星座と星空

オリオン座の星の正体、ベテルギウスからオリオン大星雲まで

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ハッブル宇宙望遠鏡が写したオリオン大星雲
Photo: NASA, ESA, M. Robberto (Space Telescope Science Institute/ESA) and the Hubble Sp / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

冬の夜空でいちばん見つけやすい星座、オリオン座。三つ星をはさんで、左上に赤いベテルギウス、右下に青白いリゲルが光ります。同じ星座の仲間に見えますが、距離を測ると、星どうしは何百光年も離れています。そして三つ星の下には、今まさに星が生まれている場所があります。

3行でわかる

  1. オリオン座の明るい星は、同じ距離にはない。人工衛星ヒッパルコスの測定から計算すると、リゲルは約860光年、三つ星は約700〜2000光年(ベテルギウスは約500光年)。ベテルギウスは別の研究で約550〜720光年とも見積もられている。
  2. 三つ星の下に見えるオリオン大星雲は約1300光年先で、太陽に近い場所では代表的な星の生まれる場所。中心近くには約3500個の若い星が集まり、惑星のもとになると考えられる円盤も写っている。
  3. ベテルギウスの一生の段階や、オリオン大星雲までの正確な距離は、測り方によって数字が違い、まだ決着していない。

01 わかっていることオリオン座の星は、どんな星?

オリオン座の明るい星の多くは、太陽よりずっと重く明るい星です。赤いベテルギウスは年をとってふくらんだ星で、青白いリゲルや三つ星は表面がとても熱い星です。距離は約250〜2000光年とばらばらです。

ヒッパルコス衛星のカタログでは、リゲルは0.18等、ベテルギウスは0.45等(明るさが変わる星)で、どちらも1等星より明るい星です[2]。色の違いは表面の温度の違いで、赤いベテルギウスは表面が冷たく、青白いリゲルは熱い星です。

ベテルギウスは赤色超巨星(年をとってふくらんだ、とても重い星)で、半径は太陽の約764倍と見積もられています[3]。いつか超新星爆発を起こすと考えられています。

星座の形は、地球から見た方向が近いだけの「見かけの形」です。北斗七星と同じで、オリオン座の星も奥行きはばらばらです。オリオン座は、国際天文学連合が決めた88星座の1つです。

02 どうやってわかったのか星までの距離や、星雲の中身はどうやって調べたの?

星までの距離は、地球が太陽のまわりを回るときに星の位置がわずかにずれる角度(年周視差)から測りました。星雲の中は、ハッブル宇宙望遠鏡の画像や電波の観測で調べられています。

わかっているvan Leeuwen(2007年、Astronomy & Astrophysics)[1]

ヒッパルコス衛星のデータを計算し直した値から距離を出すと、リゲルは約860光年、ベラトリックスは約250光年、三つ星はミンタカ約690光年、アルニタク約740光年、アルニラム約2000光年でした(SEADICEの計算)。

どうやって: 1989〜1993年に観測したヨーロッパの人工衛星ヒッパルコスで、星の位置の1年のずれを測りました。アルニラムはずれがとても小さく、誤差を入れると約1550〜2700光年と幅があります。

有力な仮説Joyceら(2020年、The Astrophysical Journal)/Harperら(2017年、The Astronomical Journal)[3][4]

ベテルギウスまでの距離は、約168パーセク(約550光年)とする研究と、約220パーセク(約720光年)とする研究があります。

どうやって: ヒッパルコス衛星の年周視差から計算すると約500光年になり[1]、研究によって値がそろっていません。Joyceらは星の脈動(ふくらんだり縮んだりすること)の計算から、約168パーセクと見積もりました[3]。Harperらは電波望遠鏡の観測とヒッパルコスのデータを合わせて年周視差を求め直し、4.51ミリ秒角としました(距離にすると約220パーセク、SEADICEの計算)[4]。

わかっているMentenら(2007年、Astronomy & Astrophysics)/Kounkelら(2017年、The Astrophysical Journal)[5][6]

オリオン大星雲までの距離は、2007年の測定で414パーセク(約1350光年、誤差±7パーセク)、2017年の測定で388パーセク(約1270光年、誤差±5パーセク)でした。

どうやって: どちらも、アメリカの電波望遠鏡網VLBAで、星雲の中の若い星が出す電波の位置の1年のずれを測りました。2つの値は誤差の範囲をこえて違っています(04で説明)。

わかっているHillenbrand(1997年、The Astronomical Journal)[7]

オリオン大星雲の中心の4つの明るい星(トラペジウム)から約2.5パーセク(約8光年)以内に、約3500個の星が見つかっています。生まれてから100万〜200万年もたっていない、とても若い星の集まりです。

どうやって: 目に見える光で見える約半分の星について、色と明るさを測り、星の温度と明るさの図に並べて年齢を見積もりました。

わかっているMcCaughreanとO'Dell(1996年、The Astronomical Journal)[8]

オリオン大星雲の明るいガスを背景に、若い星を取り巻く円盤が黒い影として写りました。円盤の直径は、地球と太陽の距離の約50〜1000倍でした。

どうやって: ハッブル宇宙望遠鏡で星雲を撮影し、影の形から円盤の大きさや傾きを調べました。こうした円盤は、惑星が生まれる材料になると考えられています。

有力な仮説Großschedlら(2018年、Astronomy & Astrophysics)[9]

オリオン大星雲を含む巨大なガスの雲「オリオンA」は、空で見える長さ約40パーセクではなく、奥行きを入れると約90パーセク(約290光年)ありました。太陽の近くでは、とびぬけて大きな分子雲です。

どうやって: ESAの衛星ガイアで、雲の中の若い星約700個までの距離を測り、雲の立体の形を組み立てました。星雲側の「頭」は約400パーセク、反対側の「尾」は約470パーセクまでのびています。

03 数字と例えでいうとオリオン座の星は、どれくらい遠いの?

ヒッパルコス衛星の値で計算すると、いちばん近いベラトリックスは約250光年、三つ星の真ん中のアルニラムは約2000光年です。今見ているアルニラムの光は、日本で弥生時代のころに星を出た光です。

星明るさ [2]距離(計算)今見ている光が出たのは
ベテルギウス(左上・赤)0.45等(変わる)約550〜720光年 [3][4]約550〜720年前
リゲル(右下・青白)0.18等約860光年(約790〜950)[1]約860年前、平安時代の終わりごろ
ベラトリックス(右上)1.64等約250光年 [1]約250年前、江戸時代
ミンタカ(三つ星の右)2.25等約690光年 [1]約690年前
アルニラム(三つ星の真ん中)1.69等約2000光年(約1550〜2700)[1]約2000年前、弥生時代
アルニタク(三つ星の左)1.74等約740光年 [1]約740年前
サイフ(左下)2.07等約650光年 [1]約650年前
オリオン大星雲肉眼でぼんやり約1270〜1350光年 [5][6]約1300年前、飛鳥〜奈良時代のころ

距離は、ヒッパルコス衛星の年周視差(van Leeuwen、2007年)からSEADICEが計算し、1パーセクを約3.26光年としました。かっこ内は誤差を入れた範囲です。ベテルギウスは、ベテルギウスの記事とそろえて研究による見積もりを載せました(ヒッパルコスの年周視差からは約500光年)。三つ星の右のミンタカは、空の赤道(地球の赤道を空に広げた線)のほぼ真上にあり(赤緯マイナス0.3度)[2]、日本からはほぼ真東から昇って真西に沈みます。

04 まだわかっていないことオリオン座で、まだ決着していないことは?

ベテルギウスが一生のどの段階にいて、いつ爆発するのかは決着していません。オリオン大星雲までの距離や、三つ星のアルニラムまでの距離も、測り方によって数字が違います。

05関連する記事

06よくある質問

オリオン座の星はどれくらい遠いの?

星によってばらばらです。ヒッパルコス衛星の測定から計算すると、ベラトリックスは約250光年、リゲルは約860光年、三つ星の真ん中のアルニラムは約2000光年です。赤いベテルギウスは、ヒッパルコスの値からは約500光年ですが、別の研究では約550〜720光年と見積もられています。

オリオン座の三つ星は同じ距離にあるの?

同じではありません。ヒッパルコス衛星の値で計算すると、ミンタカは約690光年、アルニタクは約740光年、アルニラムは約2000光年です。ただしアルニラムは誤差が大きく、約1550〜2700光年の幅があります。

オリオン大星雲とは何?

三つ星の下に縦に並ぶ小さな星の並びのあたりに見える、ガスとちりの雲です。約1300光年先にあり、太陽に近い場所では代表的な星の生まれる場所です。中心近くには、生まれて100万〜200万年もたっていない星が約3500個集まっています。

オリオン座はいつ、どこで見える?

日本では冬の夜に南の空でよく見えます。三つ星の右のミンタカは空の赤道のほぼ真上にあるため、オリオン座は北半球からも南半球からも見える星座です。南半球では、日本から見たときと上下が逆さまに見えます。

出典

  1. van Leeuwen, F. (2007). Validation of the new Hipparcos reduction. Astronomy & Astrophysics 474, 653–664(年周視差の値は VizieR I/311 で確認). https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078357
  2. ESA (1997). The Hipparcos Catalogue(VizieR I/239、明るさ・スペクトル型・位置). https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/239
  3. Joyce, M., Leung, S.-C., Molnár, L., et al. (2020). Standing on the Shoulders of Giants: New Mass and Distance Estimates for Betelgeuse. The Astrophysical Journal 902, 63. https://doi.org/10.3847/1538-4357/abb8db
  4. Harper, G. M., Brown, A., Guinan, E. F., et al. (2017). An Updated 2017 Astrometric Solution for Betelgeuse. The Astronomical Journal 154, 11(年周視差4.51±0.80ミリ秒角). https://doi.org/10.3847/1538-3881/aa6ff9
  5. Menten, K. M., Reid, M. J., Forbrich, J., Brunthaler, A. (2007). The distance to the Orion Nebula. Astronomy & Astrophysics 474, 515–520. https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078247
  6. Kounkel, M., Hartmann, L., Loinard, L., et al. (2017). The Gould's Belt Distances Survey (GOBELINS). II. Distances and Structure toward the Orion Molecular Clouds. The Astrophysical Journal 834, 142. https://doi.org/10.3847/1538-4357/834/2/142
  7. Hillenbrand, L. A. (1997). On the Stellar Population and Star-Forming History of the Orion Nebula Cluster. The Astronomical Journal 113, 1733. https://doi.org/10.1086/118389
  8. McCaughrean, M. J., O'Dell, C. R. (1996). Direct Imaging of Circumstellar Disks in the Orion Nebula. The Astronomical Journal 111, 1977. https://doi.org/10.1086/117934
  9. Großschedl, J. E., Alves, J., Meingast, S., Ackerl, C., et al. (2018). 3D shape of Orion A from Gaia DR2. Astronomy & Astrophysics 619, A106. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833901