分の1です。雲の量も少なめです。ただし日本海側の新潟では1月の雲の量が多く、冬に星が見やすいとは限りません。

冬に明るい星が多いのはなぜ?

数えると、明るい星が冬の夜に見える方向に集まっています。東京の空に昇る1等星16個(1.5等より明るい星。地平線すれすれのカノープスを含む)のうち、8個が1月9日から2月26日の間に、夜9時の南の空を通ります。なぜこの方向に集まっているのかは、この記事では出典を確かめられていません。

出典

  1. van Leeuwen, F. (2007). Validation of the new Hipparcos reduction. Astronomy & Astrophysics 474, 653–664(年周視差の値は VizieR I/311 で確認). https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078357
  2. Bond, H. E., Schaefer, G. H., Gilliland, R. L., et al. (2017). The Sirius System and Its Astrophysical Puzzles: Hubble Space Telescope and Ground-based Astrometry. The Astrophysical Journal 840, 70. https://doi.org/10.3847/1538-4357/aa6af8
  3. Kervella, P., Thévenin, F., Morel, P., et al. (2004). The diameter and evolutionary state of Procyon A. Astronomy & Astrophysics 413, 251–256. https://doi.org/10.1051/0004-6361:20031527
  4. Joyce, M., Leung, S.-C., Molnár, L., et al. (2020). Standing on the Shoulders of Giants: New Mass and Distance Estimates for Betelgeuse. The Astrophysical Journal 902, 63. https://doi.org/10.3847/1538-4357/abb8db
  5. Montargès, M., Cannon, E., Lagadec, E., et al. (2021). A dusty veil shading Betelgeuse during its Great Dimming. Nature 594, 365–368. https://doi.org/10.1038/s41586-021-03546-8
  6. Schoch, C. (1924). The "Arcus Visionis" of the Planets in the Babylonian Observations. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 84, 731–735. https://doi.org/10.1093/mnras/84.9.731
  7. 気象庁. 平年値(年・月ごとの値)東京・大阪・新潟・札幌(統計期間1991〜2020年). https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=44&block_no=47662&year=&month=&day=&view=
  8. 国立天文台. 質問10-1)天体を見るのに適した場所はどこ? https://www.nao.ac.jp/faq/a1001.html
  9. ESA (1997). The Hipparcos Catalogue(VizieR I/239、1等星の明るさ). https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/239