宇宙人からの信号は届いているのか、SETIとWow!シグナル

1977年8月15日の夜、アメリカの電波望遠鏡が、ふだんの雑音の約30倍の強さの電波を約72秒とらえました。記録を見た研究者が余白に「Wow!」と書いたことから、Wow!シグナルと呼ばれています。先に答えを言うと、宇宙人が出したと確かめられた信号は、2026年10月時点で1つもありません。Wow!シグナルも二度と受からず、正体はわかっていません。
3行でわかる
- 宇宙人の文明が出したと確かめられた信号は、2026年10月時点でまだない。これまでの候補は、地球の電波だったか、二度と受からなかったかのどちらか。
- Wow!シグナル(1977年)は約72秒だけ受かり、その後は同じ空を何度探しても見つかっていない。正体は決まっていない。
- 2019年にプロキシマ・ケンタウリの方向から受かり、2021年に論文で報告された候補「BLC1」は、調べ直すと地球の機械が出した電波だった。
01 わかっていること宇宙人からの信号は見つかっている?
見つかっていません。宇宙人の文明が出したと確かめられた電波は、2026年10月時点で1つもありません。強い候補はいくつかありましたが、どれも決め手になりませんでした。
電波で宇宙人の文明を探す研究をSETI(地球外の知的生命の探査)といいます。探しているのは、ごく狭い周波数(電波の音の高さのようなもの)に集中した電波です。こうした細い電波は、人工の送信機の特徴の1つと考えられています[5]。
難しいのは、地球にも同じような電波があふれていることです。近くの星692個を調べた観測では、11件の候補が見つかりましたが、すべて地球の人間が出した電波でした[4]。宇宙人がいるかどうか全体の考え方は、宇宙人はいるのか、フェルミのパラドックスにまとめています。
02 どうやってわかったのかWow!シグナルや、ほかの候補はどう調べられたの?
候補が出たら、同じ方向をもう一度観測し、地球の電波でないかを確かめます。Wow!シグナルは二度と受からず、BLC1は地球の電波とわかり、AIで選んだ8件も再び受かりませんでした。
わかっているEhman(オハイオ州立大学 ビッグイヤー電波望遠鏡)[1]
1977年8月15日、1420.4556メガヘルツで強い電波が受かりました。いちばん強いところで雑音の約30倍でした。記録の「6EQUJ5」という文字は、この強さを12秒ごとに表したものです。
どうやって: ビッグイヤーは動かない望遠鏡で、地球の自転で空を見ていきます。天体が見える範囲を通りすぎるのに約72秒かかり、電波はその間だけ受かりました。同じ空の帯をその後約60日探しましたが、二度と受かりませんでした。
わかっているGray・Marvel(2001年)、Gray・Ellingsen(2002年、The Astrophysical Journal)[2][3]
Wow!シグナルが来た方向を、もっと感度の高い望遠鏡で探し直しました。似た電波は見つかりませんでした。
どうやって: アメリカの電波望遠鏡群VLAと、オーストラリアのタスマニア大学の26メートル電波望遠鏡で観測しました。後の研究は、くり返し出ている電波がないかを探しています。
わかっているSmithら・Sheikhら(2021年、Nature Astronomy)[5][6]
2019年4月29日、プロキシマ・ケンタウリの方向を観測したデータに、約982メガヘルツの細い電波「BLC1」がありました。調べ直すと、地球の機械の電波どうしが混ざってできたものでした。
どうやって: オーストラリアのパークス電波望遠鏡のデータです。周波数が時計の部品の電波と関係する場所に、BLC1に似た形の電波が何十個も見つかり、地球の電波と結論されました。
わかっているMaら(2023年、Nature Astronomy)[7][8]
820個の星を観測した480時間分のデータをAIで調べ直し、約300万個の電波の形から、8件の「気になる信号」を選びました。もう一度観測すると、どれも受かりませんでした。
どうやって: アメリカのグリーンバンク望遠鏡のデータです。研究チームは、候補はどれも確かめが必要だとしています。
わかっていないMéndezら(2024年・2025年、査読前の論文)[9][10]
Wow!シグナルは、星と星の間にある冷たい水素の雲が、強い光を浴びて急に明るくなったものかもしれない、という説です。2025年の論文では、古い観測記録を調べ直し、周波数を1420.726メガヘルツと見直しています。
どうやって: 2020年にプエルトリコのアレシボ電波望遠鏡で、Wow!シグナルに似た細い電波(約100分の1の弱さ)を出す水素の雲を観測しました。どちらの論文も、2026年10月20日時点で雑誌の審査を通った記録はありません。
03 数字と例えでいうとどれくらいの範囲を探したの?
これまでの探索は、近くの数百個の星と、限られた周波数が中心です。Wow!シグナルも、72秒という短い時間に、1回だけ受かった電波でした。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| Wow!シグナルの強さ | 雑音の約30倍[1] | ふだんの雑音を1とすると、30の高さの山が1回だけ立った |
| Wow!シグナルが受かった時間 | 約72秒[1] | カップ麺ができるまでの半分もない(3分=180秒として計算) |
| 周波数 | 1420.4556メガヘルツ[1] | 波の長さは約21センチ。定規くらい(光の速さ÷周波数で計算) |
| 近くの星の電波の探索 | 692個、候補11件はすべて地球の電波[4] | 強い送信機を持つ星は、約160光年以内で1000個に1個より少ない |
| AIで調べ直した探索 | 約300万 → 8件 → 再観測で0件[8] | 候補は37万個に1個まで絞られ、それも再び受からなかった(計算) |
160光年先の星に「返事」を送ると、届くまでに160年、返事が戻るまでにさらに160年かかります(電波は光の速さで進むとして計算)。いちばん近い星でも片道4年あまりかかり、くわしくはプロキシマbまで何年かかるのかで計算しています。
04 まだわかっていないこと宇宙人の信号について、まだ謎なのは何?
Wow!シグナルの正体は、まだ決まっていません。また、これまで探したのは宇宙のごく一部で、「信号がない」とまでは言えません。
- Wow!シグナルは何だったのか見つけたEhman自身も、正体は答えの出ていない問題だとしています[1]。水素の雲が明るくなったという説は査読前で、ほかの研究者の確かめを待っている段階です[9][10]。
- なぜ二度と受からないのか一度だけの電波は、地球の電波のまぎれ込みか、たまたま一度だけ光った自然の現象か、決めにくいからです。くり返しを探す観測でも、見つかっていません[3]。
- 探していない場所や周波数に信号はあるのかこれまでの探索は、特定の周波数と強さの送信機に限られています[4]。ほかの方法で信号を出す文明や、信号を出さない文明がいるかは、わかっていません。
文明の数を見積もる式はドレイク方程式、大気から生命の手がかりを探す方法は生命のしるし(バイオシグネチャー)の記事で扱っています。生命が住めそうな惑星がいくつあるかは、地球に似た惑星は見つかっているのかで数えています。
05関連する記事
06よくある質問
宇宙人からの信号は届いている?
確かめられた信号は、2026年10月時点でまだありません。これまでの候補は、調べ直すと地球の人工の電波だったか、同じ場所を探しても二度と受からなかったかのどちらかです。近くの星692個を調べた観測でも、候補の11件はすべて地球の電波でした。
Wow!シグナルとは何?
1977年8月15日、アメリカ・オハイオ州立大学の電波望遠鏡ビッグイヤーが約72秒とらえた強い電波です。ふだんの雑音の約30倍の強さで、記録を見た研究者が余白に「Wow!」と書きました。その後、同じ空を何度探しても受かっていません。
Wow!シグナルの正体はわかった?
わかっていません。受かったのが1回だけで、確かめ直せないためです。2024年と2025年には、星と星の間にある冷たい水素の雲が急に明るくなったという説が論文で出されましたが、2026年10月時点では査読前(専門家の審査を通る前)の論文です。
BLC1とは何だった?
2019年にプロキシマ・ケンタウリの方向を観測したときに受かった、約982メガヘルツの細い電波です。宇宙人の信号に近い特徴があり注目されましたが、2021年の分析で、地球の機械の電波どうしが混ざってできたものと結論されました。
出典
- Ehman, J. R. The Big Ear Wow! Signal(発見30周年の報告). Big Ear Radio Observatory and North American AstroPhysical Observatory. https://bigear.org/Wow30th/wow30th.htm
- Gray, R. H., Marvel, K. B. (2001). A VLA Search for the Ohio State "Wow". The Astrophysical Journal 546, 1171–1177. https://doi.org/10.1086/318272
- Gray, R. H., Ellingsen, S. (2002). A Search for Periodic Emissions at the Wow Locale. The Astrophysical Journal 578, 967–971. https://doi.org/10.1086/342646
- Enriquez, J. E. et al. (2017). The Breakthrough Listen Search for Intelligent Life: 1.1–1.9 GHz Observations of 692 Nearby Stars. The Astrophysical Journal 849, 104. https://doi.org/10.3847/1538-4357/aa8d1b
- Smith, S. et al. (2021). A radio technosignature search towards Proxima Centauri resulting in a signal of interest. Nature Astronomy 5, 1148–1152. https://doi.org/10.1038/s41550-021-01479-w
- Sheikh, S. Z. et al. (2021). Analysis of the Breakthrough Listen signal of interest blc1 with a technosignature verification framework. Nature Astronomy 5, 1153–1162. https://doi.org/10.1038/s41550-021-01508-8
- Ma, P. X. et al. (2023). A deep-learning search for technosignatures from 820 nearby stars. Nature Astronomy. https://doi.org/10.1038/s41550-022-01872-z
- Breakthrough Initiatives (2023). Artificial Intelligence Joins Search for Extraterrestrial Intelligence(2023年1月30日). https://breakthroughinitiatives.org/news/41
- Méndez, A., Ortiz Ceballos, K., Zuluaga, J. I. (2024). Arecibo Wow! I: An Astrophysical Explanation for the Wow! Signal. arXiv:2408.08513(査読前の論文。2026年10月20日確認). https://arxiv.org/abs/2408.08513
- Méndez, A. et al. (2025). Arecibo Wow! II: Revised Properties of the Wow! Signal from Archival Ohio SETI Data. arXiv:2508.10657(査読前の論文。2026年10月20日確認). https://arxiv.org/abs/2508.10657


