北斗七星の星は同じ距離にあるのか、星座は見かけの形

北斗七星は、7つの星がひしゃくの形に並んだ、北の空の目印です。同じ平面に並んでいるように見えますが、地球からの距離は約80光年から約123光年までばらばらです。しかも真ん中の5つの星は、同じ方向へ一緒に旅をしている「仲間」だとわかっています。
3行でわかる
- ヒッパルコス衛星の測定では、北斗七星の距離は約80〜123光年。いちばん遠いドゥーベ(約123光年)は、いちばん近いメラク(約80光年)の約1.5倍遠い。星座は、遠さの違う星が地球から同じ方向に見えているだけの「見かけの形」。
- 真ん中の5つの星(メラク・フェクダ・メグレズ・アリオト・ミザール)は、おおぐま座運動星団という、同じ方向へ一緒に動く星の集団の中心メンバー。年齢は約4億年と見積もられている。
- 両はしのドゥーベとアルカイドは、ほかの5つとほぼ反対の方向へ動いていて、この集団の仲間ではない。
01 わかっていること北斗七星の星は同じ距離にあるの?
同じ距離にはありません。ヒッパルコス衛星の測定では、7つの星は約80光年から約123光年までばらばらです。星座の形は、遠さの違う星がたまたま同じ方向に見えてできた、地球から見たときだけの形です。
星までの距離は、年周視差(地球が太陽の周りを回ることで、近い星の位置がわずかにずれて見える量)から求めます。ずれが大きいほど近い星です。ヒッパルコス衛星のデータを解析し直したカタログ(2007年)には、北斗七星の7つの星すべての値が載っています[1][5]。
このカタログから計算すると、真ん中の5つの星は約80〜86光年に集まっています。ところが、ひしゃくの先のドゥーベは約123光年、柄の先のアルカイドは約104光年と、ずっと奥にあります。真横から見ることができたら、北斗七星はひしゃくの形には見えません。
02 どうやってわかったのか真ん中の5つの星が仲間だと、どうやってわかったの?
星が空の上を動く向きと速さ、近づく・遠ざかる速さをくわしく測り、同じ動きをしている星を集めてわかりました。真ん中の5つの星は、おおぐま座運動星団の中心メンバーです。
わかっているKingら(2003年、The Astronomical Journal)[2]
おおぐま座運動星団の仲間かどうかを、約220個の星について調べ直し、確かな仲間を60個近くにしぼりました。星の進化のモデルと比べた年齢は5億±1億年で、それまでよく言われていた年齢より2億年ほど古いという結果でした。
どうやって: ヒッパルコス衛星の距離、星が近づく・遠ざかる速さ、星の表面の活動の強さ、明るさと色をあわせて、仲間かどうかを判定しました。
わかっているJonesら(2015年、The Astrophysical Journal)[3]
おおぐま座運動星団は、中心の15個の星と、周りに広がる47個ほどの仲間からなり、中心までの距離は約25パーセク(約80光年)です。中心の星として、メラク・フェクダ・メグレズ・アリオト・ミザール・アルコルが挙げられています。集団の年齢は4億1400万±2300万年と見積もりました。
どうやって: アメリカのCHARA干渉計(いくつもの望遠鏡をつないで細かく見る装置)で、速く自転してつぶれた形の星の大きさを測り、星の進化の計算と比べて年齢を求めました。
有力な仮説Mamajekら(2010年、The Astronomical Journal)[4]
ミザールの横に見える暗い星アルコルに、小さな相棒の星が見つかりました。ミザールとアルコルの実際の距離は0.36±0.19パーセク(約1.2光年)で、動きもおおむねそろっていることから、合わせて6つの星からなる一つの集まりと考えられると提案しました。
どうやって: 大型望遠鏡MMTで、大気のゆらぎを補正しながら赤外線で撮影しました。距離と動きはヒッパルコス衛星の再解析の値などから計算しました。
03 数字と例えでいうと北斗七星の星は、それぞれ何光年先にあるの?
近いのはメラク(約80光年)、遠いのはドゥーベ(約123光年)です。今夜見えるドゥーベの光は1900年代のはじめに、メラクの光は1940年代に星を出た光です。
| 星(ひしゃくの先から順に) | 距離(年周視差から計算) | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| ドゥーベ(α星) | 約123光年(26.54ミリ秒角)[5] | 今見える光は1903年ごろ(明治時代の終わりごろ)に出た光 |
| メラク(β星) | 約80光年(40.90ミリ秒角)[5] | 今見える光は1946年ごろに出た光 |
| フェクダ(γ星) | 約83光年(39.21ミリ秒角)[5] | メラクとの実際の距離は約12光年 |
| メグレズ(δ星) | 約81光年(40.51ミリ秒角)[5] | フェクダとの実際の距離は約7光年 |
| アリオト(ε星) | 約83光年(39.51ミリ秒角)[5] | メグレズとの実際の距離は約8光年 |
| ミザール(ζ星) | 約86光年(38.01ミリ秒角)[5] | 誤差が大きく、約82〜90光年の幅がある |
| アルカイド(η星) | 約104光年(31.38ミリ秒角)[5] | ひしゃくの反対側のドゥーベとは約54光年離れている |
距離(光年)は、3261.56を年周視差(ミリ秒角)で割って計算しました。星どうしの実際の距離は、空の上の位置と距離から立体的に計算したものです。真ん中の5つの星はおたがいに約30光年以内に収まりますが、ドゥーベはどの星とも約44光年以上離れています。
80光年は、時速100kmの車で走り続けると約8億6000万年かかる距離です(1光年を約9兆4600億kmとして計算)。動く向きも違います。真ん中の5つの星は空の上で東寄りに、ドゥーベとアルカイドは西寄りに、ほぼ反対へ動いています(カタログの固有運動から計算)[5]。この動きで形がどう変わるかは10万年後の北斗七星で計算しています。
04 まだわかっていないこと北斗七星について、まだわかっていないことは?
おおぐま座運動星団の年齢は、研究によって約4億年から約5億年まで幅があります。ミザールとアルコルが本当に重力で結びついた仲間なのかも、まだ確かめきれていません。
- 運動星団の正確な年齢Kingら(2003年)は5億±1億年[2]、Jonesら(2015年)は4億1400万±2300万年としました[3]。Jonesらは、それ以前の研究の見積もりが2億〜10億年とばらついていたことも示しています[3]。
- ミザールとアルコルは本当に組なのかMamajekら(2010年)は、2つの星の動きが「おおむね」合うとしましたが、合う確からしさの計算値は6%と高くはありませんでした[4]。2つが重力で回り合っているかは、これからの精密な測定で確かめる段階です。
- ミザールの正確な距離ミザールは近くに相棒の星がいる連星で、ヒッパルコス衛星の年周視差の誤差(±1.71ミリ秒角)がほかの星より大きくなっています[5]。
05関連する記事
06よくある質問
北斗七星の星はみんな同じ距離にあるの?
同じ距離ではありません。ヒッパルコス衛星の測定から計算すると、いちばん近いメラクは約80光年、いちばん遠いドゥーベは約123光年です。真ん中の5つは約80〜86光年に集まっています。
北斗七星でいちばん遠い星はどれ?
ひしゃくの先にあるドゥーベで、約123光年です。次に遠いのは柄の先のアルカイドで、約104光年です。この2つはほかの5つの星とは反対の方向へ動いていて、おおぐま座運動星団の仲間ではありません。
おおぐま座運動星団とは何?
同じ方向へ同じ速さで動いている星の集団です。中心の15個ほどの星と、周りに広がる仲間からなり、北斗七星のメラク・フェクダ・メグレズ・アリオト・ミザールが中心メンバーです。年齢は約4億年から5億年と見積もられています。
ミザールとアルコルは本当に連星なの?
2010年の研究は、2つの実際の距離が約1.2光年で動きもおおむねそろうことから、合わせて6つの星の集まりと考えられると提案しました。ただし動きが合う確からしさは高くなく、まだ確かめきれていません。
出典
- van Leeuwen, F. (2007). Validation of the new Hipparcos reduction. Astronomy & Astrophysics 474, 653–664. https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078357
- King, J. R., Villarreal, A. R., Soderblom, D. R., Gulliver, A. F., Adelman, S. J. (2003). Stellar Kinematic Groups. II. A Reexamination of the Membership, Activity, and Age of the Ursa Major Group. The Astronomical Journal 125, 1980–2017. https://doi.org/10.1086/368241
- Jones, J., White, R. J., Boyajian, T., Schaefer, G., Baines, E., Ireland, M., et al. (2015). The Ages of A-Stars. I. Interferometric Observations and Age Estimates for Stars in the Ursa Major Moving Group. The Astrophysical Journal 813, 58. https://doi.org/10.1088/0004-637X/813/1/58
- Mamajek, E. E., Kenworthy, M. A., Hinz, P. M., Meyer, M. R. (2010). Discovery of a Faint Companion to Alcor Using MMT/AO 5 μm Imaging. The Astronomical Journal 139, 919–925. https://doi.org/10.1088/0004-6256/139/3/919
- van Leeuwen, F. (2007). Hipparcos, the New Reduction of the Raw Data(カタログ I/311、VizieR). https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/311


