星はどうやって生まれるのか、ガスの雲から星ができるまで

夜空の星は、最初から光っていたわけではありません。星の材料は、宇宙に漂う冷たいガスとちりの雲です。雲の濃いところが自分の重さで縮み、中心が熱くなって輝き出すまで、数十万年以上かかります。観測でどこまでわかったのかを、数字と一緒に整理します。
3行でわかる
- 星は、冷たいガスとちりの雲(分子雲)の濃い部分が、重力で縮んで生まれる。
- 宇宙望遠鏡ハーシェルの観測で、星の卵(コア)は幅約0.1パーセクの細長い糸のような雲の中にできることがわかった。
- 雲のうち星になるのは数%だけ。なぜこんなに少ないのか、星の重さの分布が何で決まるのかは、まだ決着していない。
01 わかっていること星はどこで、どうやって生まれるの?
星は、分子雲と呼ばれる冷たいガスとちりの雲の中で生まれます。雲の濃い部分が自分の重力で縮み、中心の温度が上がって水素の核融合が始まると、星として輝き出します。
分子雲は、水素の分子を主な材料にした暗い雲です。NASAによると、1つの分子雲の重さは太陽の1000倍から1000万倍にもなります[8]。冷たいので、ガスが固まりやすくなっています。
雲の中の特に濃いかたまりを「コア(星の卵)」と呼びます。コアが縮むと、中心に「原始星(生まれかけの星)」ができ、まわりのガスを取り込んで重くなります[1]。
中心の温度が十分に上がると、水素がヘリウムに変わる核融合が始まります。今の太陽の中心は約1500万℃です[9]。ここまで来て、ようやく一人前の星になります。
その星が年をとるとどうなるかは「太陽はいつか消えるのか」で書いています。
02 どうやってわかったのか見えない雲の中を、どうやって観測したの?
星が生まれる場所はちりに隠れていて、目に見える光では見えません。そこで、ちりを通り抜ける赤外線や電波で観測しました。宇宙望遠鏡のハーシェルやスピッツァーの観測が大きな手がかりになりました。
雲に含まれる炭素や酸素などの元素は、昔の星が作ってまき散らしたものです(超新星爆発の記事)。星は、前の世代の星の材料から生まれます。
わかっているAndréら(2010年、Astronomy & Astrophysics)[2]
わし座の方向の雲の中に、星の卵(コア)が約350〜500個、生まれたばかりの原始星が約45〜60個見つかりました。コアは、細長い糸のような雲(フィラメント)の中に並んでいました。
どうやって: ハーシェル宇宙望遠鏡で、ちりが出す遠赤外線(波長70〜500マイクロメートル)を撮りました。コアの重さの分布は、生まれる星の重さの分布とよく似ていました。
有力な仮説Arzoumanianら(2011年、Astronomy & Astrophysics)[3]
27本のフィラメントを調べると、幅はどれも約0.1パーセク(中央値0.10±0.03パーセク)にそろっていました。フィラメントは、雲の中の大きな乱れた流れ(乱流)が弱まってできる、という考えを支える結果です。
どうやって: ハーシェルの画像から、フィラメントを横切る方向のガスの濃さを測りました。幅がそろうことは観測でわかっていますが、なぜそろうのかは議論が続いています。
わかっているEvansら(2009年、The Astrophysical Journal Supplement Series)[4]
近くの5つの分子雲で、雲の重さのうち星になっている割合(星形成効率)は3〜6%でした。原始星のうち、まだ厚い雲に包まれた段階は約10万〜16万年、その次の段階は約44万〜54万年続くと見積もられました。
どうやって: スピッツァー宇宙望遠鏡で若い星を数え、成長の段階ごとの数の比から、各段階の長さを計算しました。若い星の約90%は、35個以上が集まった群れの中にありました。
わかっているLada & Lada(2003年、Annual Review of Astronomy and Astrophysics)[5]
星は、雲に埋もれた星の集団(星団)としてまとめて生まれることが多いとわかりました。ただし、雲から出たあとも集団のまとまりを保つのは、4〜7%未満です。
どうやって: 赤外線観測で見つかった、太陽から約2キロパーセク以内の若い星団を集めて調べました。多くの星団は、残ったガスが吹き飛ばされると、ばらばらになると考えられています。
03 数字と例えでいうと星が生まれるのは、どれくらいの大きさと時間?
星の卵ができる糸のような雲は、幅が太陽と地球の距離の約2万倍です。原始星がガスを集める段階は約50万年続きますが、太陽の年齢を1年に縮めると、約1時間にあたります。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| フィラメントの幅 | 約0.1パーセク[3] | 約3兆km。太陽と地球の距離(約1億5000万km)の約2万倍 |
| 原始星が育つ段階の長さ | 約44万〜54万年[4] | 太陽の年齢(約45.7億年)を1年に縮めると、約50分〜1時間 |
| 雲のうち星になる割合 | 3〜6%[4] | 100kgの材料から、星になるのは3〜6kgだけ |
| 天の川銀河で1年に生まれる星の量 | 太陽約1.65個分[6] | 銀河全体の星の重さ(太陽約600億個分)に比べると、ごく少しずつ |
| いちばん近い大きな星の生まれる場所(オリオン大星雲) | 約414パーセク[7] | 約1350光年。今見えている光は、約1350年前に出た光 |
例えの数字は、1パーセク=約3.09×10の13乗km、1パーセク=約3.26光年として計算しました。銀河で生まれる星の量は、多くの測定をまとめ直したLicquiaとNewman(2015年)の値です[6]。オリオン大星雲までの距離は、388パーセク(約1270光年)とする研究もあります(オリオン座の記事)。
04 まだわかっていないこと星の誕生で、まだ謎なのは何?
雲の大部分が星にならない理由と、生まれる星の重さの分布が何で決まるのかは、まだ決着していません。乱流・磁場・重力の3つが絡み合い、計算でも観測でも決めきれないためです。
- なぜ雲のほとんどは星にならないのか星になるのは雲の数%だけです。乱流や磁場が重力に逆らって縮むのを止めている、という説が有力ですが、どれがどれだけ効いているかは決着していません[1][4]。
- 星の重さの分布は何で決まるのか重い星は少なく、軽い星が多いという分布は、場所が変わってもよく似ています。コアの重さの分布が元になっているという見方がありますが、コアの分布が何で決まるかはまだわかっていません[1][2]。
- とても重い星はどう生まれるのか太陽の何十倍も重い星は、強い光でまわりのガスを押し返してしまいます。それでもどうやってガスを集めて重くなるのかは、研究が続いています[1]。
05関連する記事
06よくある質問
星はどこで生まれるの?
星は、分子雲と呼ばれる冷たいガスとちりの雲の中で生まれます。ハーシェル宇宙望遠鏡の観測では、星の卵(コア)は、幅約0.1パーセクの細長い糸のような雲(フィラメント)の中に並んでいることがわかりました。
星が生まれるまで何年かかる?
スピッツァー宇宙望遠鏡の観測をもとにした見積もりでは、原始星が厚い雲に包まれた段階が約10万〜16万年、その次の段階が約44万〜54万年です。核融合で安定して輝くまでには、さらに時間がかかります。
今も新しい星は生まれている?
はい。天の川銀河では、1年に太陽約1.65個分の重さの星が生まれていると見積もられています。オリオン大星雲(約1350光年先)は、今まさに星が生まれている場所の1つです。
星は1つずつ生まれるの?
多くの星は、雲に埋もれた集団(星団)としてまとめて生まれます。ただし、まとまりを保ったまま残る集団は4〜7%未満で、多くはばらばらになると考えられています。
出典
- McKee, C. F., Ostriker, E. C. (2007). Theory of Star Formation. Annual Review of Astronomy and Astrophysics 45, 565–687. https://doi.org/10.1146/annurev.astro.45.051806.110602
- André, P., et al. (2010). From filamentary clouds to prestellar cores to the stellar IMF: Initial highlights from the Herschel Gould Belt Survey. Astronomy & Astrophysics 518, L102. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201014666
- Arzoumanian, D., et al. (2011). Characterizing interstellar filaments with Herschel in IC 5146. Astronomy & Astrophysics 529, L6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201116596
- Evans, N. J., et al. (2009). The Spitzer c2d Legacy Results: Star-Formation Rates and Efficiencies; Evolution and Lifetimes. The Astrophysical Journal Supplement Series 181, 321–350. https://doi.org/10.1088/0067-0049/181/2/321
- Lada, C. J., Lada, E. A. (2003). Embedded Clusters in Molecular Clouds. Annual Review of Astronomy and Astrophysics 41, 57–115. https://doi.org/10.1146/annurev.astro.41.011802.094844
- Licquia, T. C., Newman, J. A. (2015). Improved Estimates of the Milky Way's Stellar Mass and Star Formation Rate from Hierarchical Bayesian Meta-Analysis. The Astrophysical Journal 806, 96. https://doi.org/10.1088/0004-637X/806/1/96
- Menten, K. M., Reid, M. J., Forbrich, J., Brunthaler, A. (2007). The distance to the Orion Nebula. Astronomy & Astrophysics 474, 515–520. https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078247
- NASA Science. Stars. https://science.nasa.gov/universe/stars/
- NASA Science. Sun: Facts. https://science.nasa.gov/sun/facts/


