ブラックホール

ブラックホールの写真は本物か、イベント・ホライズン・テレスコープは何を撮ったのか

約5分で読めます

The Event Horizon Telescope (EHT) — a planet-scale array of eight ground-based radio telescopes forged through international collaboration —
Photo: Event Horizon Telescope / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

2019年4月10日、ブラックホールの「写真」が初めて公開されました。明るいリングの中に、黒い影が浮かぶ画像です。あれはカメラで一瞬を写した写真ではありません。それでも、想像で描いた絵でもなく、本物の観測データから作られた画像です。

3行でわかる

  1. 画像は、世界8か所の電波望遠鏡で2017年4月に観測したデータを、計算で1枚にしたもの。
  2. 写っているのは、ブラックホールのまわりで光るガスと、その中の黒い「影」。影は事象の地平面の約2.5倍の大きさ。
  3. 4つのチームが別々に画像を作り、どれも同じリングが出た。2022年には天の川銀河の中心のブラックホールも写った。

01 わかっていることブラックホールの写真は本物?

本物の観測データから作った画像です。イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)が世界8か所の電波望遠鏡で同時に観測し、そのデータを計算で1枚の画像にしました。画家が描く想像図とはちがいます。

EHTは1台の望遠鏡ではありません。ハワイ、メキシコ、アリゾナ、スペイン、チリ、南極の電波望遠鏡をつないだしくみです。遠く離れた望遠鏡のデータを組み合わせると、地球ほどの大きさの望遠鏡に近い細かさで見られます。

その細かさは、人の視力にすると約300万です[3]。月の表面に置いたゴルフボールが、地球から見分けられるほどです。

ふつうのカメラは、光を一度に受けて写します。EHTは、各地の望遠鏡が記録した電波を後で合わせ、計算で画像を組み立てます。だから「写真」というより「観測データから作った画像」と呼ぶのが正確です。

02 どうやってわかったのかEHTは何を撮り、どう確かめた?

EHTは、おとめ座の銀河M87の中心と、天の川銀河の中心を撮りました。どちらにも、明るいリングと暗い中心が写りました。偏りを防ぐため、別々のチームと別々の計算方法で画像を作り、同じ形になることを確かめています。

わかっているEHT共同研究チーム(2019、ApJL)[1]

M87の中心に、明るいリングと、その内側の暗い部分が写った。リングの見かけの直径は42マイクロ秒角(とても小さな角度の単位)。中心の重さは太陽の約65億倍と求まった。

どうやって: 波長1.3mmの電波で、別々の日に4回観測した。4回ともリングの大きさは変わらず、一般相対性理論で予想されるブラックホールの影の形と合っていた。

わかっている国立天文台(2019、発表)[3]

4つのチームが互いに独立して、3つの方法で画像を作った。どの画像にもブラックホールの影が現れた。日本のチームは約5万通りの画像を作り、結果が信頼できるかを確かめた。

どうやって: 同じデータから、計算のやり方を変えて何度も画像を作った。方法を変えても同じ形が出れば、計算のくせで作られた形ではないと言える。

わかっているEHT共同研究チーム(2022、ApJL)[2]

天の川銀河の中心「いて座A*」でも、直径約51.8マイクロ秒角のリングが写った。その形は、太陽の約400万倍の重さのブラックホールで予想される見え方と一致した。

どうやって: 同じ2017年の観測データを使った。重さ400万倍は、もともとまわりを回る星の動きから求められていた値で、まったく別の方法の答えが合ったことになる。

03 数字と例えでいうとブラックホールの影はどれくらいの大きさ?

M87のブラックホールの事象の地平面は直径400億km弱で、太陽と地球の距離の約270倍です。それでも遠すぎるため、地球からは月面の野球ボールほどの大きさにしか見えません。

項目値身近な例えでいうと
M87までの距離約5500万光年 [3][4]いま見ている電波は、約5500万年前に出発したもの
M87のブラックホールの重さ太陽の約65億倍 [1]いて座A*(太陽の約400万倍)の約1600倍
事象の地平面の直径400億km弱 [4]太陽と地球の距離(約1.5億km)の約270倍
リングの見かけの直径42マイクロ秒角 [1]月面に置いた野球ボールを、地球から見た大きさ [3]
見分けられる細かさ20マイクロ秒角 [3]人の視力でいうと約300万
望遠鏡1か所が1日に記録したデータ約350テラバイト [3][4]1テラバイトのハードディスク約350台分。ヘリウムを詰めた大容量ハードディスクに記録された
いて座A*までの距離約2万7000光年 [5]M87の約2000分の1の近さ

例えの計算: 野球ボールの直径を約7.3cm、月までを約38万kmとすると、見かけの大きさは約39マイクロ秒角で、リングの42マイクロ秒角に近くなります。

04 まだわかっていないことブラックホールの写真で、まだ謎なのは何?

いて座A*は、1時間もたたないうちに姿が変わることがわかりました。変化のようすや、ブラックホールがどれくらいの速さで回っているかは、まだくわしくわかっていません。

05関連する記事

06よくある質問

ブラックホールの写真は合成やCGなの?

CGや想像図ではありません。2017年4月に世界8か所の電波望遠鏡で同時に観測したデータを、計算で1枚の画像にしたものです。作り方に偏りがないよう、4つのチームが別々に画像を作り、どれも同じリングが出ることを確かめています。

写真の黒い部分は、ブラックホールそのもの?

黒い部分は「影」で、事象の地平面(光も出られなくなる境目)そのものではありません。まわりで光るガスの光が、強い重力で曲げられたり吸いこまれたりしてできる暗い部分です。影の大きさは、事象の地平面の約2.5倍です。

天の川銀河の中心のブラックホールも撮影された?

撮影されました。2022年5月12日、天の川銀河の中心にある「いて座A*」の画像が公開されました。地球から約2万7000光年先にあり、重さは太陽の約400万倍です。リングの見かけの直径は約51.8マイクロ秒角でした。

出典

  1. Event Horizon Telescope Collaboration (2019). First M87 Event Horizon Telescope Results. I. The Shadow of the Supermassive Black Hole. The Astrophysical Journal Letters 875, L1. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ab0ec7
  2. Event Horizon Telescope Collaboration (2022). First Sagittarius A* Event Horizon Telescope Results. I. The Shadow of the Supermassive Black Hole in the Center of the Milky Way. The Astrophysical Journal Letters 930, L12. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ac6674
  3. 国立天文台 (2019). 史上初、ブラックホールの撮影に成功(2019年4月10日発表). https://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190410-eht.html
  4. ESO (2019). Astronomers Capture First Image of a Black Hole(プレスリリース eso1907). https://www.eso.org/public/news/eso1907/
  5. ESO (2022). Astronomers reveal first image of the black hole at the heart of our galaxy(プレスリリース eso2208-eht-mw). https://www.eso.org/public/news/eso2208-eht-mw/