最初の星はいつ生まれたのか

宇宙で最初の星は、ビッグバンから約1億〜1億8000万年後に生まれたと計算されています。ただ、その星そのものは、まだ1つも見つかっていません。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は約3億年後の明るい銀河をとらえ、最初の星の時代に近づいています。
3行でわかる
- 計算では、最初の星は赤方偏移20〜30(ビッグバンから約1億〜1億8000万年後)に、水素とヘリウムだけのガスから生まれた。2004年のまとめでは太陽の100倍以上の重い星が多かったと考えられていたが、その後、ガスの円盤が分かれて複数の星が一緒にできたとする計算もあり、重さは決着していない。
- JWSTは、ビッグバンから約3億年後には、すでに明るい銀河があったことを確かめた。
- 最初の星そのものは、まだ見つかっていない。どれくらいの重さだったのかも、決着していない。
01 わかっていること最初の星はいつ、どんな星だった?
計算では、ビッグバンから約1億〜1億8000万年後に、水素とヘリウムだけのガスから生まれました。2004年のまとめでは今の星よりずっと重いものが多かったと考えられていましたが、複数の星が一緒にできたとする計算もあり、直接は見つかっていません。
生まれたばかりの宇宙のガスは、ほとんどが水素とヘリウムでした。炭素や酸素、鉄などは、のちに星の中や超新星爆発でつくられます。だから最初の星は、重い元素をほとんど含まない星です。
ブロムとラーソンのまとめ(2004年)では、最初の星は、赤方偏移20〜30のころ、太陽の約100万倍の重さの暗黒物質のかたまり(ミニハロー)の中で生まれたとされます[1]。ガスは水素分子が熱を逃がすことで冷え、縮んで星になりました。
今の星は、ちりを含む冷たい雲の中で生まれます(星の生まれ方)。ちりも重い元素もない最初の宇宙では、ガスが冷えにくく、大きなかたまりのまま縮むため、重い星ができやすかったと計算されています[1]。ただし2011年のClarkらの計算では、生まれかけの星のまわりのガスの円盤がいくつにも分かれ、最初の星は近い距離で回り合う複数の星の一員だったことが多いとされました[9]。1つの星がどこまで重くなったかは、まだ決着していません。
02 どうやってわかったのかどうやって調べているの?
最初の星はまだ見えないので、計算と、できるだけ遠く(昔)の銀河の観測、そして宇宙の水素が出す電波で迫っています。電波の報告は、別の観測と食い違っています。
有力な仮説ブロムとラーソン(2004年、Annual Review of Astronomy and Astrophysics)[1]
計算機シミュレーションをまとめると、最初の星は赤方偏移20〜30のころに生まれ、太陽の100倍以上の重い星が多かったとされました。ただし、正確な重さと重さの分布は、まだ決められないとしています。
どうやって: 暗黒物質を含む宇宙のモデルで、重い元素のないガスが縮んで分かれる様子を計算した研究をまとめた総説です。
わかっているカルニアーニら(2024年、Nature)[2]
赤方偏移14.32と13.90の2つの銀河を確かめました。ビッグバンから約3億年後には、明るい銀河がすでにあり、JWST以前の予想より多かったとしています。遠いほうの銀河は半径約260パーセク(約850光年)の広がりを持っていました。
どうやって: JWSTの分光器NIRSpecで、光を波長ごとに分けて距離を測りました。光は主に星から出ていて、ブラックホールだけでは説明できないとしています。
有力な仮説橋本ら(2018年、Nature)[3]
赤方偏移9.1096の銀河MACS1149-JD1では、星の多くがビッグバンから約2億5000万年後(赤方偏移約15)に生まれていたと見積もられました。
どうやって: ALMA望遠鏡で酸素の光をとらえて距離を正確に決め、銀河の色から星の年齢を逆算しました。1つの銀河からの推定です。
わかっていないボウマンら・EDGES(2018年、Nature)[4]
空全体の電波で、78メガヘルツを中心とするくぼみ(深さ0.5ケルビン)を見つけたと報告しました。最初の星の光が水素に影響した跡なら、ビッグバンから1億8000万年後には星があったことになります。ただ、くぼみの深さは予想の最大値の2倍を超えていました。
どうやって: 電波のアンテナで、空全体から届く電波の強さを周波数ごとに測りました。最初の星の光を受けた水素は、波長21センチの電波を吸収すると予想されています。
わかっていないヒルズら(2018年、Nature)/シンら・SARAS 3(2022年、Nature Astronomy)[5][6]
ヒルズらは、EDGESのデータは別の形の信号でも説明でき、解釈が一つに決まらないと指摘しました。シンらはインドの研究チームの別の電波望遠鏡で同じ周波数帯を測り、EDGESの信号を95.3%の確からしさで否定しました。
どうやって: SARAS 3は、EDGESとは別の装置で、55〜85メガヘルツの空の電波を測りました。
有力な仮説ケラーら(2014年、Nature)[7]
星SMSS J031300.36−670839.3からは鉄が見つからず、鉄の割合は太陽の10のマイナス7.1乗(1000万分の1より少ない)以下でした。この星の材料は、太陽の約60倍の星の、弱めの超新星1回分から来たと推定されています。
どうやって: 星の光を分けて元素の量を測り、超新星のモデルと比べました。最初の星がみな非常に重かったなら鉄がもっと多いはずで、そうでない例として注目されています。
03 数字と例えでいうと最初の星の時代は、どれくらい昔なの?
宇宙の歴史138億年を1年に縮めると、最初の星が生まれたのは1月3〜5日ごろです。JWSTで確かめられた最も遠い銀河のひとつは、1月8日ごろの姿にあたります。
| できごと | 値 | 138億年を1年に縮めると |
|---|---|---|
| 最初の星が生まれる(計算) | 赤方偏移20〜30[1]。ビッグバンから約1億〜1億8000万年後(プランクの値で計算) | 1月3〜5日ごろ |
| EDGESが報告した星の時期(議論中) | ビッグバンから約1億8000万年後[4] | 1月5日ごろ |
| MACS1149-JD1の星が生まれた時期 | ビッグバンから約2億5000万年後[3] | 1月7日ごろ |
| JWSTで確かめた銀河(赤方偏移14.32) | ビッグバンから約3億年後[2] | 1月8日ごろ |
| 宇宙のガスが星や銀河の光で電離された中ごろ | 赤方偏移7.7(誤差0.7)[8]。ビッグバンから約6億7000万年後(計算) | 1月18日ごろ |
| 最初の星が生まれた場所の重さ | 太陽の約100万倍(暗黒物質を含む)[1] | 今の天の川銀河よりずっと小さなかたまり |
| 鉄の最も少ない星の一つ | 太陽の10のマイナス7.1乗以下[7] | 太陽にふくまれる鉄の割合の、1000万分の1より少ない |
04 まだわかっていないこと最初の星について、まだ謎なのは何?
最初の星そのものはまだ見つかっておらず、本当の重さもわかっていません。2018年に報告された「最初の星の電波の跡」も、別の観測と食い違い、決着していません。
- 最初の星そのものが見つかっていない重い元素をまったく含まない星は、遠い宇宙でも近くの宇宙でも、確かに見つかったものはありません。今わかっているのは、計算と、それより後の時代の銀河や古い星からの手がかりです。
- どれくらい重かったのか2004年のまとめでは太陽の100倍以上が多いとされましたが、ガスが星に降り積もる過程の理解が足りず、正確な重さは決まっていないとしています[1]。鉄の少ない星の分析からは、太陽の数十倍の星の弱めの超新星が多かったという見方もあります[7]。
- EDGESの電波は本物かEDGESの信号は、別の電波望遠鏡SARAS 3では見つからず、否定する結果が出ています[6]。一方で、最初の星の時代の電波そのものはまだとらえられておらず、ほかの観測による確認が待たれています。
- なぜ明るい銀河が早くできたのかビッグバンから約3億年後の明るい銀河は、JWST以前の予想より多く見つかりました。銀河のでき方のモデルは、こうした銀河の存在を説明する必要があるとされています[2](ウェッブ望遠鏡の発見)。
05関連する記事
06よくある質問
最初の星はいつ生まれたの?
計算では、赤方偏移20〜30のころ、ビッグバンから約1億〜1億8000万年後に生まれたとされています。最初の星そのものはまだ見つかっておらず、観測で確かめられているのは、ビッグバンから約3億年後に明るい銀河があったことまでです。
最初の星は今も残っているの?
見つかっていません。2004年のまとめのように太陽の100倍以上の重い星なら、燃え尽きて残っていないと考えられます。重い元素をまったく含まない星はまだ確かめられておらず、最も鉄の少ない星でも、前の世代の超新星から元素を受け継いでいるとみられています。
いちばん遠い銀河はどれくらい昔の姿?
JWSTが光を分ける観測で確かめた銀河のひとつ、JADES-GS-z14-0は赤方偏移14.32で、ビッグバンから約3億年後の姿です。
最初の星の電波が見つかったというのは本当?
2018年にEDGESという実験が、最初の星の影響とみられる電波のくぼみを報告しました。しかし2022年、別の電波望遠鏡SARAS 3が同じ信号を95.3%の確からしさで否定し、決着していません。
出典
- Bromm, V., Larson, R. B. (2004). The First Stars. Annual Review of Astronomy and Astrophysics 42, 79–118. https://doi.org/10.1146/annurev.astro.42.053102.134034
- Carniani, S., Hainline, K., D’Eugenio, F., et al. (2024). Spectroscopic confirmation of two luminous galaxies at a redshift of 14. Nature 633, 318–322. https://doi.org/10.1038/s41586-024-07860-9
- Hashimoto, T., Laporte, N., Mawatari, K., et al. (2018). The onset of star formation 250 million years after the Big Bang. Nature 557, 392–395. https://doi.org/10.1038/s41586-018-0117-z
- Bowman, J. D., Rogers, A. E. E., Monsalve, R. A., Mozdzen, T. J., Mahesh, N. (2018). An absorption profile centred at 78 megahertz in the sky-averaged spectrum. Nature 555, 67–70. https://doi.org/10.1038/nature25792
- Hills, R., Kulkarni, G., Meerburg, P. D., Puchwein, E. (2018). Concerns about modelling of the EDGES data. Nature 564, E32–E34. https://doi.org/10.1038/s41586-018-0796-5
- Singh, S., Nambissan T., J., Subrahmanyan, R., et al. (2022). On the detection of a cosmic dawn signal in the radio background. Nature Astronomy 6, 607–617. https://doi.org/10.1038/s41550-022-01610-5
- Keller, S. C., Bessell, M. S., Frebel, A., et al. (2014). A single low-energy, iron-poor supernova as the source of metals in the star SMSS J031300.36−670839.3. Nature 506, 463–466. https://doi.org/10.1038/nature12990
- Planck Collaboration (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics 641, A6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833910
- Clark, P. C., Glover, S. C. O., Smith, R. J., Greif, T. H., Klessen, R. S., Bromm, V. (2011). The Formation and Fragmentation of Disks Around Primordial Protostars. Science 331, 1040–1042. https://doi.org/10.1126/science.1198027


