星座の形は変わるのか、10万年後の北斗七星

星座の星は止まっているように見えますが、どの星も宇宙の中をそれぞれの向きに動いています。人の一生では気づけないほどゆっくりですが、10万年たつと北斗七星のひしゃくは、柄が折れ曲がった形に変わります。星の動きを測ったカタログを使って、条件つきで計算しました。
3行でわかる
- 星は空の上を少しずつ動いている(固有運動)。北斗七星の星は1年に0.09〜0.14秒角ほどで、10万年では2.6〜3.9度、満月5〜8個分動く。
- 真ん中の5つの星は同じ方向へ一緒に動き、両はしのドゥーベとアルカイドは反対へ動く。ヒッパルコス衛星の値で計算すると、10万年後はひしゃくの柄が大きく曲がり、口が広がる。
- この計算は、星が今の速さのまま真っすぐ進むと仮定したもの。星の速さの測定は、ガイア衛星の新しいデータ(2026年12月公開予定)でさらに細かくなる。
01 わかっていること星座の形は、ずっと同じなの?
同じではありません。星座の星はそれぞれ違う向きと速さで動いているので、形は少しずつ変わります。北斗七星の場合、目で見て形が変わったとわかるには数万年かかります。
星が空の上を少しずつ動くことを固有運動といいます。ヒッパルコス衛星は、明るい星の位置をくり返し測り、1年あたりの動きをカタログにまとめました[1][6]。北斗七星の星は、1年に0.09〜0.14秒角ほど動いています(1秒角は1度の3600分の1)。
北斗七星の星は、地球から約80〜123光年とばらばらの距離にあります。真ん中の5つの星は、おおぐま座運動星団という、同じ方向へ一緒に動く星の集団の仲間です[3]。両はしのドゥーベとアルカイドはこの集団に入っておらず、動く向きが違います。
02 どうやってわかったのか星の動きは、どうやって測るの?
人工衛星で星の位置を何年もくり返し測ると、空の上の動き(固有運動)がわかります。近づく・遠ざかる速さは、星の光の色のずれから測ります。この2つで、星が立体的にどう動くかを計算できます。
わかっているvan Leeuwen(2007年、Astronomy & Astrophysics)[1][6]
ヒッパルコス衛星の観測データを解析し直し、明るい星の位置・距離・固有運動を、もとのカタログより最大4倍ほど細かくしました。北斗七星の7つの星の値もこのカタログにあり、この記事の計算に使っています。
どうやって: 宇宙から星の位置を何度も測ったもとのデータを、新しい方法で解析し直しました。
わかっているGontcharov(2006年、Astronomy Letters)[2]
ヒッパルコス衛星のカタログにある3万5495個の星について、近づく・遠ざかる速さ(視線速度)を、たくさんの観測から同じ基準にそろえてまとめました。北斗七星の星は、どれも1秒に7〜15kmほどの速さで地球に近づいています。
どうやって: 星の光を色ごとに分けると、近づく星は青い側に、遠ざかる星は赤い側に線がずれます。世界の観測の結果を集め、差をそろえて一つの表にしました。
わかっているGaia Collaboration・Vallenariら(2023年、Astronomy & Astrophysics)[4]
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のガイア衛星の第3回データ(Gaia DR3)は、星の位置と固有運動に加え、3300万個を超える星の視線速度を新しく測りました。次のデータ(DR4)は、66か月分の観測をもとに2026年12月2日に公開予定です[5]。
どうやって: ガイア衛星が34か月間に集めた観測データを、国際チームが解析しました。
03 数字と例えでいうと10万年後の北斗七星は、どんな形になるの?
計算では、柄の先のアルカイドが大きく下へずれて柄が折れ曲がり、ひしゃくの口のドゥーベとメラクの間は今の約5.4度から約6.9度へ広がります。下の図は想像図ではなく、カタログの値から計算した位置です。
| 項目 | 値(計算) | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 10万年で動く角度 | メラク約2.6度〜ドゥーベ約3.9度 | 満月(約0.5度)5〜8個分 |
| ドゥーベが満月1個分動くまで | 約1万3000年 | 人の一生(80年)では、満月の約160分の1しか動かない |
| ひしゃくの口(ドゥーベ〜メラク) | 今 約5.4度 → 10万年後 約6.9度 | 口が約1.3倍に広がる |
| 柄の先(アリオト〜アルカイド) | 今 約10.5度 → 10万年後 約7.0度 | 柄が短く、折れ曲がる |
| 10万年前の柄(アリオト〜アルカイド) | 約15.6度 | 昔は柄がもっと長く伸びていた |
計算の条件: 星の位置・距離・固有運動はヒッパルコス衛星の再解析カタログ[6]、視線速度はGontcharovのまとめ[2]を使い、星は今の速さのまま真っすぐ進むとしました。位置は2000年の基準の座標で比べていて、地球の自転軸の首振り(歳差)による空全体の回転は入れていません。歳差で北の空の中心がどう移るかは北極星は変わるのかで計算しています。
同じ計算で5000年前と比べると、いちばん大きく動くドゥーベでも約0.19度で、満月の半分以下です。数千年の範囲なら、北斗七星の形はほとんど変わって見えません。
04 まだわかっていないことこの計算で、まだわからないことは?
星が10万年も真っすぐ同じ速さで進むとは限らず、連星の回り合う動きもこの計算には入っていません。明るい星の速さの測定も、まだ誤差があり、新しい観測で更新されていきます。
- 星の速さの誤差がどこまで小さくなるかミザールは近くに相棒の星がいる連星で、ヒッパルコス衛星の年周視差の誤差がほかの星より大きくなっています[6]。ガイア衛星のDR4(2026年12月予定)やDR5(2030年末より後の予定)で、どこまで細かくなるかはデータが出るまでわかりません[5]。
- ミザールとアルコルは一緒に動き続けるのか2010年の研究は、2つの星の実際の距離を約1.2光年とし、合わせて6つの星の集まりと考えられると提案しましたが、動きが合う確からしさは高くありませんでした[7]。重力で結びついているなら、10万年後も並んで見えるはずですが、まだ確かめられていません。
- 真っすぐ進むという仮定星は天の川銀河の重力を受けて、実際には大きな弧を描いて動いています。10万年分の曲がりや連星の回り合いを入れると形がどれだけ変わるかは、この記事の計算には含めていません。
05関連する記事
06よくある質問
星座の形は変わるの?
変わります。星はそれぞれ違う向きと速さで動いている(固有運動)ので、星座の形は少しずつ変わります。北斗七星の場合、形の変化が目でわかるには数万年かかります。
10万年後の北斗七星はどんな形?
ヒッパルコス衛星の値を使い、星が今の速さで真っすぐ進むとして計算すると、柄の先のアルカイドが大きくずれて柄が折れ曲がり、ひしゃくの口のドゥーベとメラクの間は約5.4度から約6.9度に広がります。
星座の形が変わるのに、なぜ昔と同じ星座が見えるの?
星の動きがとてもゆっくりだからです。北斗七星でいちばん大きく動くドゥーベでも、5000年で約0.19度、満月の半分以下しか動きません。数千年の範囲なら、形はほとんど変わって見えません。
北斗七星の星はなぜばらばらに動くの?
真ん中の5つの星は、おおぐま座運動星団という同じ方向へ一緒に動く集団の仲間ですが、両はしのドゥーベとアルカイドは仲間ではなく、ほぼ反対の向きへ動いているからです。
出典
- van Leeuwen, F. (2007). Validation of the new Hipparcos reduction. Astronomy & Astrophysics 474, 653–664. https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078357
- Gontcharov, G. A. (2006). Pulkovo Compilation of Radial Velocities for 35 495 Hipparcos stars in a common system. Astronomy Letters 32, 759–771. https://doi.org/10.1134/S1063773706110065
- King, J. R., Villarreal, A. R., Soderblom, D. R., Gulliver, A. F., Adelman, S. J. (2003). Stellar Kinematic Groups. II. A Reexamination of the Membership, Activity, and Age of the Ursa Major Group. The Astronomical Journal 125, 1980–2017. https://doi.org/10.1086/368241
- Gaia Collaboration, Vallenari, A., Brown, A. G. A., Prusti, T., et al. (2023). Gaia Data Release 3: Summary of the content and survey properties. Astronomy & Astrophysics 674, A1. https://doi.org/10.1051/0004-6361/202243940
- ESA. Gaia data release scenario. https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/release
- van Leeuwen, F. (2007). Hipparcos, the New Reduction of the Raw Data(カタログ I/311、VizieR). https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/311
- Mamajek, E. E., Kenworthy, M. A., Hinz, P. M., Meyer, M. R. (2010). Discovery of a Faint Companion to Alcor Using MMT/AO 5 μm Imaging. The Astronomical Journal 139, 919–925. https://doi.org/10.1088/0004-6256/139/3/919


