エウロパやエンケラドスに生命はいるのか、氷の下の海

結論から言うと、木星の衛星エウロパにも、土星の衛星エンケラドスにも、生命はまだ見つかっていません。わかっているのは、どちらも氷の下に液体の水の海を持つらしいこと。そしてエンケラドスの海には、生命に欠かせない材料がいくつもそろっていることです。
3行でわかる
- エウロパとエンケラドスは、氷の下に海があると考えられている。生命は、どちらでもまだ見つかっていない。
- エンケラドスの南極から噴き出す水から、水素やリン酸塩など、生命に必要な材料が見つかった。
- NASAのエウロパ・クリッパーが2030年4月に木星に着き、エウロパに生命が住める場所があるかを調べる。
01 わかっていることエウロパやエンケラドスに生命はいるの?
生命は、エウロパでもエンケラドスでも、まだ見つかっていません。わかっているのは、氷の下に海があり、生命に必要な材料の一部がそろっていることです。「住める環境がある」ことと「本当に住んでいる」ことは別です。
エウロパは木星の衛星です。NASAによると、氷の下の塩水の海には、地球の海を全部合わせた量の2倍以上の水があるかもしれません[8]。NASAの探査機エウロパ・クリッパーは、氷の下に生命を支えられる場所があるかを調べるために送られました[8]。
エンケラドスは土星の衛星で、直径は約500kmしかありません[9]。2005年、探査機カッシーニが、南極の割れ目から氷の粒とガスが噴き出しているのを見つけました[9]。この噴き出しを調べると、氷の下の海の中身がわかります。
NASAは、エンケラドスには生命に必要な化学的な材料のほとんどがあるとしています[9]。ただし、材料があることは、生命がいることの証拠ではありません。火星に昔あった水の話は火星の水の記事で書いています。
02 どうやってわかったのか氷の下の海は、どうやって見つけたの?
海は直接は見えません。エウロパは磁場の変化から、エンケラドスは重力と自転のゆれ、噴き出す水の成分から、氷の下に海があると考えられるようになりました。
有力な仮説Kivelsonら(2000年、Science)[1]
2000年1月3日、探査機ガリレオがエウロパのそばを通り、エウロパのまわりの磁場が木星の磁場に合わせて変わる様子を測りました。氷の下に電気を通す層、たとえば塩水の海があると考えると、測定がうまく説明できました。
どうやって: ガリレオの磁力計で測りました。電気を通す層がある証拠で、海の水を直接見たわけではありません。
有力な仮説Levinら(2025年、Nature Astronomy)[2]
エウロパの氷の厚さは、純粋な氷と仮定すると約29km(誤差±10km)と見積もられました。これまでの見積もりは3kmから30km超まで幅がありました。氷の割れ目は深さ数百メートルまでで、表面と海の間で栄養を運ぶ通り道にはなりにくいとしています。
どうやって: 探査機ジュノーが2022年にエウロパの近くを通ったとき、氷の中から出る電波(マイクロ波)を測りました。氷に塩が混じっていると、厚さは約5km薄くなります。
有力な仮説Trumboら(2023年、Science)、Villanuevaら(2023年、Science)[3][4]
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で、エウロパの表面の二酸化炭素が「タラ地域」という新しい地形に集まっているとわかりました。炭素はエウロパの内側から来たと考えられ、海でできた可能性があります。一方、水などが噴き出している様子は見つかりませんでした。
どうやって: 表面から届く光を色に分けて(分光)、成分と場所を調べました。二酸化炭素が表面でできた可能性も、完全には否定されていません。
わかっているIessら(2014年、Science)、Thomasら(2016年、Icarus)[5][6]
エンケラドスの南極の地下30〜40kmに海があることが、重力の測定からわかりました。さらに自転のゆれが0.120度と大きく、海は南極だけでなく、衛星全体に広がっていると考えられます。
どうやって: カッシーニの電波の周波数のずれから重力を測りました。7年分の画像で地表の目印を追い、自転のゆれを測りました。氷の殻が中身と切り離されていると、ゆれが大きくなります。
有力な仮説Waiteら(2017年、Science)[7]
エンケラドスの噴き出しから、水素が見つかりました。最もありそうな出どころは、海の底で岩と熱い水が反応する熱水活動です。今もこの反応が続いている可能性が高いとしています。
どうやって: カッシーニが噴き出しの中を通り抜け、質量分析計(物質を重さで分けて調べる装置)で成分を測りました。
わかっているPostbergら(2023年、Nature)[10]
エンケラドスから飛んできた氷の粒から、リン酸塩(リンを含む塩)が見つかりました。リンは、生命に欠かせない元素の中で最も少ないものです。地球の外の海でリンが見つかったのは初めてでした。
どうやって: カッシーニのちり分析器で、エンケラドスから飛び出した塩を多く含む氷の粒の成分を測りました。海のリンの濃さが地球の海の少なくとも100倍という値は、実験と計算を合わせた推定です。
03 数字と例えでいうと2つの衛星の海は、どれくらいの規模なの?
エウロパの海の水は地球の海の2倍以上かもしれず、上の氷は約29kmと見積もられています。エンケラドスは直径約500kmの小さな衛星ですが、南極では氷が1〜5kmしかない場所があります。
| 項目 | 値 | 例えでいうと |
|---|---|---|
| エウロパの海の水 | 地球の海全部の2倍以上(かもしれない)[8] | 地球の海をもう1つ足しても足りない |
| エウロパの氷の厚さ | 約29km(±10km)[2] | 富士山(3776m)を約8個積んだ高さ |
| エンケラドスの直径 | 約500km[9] | フルマラソン(42.195km)約12本分 |
| エンケラドス南極の氷の厚さ | 1〜5kmほどの場所がある[9] | エウロパの氷の約6分の1〜約30分の1 |
| エンケラドスの海のリンの濃さ | 地球の海の少なくとも100倍(推定)[10] | — |
| エウロパ・クリッパー(NASA) | 2024年10月14日打ち上げ、2030年4月に木星着、エウロパに49回接近[8] | 打ち上げから到着まで約5年半 |
| JUICE(ESA) | 2023年4月14日打ち上げ、2031年7月に木星着[11] | 木星の衛星に合わせて35回接近 |
富士山とフルマラソンの例えは、それぞれの値を割って計算しました(29km÷3.776km≒7.7、500km÷42.195km≒11.8)。
04 まだわかっていないこと氷の下の海について、まだ謎なのは何?
いちばん大きな謎は、生命が本当にいるかどうかです。エウロパの氷の正確な厚さ、海と表面の間で物質がどう行き来するか、エンケラドスの海が凍らない仕組みも、まだわかっていません。
- 生命はいるのかどちらの衛星でも、生命そのものや、生命がいた跡は見つかっていません。材料や環境がそろっていても、生命が生まれたかどうかは別の問題です。
- エウロパの氷はどれくらい厚いのかジュノーの見積もりは約29kmですが、±10kmの幅があります[2]。この値は純粋な氷で、熱を伝えるだけの層と仮定した計算です。塩の量などによって値は変わります。
- 海と表面は、物質をやりとりしているのか表面の二酸化炭素は内側から来たと考えられます[3][4]。一方で、氷の割れ目は浅く、栄養の通り道にはなりにくいという結果もあります[2]。どうやって運ばれているのかは決着していません。
- エンケラドスの海は、なぜ凍らないのか多くの熱の計算では、衛星全体に海を保つのは難しいとされます[6]。どこから熱が来ているのかは、まだはっきりしていません。
05関連する記事
エンケラドスが回る土星の環については土星の環の記事で書いています。
06よくある質問
エウロパに生命はいる?
まだ見つかっていません。エウロパには氷の下に塩水の海があると考えられ、生命が住める環境を探すのに有望な場所とされています。NASAのエウロパ・クリッパーが2030年4月に木星に着き、生命を支えられる場所があるかを調べます。
エンケラドスで生命の証拠は見つかった?
生命の証拠は見つかっていません。見つかったのは、噴き出す水の中の水素やリン酸塩など、生命に必要な材料です。水素は、海の底で岩と熱い水が反応していることを示すと考えられています。
氷の下に海があるとなぜわかるの?
エウロパは、探査機ガリレオが測った磁場の変化から、電気を通す塩水の層があると考えられています。エンケラドスは、重力の測定、自転のゆれの大きさ、南極から噴き出す塩を含む氷の粒から、海があるとわかりました。
エウロパの氷はどれくらい厚い?
探査機ジュノーの観測では、純粋な氷と仮定して約29km(誤差±10km)と見積もられました。これまでの見積もりは3kmから30km超まで幅があり、正確な厚さはまだわかっていません。
出典
- Kivelson, M. G., Khurana, K. K., Russell, C. T., et al. (2000). Galileo Magnetometer Measurements: A Stronger Case for a Subsurface Ocean at Europa. Science 289, 1340–1343. https://doi.org/10.1126/science.289.5483.1340
- Levin, S. M., et al. (2025). Europa's ice thickness and subsurface structure characterized by the Juno microwave radiometer. Nature Astronomy 10, 84–91. https://doi.org/10.1038/s41550-025-02718-0
- Trumbo, S. K., Brown, M. E. (2023). The distribution of CO2 on Europa indicates an internal source of carbon. Science 381, 1308–1311. https://doi.org/10.1126/science.adg4155
- Villanueva, G. L., Hammel, H. B., Milam, S. N., et al. (2023). Endogenous CO2 ice mixture on the surface of Europa and no detection of plume activity. Science 381, 1305–1308. https://doi.org/10.1126/science.adg4270
- Iess, L., Stevenson, D. J., Parisi, M., et al. (2014). The Gravity Field and Interior Structure of Enceladus. Science 344, 78–80. https://doi.org/10.1126/science.1250551
- Thomas, P. C., Tajeddine, R., Tiscareno, M. S., et al. (2016). Enceladus's measured physical libration requires a global subsurface ocean. Icarus 264, 37–47. https://doi.org/10.1016/j.icarus.2015.08.037
- Waite, J. H., Glein, C. R., Perryman, R. S., et al. (2017). Cassini finds molecular hydrogen in the Enceladus plume: Evidence for hydrothermal processes. Science 356, 155–159. https://doi.org/10.1126/science.aai8703
- NASA Science. Europa Clipper. https://science.nasa.gov/mission/europa-clipper/
- NASA Science. Enceladus. https://science.nasa.gov/saturn/moons/enceladus/
- Postberg, F., Sekine, Y., Klenner, F., et al. (2023). Detection of phosphates originating from Enceladus's ocean. Nature 618, 489–493. https://doi.org/10.1038/s41586-023-05987-9
- ESA(欧州宇宙機関). Juice. https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Juice


