ブラックホール

重力波とは何か、2015年に初めて捕まえたブラックホール同士の合体

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アメリカ・ハンフォードにあるLIGOの観測所
Photo: LIGO Laboratory / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

2015年9月14日、アメリカにある2台の装置が、約13億光年かなたから届いた小さな「ゆれ」をとらえました。長さ4kmの腕が、陽子の直径の1000分の1ほど伸び縮みしたのです。これが、人類が初めて直接とらえた重力波でした。

3行でわかる

  1. 重力波は、空間そのものの伸び縮みが波になって伝わるもの。重い天体が激しく動くと生まれる。
  2. 初めてとらえた重力波は、太陽の36倍と29倍のブラックホールが合体して62倍になったときのもの。
  3. 2020年3月までに90件の候補が見つかり、2017年には中性子星の合体を重力波と光の両方でとらえた。

01 わかっていること重力波とは何?

重力波は、空間そのものの伸び縮みが、波のように広がっていくものです。ブラックホールのような重い天体が、ぐるぐる回ってぶつかるときに強く出ます。アインシュタインの一般相対性理論が予想していました。

池に石を落とすと、水面に波紋が広がります。重力波は、水面のかわりに空間が波打つようなものです。波が通ると、物の長さがほんの少しだけ伸びたり縮んだりします。

とらえたのはLIGO(ライゴ)という装置です。長さ4kmの腕を2本、L字に組み、腕の長さのわずかな差をレーザー光で測ります。アメリカのハンフォードとリビングストンに1台ずつあります。

02 どうやってわかったのか2015年の重力波は何がぶつかって生まれた?

太陽の36倍と29倍の重さのブラックホールが、回り合いながら近づいて合体したときの重力波でした。合体後は太陽の62倍のブラックホールになり、差の太陽3個分の重さがエネルギーとして重力波で出ていきました。

わかっているLIGO・Virgo共同研究チーム(2016、Physical Review Letters)[1][4]

2台のLIGOが同じ信号を約7ミリ秒ちがいでとらえた。信号は35Hzから250Hzへ高くなり、2つのブラックホールが近づいて合体し、1つになる様子の予想と一致した。偶然のノイズでこうなるのは、20万3000年に1回より少ない。

どうやって: 一般相対性理論で計算した「波の形の見本」と信号を比べた。この観測は、ブラックホールが2つ組で回り合う天体が本当にあることの、初めての直接の証拠になった。

わかっているLIGO・Virgo共同研究チーム(2017、Physical Review Letters)[2]

2017年8月17日、中性子星(ブラックホールの次に詰まった星)どうしの合体による重力波をとらえた。距離は約1.3億光年。合体の約1.7秒後には、ガンマ線の爆発も届いた。

どうやって: 重力波で場所をしぼり、そこを光の望遠鏡でも観測した。重力波と光を同じ出来事からとらえた初めての例で、短いガンマ線バースト(短く強い爆発)が中性子星の合体で起きることの初めての直接の証拠になった。

わかっているLIGO・Virgo・KAGRA共同研究チーム(2023、Physical Review X)[3]

2015年から2020年3月27日までの3回の観測期間で、重力波の候補は合わせて90件になった。2019年11月から2020年3月の観測だけで35件見つかり、ブラックホールと中性子星の合体も初めて確かにとらえた。

どうやって: 宇宙から来た確率が50%を超える信号を数えた。今では重力波は、ブラックホールを見つける方法の1つになっている。

03 数字と例えでいうと重力波のゆれは、どれくらい小さい?

2015年の重力波で、長さ4kmの腕が伸び縮みしたのは陽子の直径の約1000分の1でした。地球と太陽の間の距離が、原子1個ぶんだけ変わるくらいの小ささです。

項目値身近な例えでいうと
ゆれの大きさ(ひずみ)最大で1.0×10-21 [1]地球と太陽の間(約1.5億km)が、原子1個ぶん(約0.1ナノメートル)変わる
腕の伸び縮み陽子の直径の約1000分の1 [4]4kmの腕に1.0×10-21をかけると、約0.000000000000004mm
2台の届いた時間の差約7ミリ秒 [4]0.007秒。光でもこの間に約2100kmしか進まない
信号の高さ35Hz→250Hz [1]人の耳に聞こえる低い音の高さにあたる
出ていったエネルギー太陽約3個分の重さ [1]合体の瞬間の勢いは、観測できる宇宙のすべての星の光を合わせたよりも、はるかに大きい [4]
距離約13億光年 [4]光の速さで進んでも約13億年かかる遠さ
見つかった候補90件(2020年3月まで)[3]最初の発見から約4年半で90件

04 まだわかっていないこと重力波で、まだわからないことは?

合体するブラックホールの組が、どうやってできたのかは決着していません。また、重力波だけでは、ぶつかったのが中性子星かブラックホールか区別できない場合があります。

05関連する記事

06よくある質問

重力波は体で感じられる?

感じられません。2015年に届いた重力波で、長さ4kmの装置の腕が伸び縮みしたのは、陽子の直径の約1000分の1ほどでした。地球と太陽の間の距離が、原子1個ぶん変わるくらいの小ささです。

重力波を観測すると何がわかるの?

光を出さないブラックホール同士の合体を、直接調べられます。重さや距離もわかります。2017年には中性子星の合体を重力波と光の両方でとらえ、短いガンマ線バーストという爆発の正体を結びつける初めての直接の証拠になりました。

重力波はこれまでに何回見つかった?

LIGOとVirgoの観測で、2020年3月27日に終わった第3期観測までに、90件の候補が見つかっています(宇宙から来た確率が50%を超えるもの)。その多くはブラックホール同士の合体です。

出典

  1. Abbott, B. P. et al. (LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration) (2016). Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger. Physical Review Letters 116, 061102. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102
  2. Abbott, B. P. et al. (LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration) (2017). GW170817: Observation of Gravitational Waves from a Binary Neutron Star Inspiral. Physical Review Letters 119, 161101. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.119.161101
  3. Abbott, R. et al. (LIGO Scientific Collaboration, Virgo Collaboration and KAGRA Collaboration) (2023). GWTC-3: Compact Binary Coalescences Observed by LIGO and Virgo during the Second Part of the Third Observing Run. Physical Review X 13, 041039. https://doi.org/10.1103/PhysRevX.13.041039
  4. LIGO Scientific Collaboration. GW150914: The first observation of gravitational waves(解説ページ). https://www.ligo.org/detections/gw150914/