すばる・昴とは何か、日本の星の名前の由来

すばる望遠鏡の名前にもなっている「すばる」。じつは1000年以上前、平安時代の辞書や『枕草子』にも出てくる、日本で古くから使われてきた星の名前です。正体は、おうし座にある星の集まり「プレアデス星団」。名前の由来と、最新の観測でわかった星団の素顔を見ていきます。
3行でわかる
- すばる(昴)は、おうし座のプレアデス星団の日本での名前。国立天文台の資料では「統まる(集まって一つになる)」が語源とされるが、細かい成り立ちははっきりしない。
- 平安時代の辞書『和名類聚抄』に「須波流(すばる)」、清少納言の『枕草子』に「星はすばる」と書かれている。
- 星団までの距離は約136パーセク(約440光年)。2014年の電波観測とGaia衛星の結果が一致し、ヒッパルコス衛星の値との食い違いに決着がついた。
01 わかっていることすばるとは、どの星のこと?
すばるは、おうし座にあるプレアデス星団の日本の名前です。小さな星が6個ほどかたまって見え、国立天文台の資料では「統まる(集まって一つになる)」が語源とされますが、細かい成り立ちははっきりしません。
星団(同じガスの雲から生まれた星の集まり)のひとつです。西洋ではギリシャ神話の7人姉妹にちなんで「プレアデス」と呼ばれ、日本では「六連星(むつらぼし)」など、地域ごとに特徴をとらえた名前もつけられてきました[4]。
漢字の「昴」は、中国から入ってきた二十八宿(月の通り道にそって空を28に分けた星座)の「昴宿」から当てられたと、国立天文台の別の資料は説明しています[5]。ハワイにある国立天文台の大型望遠鏡の愛称「すばる」も、公募で選ばれた名前です[4]。
星団は冬の夜空の主役のひとつで、近くには冬の大三角も見えます。すばるの星たちは同じガスの雲から生まれた仲間で、今もまとまって見えています(星がガスの雲から生まれる仕組み)。
02 どうやってわかったのか名前の由来や星団の姿は、どうやって確かめたの?
名前の古さは、平安時代の辞書や随筆に書かれていることで確かめられます。距離と年齢は、電波望遠鏡とGaia衛星の測定、星にふくまれるリチウムの量から求められました。
わかっている源順『和名類聚抄』(平安時代中ごろ)。京都大学花山天文台の資料で紹介[6]
日本最初の百科事典とされる『和名類聚抄』の天の部に「昴星」の項があり、「和名須波流(すばる)」と書かれています。同じ部には、牽牛・織女・流星・天河(天の川)なども並んでいます。
どうやって: 平安時代の辞書の原文を、天文の歴史を調べた資料が読み下して紹介しています。宮中や貴族の間で知られていた星の名前を知る手がかりになります。
わかっている清少納言『枕草子』(西暦1000年前後)。京都大学花山天文台の資料で紹介[6]
「星はすばる。彦星。夕づつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからましかば、まいて。」という一節があります。すばるは、星の名前の先頭に挙げられています。
どうやって: 資料は、和名類聚抄のおよそ60〜70年後に書かれた作品として、この一節を原文と現代語で紹介しています。夕づつは宵の明星(金星)、よばひ星は流れ星のことです。
わかっているMelisら(2014年、Science)[1]
世界各地の電波望遠鏡をつないだ観測(VLBI)で、星団までの距離を136.2±1.2パーセク(約444光年)と測りました。ヒッパルコス衛星の値120.2±1.5パーセクとは合わないことを示しました。
どうやって: 星団の中の電波を出す星の位置を精密に測り、地球が太陽を回ることで生じるわずかな見かけの位置のずれ(年周視差)から距離を出しました。
わかっているGaia共同研究(2018年、Astronomy & Astrophysics)[2]
ヨーロッパのGaia衛星のデータで、プレアデス星団の仲間として1059個の星を選び、距離指数5.667(約136パーセク)を求めました。電波観測の値とほぼ同じです。
どうやって: Gaiaが測った星の位置・動き・年周視差のデータから星団の仲間を選び、星団全体の距離を求めました。
有力な仮説Dahm(2015年、The Astrophysical Journal)[3]
星団の年齢を約1億1200万年(±500万年)と見積もりました。
どうやって: 軽い星は、年をとると中のリチウムを燃やしてなくしていきます。星団の中で、リチウムが残っている星と消えた星の境目の明るさから年齢を求めました。年齢は求め方によって変わることがあるため、ここでは有力な見積もりとしています。
03 数字と例えでいうとすばるは、どれくらい遠くて若いの?
すばるまでは約440光年で、今見ている光は戦国時代の終わりごろに星を出た光です。年齢は約1億1200万年で、恐竜がいた時代に生まれた若い星団です。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 距離 | 136.2パーセク[1]、約136パーセク[2] | 約444光年。今見ている光は1580年代、戦国時代の終わりごろに星を出た光(計算) |
| 古い値との食い違い | ヒッパルコス衛星は120.2パーセク[1] | 差は約16パーセク(約52光年)、約12%の違い(計算) |
| 年齢 | 約1億1200万年[3] | 1億1200万年を1年に縮めると、人の一生(80年)は約23秒(計算) |
| 星団の仲間 | 1059個(Gaiaの解析に使われた数)[2] | 目で見える6個ほどの、170倍以上(計算) |
| 明るい星の明るさ | 1番目2.85等、6番目4.30等、7番目5.05等[8] | 6番目と7番目の差は0.75等で、明るさは約2倍ちがう(計算) |
1パーセクは約3.26光年として計算しました。明るさは、1等ちがうと約2.5倍ちがいます。6番目まではそろって明るく、7番目からぐっと暗くなるので、「6個ほど見える」という感覚と合います。
『枕草子』の一節に出てくる星を、今の言葉に置きかえると次のとおりです[6]。
04 まだわかっていないことすばるについて、まだ決着していないことは?
「すばる」という言葉の細かい成り立ちや、世界の多くの地域で「7人姉妹」と呼ばれる理由は、まだはっきりしていません。説明はあっても、確かめる決め手がないものがあります。
- 「すばる」の語源の細かいところ国立天文台の資料は「統まる(集まって一つになる)」が語源だとしています[4]。一方、別の資料は「統星」「すまる」とも言われ、首につけた玉飾りを連想してつけられた「ようだ」と書いています[5]。古い言葉の成り立ちは、書かれた記録が少なく、言い切れる形では残っていません。
- なぜ「7人姉妹」なのか多くの人の目には6個ほどしか見えないのに、多くの文化で「7人姉妹」と呼ばれています。Norrisらは、星が長い年月で動き、10万年ほど前は7個に見えていたのではないかという説を出していますが、書籍の章で示された仮説で、確かめられてはいません[7]。
- 星団の年齢の細かい値リチウムを使った見積もりは約1億1200万年ですが[3]、Dahmの論文も、星の磁気の活動が明るさの測定に与える影響を考えに入れて年齢を検討しており、細かい値は前提の置き方で動きます。
05関連する記事
06よくある質問
すばるとプレアデス星団は同じもの?
同じものです。おうし座にある星の集まり「プレアデス星団」を、日本では古くから「すばる(昴)」と呼んできました。西洋の名前はギリシャ神話の7人姉妹に、日本の名前は「統まる(集まって一つになる)」という言葉に由来するとされています。
すばるは肉眼で何個の星が見える?
暗い空なら6個ほどが見えます。ヒッパルコス衛星のカタログでは、明るい6個は2.85〜4.30等で、7番目の星は5.05等とぐっと暗くなります。街明かりのある場所では、もっと少なくなります。
すばるはいつ、どこに見える?
国立天文台の資料では、秋から冬にかけて見える星のかたまりとして紹介されています。おうし座の赤い1等星アルデバランの近くにあり、冬の宵には高い空に見えます。
枕草子の「星はすばる」はどんな意味?
清少納言が、星ならすばる、彦星、夕づつ(宵の明星=金星)、よばひ星(流れ星)が趣がある、と挙げた一節です。京都大学花山天文台の資料は、流れ星は尾がなければもっとよい、と続くと紹介しています。
出典
- Melis, C., Reid, M. J., Mioduszewski, A. J., Stauffer, J. R., Bower, G. C. (2014). A VLBI resolution of the Pleiades distance controversy. Science 345, 1029–1032. https://doi.org/10.1126/science.1256101
- Gaia Collaboration, Babusiaux, C., van Leeuwen, F., et al. (2018). Gaia Data Release 2: Observational Hertzsprung-Russell diagrams. Astronomy & Astrophysics 616, A10. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201832843
- Dahm, S. E. (2015). Reexamining the Lithium Depletion Boundary in the Pleiades and the Inferred Age of the Cluster. The Astrophysical Journal 813, 108. https://doi.org/10.1088/0004-637X/813/2/108
- 国立天文台 暦計算室. 貴重資料展示室058「すばる」と1882年の大彗星. https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/exhibition/058/
- 国立天文台 暦計算室. 貴重資料展示室007 すばる. https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/exhibition/007/
- 有本淳一. 京都天文史跡めぐり【2】清少納言の見た星空(京都大学 花山天文台). https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/hosizora/astron/astron2/astron2_P25-28.pdf
- Norris, R. P., Norris, B. R. M. (2021). Why Are There Seven Sisters? In: Advancing Cultural Astronomy, Springer(書籍の章). https://doi.org/10.1007/978-3-030-64606-6_11
- ESA (1997). The Hipparcos Catalogue(VizieR I/239、プレアデス星団の星の明るさ). https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/239


