星と銀河

最初のパルサーはなぜ「LGM(緑の小人)」と呼ばれたのか、ベル・バーネルの発見

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かに星雲(中心にパルサーがある超新星の跡)
Photo: Pablo Carlos Budassi / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

1967年、イギリスの大学院生ジョセリン・ベル(現在はベル・バーネル)が、電波望遠鏡の記録紙に小さな乱れを見つけました。それは約1.337秒ごとに、時計のように正確に届く電波でした。あまりに規則正しいので、チームは冗談で「LGM(リトル・グリーン・メン、緑の小人)」と呼びました。正体は宇宙人ではなく、速く回る中性子星(パルサー)でした。

3行でわかる

  1. 最初のパルサーは1967年、ケンブリッジ大学の電波望遠鏡の記録から、大学院生のベルが見つけた。論文は1968年2月にNatureに載った。
  2. 「LGM(緑の小人)」は、正体不明の信号に付けた冗談のメモ。宇宙人からの合図だと本気で発表したわけではない。
  3. かに星雲の中に1秒に約30回も点滅するパルサーが見つかり、白色矮星では速すぎるため、回る中性子星だとわかった。

01 わかっていること最初のパルサーはどうやって見つかった?

最初のパルサーは、1967年にケンブリッジ大学の電波望遠鏡の記録紙から、大学院生のジョセリン・ベルが見つけました。約1.337秒ごとに規則正しく届く電波でした。

望遠鏡は、遠くの明るい天体(クエーサー)を調べるために作られたものでした。広さはテニスコート57面分あり、ベル自身も建設に加わりました[7]。周波数81.5メガヘルツの電波を受け、1967年7月から使われ始めました[1]。

記録紙は毎日長く伸び、ベルが目で読んでいました。最初に信号が記録されたのは1967年8月6日です。信号は記録全体の約1000万分の1しかない、小さな乱れでした[7]。

11月28日、記録を細かく取り直すと、乱れは約1.3秒ごとの点滅の列だとわかりました[7]。1分間に約45回の、驚くほど正確なリズムです(計算)。今の名前はPSR B1919+21で、周期は1.337302秒と測られています[8]。

02 どうやってわかったのか「緑の小人」の正体はどうやってわかった?

同じような電波が空の別の場所からも見つかり、さらに1秒に約30回点滅するものが見つかりました。白色矮星ではそんなに速く回れないため、中性子星だと考えられるようになりました。

わかっているケンブリッジ大学の記録(ベル・バーネル本人の回想)[7]

正体のわからない雑音には、記録紙に「?」か、冗談で「LGM(リトル・グリーン・メン)」と書いていました。天体の位置を毎回言うより短く呼べたからです。

どうやって: 大学が公開している、ベル・バーネル本人への取材記事にもとづきます。チームが「宇宙人の合図だ」と発表した記録はありません。

わかっているHewish, Bell ら(1968年、Nature)[1]

規則正しく点滅する電波の源を報告しました。正体の候補として、白色矮星か中性子星の「振動」を挙げていました。

どうやって: 電波の届く時刻を細かく測りました。著者は5人で、指導教員のヒューイッシュが筆頭、ベルが2番目です。

わかっているPilkington, Hewish, Bell ら(1968年4月、Nature)[2]

同じように点滅する電波の源が、空の別の場所からも見つかりました。

どうやって: 同じ望遠鏡の記録を探しました。別々の場所に同じような源がいくつもあるなら、自然の天体と考えるほうが筋が通ります。

わかっているPacini(1967年、Nature)、Gold(1968年、Nature)[3][4]

パチーニは発見の発表より前に、強い磁石を持って速く回る中性子星が、まわりに大きなエネルギーを出しうると書きました。ゴールドは、パルサーは回る中性子星で、回転はゆっくり遅くなるはずだと予測しました。

どうやって: どちらも理論の論文です。点滅の正確さを「振動」でなく「回転」で説明しました。

わかっているComella ら(1969年、Nature)、Richards と Comella(1969年、Nature)[5][6]

かに星雲(超新星爆発の跡)の中に、周期約0.033秒、1秒に約30回点滅するパルサーが見つかりました。その周期が少しずつ長くなっていることも測られました。

どうやって: アメリカの電波望遠鏡で点滅の時刻を測り続けました。超新星の跡にあること、回転が遅くなっていくことが、ゴールドの予測と合いました。

03 数字と例えでいうとパルサーはどれくらい速く回っているの?

最初のパルサーは約1.3秒に1回、かに星雲のパルサーは1秒に約30回、知られている中で最も速いものは1秒に約716回まわります。見つかったパルサーは2026年10月時点のカタログで4503個です。

パルサー周期(1回まわる時間)身近な例えでいうと
最初のパルサー PSR B1919+211.337302秒[8]1分間に約45回。ゆっくりした心拍くらいのリズム(計算)
ほ座パルサー(B0833-45)0.089328秒[8]1秒に約11回(計算)
かに星雲のパルサー(B0531+21)0.033392秒[8]1秒に約30回(計算)
最も速いもの(J1748-2446ad)0.001396秒[8]1秒に約716回(計算)

白色矮星(太陽ほどの重さが地球ほどに縮んだ星)が1秒に30回も回ると、遠心力でちぎれてしまいます。密度を1立方センチあたり1トンとして計算すると、ちぎれずに回れるのは1回約12秒が限界です(計算)。中性子星はその数億倍も詰まっているので、1000分の1秒台でも回れます。中性子星そのものの重さや大きさは中性子星とは何かにまとめています。

04 まだわかっていないことパルサーで、まだ謎なのは何?

パルサーが電波を出す細かな仕組みは、50年以上たった今も完全にはわかっていません。中性子星の中心がどうなっているかも、まだ答えが出ていません。

05関連する記事

06よくある質問

最初のパルサーを見つけたのは誰?

1967年、ケンブリッジ大学の大学院生ジョセリン・ベル(現在はベル・バーネル)が、電波望遠鏡の記録紙から見つけました。1968年2月のNatureの論文は5人の連名で、指導教員のアントニー・ヒューイッシュが筆頭、ベルが2番目の著者です。

なぜ「LGM(緑の小人)」と呼ばれたの?

正体のわからない信号に、チームが冗談で付けた呼び名です。ベル・バーネル本人の回想では、雑音には記録紙に「?」か冗談で「LGM」と書いており、天体の位置を毎回言うより短く呼べたからだといいます。宇宙人からの信号だと発表したことはありません。

ベル・バーネルはなぜノーベル賞をもらえなかったの?

1974年のノーベル物理学賞は、パルサー発見での決定的な役割に対してヒューイッシュに、電波で天体を細かく見る技術に対してライルに贈られました。ベルが入らなかった理由を選考側が説明した記録は、この記事では確かめられていません。本人は、同僚たちのほうが自分より憤っていたと振り返っています。

パルサーと中性子星は同じもの?

パルサーは、速く回りながら灯台のように電波などの光の束を出す中性子星です。光の束が地球の方向をかすめるときだけ点滅して見えます。中性子星でも、光の束が地球に向かないものはパルサーとして見えません。

パルサーは今いくつ見つかっている?

オーストラリアの研究機関がまとめるATNFパルサーカタログ(バージョン2.9.0)には、4503個が載っています。数は観測が進むたびに増えています。

出典

  1. Hewish, A., Bell, S. J., Pilkington, J. D. H., Scott, P. F., Collins, R. A. (1968). Observation of a Rapidly Pulsating Radio Source. Nature 217, 709–713. https://doi.org/10.1038/217709a0
  2. Pilkington, J. D. H., Hewish, A., Bell, S. J., Cole, T. W. (1968). Observations of some further Pulsed Radio Sources. Nature 218, 126–129. https://doi.org/10.1038/218126a0
  3. Pacini, F. (1967). Energy Emission from a Neutron Star. Nature 216, 567–568. https://doi.org/10.1038/216567a0
  4. Gold, T. (1968). Rotating Neutron Stars as the Origin of the Pulsating Radio Sources. Nature 218, 731–732. https://doi.org/10.1038/218731a0
  5. Comella, J. M., Craft, H. D., Lovelace, R. V. E., Sutton, J. M., Tyler, G. L. (1969). Crab Nebula Pulsar NP 0532. Nature 221, 453–454. https://doi.org/10.1038/221453a0
  6. Richards, D. W., Comella, J. M. (1969). The Period of Pulsar NP 0532. Nature 222, 551–552. https://doi.org/10.1038/222551a0
  7. University of Cambridge. Journeys of discovery: pulsars(ジョセリン・ベル・バーネルへの取材). https://www.cam.ac.uk/stories/journeysofdiscovery-pulsars
  8. Manchester, R. N., Hobbs, G. B., Teoh, A., Hobbs, M. (2005). The Australia Telescope National Facility Pulsar Catalogue. The Astronomical Journal 129, 1993–2006. 数値はカタログ v2.9.0(2026年10月24日閲覧) https://www.atnf.csiro.au/research/pulsar/psrcat/
  9. Nobel Prize Outreach. The Nobel Prize in Physics 1974. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/1974/summary/