系外惑星の名前はどう付けるのか、日本が名付けた星も

系外惑星には、2種類の名前があります。研究で使う「51 Peg b」のような記号と、「ディミディウム」のような呼び名です。記号は星の名前に、見つかった順のb・c・dを付けたもの。呼び名は国際天文学連合(IAU、世界の天文学者の団体)が世界から募集して決めていて、日本からの提案も5組が採用されています。
3行でわかる
- 系外惑星の記号は「星の名前+小文字」。その星で最初に見つかった惑星がb、次がc。同時に見つかったときは星に近い順に付ける。
- 国際天文学連合は2015年・2019年・2022年に呼び名を公募し、19・112・20の惑星系に名前が付いた。呼び名は記号の代わりではなく、並べて使える。
- 日本からは2015年に4組、2019年に1組が採用された。2019年はかんむり座の恒星HD 145457が「カムイ」、その惑星が「ちゅら」になった。
01 わかっていること系外惑星の名前は、どういう決まりで付くの?
記号は「星の名前」と「小文字1つ」でできています。小文字はその星で見つかった順で、最初の惑星がb、2番目がc、3番目がdです。
国際天文学連合によると、記号はふつう2つの部分でできています[1]。前半は星の名前で、星のカタログの番号や、見つけた望遠鏡の名前が使われます。後半は小文字で、最初に見つかった惑星がbです。aを使わないのは、星そのものをAとして扱うことが多いからです[2]。
NASAによると、同じ星で一度に何個も見つかったときは、星に近いものから順にb、c、dと付けます[2]。ただし後から内側に見つかった惑星は、外側の惑星より後の文字になります。国際天文学連合も、cがbより星に近いこともあると説明しています[1]。
たとえば「HD 189733 b」のHDは、ヘンリー・ドレイパー星表という星のカタログです。189733はその189,733番目の星という意味です[2]。「Kepler-186f」はケプラー宇宙望遠鏡、「CoRoT-7b」はコロー衛星が見つけた星の番号から来ています[1]。
国際天文学連合は名前を独占しておらず、誰でも好きな呼び方をしてよいとしています[1]。そのうえで、世界で通じる呼び名を公募で決めています。公募の名前は4〜16文字で、商品名、存命の人や亡くなって100年たたない人の名前、ペットの名前などは使えません[13]。
02 どうやってわかったのか呼び名は、だれがどうやって決めたの?
国際天文学連合が「NameExoWorlds」という公募を3回行い、世界の天文クラブや一般の人の提案と投票で決めました。日本の提案は、日本の観測で見つかった惑星に付いています。
わかっている国際天文学連合(2015年12月発表)[3][4]
1回目の公募で、19の惑星系の14個の恒星と31個の惑星に名前が付きました。ペガスス座51番星bは「ディミディウム」、その星は「ヘルヴェティオス」になりました。日本からは、いるか座18番星(ムシカ)と惑星(アリオン)など4組が採用されました。
どうやって: 天文クラブなどの団体が名前を提案し、世界の一般の人が投票しました。日本の提案「アマテラス」は小惑星の名前と重なるため、「アマテル」に変えて採用されています。
わかっているSatoら(2007年・2008年、The Astrophysical Journal/日本天文学会欧文研究報告)[10][11]
2015年に日本が名付けた4つの惑星は、どれも岡山天体物理観測所の観測で見つかった惑星でした。たとえばわし座クサイ星bは、重さが木星の2.8倍以上で、約137日で1周します。
どうやって: 視線速度法(惑星に引っぱられた星のふらつきを測る方法)で、年をとって大きくなった星を観測しました。この方法でわかるのは重さの下限です。
わかっている国際天文学連合(2019年12月発表)[5][6]
2回目の公募では、参加した112の国と地域に1つずつ惑星系が割り当てられ、112組の名前が決まりました。日本の恒星HD 145457は「カムイ」、惑星HD 145457 bは「ちゅら」です。
どうやって: 各国の委員会が国内で名前を集めて絞り込みました。世界で78万人以上が参加しました。カムイはアイヌ語で精神的な力を持つ存在、ちゅらは琉球・沖縄の言葉で自然の美しさを表す言葉と説明されています。
わかっているSatoら(2010年、日本天文学会欧文研究報告)[12]
「ちゅら」と名付けられたHD 145457 bは、重さが木星の2.9倍以上のガスの惑星で、約176日で1周します。すばる望遠鏡と岡山天体物理観測所の観測で見つかりました。
どうやって: 視線速度法です。星は太陽の約1.9倍の重さの、年をとった星です。
わかっている国際天文学連合 恒星名ワーキンググループ(星名カタログ)[9]
日本の公募の結果は、はじめ「Kamui」でした。北海道アイヌ協会と相談したうえで、つづりを「Kamuy」に改めることが認められました。
どうやって: 国際天文学連合が正式に認めた恒星の名前の一覧に、承認日(2019年12月17日)とともに記録されています。
03 数字と例えでいうとどんな名前が、どれくらいあるの?
SEADICEがNASAの全6,451件を数えると、名前の前半で最も多いのは「Kepler」で2,759個でした。末尾の文字はbが4,785個で、いちばん後ろの文字はhでした。
NASA Exoplanet Archiveの全件表(6,451件、2026年10月20日取得)の惑星名を、最初のハイフンかスペースまでで区切って数えました[8]。アーカイブは呼び名ではなく記号で載せています。
| 名前の前半 | 個数 | どういう名前か |
|---|---|---|
| Kepler | 2,759 | ケプラー宇宙望遠鏡の番号。2,719個がトランジット法で発見 |
| TOI | 869 | TESS衛星の候補の番号。815個がトランジット法 |
| HD | 832 | ヘンリー・ドレイパー星表。734個が視線速度法 |
| K2 | 486 | ケプラー望遠鏡の延長観測「K2」 |
| WASP | 188 | 地上の観測計画WASP。180個がトランジット法 |
| GJ | 149 | グリーゼ星表(近くの星のカタログ) |
末尾の文字で数えると、bが4,785個、cが1,073個、dが345個でした。hまで付いた惑星は5個(TRAPPIST-1 hなど)で、iはありませんでした[8]。惑星を持つ星は4,847個なので、公募で名前が付いた151の惑星系(19+112+20)[3][5][7]は約3%です(計算)。
日本が名付けた5組は次のとおりです。距離はアーカイブのパーセクの値に3.26をかけて光年にしました[3][6][8]。
| 記号 | 恒星の呼び名 | 惑星の呼び名 | 距離 |
|---|---|---|---|
| いるか座18番星 b | Musica(ムシカ) | Arion(アリオン) | 約249光年 |
| おうし座イプシロン星 b | Ain(もとからの名前) | Amateru(アマテル) | 約155光年 |
| HD 81688 b | Intercrus(インテルクルス) | Arkas(アルカス) | 約280光年 |
| わし座クサイ星 b | Libertas(リベルタス) | Fortitudo(フォルティトゥド) | 約183光年 |
| HD 145457 b | Kamuy(カムイ) | Chura(ちゅら) | 約441光年 |
カタカナの読みは目安です。名前のついた惑星を近い順に探したいときは、系外惑星 全6,451件の一覧で記号を検索できます。
04 まだわかっていないこと名前の付いた惑星について、まだわからないことは?
日本が名付けた5つの惑星は、本当の重さも大きさもまだわかっていません。記号の文字も見つかった順なので、その星にまだ見つかっていない惑星があるかはわかりません。
- 本当の重さと大きさ5つとも視線速度法で見つかったため、わかっているのは重さの下限だけです[10][11][12]。星の前を横切らないので、大きさも測れていません。
- その星に、ほかの惑星はあるのか文字は見つかった順で、星からの距離の順ではありません[1]。たとえばかに座55番星eは、1996年に見つかったbより後に見つかりましたが、いちばん内側を回っています[8]。今あるbだけの星にも、まだ見つかっていない惑星があるかもしれません。
- 候補の惑星はどうなるのか「惑星らしい信号」があっても、確かめられるまでは記号の付いた惑星の一覧に入りません。たとえばいちばん近い系外惑星の星を回るとされた惑星cは、2026年10月時点でまだ確かめられていません。
05関連する記事
06よくある質問
系外惑星の名前についている「b」は何?
その星のまわりで最初に見つかった惑星という意味です。2番目に見つかった惑星がc、3番目がdになります。同時に見つかったときは、星に近い順にb、c、dと付けます。文字は見つかった順なので、星からの距離の順とは限りません。
日本が名前を付けた系外惑星はある?
あります。国際天文学連合の公募で、2015年に日本からの提案4組、2019年に1組が採用されました。2019年は、かんむり座の恒星HD 145457がカムイ、その惑星がちゅらと名付けられました。
系外惑星に自分で名前を付けられる?
国際天文学連合は名前を独占しておらず、誰でも好きな呼び方をしてよいとしています。ただし世界で通じる呼び名は、国際天文学連合の公募などで決まります。公募には、4〜16文字、商品名や存命の人の名前は不可などのルールがあります。
Kepler-186fの「Kepler」は何?
惑星を見つけたNASAのケプラー宇宙望遠鏡の名前です。系外惑星の名前の前半は、星のカタログの番号か、見つけた望遠鏡や観測計画の名前であることが多いです。
出典
- International Astronomical Union. Naming Exoplanets. https://iauarchive.eso.org/public/themes/naming_exoplanets/
- NASA. How Do Exoplanets Get Their Names? https://science.nasa.gov/exoplanets/how-do-exoplanets-get-their-names
- International Astronomical Union (2015). Final Results of NameExoWorlds Public Vote Released(iau1514). https://iauarchive.eso.org/news/pressreleases/detail/iau1514/
- IAU NameExoWorlds. 2015 Approved Names. https://nameexoworlds.iau.org/2015approved-names
- International Astronomical Union (2019). IAU100 NameExoWorlds(iau1912). https://iauarchive.eso.org/news/pressreleases/detail/iau1912/
- IAU NameExoWorlds. 2019 Approved Names(一覧表を含む). https://nameexoworlds.iau.org/2019approved-names
- IAU NameExoWorlds. 2022 Approved Names. https://nameexoworlds.iau.org/2022approved-names
- NASA Exoplanet Archive. Planetary Systems Composite Parameters(全件データ、2026年10月20日取得). https://exoplanetarchive.ipac.caltech.edu/
- IAU Working Group on Star Names. IAU Catalog of Star Names (IAU-CSN). https://www.pas.rochester.edu/~emamajek/WGSN/IAU-CSN.txt
- Sato, B., Izumiura, H., Toyota, E., et al. (2007). A Planetary Companion to the Hyades Giant ε Tauri. The Astrophysical Journal 661, 527–531. https://doi.org/10.1086/513503
- Sato, B., Izumiura, H., Toyota, E., et al. (2008). Planetary Companions around Three Intermediate-Mass G and K Giants: 18 Delphini, ξ Aquilae, and HD 81688. Publications of the Astronomical Society of Japan 60, 539–550. https://doi.org/10.1093/pasj/60.3.539
- Sato, B., Omiya, M., Liu, Y., et al. (2010). Substellar Companions to Evolved Intermediate-Mass Stars: HD 145457 and HD 180314. Publications of the Astronomical Society of Japan 62, 1063–1069. https://doi.org/10.1093/pasj/62.4.1063
- IAU NameExoWorlds. Naming Rules. https://www.nameexoworlds.iau.org/naming-rules


