ブラックホール

ブラックホールに吸い込まれると人はどうなるのか、スパゲッティ化と時間の遅れ

約5分で読めます

巨大ブラックホールに近づいた星の想像図
Photo: ESO, ESA/Hubble, M. Kornmesser / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

ブラックホールは、何でも吸い込む掃除機のように思われがちです。でも、太陽が同じ重さのブラックホールになっても、地球は吸い込まれません。近づきすぎた人に起きるのは、体が縦に引き伸ばされる「スパゲッティ化」と、外から見ると時間が止まって見えることです。

3行でわかる

  1. 離れた場所でのブラックホールの重力は、同じ重さの星と変わらない。太陽がブラックホールになっても地球の軌道はそのまま。
  2. 近づくと、頭と足を引っぱる力の差で体が麺のように伸びる。小さいブラックホールほど、境目の手前で体が壊れる。
  3. 強い重力の中では時間がゆっくり進む。これは星の観測で確かめられている。境目の内側で何が起きるかは、まだわかっていない。

01 わかっていることブラックホールは何でも吸い込むの?

ブラックホールは何でも吸い込むわけではありません。離れた場所での重力は、同じ重さのふつうの星とまったく同じです。吸い込まれるのは、すぐ近くまで寄ったものだけです。

NASAの解説は、太陽が同じ重さのブラックホールに入れかわっても、変わるのは地球の温度だけだと書いています[1]。地球が感じる重力は今と同じなので、地球は同じ軌道を回り続けます。光と熱が届かなくなるので、暗く寒くなります。

太陽をブラックホールにすると、事象の地平面(光も出られなくなる境目)の半径は約3kmです。地球との距離は約1億5000万kmあるので、境目ははるか遠くの小さな点にすぎません。見えないブラックホールをどう見つけたかはブラックホールはどうやって見つけたのか、見えない天体を見つけた方法で書いています。

02 どうやってわかったのか近づくと体はどうなる?

近づくと、体の近い側ほど強く引かれるため、縦に引き伸ばされます。これをスパゲッティ化といいます。強い重力の中で時間が遅れることは、星の光の観測で確かめられています。

わかっているNASA ゴダード宇宙飛行センター(2024年、スーパーコンピューターによる計算)[2][3]

太陽の430万倍の重さのブラックホールに落ちる計算では、境目を越えてから12.8秒でスパゲッティ化が起きます。境目のすぐ外を回って6時間で戻ってくる旅をした人は、外にいた仲間より36分若くなります。

どうやって: 一般相対性理論(アインシュタインの重力の理論)の式で、カメラが落ちていく様子を計算しました。小さいブラックホールほど境目が小さく、引き伸ばす力が強いため、境目に着く前に物が引き裂かれるとNASAは説明しています。

わかっているRees(1988年、Nature)[4] / ESO(2020年)[5]

銀河の中心のブラックホールに近づいた星は、引き伸ばす力で引き裂かれ、一部が吸い込まれて明るく光ると予測されました。2020年には、約2億1500万光年先で太陽ほどの星が引き裂かれ、重さの約半分を失った様子が観測されました。

どうやって: Reesは計算で、引き裂かれた星が数年以内の明るい光を出すと示しました。ESOは複数の望遠鏡で、この光が明るくなって消えるまで約6か月追いました。

わかっているGRAVITY Collaboration(2018年、Astronomy & Astrophysics)[6]

天の川銀河の中心のブラックホールに約120天文単位(地球と太陽の距離の120倍)まで近づいた星S2の光が、重力で引き伸ばされていました。値は一般相対性理論の予測と合いました。

どうやって: 光が重力で引き伸ばされる(重力赤方偏移)のは、強い重力の中で時間がゆっくり進むためです。2018年5月に星が最も近づいたときの光を測りました。

03 数字と例えでいうとどれくらい近づくと危ない?

危ないかどうかは、ブラックホールの重さで大きく変わります。太陽の10倍の重さなら境目のずっと手前で体が壊れ、太陽の430万倍なら境目を越えても、しばらくは体が無事です。

項目値身近な例えでいうと
太陽をブラックホールにしたときの境目半径約3km(計算)直径約6km。歩いて1時間半ほどで横切れる大きさ
地球をブラックホールにしたときの境目直径約1.8cm(計算)ビー玉くらい
太陽の10倍のブラックホール境目の半径約30km(計算)頭と足(2m)を引っぱる力の差が地球の重力の10倍になるのは、中心から約3800km(計算)。境目のはるか手前で体が壊れる
太陽の430万倍のブラックホール境目の半径約1250万km(NASAの紹介の値。重さから計算すると約1270万km)[3]境目での頭と足の力の差は、地球の重力の約1万分の1(計算)。ここでは体はまだ伸びない
境目を越えてからスパゲッティ化まで12.8秒[2]430万倍のブラックホールでの計算
境目のすぐ外を6時間かけて回って戻ったときの時間の差36分[2]戻った人のほうが36分若い

外から落ちる人を見ていると、その人の動きはだんだん遅くなり、境目の手前で止まったように見えます[2]。落ちる本人にとっては、時間はふつうに進み、境目をそのまま越えます。

04 まだわかっていないこと境目の内側では何が起きる?

事象の地平面の内側で何が起きるかは、わかっていません。内側からは光も情報も出てこないため、観測で確かめる方法がないからです。

05関連する記事

06よくある質問

太陽がブラックホールになったら地球は吸い込まれる?

吸い込まれません。重さが同じなら、離れた場所で感じる重力は変わらないため、地球は今と同じ軌道を回り続けます。NASAは、変わるのは地球の温度だけだと説明しています。光と熱が届かなくなるので、地球は暗く寒くなります。

スパゲッティ化とは何?

ブラックホールに近い側と遠い側で引っぱる力の強さが大きく違うため、物が縦に引き伸ばされ、横からは押しつぶされる現象です。NASAは麺のように伸びる様子からこう呼ぶと説明しています。星がこうして引き裂かれる現象は実際に観測されています。

ブラックホールの近くでは本当に時間が遅れるの?

遅れます。天の川銀河の中心のブラックホールの近くを通った星S2の光が、重力で引き伸ばされていることが2018年に観測されました。これは強い重力の中で時間がゆっくり進むことを示す現象です。

ブラックホールの中に入ったらどうなる?

まだわかっていません。事象の地平面(光も出られなくなる境目)の内側からは情報が外に出てこないため、観測できません。中心では今の物理の法則が使えなくなると考えられています。

出典

  1. NASA Goddard Space Flight Center. The Anatomy of Black Holes(Imagine the Universe!). https://imagine.gsfc.nasa.gov/educators/blackholes/imagine/page26.html
  2. NASA (2024). New NASA Black Hole Visualization Takes Viewers Beyond the Brink. https://science.nasa.gov/supermassive-black-holes/new-nasa-black-hole-visualization-takes-viewers-beyond-the-brink/
  3. NASA Scientific Visualization Studio (2024). NASA Black Hole Visualization Takes Viewers Beyond the Brink. https://svs.gsfc.nasa.gov/14576
  4. Rees, M. J. (1988). Tidal disruption of stars by black holes of 106–108 solar masses in nearby galaxies. Nature 333, 523–528. https://doi.org/10.1038/333523a0
  5. ESO (2020). Death by Spaghettification: ESO Telescopes Record Last Moments of Star Devoured by a Black Hole. https://www.eso.org/public/news/eso2018/
  6. GRAVITY Collaboration (2018). Detection of the gravitational redshift in the orbit of the star S2 near the Galactic centre massive black hole. Astronomy & Astrophysics 615, L15. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833718
  7. The Nobel Prize (2020). Press release: The Nobel Prize in Physics 2020. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2020/press-release/