ブラックホール

ブラックホールが合体するとどうなるのか、重力波でわかった重さの分布

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重力波をとらえたLIGOのハンフォード観測所
Photo: NOIRLab/LIGO/NSF/AURA/T. Matsopoulos / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

2015年に初めて重力波がとらえられてから、ブラックホールどうしの合体は「めったに見られない出来事」ではなくなりました。2024年1月までの観測をまとめた目録には、候補が218件並んでいます。数がそろうと、合体するブラックホールには「よく出る重さ」と「あまり出ない重さ」があることが見えてきました。

3行でわかる

  1. 2つのブラックホールが合体すると、1つの大きなブラックホールになり、重さの一部が重力波として出ていく。合体後の表面積が合体前の合計より大きくなることも、2025年1月の1回の観測(GW250114)で、高い確かさで示された。
  2. 2024年1月までの重力波の目録には候補が218件。合体するブラックホールは、太陽の約10倍と約35倍のあたりに多いと報告されている。
  3. 太陽の100倍を超えるブラックホールどうしの合体も見つかっている。こうした重いブラックホールがどうやってできたのかは、まだわかっていない。

01 わかっていることブラックホールが合体すると何が起きるの?

2つのブラックホールは回り合いながら近づき、ぶつかって1つになります。合体後のブラックホールは、元の2つの重さの合計より少し軽くなります。差の分が、重力波として宇宙へ広がっていくからです。

2015年に初めてとらえた重力波では、太陽の36倍と29倍のブラックホールが合体して、62倍になりました。太陽約3個分の重さが、重力波のエネルギーになって出ていきました(くわしくは重力波の記事)。

合体した直後のブラックホールは、たたいた鐘のように短く「鳴って」から静かになります。この響きをリングダウンと呼びます。2025年1月の重力波GW250114では、この響きが、一般相対性理論が予想する回るブラックホールの響きと合っていました[7]。

ブラックホールの表面(事象の地平面、光も出られなくなる境目)の面積は、合体しても減らないと、ホーキングは予想していました。GW250114では、合体後の面積が合体前の2つの合計より大きいことが、高い確かさで確かめられました[7]。

02 どうやってわかったのか合体するブラックホールの重さは、どうやって調べたの?

重力波の波の形から、合体した2つのブラックホールの重さを1件ずつ見積もりました。それを何十、何百件と集めて、どの重さがよく出るかを描きました。数が増えるほど、分布の形がはっきりしてきています。

わかっているLIGO・Virgo・KAGRA共同研究チーム(2023年、Physical Review X)[1]

2015年から2020年3月までの3回の観測で、重力波の候補は合わせて90件になりました。その多くはブラックホールどうしの合体でした。

どうやって: アメリカのLIGO2台とヨーロッパのVirgoで観測し、宇宙から来た確率が50%を超える信号を数えました。

わかっているLIGO・Virgo・KAGRA共同研究チーム(2026年、The Astrophysical Journal Letters)[4]

2023年5月24日から2024年1月16日までの観測で、新しい候補が128件見つかりました。それまでの90件と合わせて、目録の候補は218件になり、2倍以上に増えました。

どうやって: 第4期観測の前半のデータを調べました。ブラックホールの重さ(中央値)は、太陽の約5.8倍から約137倍までに広がっています。

有力な仮説LIGO・Virgo・KAGRA共同研究チーム(2023年、Physical Review X / 2026年、The Astrophysical Journal Letters)[2][5]

合体するブラックホールの重さは、太陽の約10倍と約35倍のあたりに「山」があり、約20倍にも山があるかもしれません。35倍より重くなると、数の減り方が急になります。ブラックホールの回転はたいてい速すぎず、いちばん速い回転を1としたとき、9割は0.57未満でした。

どうやって: 2026年の論文は、合体158件の重さと回転をまとめて、全体の分布を統計で求めました。2023年の論文(2020年3月までのデータ)でも、同じように重さの分布に山が見つかっていました。

有力な仮説LIGO・Virgo共同研究チーム(2020年、Physical Review Letters)[3]

2019年5月21日の重力波GW190521は、太陽の85倍と66倍のブラックホールの合体と見積もられました。合体後は太陽の約142倍になりました。重いほうは、星の一生の理論では「できにくい」とされる重さの範囲に入っていました。

どうやって: 3台の検出器でとらえた、短い信号の形を分析しました。重いほうが太陽の65倍より軽い確率は、0.32%だけでした。

有力な仮説LIGO・Virgo・KAGRA共同研究チーム(2025年、The Astrophysical Journal Letters)[6][8]

2023年11月23日の重力波GW231123は、太陽の約137倍と約101倍のブラックホールの合体でした。合わせた重さは太陽の190〜265倍で、これまででいちばん重い合体と考えられています。2つとも、とても速く回っていました。

どうやって: 2台のLIGOでとらえた信号を分析しました。ただし、計算に使う波の形の見本によって結果が変わり、いくつかの性質には大きな不確かさが残ると、論文自身が書いています。

03 数字と例えでいうと合体するブラックホールは、どれくらい大きくて、どれくらい多いの?

よく見つかる太陽の35倍のブラックホールは、回っていないとすると半径は約100km。合体は、1辺約33億光年の立方体の中で1年に18〜44回ほど起きている計算です。

項目値身近な例えでいうと
重さの山太陽の約10倍と約35倍[5]回っていないとすると、半径は約30kmと約100km(計算)
いちばん重い合体(GW231123)合わせて太陽の190〜265倍[6]合体後の重さを太陽の225倍[8]とすると、回っていない場合の半径は約660km(計算)
合体の起きる割合1立方ギガパーセクあたり1年に17.9〜44回(宇宙が今の約8割の年齢のころ)[2]1ギガパーセクは約33億光年。1辺33億光年の立方体の中で、1年に18〜44回
見つかった候補の数90件(2020年3月まで)→218件(2024年1月まで)[1][4]2023年5月〜2024年1月の約8か月で128件。平均すると約2日に1件
回転の速さ9割が理論上の最大の0.57未満[5]いちばん速く回れる状態を100としたとき、10個のうち9個は57より遅い
いちばんはっきりした信号(GW250114)信号の強さが雑音の80倍[7]太陽の約34倍と約32倍の、ほぼ同じ重さの2つの合体

半径は、回っていないブラックホールの半径が「太陽1個分の重さあたり約2.95km」に比例することから計算しました。実際のブラックホールは回っていて、半径はこれより小さくなります。「約2日に1件」は、2023年5月24日〜2024年1月16日の237日を128件で割ったもので、検出器が止まっていた時間も含みます。

04 まだわかっていないこと合体するブラックホールの謎は何?

太陽の100倍前後の重いブラックホールがどうやってできたのか、合体する2つ組がどこで生まれたのかは決着していません。重さの山がなぜその位置にあるのかも、まだ説明がそろっていません。

05関連する記事

06よくある質問

ブラックホールが合体するとどうなるの?

1つの大きなブラックホールになります。合体後の重さは元の2つの合計より少し軽く、差の分は重力波として出ていきます。2015年の最初の観測では、太陽の36倍と29倍が合体して62倍になり、太陽約3個分が重力波になりました。

合体するブラックホールはどれくらいの重さ?

2024年1月までの観測をまとめた研究では、太陽の約10倍と約35倍のあたりが多く、35倍より重くなると数の減り方が急になります。見つかったものの重さは、太陽の約6倍から100倍を超えるものまであります。

いちばん重いブラックホールの合体は?

2023年11月23日にとらえたGW231123です。太陽の約137倍と約101倍のブラックホールの合体で、合わせた重さは太陽の190〜265倍と見積もられました。ただし計算の方法によって結果が変わり、不確かさが大きいとされています。

ブラックホールの合体はどれくらいの頻度で起きている?

2020年3月までの観測からの見積もりでは、1立方ギガパーセク(1辺約33億光年の立方体)あたり、1年に17.9〜44回です。2023年5月〜2024年1月の観測では、約8か月で128件の候補が見つかりました。

ブラックホールが合体しても、面積は減らないの?

減らないと予想されていて、2025年1月の重力波GW250114という1回の観測で、合体後のブラックホールの表面積が合体前の2つの合計より大きいことが、高い確かさで示されました。

出典

  1. Abbott, R., et al. (LIGO Scientific, Virgo and KAGRA Collaborations) (2023). GWTC-3: Compact Binary Coalescences Observed by LIGO and Virgo during the Second Part of the Third Observing Run. Physical Review X 13, 041039. https://doi.org/10.1103/PhysRevX.13.041039
  2. Abbott, R., et al. (LIGO Scientific, Virgo and KAGRA Collaborations) (2023). Population of Merging Compact Binaries Inferred Using Gravitational Waves through GWTC-3. Physical Review X 13, 011048. https://doi.org/10.1103/PhysRevX.13.011048
  3. Abbott, R., et al. (LIGO Scientific and Virgo Collaborations) (2020). GW190521: A Binary Black Hole Merger with a Total Mass of 150 M⊙. Physical Review Letters 125, 101102. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.125.101102
  4. Abac, A. G., et al. (LIGO Scientific, Virgo and KAGRA Collaborations) (2026). GWTC-4.0: Updating the Gravitational-wave Transient Catalog with Observations from the First Part of the Fourth LIGO–Virgo–KAGRA Observing Run. The Astrophysical Journal Letters 1004, L22. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ae2c74
  5. Abac, A. G., et al. (LIGO Scientific, Virgo and KAGRA Collaborations) (2026). GWTC-4.0: Population Properties of Merging Compact Binaries. The Astrophysical Journal Letters 1005, L51. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ae771e
  6. Abac, A. G., et al. (LIGO Scientific, Virgo and KAGRA Collaborations) (2025). GW231123: A Binary Black Hole Merger with Total Mass 190–265 M⊙. The Astrophysical Journal Letters 993, L25. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ae0c9c
  7. Abac, A. G., et al. (LIGO Scientific, Virgo and KAGRA Collaborations) (2025). GW250114: Testing Hawking's Area Law and the Kerr Nature of Black Holes. Physical Review Letters 135, 111403. https://doi.org/10.1103/kw5g-d732
  8. LIGO Scientific Collaboration (2025). LIGO-Virgo-KAGRA detect most massive black hole merger to date. https://ligo.org/ligo-virgo-kagra-detect-most-massive-black-hole-merger-to-date/