系外惑星と生命

火星に生命はいたのか、探査車が見つけた手がかり

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パーサヴィアランスが撮影した火星の地表と小型ヘリコプター「インジェニュイティ」
Photo: semeion.photo Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/Simeon Schmauß / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

火星に生き物はいたのか。2025年9月、NASAは探査車パーサヴィアランスが調べた岩を「生命の痕跡の候補(potential biosignature)」と発表しました。ただし「候補」は、生命の証拠という意味ではありません。2026年10月時点で、火星で生命は見つかっていません。これまでの手がかりと、なぜ決着しないのかを分けて整理します。

3行でわかる

  1. 昔の火星には湖があり、生き物がすめる条件がそろっていた時期がある。ただし、生き物そのものは見つかっていない。
  2. 2025年に報告された岩の斑点は「生命の痕跡の候補」。生き物がいなくてもできる鉱物でもあり、地球に持ち帰って調べないと決められないとされている。
  3. 大気のメタンは、探査車では測れたのに周回機では見つからないという食い違いがあり、どこから来るのかはわかっていない。

01 わかっていること火星で生命は見つかったの?

見つかっていません。昔の火星に生き物がすめる環境があったことはわかっています。生命の手がかりの「候補」はいくつか報告されていますが、どれも生命なしで説明できる余地が残っています。

火星に昔、川や湖があったことは、探査機の調べで確かめられています(火星に水はあったのか)。水があったなら、生き物もいたのか。これが火星探査のいちばん大きな問いです。

探査車キュリオシティは、約30億年前の泥が固まった岩から有機物(炭素をふくむ物質。生き物の体の材料にもなる)を見つけました[5]。ただ、有機物は生き物がいなくてもできます。NASAも、生命そのものの証拠ではないと説明しています[9]。

NASAは「生命の痕跡の候補」を、生き物が作ったかもしれないが、結論にはもっとデータや研究が必要なもの、と定めています[2]。これまでの手がかりは、次のように分けられます。

段階わかっていること
生き物がすめる環境があった昔の湖や水の跡。探査機の観測で確かめられている。
生命の手がかりの候補岩の中の有機物と鉱物、大気のメタン、バイキングの実験の反応。どれも生命以外の説明が残る。
生命そのもの化石や生きた微生物は、まだ見つかっていない。

02 どうやってわかったのか探査機はどんな手がかりを見つけたの?

1976年のバイキングの実験、岩の中の有機物、大気のメタン、2025年の岩の斑点が主な手がかりです。どれも生命の証拠とまでは言えず、研究者の間で別の説明が出されています。

わかっていないLevin・Straat(1976年、Science)[3]

着陸機バイキングが、火星の土に栄養の液をかけると、放射性の気体が出ました。土を160℃で熱しておくと気体は出ず、生き物の反応に似ていました。

どうやって: 2か所の着陸地点で、よく似た結果になりました。それでも論文自身が「生命があるかどうかの結論は、まだ出せない」と書いています。同じ着陸機の別の装置では、土から有機物がほとんど見つかりませんでした[4]。

わかっていないNavarro-Gonzálezら(2010年、Journal of Geophysical Research)[4]

2008年に探査機フェニックスが、火星の土に過塩素酸塩(強い酸化剤)を見つけました。これを混ぜた土を熱すると有機物はほとんど壊れ、バイキングで見つかったのと同じ塩素をふくむ物質ができました。

どうやって: チリのアタカマ砂漠の、火星に似た土で実験しました。これをもとに計算し直すと、バイキングの土にも有機物が100万分の1.5〜6.5ほどあったかもしれない、としています。

わかっているEigenbrodeら(2018年、Science)[5]

キュリオシティが、約30億年前の泥岩から、さまざまな有機物を取り出しました。古い岩の中で、有機物が長く残ることがわかりました。

どうやって: 岩の粉を装置の中で熱し、出てきた気体を調べました。有機物は生き物がいなくてもできるため、生命の証拠ではありません[9]。

有力な仮説Websterら(2015年・2018年、Science)[6][7]

キュリオシティは、ゲール・クレーターの空気に平均0.41ppbのメタンを測りました。量は季節で0.24〜0.65ppbとくり返し変わり、一時的に約7ppbまで増えたこともありました。

どうやって: 探査車の中に空気を入れ、レーザーで測りました。地球のメタンの多くは生き物が作りますが、火星では岩と水の反応でもできるとされています[9]。

有力な仮説ACS・NOMAD 観測チーム(2019年、Nature)[8]

ヨーロッパとロシアの周回機トレース・ガス・オービターが、2018年4〜8月に火星の大気を調べると、メタンは見つかりませんでした。あったとしても約0.05ppb以下で、それまでの報告の10〜100分の1です。

どうやって: 2つの装置で、北と南の広い範囲を測りました。探査車の値と合わせるには、メタンを地面の近くですばやく消す、まだ知られていないしくみが必要だとしています。

わかっていないHurowitzら(2025年、Nature)[1]

パーサヴィアランスが、ブライト・エンジェル層の泥岩で、有機物をふくむ岩に小さな粒と「ヒョウ柄」のような斑点を見つけました。斑点には、リン酸鉄(ビビアナイトらしい)と硫化鉄(グレイガイトらしい)が多くふくまれていました。

どうやって: 探査車の装置で岩の表面の成分と模様を調べました。有機物がかかわる化学反応で鉱物ができたらしいとしつつ、起源を決めるには、取った試料を地球の装置で調べる必要があると結論しています。NASAは、これらの鉱物は生き物なしでもできると説明しています[2]。

03 数字と例えでいうと火星のメタンや有機物は、どれくらいの量なの?

火星の空気のメタンは、多いときでも10億分の数個ほどです。探査車と周回機で、10倍以上ちがう値が出ていて、ここが議論の中心になっています。

項目値身近な例えでいうと
探査車が測ったメタン(平均)0.41ppb[7]空気の粒25億個のうち1個ほど(計算)
メタンが一時的に増えたとき約7ppb[6][7]平均の約17倍(計算)
周回機で見つからなかった上限約0.05ppb[8]探査車の平均の約8分の1(計算)
有機物が見つかった岩の年代約30億年前[5]地球の年齢(約46億年)の3分の2ほど
バイキングの土にあったかもしれない有機物100万分の1.5〜6.5(第1着陸地点)[4]1トンの土に1.5〜6.5グラム(計算)
バイキングの反応が消えた温度160℃[3]50℃で3時間熱しても、反応は大きく弱まった
2025年の岩の斑点の大きさ1ミリより小さい粒と、ミリ単位の斑点[1]ゴマ粒くらいか、それより小さい

ppbは「10億分の1」のことです。0.41ppbは、10億÷0.41で約24億個に1個なので、およそ25億個に1個としました。地球の年齢との比は、30÷46で約0.65です。

04 まだわかっていないこと火星の生命について、まだ謎なのは?

岩の斑点が生き物によるものか、メタンがどこから来てどこへ消えるのか、今の地下に生き物がいるのかは、わかっていません。決めるには、試料を地球で調べる必要があるとされています。

05関連する記事

06よくある質問

火星で生命は見つかったの?

見つかっていません。2025年にNASAは、探査車パーサヴィアランスが調べた岩を「生命の痕跡の候補」と発表しましたが、生き物がいなくてもできる鉱物でもあり、地球に持ち帰って調べないと決められないとされています。

パーサヴィアランスが見つけた「生命の痕跡の候補」とは?

ブライト・エンジェル層の泥岩にあった、有機物をふくむ岩の「ヒョウ柄」のような斑点です。リン酸鉄と硫化鉄の鉱物が多く、有機物がかかわる反応でできたらしいと報告されました。NASAは、生命なしでもできる鉱物だと説明しています。

火星のメタンは生き物が出しているの?

わかっていません。探査車キュリオシティは平均0.41ppbのメタンを測りましたが、周回機では約0.05ppb以下で見つかりませんでした。地球のメタンの多くは生き物が作りますが、火星では岩と水の反応でもできるとされています。

バイキングは火星で生命を見つけたの?

見つけたとは言えません。1976年の実験では生き物の反応に似た結果が出ましたが、論文自身が結論は出せないと書いています。後に見つかった過塩素酸塩などの化学反応で説明する研究も出ています。

出典

  1. Hurowitz, J. A., et al. (2025). Redox-driven mineral and organic associations in Jezero Crater, Mars. Nature 645, 332–340. https://doi.org/10.1038/s41586-025-09413-0
  2. NASA (2025). NASA Says Mars Rover Discovered Potential Biosignature Last Year. https://www.nasa.gov/news-release/nasa-says-mars-rover-discovered-potential-biosignature-last-year/
  3. Levin, G. V., Straat, P. A. (1976). Viking Labeled Release Biology Experiment: Interim Results. Science 194, 1322–1329. https://doi.org/10.1126/science.194.4271.1322
  4. Navarro-González, R., Vargas, E., de la Rosa, J., Raga, A. C., McKay, C. P. (2010). Reanalysis of the Viking results suggests perchlorate and organics at midlatitudes on Mars. Journal of Geophysical Research: Planets 115, E12010. https://doi.org/10.1029/2010JE003599
  5. Eigenbrode, J. L., et al. (2018). Organic matter preserved in 3-billion-year-old mudstones at Gale crater, Mars. Science 360, 1096–1101. https://doi.org/10.1126/science.aas9185
  6. Webster, C. R., et al. (2015). Mars methane detection and variability at Gale crater. Science 347, 415–417. https://doi.org/10.1126/science.1261713
  7. Webster, C. R., et al. (2018). Background levels of methane in Mars’ atmosphere show strong seasonal variations. Science 360, 1093–1096. https://doi.org/10.1126/science.aaq0131
  8. Korablev, O., Vandaele, A. C., et al. (The ACS and NOMAD Science Teams) (2019). No detection of methane on Mars from early ExoMars Trace Gas Orbiter observations. Nature 568, 517–520. https://doi.org/10.1038/s41586-019-1096-4
  9. NASA (2018). NASA Finds Ancient Organic Material, Mysterious Methane on Mars. https://www.nasa.gov/news-release/nasa-finds-ancient-organic-material-mysterious-methane-on-mars/