宇宙の始まりと終わり

ビッグバンの前には何があったのか、わかっていることと仮説

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宇宙の始まりの光を観測した人工衛星プランクの模型
Photo: Photograph by Mike Peel (www.mikepeel.net). / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

ビッグバンの前には何があったのか。今の科学の答えは「わかっていない」です。観測で確かめられているのは、熱い宇宙が冷えていく途中からです。それより前については仮説がいくつもありますが、どれも観測では確かめられていません。

3行でわかる

  1. 確かめられているのは、約138億年前に宇宙が熱く詰まった状態から広がってきたこと。0秒の瞬間とその前は、観測でも理論でもわかっていない。
  2. 一般相対性理論で時間を巻き戻すと、始まりに「特異点」ができる。ただしそこは理論が使えなくなる場所で、「時間の始まり」と決まったわけではない。
  3. 「始まりのふちがない」「無から生まれた」「縮んだ宇宙が跳ね返った」「くり返している」などの仮説があるが、どれも観測では確かめられていない。

01 わかっていることビッグバンの前のことはわかっているの?

わかっていません。観測で確かめられているのは、熱い宇宙が広がって冷えていく途中からです。「前」があったのか、「前」という言葉に意味があるのかも、決着していません。

宇宙の年齢は137.87億年(誤差0.20億年)と求められています[6]。これは熱い宇宙が広がりはじめてからの時間を、今の標準的な宇宙のモデルで計算した値です(宇宙の年齢はどうやって測ったのか)。

ビッグバンの証拠は、宇宙が生まれて数分後に軽い元素ができたことと、約38万年後に出た光です(ビッグバンの証拠は何か)。ESAによると、この光が、光を使ってさかのぼれるいちばん昔です[9]。それより前の宇宙は、霧の中のように光が進めませんでした。

ビッグバンは「1点の爆発」ではありません。宇宙全体が熱く詰まった状態から、空間そのものが広がってきたという考えです。だから「爆発の前に何が置いてあったか」という問いの形が、そもそも合わないかもしれません。

02 どうやってわかったのか科学者はビッグバンの前をどう考えているの?

一般相対性理論だけで巻き戻すと、始まりに特異点ができます。その先を考えるには重力と量子力学をまとめる理論が必要で、そこから「始まりのふちはない」「跳ね返った」などの仮説が出ています。

わかっているHawkingとPenrose(1970年、Proceedings of the Royal Society A)[1]

一般相対性理論と、いくつかの自然な条件が成り立つなら、宇宙の過去には時空の特異点(時空が途切れる所)があるはずだと、数学で示しました。

どうやって: 数学の定理です。条件の1つは「物質のエネルギーについての条件」で、インフレーション(宇宙の初めの急な膨張)のような状態では成り立たないことがあります[2]。また、量子力学の効果は入っていません。

有力な仮説Borde、Guth、Vilenkin(2003年、Physical Review Letters)[2]

平均して十分速く膨らみ続けている宇宙は、過去に向かって無限にさかのぼれないと示しました。インフレーションがあったとしても、その始まりを説明するには、インフレーションとは別の物理が必要になります。

どうやって: 宇宙を進む光や物の道すじを、過去へたどる計算です。エネルギーについての条件を使わずに示した点が新しいところです。

わかっていないHartleとHawking(1983年、Physical Review D)[3]

「無境界仮説」を提案しました。時間を巻き戻していくと、始まり近くでは時間が空間のような性質に変わり、宇宙には始まりの「ふち」がない、という考えです。

どうやって: 宇宙全体に量子力学を当てはめる計算です。例えるなら、地球の北極より北がないように、始まりより前を問う意味がなくなります。観測で確かめる方法は見つかっていません。

わかっていないVilenkin(1982年、Physics Letters B)[4]

空間も時間もない「無」から、量子力学のトンネル効果(壁を通り抜けるように起きる変化)で、小さな宇宙が生まれうるという計算を示しました。

どうやって: 理論の計算です。生まれた小さな宇宙が、そのあとインフレーションで大きくなると考えます。観測の手がかりはありません。

わかっていないAshtekar、Pawlowski、Singh(2006年、Physical Review Letters)[5]

ループ量子重力という理論を宇宙に当てはめると、ビッグバンの特異点が「ビッグバウンス(跳ね返り)」に置きかわる、という計算を示しました。前には縮んでいく宇宙があったことになります。

どうやって: どこでも同じように広がる、簡単にした宇宙のモデルで、コンピューターを使って解きました。本物のでこぼこのある宇宙で同じことが起きるかは、わかっていません。

わかっていないSteinhardtとTurok(2002年、Science)[7]

宇宙は「ビッグバン」で始まって「ビッグクランチ(つぶれ)」で終わる時代を、終わりなくくり返すというモデルを提案しました。切りかわりのときも、温度と密度は無限大になりません。

どうやって: 理論のモデルです。インフレーションの代わりに、ゆっくりした加速膨張と、そのあとの縮みが、次の時代の宇宙の平らさや滑らかさをつくると考えます。観測での決め手はありません。

03 数字と例えでいうとどこまで昔にさかのぼれているの?

光で直接見える最も昔は、約38万年後です。元素の割合からは、生まれて数分後までさかのぼれます。0秒とその前は、手がかりがありません。

時期手がかり・確かさ宇宙の歴史を1年にすると
今(137.87億年)プランク衛星の観測から計算[6]12月31日の真夜中。1秒が約437年にあたる
約38万年後宇宙が透明になり、今も届く光が出た[9]。わかっている元日の0時15分ごろ
数分〜30分後水素からヘリウムなど軽い元素ができた[8]。わかっている元日の0時0分0秒から、約1000万分の1秒までの間
それより前(インフレーション)多くの観測と合う有力な仮説。決め手はまだないカレンダーの最初の一瞬
0秒とその前手がかりなし。仮説だけカレンダーの外。「外」があるかもわからない

1年への置きかえは、137.87億年を365日に縮めて計算しました。1日はおよそ3800万年、1秒はおよそ437年です。30分は1年のカレンダーでは約1000万分の1秒になります。

04 まだわかっていないことビッグバンの前について、何が謎のまま?

0秒の瞬間に何が起きたのか、その前に時間があったのかは、まだわかっていません。どの仮説も、観測で確かめる方法がまだ見つかっていないからです。

05関連する記事

06よくある質問

ビッグバンの前には何があったの?

わかっていません。観測で確かめられているのは、熱い宇宙が広がって冷えていく途中からです。始まりのふちがない、無から生まれた、縮んだ宇宙が跳ね返った、くり返しているなどの仮説がありますが、どれも観測では確かめられていません。

ビッグバンの前に時間はあったの?

わかっていません。一般相対性理論で巻き戻すと始まりに特異点ができますが、そこは理論が使えなくなる場所の印です。無境界仮説のように「前を問う意味がない」とする考えも、跳ね返りのように「前があった」とする考えもあり、決着していません。

宇宙は無から生まれたの?

そういう仮説はあります。ビレンキンは1982年、空間も時間もない状態から、量子力学のトンネル効果で小さな宇宙が生まれうるという計算を示しました。ただし理論の提案で、観測で確かめる手がかりはありません。

宇宙はビッグバンをくり返しているの?

くり返すとするモデルはあります。スタインハートとトゥロックは2002年、宇宙がビッグバンとつぶれを終わりなくくり返すモデルを提案しました。ほかの仮説と同じく、観測で決め手になる証拠はまだありません。

出典

  1. Hawking, S. W., Penrose, R. (1970). The singularities of gravitational collapse and cosmology. Proceedings of the Royal Society of London A 314, 529–548. https://doi.org/10.1098/rspa.1970.0021
  2. Borde, A., Guth, A. H., Vilenkin, A. (2003). Inflationary Spacetimes Are Incomplete in Past Directions. Physical Review Letters 90, 151301. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.90.151301
  3. Hartle, J. B., Hawking, S. W. (1983). Wave function of the Universe. Physical Review D 28, 2960–2975. https://doi.org/10.1103/PhysRevD.28.2960
  4. Vilenkin, A. (1982). Creation of universes from nothing. Physics Letters B 117, 25–28. https://doi.org/10.1016/0370-2693(82)90866-8
  5. Ashtekar, A., Pawlowski, T., Singh, P. (2006). Quantum Nature of the Big Bang. Physical Review Letters 96, 141301. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.96.141301
  6. Planck Collaboration (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics 641, A6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833910
  7. Steinhardt, P. J., Turok, N. (2002). A Cyclic Model of the Universe. Science 296, 1436–1439. https://doi.org/10.1126/science.1070462
  8. Steigman, G. (2007). Primordial Nucleosynthesis in the Precision Cosmology Era. Annual Review of Nuclear and Particle Science 57, 463–491. https://doi.org/10.1146/annurev.nucl.56.080805.140437
  9. ESA. Planck and the cosmic microwave background. https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Planck/Planck_and_the_cosmic_microwave_background