オリオン座の星の正体、ベテルギウスからオリオン大星雲まで

冬の夜空でいちばん見つけやすい星座、オリオン座。三つ星をはさんで、左上に赤いベテルギウス、右下に青白いリゲルが光ります。同じ星座の仲間に見えますが、距離を測ると、星どうしは何百光年も離れています。そして三つ星の下には、今まさに星が生まれている場所があります。
3行でわかる
- オリオン座の明るい星は、同じ距離にはない。人工衛星ヒッパルコスの測定から計算すると、リゲルは約860光年、三つ星は約700〜2000光年(ベテルギウスは約500光年)。ベテルギウスは別の研究で約550〜720光年とも見積もられている。
- 三つ星の下に見えるオリオン大星雲は約1300光年先で、太陽に近い場所では代表的な星の生まれる場所。中心近くには約3500個の若い星が集まり、惑星のもとになると考えられる円盤も写っている。
- ベテルギウスの一生の段階や、オリオン大星雲までの正確な距離は、測り方によって数字が違い、まだ決着していない。
01 わかっていることオリオン座の星は、どんな星?
オリオン座の明るい星の多くは、太陽よりずっと重く明るい星です。赤いベテルギウスは年をとってふくらんだ星で、青白いリゲルや三つ星は表面がとても熱い星です。距離は約250〜2000光年とばらばらです。
ヒッパルコス衛星のカタログでは、リゲルは0.18等、ベテルギウスは0.45等(明るさが変わる星)で、どちらも1等星より明るい星です[2]。色の違いは表面の温度の違いで、赤いベテルギウスは表面が冷たく、青白いリゲルは熱い星です。
ベテルギウスは赤色超巨星(年をとってふくらんだ、とても重い星)で、半径は太陽の約764倍と見積もられています[3]。いつか超新星爆発を起こすと考えられています。
星座の形は、地球から見た方向が近いだけの「見かけの形」です。北斗七星と同じで、オリオン座の星も奥行きはばらばらです。オリオン座は、国際天文学連合が決めた88星座の1つです。
02 どうやってわかったのか星までの距離や、星雲の中身はどうやって調べたの?
星までの距離は、地球が太陽のまわりを回るときに星の位置がわずかにずれる角度(年周視差)から測りました。星雲の中は、ハッブル宇宙望遠鏡の画像や電波の観測で調べられています。
わかっているvan Leeuwen(2007年、Astronomy & Astrophysics)[1]
ヒッパルコス衛星のデータを計算し直した値から距離を出すと、リゲルは約860光年、ベラトリックスは約250光年、三つ星はミンタカ約690光年、アルニタク約740光年、アルニラム約2000光年でした(SEADICEの計算)。
どうやって: 1989〜1993年に観測したヨーロッパの人工衛星ヒッパルコスで、星の位置の1年のずれを測りました。アルニラムはずれがとても小さく、誤差を入れると約1550〜2700光年と幅があります。
有力な仮説Joyceら(2020年、The Astrophysical Journal)/Harperら(2017年、The Astronomical Journal)[3][4]
ベテルギウスまでの距離は、約168パーセク(約550光年)とする研究と、約220パーセク(約720光年)とする研究があります。
どうやって: ヒッパルコス衛星の年周視差から計算すると約500光年になり[1]、研究によって値がそろっていません。Joyceらは星の脈動(ふくらんだり縮んだりすること)の計算から、約168パーセクと見積もりました[3]。Harperらは電波望遠鏡の観測とヒッパルコスのデータを合わせて年周視差を求め直し、4.51ミリ秒角としました(距離にすると約220パーセク、SEADICEの計算)[4]。
わかっているMentenら(2007年、Astronomy & Astrophysics)/Kounkelら(2017年、The Astrophysical Journal)[5][6]
オリオン大星雲までの距離は、2007年の測定で414パーセク(約1350光年、誤差±7パーセク)、2017年の測定で388パーセク(約1270光年、誤差±5パーセク)でした。
どうやって: どちらも、アメリカの電波望遠鏡網VLBAで、星雲の中の若い星が出す電波の位置の1年のずれを測りました。2つの値は誤差の範囲をこえて違っています(04で説明)。
わかっているHillenbrand(1997年、The Astronomical Journal)[7]
オリオン大星雲の中心の4つの明るい星(トラペジウム)から約2.5パーセク(約8光年)以内に、約3500個の星が見つかっています。生まれてから100万〜200万年もたっていない、とても若い星の集まりです。
どうやって: 目に見える光で見える約半分の星について、色と明るさを測り、星の温度と明るさの図に並べて年齢を見積もりました。
わかっているMcCaughreanとO'Dell(1996年、The Astronomical Journal)[8]
オリオン大星雲の明るいガスを背景に、若い星を取り巻く円盤が黒い影として写りました。円盤の直径は、地球と太陽の距離の約50〜1000倍でした。
どうやって: ハッブル宇宙望遠鏡で星雲を撮影し、影の形から円盤の大きさや傾きを調べました。こうした円盤は、惑星が生まれる材料になると考えられています。
有力な仮説Großschedlら(2018年、Astronomy & Astrophysics)[9]
オリオン大星雲を含む巨大なガスの雲「オリオンA」は、空で見える長さ約40パーセクではなく、奥行きを入れると約90パーセク(約290光年)ありました。太陽の近くでは、とびぬけて大きな分子雲です。
どうやって: ESAの衛星ガイアで、雲の中の若い星約700個までの距離を測り、雲の立体の形を組み立てました。星雲側の「頭」は約400パーセク、反対側の「尾」は約470パーセクまでのびています。
03 数字と例えでいうとオリオン座の星は、どれくらい遠いの?
ヒッパルコス衛星の値で計算すると、いちばん近いベラトリックスは約250光年、三つ星の真ん中のアルニラムは約2000光年です。今見ているアルニラムの光は、日本で弥生時代のころに星を出た光です。
| 星 | 明るさ [2] | 距離(計算) | 今見ている光が出たのは |
|---|---|---|---|
| ベテルギウス(左上・赤) | 0.45等(変わる) | 約550〜720光年 [3][4] | 約550〜720年前 |
| リゲル(右下・青白) | 0.18等 | 約860光年(約790〜950)[1] | 約860年前、平安時代の終わりごろ |
| ベラトリックス(右上) | 1.64等 | 約250光年 [1] | 約250年前、江戸時代 |
| ミンタカ(三つ星の右) | 2.25等 | 約690光年 [1] | 約690年前 |
| アルニラム(三つ星の真ん中) | 1.69等 | 約2000光年(約1550〜2700)[1] | 約2000年前、弥生時代 |
| アルニタク(三つ星の左) | 1.74等 | 約740光年 [1] | 約740年前 |
| サイフ(左下) | 2.07等 | 約650光年 [1] | 約650年前 |
| オリオン大星雲 | 肉眼でぼんやり | 約1270〜1350光年 [5][6] | 約1300年前、飛鳥〜奈良時代のころ |
距離は、ヒッパルコス衛星の年周視差(van Leeuwen、2007年)からSEADICEが計算し、1パーセクを約3.26光年としました。かっこ内は誤差を入れた範囲です。ベテルギウスは、ベテルギウスの記事とそろえて研究による見積もりを載せました(ヒッパルコスの年周視差からは約500光年)。三つ星の右のミンタカは、空の赤道(地球の赤道を空に広げた線)のほぼ真上にあり(赤緯マイナス0.3度)[2]、日本からはほぼ真東から昇って真西に沈みます。
04 まだわかっていないことオリオン座で、まだ決着していないことは?
ベテルギウスが一生のどの段階にいて、いつ爆発するのかは決着していません。オリオン大星雲までの距離や、三つ星のアルニラムまでの距離も、測り方によって数字が違います。
- ベテルギウスはいつ爆発するのか距離は約550光年とする研究と約720光年とする研究があり[3][4]、一生の段階の見方も割れています。くわしくはベテルギウスの記事で紹介しています。
- オリオン大星雲は約1270光年か、約1350光年か同じ電波望遠鏡網を使った2つの測定で、388パーセクと414パーセクと、誤差の範囲をこえて違う値が出ています[5][6]。どちらが正しいのかは、まだ決着していません。
- アルニラムは本当に約2000光年先かアルニラムは遠いため、年周視差がとても小さく、ヒッパルコス衛星の値では誤差が約27%あります[1]。三つ星の中で本当にいちばん遠いのかは、もっと精密な測定が必要です。
05関連する記事
06よくある質問
オリオン座の星はどれくらい遠いの?
星によってばらばらです。ヒッパルコス衛星の測定から計算すると、ベラトリックスは約250光年、リゲルは約860光年、三つ星の真ん中のアルニラムは約2000光年です。赤いベテルギウスは、ヒッパルコスの値からは約500光年ですが、別の研究では約550〜720光年と見積もられています。
オリオン座の三つ星は同じ距離にあるの?
同じではありません。ヒッパルコス衛星の値で計算すると、ミンタカは約690光年、アルニタクは約740光年、アルニラムは約2000光年です。ただしアルニラムは誤差が大きく、約1550〜2700光年の幅があります。
オリオン大星雲とは何?
三つ星の下に縦に並ぶ小さな星の並びのあたりに見える、ガスとちりの雲です。約1300光年先にあり、太陽に近い場所では代表的な星の生まれる場所です。中心近くには、生まれて100万〜200万年もたっていない星が約3500個集まっています。
オリオン座はいつ、どこで見える?
日本では冬の夜に南の空でよく見えます。三つ星の右のミンタカは空の赤道のほぼ真上にあるため、オリオン座は北半球からも南半球からも見える星座です。南半球では、日本から見たときと上下が逆さまに見えます。
出典
- van Leeuwen, F. (2007). Validation of the new Hipparcos reduction. Astronomy & Astrophysics 474, 653–664(年周視差の値は VizieR I/311 で確認). https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078357
- ESA (1997). The Hipparcos Catalogue(VizieR I/239、明るさ・スペクトル型・位置). https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/239
- Joyce, M., Leung, S.-C., Molnár, L., et al. (2020). Standing on the Shoulders of Giants: New Mass and Distance Estimates for Betelgeuse. The Astrophysical Journal 902, 63. https://doi.org/10.3847/1538-4357/abb8db
- Harper, G. M., Brown, A., Guinan, E. F., et al. (2017). An Updated 2017 Astrometric Solution for Betelgeuse. The Astronomical Journal 154, 11(年周視差4.51±0.80ミリ秒角). https://doi.org/10.3847/1538-3881/aa6ff9
- Menten, K. M., Reid, M. J., Forbrich, J., Brunthaler, A. (2007). The distance to the Orion Nebula. Astronomy & Astrophysics 474, 515–520. https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078247
- Kounkel, M., Hartmann, L., Loinard, L., et al. (2017). The Gould's Belt Distances Survey (GOBELINS). II. Distances and Structure toward the Orion Molecular Clouds. The Astrophysical Journal 834, 142. https://doi.org/10.3847/1538-4357/834/2/142
- Hillenbrand, L. A. (1997). On the Stellar Population and Star-Forming History of the Orion Nebula Cluster. The Astronomical Journal 113, 1733. https://doi.org/10.1086/118389
- McCaughrean, M. J., O'Dell, C. R. (1996). Direct Imaging of Circumstellar Disks in the Orion Nebula. The Astronomical Journal 111, 1977. https://doi.org/10.1086/117934
- Großschedl, J. E., Alves, J., Meingast, S., Ackerl, C., et al. (2018). 3D shape of Orion A from Gaia DR2. Astronomy & Astrophysics 619, A106. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833901


