ブラックホールの大きさはどれくらいか、地球をブラックホールにすると何センチか

地球をぎゅっと押し縮めてブラックホールにすると、直径は約1.8センチ。1円玉より少し小さい大きさです。ブラックホールの大きさは、ほぼ重さだけで決まります。重さが2倍なら、大きさも2倍です。
3行でわかる
- ブラックホールの「大きさ」は、光も出られなくなる境目(事象の地平面)の大きさ。回転していなければ、半径は太陽1個分の重さにつき約2.95km。
- 天の川銀河の中で星が一生を終えてできたもの(この記事の例では太陽の約10〜33倍)は、直径60〜190kmほど。銀河の中心にあるものは太陽の数百万〜数百億倍の重さで、太陽系より大きいものもある。
- 観測で重さが測られた中で最大級は、銀河Holm 15Aの中心にある太陽の約400億倍のもの。計算すると境目の半径は海王星の軌道の約26倍になる。
01 わかっていることブラックホールの大きさは何で決まる?
ブラックホールの大きさは重さで決まります。回転していなければ、境目の半径は「重さ×2×重力の定数÷光の速さの2乗」。太陽1個分の重さで約2.95kmです。
ブラックホールには、岩のような表面はありません。あるのは「ここより内側に入ると、光も外へ出られない」という境目です。これを事象の地平面と呼びます。
この境目の半径を初めて計算したのは、ドイツの天文学者シュワルツシルトです。1916年、アインシュタインの重力の理論(一般相対性理論)から、重さ1点のまわりの空間の形を解きました[1]。この半径は重さに比例するので、重さが10倍なら半径も10倍になります。
実際のブラックホールは回転していることが多く、回転していると境目の大きさは変わりますが、どう変わるかは測り方(座標の取り方)によって数字が違います。この記事の数字は、回転していないとした値です。
02 どうやってわかったのか見えないのに、重さをどうやって量ったの?
まわりを回る星やガスの動きから重さを量り、その重さから境目の大きさを計算します。重さが測れたブラックホールは、太陽の約10倍から約400億倍まであります。
わかっているSchwarzschild(1916年、プロイセン科学アカデミー紀要)[1]
重さが一点に集まると、そのまわりに「光も出られない境目」ができることを、一般相対性理論の式から示しました。境目の半径は重さに比例します。
どうやって: 方程式を手計算で解きました。理論の解であり、後の観測(下の撮影など)がこの予測と合っています。
わかっているMiller-Jonesら(2021年、Science)[2]
はくちょう座X-1のブラックホールは、太陽の約21.2倍の重さでした。距離を約7200光年(2.22キロパーセク)と測り直した結果、それまでの見積もりより重くなりました。
どうやって: 電波望遠鏡で星の位置のわずかな揺れを測り、距離を求めました。そこに、相手の星が回る速さの観測を組み合わせて重さを出しました。
わかっているEl-Badryら(2022年、MNRAS)/Gaia Collaboration・Panuzzoら(2024年、Astronomy & Astrophysics)[3][4]
ヨーロッパの位置天文衛星ガイアのデータから、光を出さない相手と回り合う星が見つかりました。相手の重さは太陽の約9.6倍(Gaia BH1)と約32.7倍(Gaia BH3)で、ブラックホールと結論されました。
どうやって: 星が見えない相手のまわりを回るときの、空の上での小さな揺れを測りました。揺れの大きさと周期から、相手の重さがわかります。
わかっているEvent Horizon Telescope(EHT)チーム(2019年・2022年、The Astrophysical Journal Letters)[5][6]
銀河M87の中心は太陽の約65億倍、天の川銀河の中心(いて座A*)は約400万倍の重さで、どちらも黒い影を囲む光の輪が撮影されました。輪の見かけの大きさは、一般相対性理論の予測と合っていました。
どうやって: 世界各地の電波望遠鏡を組み合わせ、地球ほどの大きさの望遠鏡として使いました。M87の重さは、撮影した輪とシミュレーションを比べて求めました。
有力な仮説Mehrganら(2019年、The Astrophysical Journal)[7]
銀河団Abell 85の中心にある銀河Holm 15Aに、太陽の約400億倍(誤差は約80億倍)のブラックホールがあると報告されました。星の動きから直接重さを量った中では、近くの宇宙で最大です。
どうやって: 銀河の中心付近の星の速さを分光観測で測り、模型と比べました。1つのチームの1つの方法による結果で、別の方法での確認はまだ多くありません。
03 数字と例えでいうとどれくらいの大きさになる?
地球の重さなら直径約1.8cm、太陽なら約5.9km、天の川銀河の中心なら太陽の直径の約17倍です。いちばん重いものは、半径が太陽から海王星までの約26倍になります(計算)。
| ブラックホール | 重さ(太陽=1) | 境目の直径(計算)と、身近な例え |
|---|---|---|
| 地球と同じ重さ(たとえ話) | 約0.000003 | 約1.8cm。1円玉(直径2cm)より少し小さい |
| 太陽と同じ重さ(たとえ話) | 1 | 約5.9km。歩いて1時間半ほどの距離 |
| Gaia BH1(へびつかい座)[3] | 約9.6 | 約57km |
| はくちょう座X-1[2] | 約21 | 約125km。新幹線(時速300km)で約25分の距離 |
| Gaia BH3(わし座)[4] | 約33 | 約190km |
| いて座A*(天の川銀河の中心)[6] | 約400万 | 約2400万km。太陽の直径の約17倍。水星の軌道の内側に十分収まる |
| M87の中心[5] | 約65億 | 約380億km。半径は太陽から海王星までの約4.3倍 |
| Holm 15Aの中心[7] | 約400億 | 半径は太陽から海王星までの約26倍 |
直径は「重さ1太陽分につき半径約2.95km」として計算しました。重いブラックホールほど、境目の内側の平均の密度は小さくなります。M87の中心のブラックホールでは、計算すると1立方メートルあたり約0.44kgで、地上の空気(約1.2kg)より軽くなります。
EHTが撮った黒い影は、境目そのものより大きく写ります。光が境目のまわりで曲がるためで、回転していない場合で境目の約2.6倍です(一般相対性理論の計算)。
04 まだわかっていないこと大きさについて、まだわからないことは?
ブラックホールがどこまで重く・軽くなれるのか、そして境目の内側がどうなっているのかは、まだわかっていません。
- いちばん重いブラックホールはどれか遠くの明るい銀河の中心には、ガスの動きから間接的に見積もった、さらに重い候補もあります。ただ見積もりの誤差が大きく、星の動きで直接量った例はまだ限られています。
- 太陽の数百倍〜数十万倍の「中くらい」のブラックホール星の重さほどのものと、銀河の中心の巨大なものの間の重さは、確かな例が少ないままです。巨大なブラックホールがどう育ったのかとも関わる謎です。
- 境目の内側はどうなっているか境目の内側からは光が出てこないため、観測できません。中心で何が起きているかは、重力と量子力学をまとめる理論ができるまで答えが出ないと考えられています。
05関連する記事
06よくある質問
地球をブラックホールにすると何センチになる?
直径約1.8センチです。回転していないブラックホールの境目の半径は、重さに比例し、太陽1個分の重さで約2.95kmです。地球の重さは太陽の約33万分の1なので、半径は約0.9cm、直径は約1.8cmになります(計算)。実際に地球がブラックホールになることはありません。
いちばん大きいブラックホールはどれくらい?
星の動きから重さを直接量った中で最大級は、銀河Holm 15Aの中心にある太陽の約400億倍のブラックホールです(Mehrganら 2019年)。境目の半径を計算すると、太陽から海王星までの距離の約26倍になります。間接的な見積もりではさらに重い候補もありますが、誤差が大きいです。
ブラックホールの写真の黒い部分が、ブラックホールの大きさ?
いいえ。黒い影は、光が強い重力で曲がるため、光も出られない境目より大きく見えます。回転していない場合、影の大きさは境目の約2.6倍です(一般相対性理論の計算)。
太陽はブラックホールになる?
なりません。太陽は重さが足りず、最後は白色矮星という小さな星になると考えられています。もし仮に同じ重さのまま縮めたとしても、直径約5.9kmになるだけで、地球を回す重力の強さは変わりません。
出典
- Schwarzschild, K. (1916). Über das Gravitationsfeld eines Massenpunktes nach der Einsteinschen Theorie. Sitzungsberichte der Königlich Preussischen Akademie der Wissenschaften, 189–196.(英訳: On the gravitational field of a mass point according to Einstein's theory, arXiv:physics/9905030) https://arxiv.org/abs/physics/9905030
- Miller-Jones, J. C. A. et al. (2021). Cygnus X-1 contains a 21-solar mass black hole—Implications for massive star winds. Science 371, 1046–1049. https://doi.org/10.1126/science.abb3363
- El-Badry, K. et al. (2022). A Sun-like star orbiting a black hole. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 518, 1057–1085. https://doi.org/10.1093/mnras/stac3140
- Gaia Collaboration, Panuzzo, P. et al. (2024). Discovery of a dormant 33 solar-mass black hole in pre-release Gaia astrometry. Astronomy & Astrophysics 686, L2. https://doi.org/10.1051/0004-6361/202449763
- Event Horizon Telescope Collaboration (2019). First M87 Event Horizon Telescope Results. I. The Shadow of the Supermassive Black Hole. The Astrophysical Journal Letters 875, L1. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ab0ec7
- Event Horizon Telescope Collaboration (2022). First Sagittarius A* Event Horizon Telescope Results. I. The Shadow of the Supermassive Black Hole in the Center of the Milky Way. The Astrophysical Journal Letters 930, L12. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ac6674
- Mehrgan, K. et al. (2019). A 40 Billion Solar-mass Black Hole in the Extreme Core of Holm 15A, the Central Galaxy of Abell 85. The Astrophysical Journal 887, 195. https://doi.org/10.3847/1538-4357/ab5856


