ベテルギウスはいつ爆発するのか

2019年の終わりから2020年の初めにかけて、オリオン座の肩の赤い星ベテルギウスが、ふだんの3分の1ほどの明るさまで暗くなりました。「爆発が近いのでは」と話題になりましたが、その後の研究で暗くなった理由はかなりわかってきました。では、ベテルギウスは本当はいつ爆発するのでしょうか。
3行でわかる
- ベテルギウスは、いずれ超新星爆発を起こすと考えられている赤色超巨星。爆発の時期の見積もりは割れていて、10万年以上先とする研究(Joyceら、2020年)と、一生の最後に近い段階とする研究(Saioら、2023年)がある。
- 2019〜2020年の大減光は、星から吹き出したガスが冷えてできたちりの雲と、表面の一部の温度低下で説明されている。爆発の前ぶれではないとする説明が有力。
- ベテルギウスのすぐそばを回る伴星(相棒の星)の報告が続いているが、2026年10月時点で確かめる観測はまだ途中。重さの見積もりも研究によって食い違ったまま、決着していない。
01 わかっていることベテルギウスはもうすぐ爆発するの?
ベテルギウスがいつ爆発するかは、正確にはわかっておらず、見積もりは割れています。2020年のJoyceらの研究は10万年以上先とし、2023年のSaioらの研究は一生の最後に近い段階だとしています。2020年に暗くなったのは、爆発の前ぶれではないとする説明が有力です。
ベテルギウスは赤色超巨星(年をとってふくらんだ、とても重い星)です。重い星は一生の最後に超新星爆発を起こすので、ベテルギウスもいつか爆発すると考えられています。赤色超巨星の時期は、およそ10万年続くとされます[1]。
Joyceらは、ベテルギウスが中心でヘリウムを燃やしている段階にあると結論しました[4]。共同研究をしたカブリIPMUの発表では、これは爆発の10万年以上前の段階だと説明されています[12]。一方でSaioらは、中心で炭素を燃やす最後に近い段階だとしていて[5]、どちらが正しいかは決着していません(04で説明)。
爆発しても、地球は十分に遠いので大きな影響はないと、同じ発表は述べています[12]。爆発のあと中心には、中性子星かブラックホールが残ると考えられています[1]。
02 どうやってわかったのか2020年にベテルギウスが暗くなった理由は?
星の南側からガスが外へ吹き出し、それが冷えてちりの雲になり、星の前をさえぎったと考えられています。表面の一部の温度が下がったことも、ほぼ同じくらい暗さに効いていました。
有力な仮説Dupreeら(2020年、The Astrophysical Journal)[2]
暗くなる前の2019年9〜11月、ベテルギウスの南半分で、ガスが外へ動いている様子が紫外線でとらえられました。約400日の脈動(星がふくらんだり縮んだりすること)で外へ動く時期と重なり、大量のガスが吹き出したと考えられます。
どうやって: ハッブル宇宙望遠鏡で、星の表面を場所ごとに分けて紫外線の光を調べました。
有力な仮説Montargèsら(2021年、Nature)[1]
大減光のとき、ベテルギウスの南半分は、目に見える光でふだんの10分の1の暗さでした。表面に冷えた部分ができ、その近くでちりのかたまりができたという説明が、観測と計算に合いました。いちばん暗かったのは2020年2月7〜13日ごろで、1.614等でした。
どうやって: ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTで、星の表面のようすを画像として写しました。明るさのむらは、数週間ごとに変わっていました。
有力な仮説谷口大輔ら(2022年、Nature Astronomy)[3]
日本の気象衛星「ひまわり8号」の画像から、4年半にわたるベテルギウスの明るさを16の波長で調べました。表面の温度が下がったことと、ちりが光をさえぎったことが、ほぼ同じくらいずつ暗さに効いていたと結論しました。
どうやって: ひまわり8号の2017〜2021年の画像のうち、ベテルギウスが写っているものを集め、明るさの変化を測りました。ちりが出す赤外線も見える波長が含まれていたことが決め手でした。
有力な仮説Joyceら(2020年、The Astrophysical Journal)[4][12]
ベテルギウスの今の重さは太陽の16.5〜19倍、半径は太陽の約764倍、距離は約168パーセク(約550光年)と見積もりました。中心でヘリウムを燃やしている段階で、爆発は10万年以上先とされます。
どうやって: 宇宙からの明るさの記録で脈動の周期を測り、星の進化と脈動の計算に合うように、重さや大きさを求めました。
03 数字と例えでいうとベテルギウスはどれくらい大きくて遠いの?
ベテルギウスの半径は太陽の約760倍で、太陽の位置に置くと火星の軌道より外までふくらみます。距離は約550〜720光年で、今見ている光は数百年前に出た光です。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 半径 | 太陽の約764倍[4] | 約5億3000万km。太陽の位置に置くと、火星の軌道(太陽から約2億3000万km)の外、木星の軌道の手前まで届く(計算) |
| 今の重さ | 太陽の16.5〜19倍[4] | 太陽が16〜19個分 |
| 距離 | 約168パーセク[4]、または約220パーセク[1] | 約550光年または約720光年。今見ている光は、室町時代や鎌倉時代のころに星を出た光(計算) |
| 大減光で暗くなった量 | 約1.2等[3] | 明るさが約3分の1になった(計算) |
| 爆発までの見積もり | 見積もりは割れている。10万年以上[12]/最後に近い段階[5] | 10万年を1年に縮めると、人の一生(80年)は約7時間(計算) |
| 伴星が回る周期(予想) | 約2170日[6] | 約6年で1周 |
1等は明るさ約2.5倍の差なので、1.2等暗くなると明るさは約3分の1です。距離の光年は、1パーセクを約3.26光年として計算しました。
04 まだわかっていないことベテルギウスについて、まだ決着していないことは?
ベテルギウスが一生のどの段階にいるのか、すぐそばに伴星が本当にあるのか、地球からの正確な距離は、まだ決着していません。爆発の時期の見積もりも、それによって変わります。
- 今、一生のどの段階にいるのかSaioら(2023年)は、約2200日の明るさの変化を星そのものの脈動とみて、ベテルギウスは中心で炭素を燃やす最後に近い段階にあり、次に天の川銀河で爆発する超新星の有力な候補だとしました[5]。一方、Goldbergら(2024年)は、この約2170日の変化を伴星が起こしているとみています[6]。同じ変化の読み方で、爆発までの時間の見方が大きく変わります。
- 伴星は本当にあるのか、どれくらい重いのか2025年の報告では、ジェミニ北望遠鏡の2024年の画像に伴星らしい光が写っていましたが、確かさは低いものでした[7]。2026年にはVLTが、2024年12月の画像から伴星の候補をはっきりとらえ、重さを太陽の2〜3倍ほどと見積もりました[10][11]。ただし、本当に回っている星だと確かめるには、星の反対側に来たときにもう一度観測する必要があります[11]。ハッブル宇宙望遠鏡の観測からは、伴星が若い星だとすると太陽の約1.5倍より重いものは考えにくいという報告もあり[8]、2026年10月時点で重さは食い違ったまま決着していません。伴星が通ったあとにできるガスの流れ(航跡)の報告もあります[9]。
- 正確な距離Joyceらは約168パーセク[4]、Montargèsらは約220パーセクとしています[1]。距離が変わると星の明るさや大きさの見積もりも変わり、進化の段階の判断にも響きます。
- 伴星は爆発に影響するのかESOの発表は、伴星がベテルギウスのこれからの進化に影響するかどうかは、まだわからない問いだとしています[11]。
05関連する記事
06よくある質問
ベテルギウスはいつ爆発するの?
正確な時期はわかっておらず、見積もりは割れています。2020年のJoyceらの研究では、中心でヘリウムを燃やす段階にあり、爆発は10万年以上先とされました。一方、2023年のSaioらの研究は、中心で炭素を燃やす最後に近い段階だとしています。
ベテルギウスが爆発したら地球は危ないの?
研究チームの発表では、ベテルギウスは地球から十分に遠く、爆発しても地球に大きな影響はないとされています。距離は約550〜720光年と見積もられています。
2020年にベテルギウスが暗くなったのはなぜ?
星の南側から吹き出したガスが冷えてちりの雲になり、光をさえぎったことと、表面の一部の温度が下がったことで説明されています。日本の気象衛星ひまわり8号の画像を使った研究では、この2つがほぼ同じくらいずつ効いていたとされました。
ベテルギウスには伴星があるの?
あると考える研究が続いていて、2026年にはVLTの画像で伴星の候補がはっきり写りました。ただし2026年10月時点で、本当に回っている星だと確かめる観測はまだで、重さの見積もりもハッブル宇宙望遠鏡の結果と食い違ったまま決着していません。
出典
- Montargès, M., Cannon, E., Lagadec, E., de Koter, A., Kervella, P., et al. (2021). A dusty veil shading Betelgeuse during its Great Dimming. Nature 594, 365–368. https://doi.org/10.1038/s41586-021-03546-8
- Dupree, A. K., Strassmeier, K. G., Matthews, L. D., Uitenbroek, H., et al. (2020). Spatially Resolved Ultraviolet Spectroscopy of the Great Dimming of Betelgeuse. The Astrophysical Journal 899, 68. https://doi.org/10.3847/1538-4357/aba516
- Taniguchi, D., Yamazaki, K., Uno, S. (2022). The Great Dimming of Betelgeuse seen by the Himawari-8 meteorological satellite. Nature Astronomy 6, 930–935. https://doi.org/10.1038/s41550-022-01680-5
- Joyce, M., Leung, S.-C., Molnár, L., Ireland, M., Kobayashi, C., Nomoto, K. (2020). Standing on the Shoulders of Giants: New Mass and Distance Estimates for Betelgeuse through Combined Evolutionary, Asteroseismic, and Hydrodynamic Simulations with MESA. The Astrophysical Journal 902, 63. https://doi.org/10.3847/1538-4357/abb8db
- Saio, H., Nandal, D., Meynet, G., Ekström, S. (2023). The evolutionary stage of Betelgeuse inferred from its pulsation periods. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 526, 2765–2775. https://doi.org/10.1093/mnras/stad2949
- Goldberg, J. A., Joyce, M., Molnár, L. (2024). A Buddy for Betelgeuse: Binarity as the Origin of the Long Secondary Period in α Orionis. The Astrophysical Journal 977, 35. https://doi.org/10.3847/1538-4357/ad87f4
- Howell, S. B., Ciardi, D. R., Clark, C. A., et al. (2025). The Probable Direct-imaging Detection of the Stellar Companion to Betelgeuse. The Astrophysical Journal Letters 988, L47. https://doi.org/10.3847/2041-8213/adeaaf
- Goldberg, J. A., O'Grady, A., Joyce, M., et al. (2025). Betelgeuse, Betelgeuse, Betelgeuse, Betel-buddy? Constraints on the Dynamical Companion to α Orionis from HST. The Astrophysical Journal 994, 101. https://doi.org/10.3847/1538-4357/ae0c0c
- Dupree, A. K., Cristofari, P. I., MacLeod, M., et al. (2026). Betelgeuse: Detection of the Expanding Wake of the Companion Star. The Astrophysical Journal 998, 50. https://doi.org/10.3847/1538-4357/ae2ed5
- Montargès, M., Boccaletti, A., Flasseur, O., et al. (2026). VLT/SPHERE images of the candidate companion of Betelgeuse. Astronomy & Astrophysics 711, L12. https://doi.org/10.1051/0004-6361/202661023
- ESO (2026). Astronomers find strongest evidence yet that Betelgeuse has a companion (eso2611). https://www.eso.org/public/news/eso2611/
- Kavli IPMU (2020). Study of Supergiant Star Betelgeuse Unveils the Cause of its Pulsations; Recalibrated its Mass, Radius, and Distance. https://www.ipmu.jp/en/node/8466


