ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は何を見つけたのか

2021年12月25日に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、赤外線で宇宙を見る、これまでで最大の宇宙望遠鏡です。ビッグバンから約3億年後の銀河や、太陽系の外の惑星の空気にある二酸化炭素を、論文で確かめられる形でとらえました。一方で「宇宙論が崩れた」という話は、論文の結論とは違います。
3行でわかる
- ビッグバンから約3億年後には、予想より明るい銀河がすでにあった。光を波長ごとに分ける観測(分光)で距離が確かめられている。
- 太陽系の外の惑星WASP-39bの空気から、二酸化炭素と、光による化学反応でできた二酸化硫黄が見つかった。
- 明るい銀河がなぜ早く育ったのか、赤くて小さな天体の正体は何かは、まだ議論が続いている。
01 わかっていることウェッブ望遠鏡が見つけたもので、確かなのは?
論文で確かめられた主な発見は、ビッグバンから約3億年後の銀河と、系外惑星の空気にある二酸化炭素・二酸化硫黄です。どちらも、光を波長ごとに分ける分光観測で確認されています。
ウェッブ望遠鏡の主鏡(光を集める鏡)は直径6.5メートルで、ハッブル宇宙望遠鏡の2.4メートルの約2.7倍です[2]。地球から約150万キロ離れた場所で、太陽のまわりを回っています[1]。打ち上げ後の試験では、性能はほぼすべての面で予想より良いと報告されました[3]。
遠い銀河の光は、宇宙が膨らむにつれて波長が引き伸ばされ、赤外線になって届きます。この引き伸ばされ方を「赤方偏移(z)」といい、大きいほど遠く、昔の光です。赤外線が得意なウェッブ望遠鏡は、とても遠い銀河を見るのに向いています。
02 どうやってわかったのか遠い銀河や惑星の空気は、どうやって確かめた?
写真の色だけで距離を見積もった「候補」と、分光で距離を確かめた天体は分けて考えます。ここで「わかっている」とした発見は、分光か、くり返しの観測で確かめられたものです。
わかっているCurtis-Lakeら(2023年、Nature Astronomy)[4]
赤方偏移10.3〜13.2の4つの銀河の距離を、分光で確かめました。重さは太陽の約1000万倍から数億倍で、重い元素がとても少ない若い銀河でした。
どうやって: 深い観測で選んだ遠い銀河の光を、分光器で波長ごとに分けました。水素に吸収されて光が途切れる位置から、距離を決めています。
わかっているCarnianiら(2024年、Nature)[5]
赤方偏移14.32と13.90の、明るい2つの銀河を分光で確かめました。ビッグバンから約3億年後には明るい銀河がすでにあり、ウェッブ以前の予想より多かったことがわかりました。
どうやって: 遠いほうの銀河は半径260パーセク(約850光年)に広がって見え、光の大部分は星から出ていると判断されました。著者らは、銀河のでき方のモデルがこの明るさを説明する必要があると書いています。
わかっているJWST系外惑星早期観測チーム(2023年、Nature)[6]
ガスでできた惑星WASP-39bの空気に、二酸化炭素があることを確かめました。太陽系の外の惑星で、二酸化炭素がはっきり見つかったのは初めてです。
どうやって: 惑星が恒星の前を通るとき、空気を通り抜けた星の光を分光しました。波長4.3マイクロメートルの吸収が26シグマという非常に確かな強さで見えました。
わかっているTsaiら(2023年、Nature)[7]
同じWASP-39bの空気にある二酸化硫黄は、恒星の光による化学反応(光化学)でできたと説明できることが示されました。系外惑星で光化学の産物がはっきり見つかったのは初めてです。
どうやって: 波長4.05マイクロメートルの吸収を、いくつもの化学計算モデルと比べました。WASP-39bは土星くらいの重さで、温度は約1100Kの熱い惑星です。
有力な仮説Greeneら(2023年、Nature)、NASA(2023年)[8][9]
地球くらいの大きさの岩石惑星TRAPPIST-1bの昼側の温度は約500Kで、濃い大気はほとんどないか、まったくないと考えられます。
どうやって: 惑星が恒星の後ろに隠れるときの、わずかな赤外線の減り方を5回測りました。熱が夜側に運ばれていないことから、熱を運ぶ大気がないと判断されました。
03 数字と例えでいうとどれくらい遠く、どれくらい昔の光なのか?
最も遠い銀河の1つの光は、ビッグバンから約3億年後に出たものです。宇宙の歴史約138億年を1年にたとえると、1月8日ごろにあたります。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 主鏡の直径 | 6.5メートル(ハッブルは2.4メートル)[2] | ハッブルの約2.7倍 |
| 望遠鏡のいる場所 | 地球から約150万キロ[1] | 月までの距離(約38万キロ)の約4倍 |
| 分光で確かめた遠い銀河 | 赤方偏移14.32、ビッグバンから約3億年後[5] | 宇宙の歴史を1年にすると、1月8日ごろ |
| その銀河の半径 | 260パーセク[5] | 光の速さで進んでも約850年かかる長さ |
| WASP-39bの二酸化炭素 | 26シグマ[6] | 天文学で「発見」とする目安の5シグマを大きく超える |
| TRAPPIST-1bの昼側 | 約500K[9] | 約230℃。水が沸く温度の2倍以上 |
例えは、3億年÷138億年×365日≒7.9日、260パーセク×3.26≒850光年、500K−273≒227℃として計算しました。宇宙の年齢の測り方は宇宙の年齢138億年はどうやって測ったのかで書いています。
04 まだわかっていないことウェッブ望遠鏡でも、まだ謎なのは何?
宇宙のはじめに、明るい銀河がなぜこれほど早く育ったのかは、まだわかっていません。論文が見直しを求めているのは銀河のでき方のモデルで、ビッグバンの考え方そのものではありません。
- 明るい銀河は、なぜ早く育ったのかCarnianiらは、明るい銀河が予想より多く、ブラックホールの光だけでは説明しきれないとしました[5]。星が予想より効率よく生まれたのかなど、理由はまだ決まっていません。ビッグバンを支える証拠はビッグバンの証拠の記事にまとめています。
- 赤くて小さな天体の正体は何かLabbéらは、ビッグバンから5〜7億年後に太陽の100億倍を超える重さの銀河の「候補」を報告し、分光での確認が必要だと書きました[10]。その後、赤くて小さな天体の一部では、中心で育つブラックホールの光が分光で見つかっています[11]。重さの見積もりが変わる可能性があり、正体は議論が続いています。
- 岩石惑星は空気を持てるのかTRAPPIST-1bには濃い大気がなさそうだとわかりました[8]。ほかの岩石惑星が空気を保てるかは、1つずつ観測している途中です。
05関連する記事
06よくある質問
ウェッブ望遠鏡の発見で、ビッグバン宇宙論は崩れた?
崩れていません。ビッグバンから約3億年後に明るい銀河が予想より多く見つかりましたが、論文の著者らが見直しが必要だとしているのは、銀河のでき方のモデルです。
ウェッブ望遠鏡とハッブル望遠鏡は何が違う?
ウェッブ望遠鏡の主鏡は直径6.5メートルで、ハッブルの2.4メートルの約2.7倍です。ウェッブは赤外線が得意で、地球から約150万キロ離れた場所にいます。ハッブルは地上約560キロを回っています。
ウェッブ望遠鏡が見つけた一番遠い銀河は?
分光で距離が確かめられた銀河では、2024年に報告された赤方偏移14.32の銀河が最も遠いものの1つです。ビッグバンから約3億年後の姿を見ていることになります。
ウェッブ望遠鏡は宇宙人の証拠を見つけた?
見つけていません。惑星K2-18bで生命に関係するかもしれない気体の報告がありましたが、別の研究チームの再分析では確かな証拠はないとされ、議論が続いています。
出典
- NASA. James Webb Space Telescope(ミッション紹介ページ). https://science.nasa.gov/mission/webb/
- NASA Scientific Visualization Studio. Primary Mirror Size Comparison Between Webb and Hubble. https://svs.gsfc.nasa.gov/13521
- Rigby, J. et al. (2023). The Science Performance of JWST as Characterized in Commissioning. Publications of the Astronomical Society of the Pacific 135, 048001. https://doi.org/10.1088/1538-3873/acb293
- Curtis-Lake, E. et al. (2023). Spectroscopic confirmation of four metal-poor galaxies at z = 10.3–13.2. Nature Astronomy 7, 622–632. https://doi.org/10.1038/s41550-023-01918-w
- Carniani, S. et al. (2024). Spectroscopic confirmation of two luminous galaxies at a redshift of 14. Nature 633, 318–322. https://doi.org/10.1038/s41586-024-07860-9
- JWST Transiting Exoplanet Community Early Release Science Team (2023). Identification of carbon dioxide in an exoplanet atmosphere. Nature 614, 649–652. https://doi.org/10.1038/s41586-022-05269-w
- Tsai, S.-M. et al. (2023). Photochemically produced SO2 in the atmosphere of WASP-39b. Nature 617, 483–487. https://doi.org/10.1038/s41586-023-05902-2
- Greene, T. P. et al. (2023). Thermal emission from the Earth-sized exoplanet TRAPPIST-1 b using JWST. Nature 618, 39–42. https://doi.org/10.1038/s41586-023-05951-7
- NASA (2023). NASA's Webb Measures the Temperature of a Rocky Exoplanet. https://science.nasa.gov/missions/webb/nasas-webb-measures-the-temperature-of-a-rocky-exoplanet/
- Labbé, I. et al. (2023). A population of red candidate massive galaxies ~600 Myr after the Big Bang. Nature 616, 266–269. https://doi.org/10.1038/s41586-023-05786-2
- Kocevski, D. D. et al. (2023). Hidden Little Monsters: Spectroscopic Identification of Low-mass, Broad-line AGNs at z > 5 with CEERS. The Astrophysical Journal Letters 954, L4. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ace5a0


