夏の大三角とは何か、織姫と彦星は本当に会えるのか

七夕の夜、天の川をはさんで向かい合う織姫と彦星。夏の夜空に大きな三角形をつくる「夏の大三角」の2つの星です。では、2人は本当に1年に1回会えるのでしょうか。衛星が測った星までの距離から、実際に計算してみました。
3行でわかる
- 夏の大三角は、こと座のベガ(織姫)、わし座のアルタイル(彦星)、はくちょう座のデネブを結んだ三角形。正式な星座ではない。
- ベガとアルタイルの間は、国立天文台によると約14.4光年。ヒッパルコス衛星の値から計算すると約14.6光年。光の速さでも片道14年以上かかるので、1年に1回は会えない。
- ベガもアルタイルも、ものすごい速さで自転して形がつぶれていることが、星の表面を写す観測でわかった。デネブまでの距離は、まだ決着していない。
01 わかっていること夏の大三角とは、どの星のこと?
夏の大三角は、ベガ・アルタイル・デネブの3つの明るい星を結んだ三角形です。正式な星座ではなく、見つけやすいように結んだ星の並びで、ベガが織姫、アルタイルが彦星です。
国立天文台によると、七夕の伝説は昔の中国で生まれ、織り姫はこと座の1等星ベガ、彦星はわし座の1等星アルタイルです[5]。暗い場所では、2つの星の間に天の川が横たわる様子が見えます[5]。天の川は、私たちのいる天の川銀河を内側から見た姿です。
3つめのデネブは、はくちょう座のしっぽの星です。夏の大三角は、空では大きく見えますが、3つの星までの距離はまったく違います。ベガとアルタイルは近所の星、デネブはずっと遠くにあるとても明るい星です。
七夕は昔の暦の7月7日の行事でした。国立天文台はこれに近い日を「伝統的七夕」と呼び、2026年は8月19日にあたります[6]。今の暦の7月7日は梅雨のさなかのことが多いのに対し、伝統的七夕のころは夏空が広がることが多いとされています[6]。
02 どうやってわかったのか星までの距離や形は、どうやって測ったの?
距離は、地球が太陽を回ることで星の見かけの位置がわずかにずれる量(年周視差)を、ヒッパルコス衛星で測って求めました。星の形は、離れた望遠鏡をつないで細かく見る方法で写しました。
わかっているvan Leeuwen(2007年、Astronomy & Astrophysics)[1][8]
ヒッパルコス衛星のデータを計算し直した新しいカタログで、年周視差はベガ130.23ミリ秒角、アルタイル194.95ミリ秒角、デネブ2.31ミリ秒角です。距離にするとベガ約25光年、アルタイル約16.7光年、デネブ約1400光年です。
どうやって: ヨーロッパのヒッパルコス衛星が測ったデータを、計算し直しました。デネブは遠いため年周視差が小さく、誤差は±0.32ミリ秒角と大きめです。
わかっているPetersonら(2006年、Nature)[2]
ベガは、こわれる寸前の速さの93%で自転している星でした。地球からは、自転の軸(北極)をほぼ真上から見ていることもわかりました。
どうやって: 離れた望遠鏡の光を合わせて1つの大きな望遠鏡のように使う「光干渉計」で、星の表面の明るさのかたよりを調べました。
わかっているMonnierら(2007年、Science)[3]
アルタイルの表面を、1ミリ秒角より細かい解像度で写しました。速い自転で赤道がふくらみ、大きくゆがんだ形をしていて、赤道あたりが暗く見える様子がはっきり写りました。
どうやって: 離れた望遠鏡をつないだ光干渉計で、近赤外線の画像を組み立てました。
有力な仮説SchillerとPrzybilla(2008年、Astronomy & Astrophysics)[4]
デネブが属する星の集団の距離から、デネブまでを802±66パーセク(約2600光年)とし、明るさを太陽の約20万倍、半径を太陽の約200倍と見積もりました。
どうやって: デネブの光を色ごとに分けて詳しく調べ、表面の温度や重力を求めました。距離は、デネブが同じ場所で生まれた星の集団(はくちょう座OB7)の仲間だとして、その集団の距離を使っています。
03 数字と例えでいうと織姫と彦星は、どれくらい離れているの?
ベガとアルタイルの間は約14.4〜14.6光年です。光の速さでも片道14年以上かかり、時速100キロの車なら約1億6000万年かかる計算なので、1年に1回会うのは無理です。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| ベガまで | 約25.0光年[1] | 今見ている光は2001年ごろに出た光(計算) |
| アルタイルまで | 約16.7光年[1] | 今見ている光は2009年ごろに出た光(計算) |
| デネブまで | 約1400光年[1]、または約2600光年[4] | 約1400光年なら、飛鳥時代のころに出た光(計算) |
| ベガとアルタイルの間 | 約14.4光年[5]、約14.6光年([1]の値から計算) | 光の速さの電話でも、返事が届くまで約29年(計算) |
| 同じ距離を車で | 時速100キロで休まず走る | 約1億6000万年(計算) |
| 空の上での離れぐあい | 約34度([1]の位置から計算) | 真上から地平線までの約3分の1強(計算) |
ベガとアルタイルの間の距離は、2つの星の方向と距離(年周視差から計算)を使って、空間の中の直線距離として求めました。1パーセクは約3.26光年、1光年は約9兆4600億キロとしています。年周視差の誤差を考えても、14.6光年前後から大きくは動きません。国立天文台の14.4光年との差は、使った測定値の違いによるものです。
1年に1回会うには、14光年以上を1年で進む、つまり光の14倍以上の速さが必要です。そこで「星そのものが実際に移動することはない」と国立天文台も説明しています[5]。
04 まだわかっていないこと夏の大三角で、まだわかっていないことは?
デネブまでの本当の距離は、測り方によって約1400光年と約2600光年に分かれ、決着していません。アルタイルの表面のようすも、今の標準的な計算では説明しきれていません。
- デネブまでの距離ヒッパルコス衛星の年周視差からは約1400光年ですが、誤差が大きく[1]、星の集団の距離を使う方法では約2600光年です[4]。距離が約1.9倍ちがうと、明るさの見積もりは約3.4倍ちがってきます(計算)。
- アルタイルの表面の明るさのむらMonnierらの画像は、ふつうの「同じ速さで回る星」の計算では説明できず、場所によって自転の速さが違う、または重力と明るさの関係を考え直す、といった説明が必要だとしています[3]。どちらが正しいかは決まっていません。
- ベガの年齢Petersonらは、ベガの表面の場所によって温度が大きく違うため、成分の見積もりが不確かになり、ベガの年齢にも不確かさが加わると述べています[2]。
なお、地球の自転の軸はゆっくり向きを変えていて、遠い将来はベガが北極星の役目をするとされています[7]。くわしくは北極星は変わるのかで紹介しています。
05関連する記事
06よくある質問
夏の大三角はどの星?
こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブの3つの明るい星を結んだ三角形です。正式な星座ではなく、見つけやすいように結んだ星の並びです。七夕の織姫はベガ、彦星はアルタイルです。
織姫と彦星の距離はどれくらい?
国立天文台は約14.4光年としています。ヒッパルコス衛星の2007年の測定値から計算すると約14.6光年で、どちらでも光の速さで14年以上かかる距離です。
織姫と彦星は1年に1回会えるの?
星そのものは会えません。光の速さで進んでも片道14年以上かかり、時速100キロの車なら約1億6000万年かかる計算です。七夕は、昔の中国で生まれた伝説がもとになった行事です。
2026年の伝統的七夕はいつ?
国立天文台によると、2026年の伝統的七夕は8月19日です。昔の暦の7月7日に近い日で、今の暦の7月7日より梅雨明け後の晴れた夜になりやすい時期です。
出典
- van Leeuwen, F. (2007). Validation of the new Hipparcos reduction. Astronomy & Astrophysics 474, 653–664(年周視差の値は VizieR I/311 で確認). https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078357
- Peterson, D. M., Hummel, C. A., Pauls, T. A., et al. (2006). Vega is a rapidly rotating star. Nature 440, 896–899. https://doi.org/10.1038/nature04661
- Monnier, J. D., Zhao, M., Pedretti, E., et al. (2007). Imaging the Surface of Altair. Science 317, 342–345. https://doi.org/10.1126/science.1143205
- Schiller, F., Przybilla, N. (2008). Quantitative spectroscopy of Deneb. Astronomy & Astrophysics 479, 849–858. https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078590
- 国立天文台. 質問3-9)七夕について教えて. https://www.nao.ac.jp/faq/a0309.html
- 国立天文台. スター・ウィークと伝統的七夕(2026年8月). https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2026/08-topics01.html
- 国立天文台. 質問10-7)歳差ってなに? https://www.nao.ac.jp/faq/a1007.html
- CDS VizieR. The Hipparcos-2 Catalogue (I/311). https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/311


