系外惑星と生命

生命は宇宙から来たのか、パンスペルミア説を確かめる

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炭素を多く含むマーチソン隕石のかけら
Photo: United States Department of Energy; uploaded en wikipedia by en:User:Carl Hender / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

地球の生命は、隕石などに乗って宇宙からやって来た。この考えを「パンスペルミア説」と言います。結論から言うと、宇宙から生き物が地球に来た証拠は、見つかっていません。わかっているのは、生命の「材料」が宇宙から降ってきていることと、一部の微生物が宇宙の厳しい環境にある程度耐えられることです。

3行でわかる

  1. 宇宙から生き物が地球に来たという証拠は、まだ1つもない。
  2. 隕石や小惑星の砂からは、アミノ酸やDNA・RNAの部品が見つかっている。どれも生き物なしでできたものと考えられている。
  3. 岩の中や固まりになった微生物は、打ち上げの衝撃や宇宙空間にある程度耐えた。ただし、惑星から惑星まで生きたまま運ばれた例は確かめられていない。

01 わかっていること生命が宇宙から来たという証拠はある?

生き物が宇宙から来た証拠はありません。宇宙から来たとわかっているのは、アミノ酸やDNA・RNAの部品のような、生命の材料になる物質です。

パンスペルミア説には、大きく3つの考え方があります。1つ目は、材料が宇宙から来たという考え。2つ目は、微生物が岩に乗ってほかの惑星から来たという考えです。3つ目は、1973年にクリックとオーゲルが示した、どこかの文明がわざと微生物を送ったという考えです[7]。

このうち観測で確かめられているのは、1つ目の「材料」だけです。隕石や、はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウの砂、NASAが持ち帰ったベンヌの砂から、生命の材料が見つかっています(リュウグウの砂から何がわかったのか)。

2つ目と3つ目は、生き物そのものの移動の話です。こちらは証拠がありません。なお、仮に生命が宇宙から来たとしても、その生命が最初にどこでどう生まれたかという問いは残ります(生命はどうやって生まれたのか)。

02 どうやってわかったのかどんな研究で確かめてきたの?

隕石や小惑星の砂の成分を調べる研究と、微生物を衝撃や宇宙空間にさらして生き残るかを見る実験の、2つの方向から調べられています。

わかっているKvenvoldenら(1970年、Nature)[1]

マーチソン隕石から、地球の外でできたと考えられるアミノ酸と炭化水素が見つかりました。隕石の中の生命の材料を示した、早い時期の報告です。

どうやって: 隕石を砕いて成分を分析しました。見つかったのは材料の分子で、生き物ではありません。

わかっているCallahanら(2011年、PNAS)、Obaら(2022年、Nature Communications)[2][3]

炭素を多く含む隕石から、DNAやRNAの部品(核酸塩基)が見つかりました。2022年の研究では、シトシン・ウラシル・チミンも含めて、1兆分の1の量まで測っています。

どうやって: Callahanらは12個の隕石を調べ、地球ではまれな部品も見つけました。同じ組み合わせがシアン化アンモニウムの反応でもできたことから、生き物なしで小惑星の中でできたと考えています。

わかっているGlavinら(2025年、Nature Astronomy)[4]

小惑星ベンヌの砂から、地球の生き物が使う20種類のアミノ酸のうち14種類と、DNAとRNAに使われる5種類の塩基がすべて見つかりました。

どうやって: 探査機オシリス・レックスが持ち帰り、地球の生き物にほとんど触れていない砂を調べました。生き物が使わない種類のアミノ酸は、左手型と右手型がほぼ同じ量でした。著者らは、成分の割合から、低い温度の化学反応でできたと考えています。

有力な仮説McKayら(1996年)→Steeleら(2022年)、いずれもScience[5][6]

火星から来た隕石ALH84001に、昔の火星の生き物の跡かもしれない構造があると1996年に報告されました。2022年の研究は、その有機物は水と岩の反応で、生き物なしにできたと結論しました。

どうやって: Steeleらは、有機物と鉱物がどう並んでいるかを、ナノメートル(100万分の1ミリ)の大きさで調べました。反応は39億〜41億年前の火星で起きたとしています。

有力な仮説Horneckら(2008年、Astrobiology)[8]

岩にはさんだ細菌の胞子や地衣類は、隕石が惑星からはじき飛ばされるときと同じくらいの、5〜40ギガパスカルの衝撃を受けても一部が生き残りました。

どうやって: 実験室で、火星の岩に似た石にはさんだ微生物に衝撃を与えました。藍藻(光合成をする細菌)は5〜10ギガパスカルまででした。確かめたのは、惑星から飛び出す最初の段階だけです。

有力な仮説Kawaguchiら(2020年、Frontiers in Microbiology)[9]

乾かして固めた放射線に強い細菌(デイノコッカス)は、国際宇宙ステーションの外で3年間宇宙にさらされても、厚さ0.5ミリの固まりで生きていました。

どうやって: 日本の「たんぽぽ」計画で、固まりの厚さを変えて1〜3年さらしました。著者らは、直径1ミリの固まりなら2〜8年耐えられると見積もっています(計算による推定です)。

03 数字と例えでいうと宇宙から来たものの量や、耐えた衝撃はどれくらい?

小惑星の砂からはアミノ酸14種類と塩基5種類が見つかっています。微生物が耐えた衝撃は最大約40ギガパスカルで、1平方センチに約400トンがかかる強さです。

項目数字身近な例えでいうと
ベンヌの砂のアミノ酸[4]生き物が使う20種類のうち14種類7割(計算)。ただし生き物ではなく材料
ベンヌの砂のDNA・RNAの塩基[4]5種類すべてリュウグウの砂ではウラシルが見つかっている
隕石の塩基を測った細かさ[3]ppt(1兆分の1)の単位1トンの中の1マイクログラム(100万分の1グラム)を見分ける細かさ(計算)
胞子・地衣類が耐えた衝撃[8]約5〜40ギガパスカル40ギガパスカルは約39万気圧。1平方センチに約408トン(計算)
クマムシが耐えた衝撃[10]1.14ギガパスカルまで約1万1000気圧。1平方センチに約12トン(計算)
細菌の固まりが宇宙で生きていた期間[9]3年(厚さ0.5ミリ)シャープペンの芯の太さくらいの厚さ

気圧と重さは、1気圧=10万1325パスカル、重さは地球の重力(1キロの物に9.8ニュートン)で計算しました。シャープペンの芯は、0.5ミリの芯と比べています。動物の中で、クマムシが宇宙でどこまで耐えたかはクマムシは宇宙で生きられるのかにまとめています。

04 まだわかっていないことパンスペルミア説で、まだ謎なのは?

生き物が惑星から惑星へ、生きたまま運ばれうるのかはわかっていません。地球の生命の材料のうち、どれだけが宇宙から来たのかも決着していません。

05関連する記事

06よくある質問

パンスペルミア説とは?

地球の生命は、宇宙から隕石などに乗ってやって来たとする考えです。生命の材料が宇宙から来たという考え、微生物が岩に乗ってほかの惑星から来たという考え、どこかの文明がわざと送ったという考えなどがあります。生き物が来たという証拠はありません。

隕石から生き物が見つかったことはある?

確かめられた例はありません。見つかっているのは、アミノ酸やDNA・RNAの部品など、生命の材料になる分子です。火星から来た隕石の中の構造が生き物の跡かもしれないと報告されたこともありますが、のちの研究で、生き物なしでできたと説明されています。

微生物は宇宙空間で生きられる?

条件つきで、ある程度は耐えられます。乾かして固めた細菌は、国際宇宙ステーションの外で3年間さらされても生きていました。ただし、宇宙で増えたわけではなく、惑星から惑星へ生きたまま運ばれた例も確かめられていません。

リュウグウやベンヌの砂は、生命が宇宙から来た証拠?

生き物が来た証拠ではありません。砂からはアミノ酸や塩基など生命の材料が見つかりましたが、生き物ではなく化学反応でできたと考えられています。材料が宇宙から運ばれた可能性を示す手がかりです。

出典

  1. Kvenvolden, K., Lawless, J., Pering, K., et al. (1970). Evidence for Extraterrestrial Amino-acids and Hydrocarbons in the Murchison Meteorite. Nature 228, 923–926. https://doi.org/10.1038/228923a0
  2. Callahan, M. P., Smith, K. E., Cleaves, H. J., et al. (2011). Carbonaceous meteorites contain a wide range of extraterrestrial nucleobases. PNAS 108, 13995–13998. https://doi.org/10.1073/pnas.1106493108
  3. Oba, Y., Takano, Y., Furukawa, Y., et al. (2022). Identifying the wide diversity of extraterrestrial purine and pyrimidine nucleobases in carbonaceous meteorites. Nature Communications 13, 2008. https://doi.org/10.1038/s41467-022-29612-x
  4. Glavin, D. P., Dworkin, J. P., Alexander, C. M. O’D., et al. (2025). Abundant ammonia and nitrogen-rich soluble organic matter in samples from asteroid (101955) Bennu. Nature Astronomy 9, 199–210. https://doi.org/10.1038/s41550-024-02472-9
  5. McKay, D. S., Gibson, E. K., Thomas-Keprta, K. L., et al. (1996). Search for Past Life on Mars: Possible Relic Biogenic Activity in Martian Meteorite ALH84001. Science 273, 924–930. https://doi.org/10.1126/science.273.5277.924
  6. Steele, A., Benning, L. G., Wirth, R., et al. (2022). Organic synthesis associated with serpentinization and carbonation on early Mars. Science 375, 172–177. https://doi.org/10.1126/science.abg7905
  7. Crick, F. H. C., Orgel, L. E. (1973). Directed panspermia. Icarus 19, 341–346. https://doi.org/10.1016/0019-1035(73)90110-3
  8. Horneck, G., Stöffler, D., Ott, S., et al. (2008). Microbial Rock Inhabitants Survive Hypervelocity Impacts on Mars-Like Host Planets: First Phase of Lithopanspermia Experimentally Tested. Astrobiology 8, 17–44. https://doi.org/10.1089/ast.2007.0134
  9. Kawaguchi, Y., Shibuya, M., Kinoshita, I., et al. (2020). DNA Damage and Survival Time Course of Deinococcal Cell Pellets During 3 Years of Exposure to Outer Space. Frontiers in Microbiology 11, 2050. https://doi.org/10.3389/fmicb.2020.02050
  10. Traspas, A., Burchell, M. J. (2021). Tardigrade Survival Limits in High-Speed Impacts—Implications for Panspermia and Collection of Samples from Plumes Emitted by Ice Worlds. Astrobiology 21, 845–852. https://doi.org/10.1089/ast.2020.2405