ブラックホール

ブラックホールは望遠鏡で見えるのか、はくちょう座X-1の場所

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はくちょう座の星空
Photo: Tk833 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

夏から秋の夜、日本では頭の真上近くを、本物のブラックホールがある場所が通ります。はくちょう座X-1です。ただ、望遠鏡を向けて見えるのは、ブラックホールと回り合う青白い星だけ。ブラックホールそのものは、どんな望遠鏡でも直接は見えません。

3行でわかる

  1. ブラックホールは光を出さず、見かけの大きさもごく小さいので、望遠鏡で「黒い玉」が見えることはない。わかるのは、まわりの星やガスへの影響。
  2. はくちょう座X-1は、太陽の約21倍のブラックホールと約41倍の星の組。星は8.9等で、肉眼では見えないが、双眼鏡や小さな望遠鏡なら点として見える。
  3. まわりのガスが出すX線は大気に吸われて地上に届かない。ブラックホールの「影」も、地球規模の電波望遠鏡でやっと撮れた。

01 わかっていることブラックホールは望遠鏡で見えるの?

直接は見えません。ブラックホールは光を出さないうえ、はくちょう座X-1の直径約125kmの境目は、約7200光年先では計算上ほとんど点にもならないほど小さいからです。

ブラックホールは、光も出られなくなる境目を持つ天体です。自分では光らないので、夜空の中に黒く浮かんで見えることもありません。

大きさの面でも見えません。はくちょう座X-1のブラックホールの境目の直径を計算すると約125kmです。約7200光年先からの見かけの大きさは、地球ほどの電波望遠鏡(EHT)が撮ったM87の影の輪の、約11万分の1しかありません(計算)[3][10]。

見えるのは「まわり」です。ブラックホールと回り合う星の動き、吸い込まれるガスが熱くなって出すX線が、そこにあることを教えてくれます。

02 どうやってわかったのか見えないのに、なぜそこにあるとわかるの?

X線を出す場所に、見えない重い相手と5.6日ごとに回り合う星があったからです。相手の重さが太陽の約21倍もあるのに光らないので、ブラックホールと考えられています。

わかっているBowyerら(1965年、Science)[1]

1964年、ロケットに積んだ観測装置で、宇宙から来るX線の源がいくつも見つかりました。その1つが、はくちょう座の方向のX線源でした。

どうやって: X線は大気に吸われて地上に届かないため、ロケットで大気の上まで装置を運んで観測しました[7]。

わかっているBolton(1972年、Nature)[2]

X線源の位置にある青白い星HDE 226868が、見えない相手と回り合っていることがわかりました。X線源の正体は、この組だと結論されました。

どうやって: 星の光を分光して、近づいたり遠ざかったりする動きを繰り返し測りました。同じ年に、別のチームも同じ結論を出しています。

わかっているMiller-Jonesら(2021年、Science)[3]

距離は約7200光年(2.22キロパーセク)、ブラックホールの重さは太陽の約21.2倍、相手の星は約40.6倍でした。2組は5.6日で1周しています。

どうやって: 電波望遠鏡で、1周分の6日間にわたって位置を精密に測りました。それまでの重さ(太陽の約14.8倍)は、距離を測り直したことで大きく変わりました[4]。

わかっているEl-Badryら(2022年、MNRAS)[5]

X線を出さない「眠った」ブラックホールも見つかっています。Gaia BH1は太陽の約9.6倍で、距離は約1600光年(480パーセク)。発表時点で知られている中で、いちばん近いブラックホールでした。

どうやって: 位置天文衛星ガイアで、太陽に似た星が見えない相手のまわりを185.6日で回る揺れを捉え、地上の分光観測で確かめました。

03 数字と例えでいうと星空のどこにある?小さな望遠鏡で何が見える?

はくちょう座X-1は、白鳥の首にある3.9等の星η(イータ)星から、満月の直径ほど離れた所にあります。見えるのは8.9等の星の点だけで、ブラックホールやX線は見えません。

場所星空の位置と明るさ家庭の道具で見えるもの
はくちょう座X-1[3][8]はくちょう座η星(3.9等)から北東へ約26分角。η星はアルビレオとサドルのほぼ真ん中。相手の星は8.9等肉眼の限界(約6等)の約15分の1の明るさ。双眼鏡や口径数cmの望遠鏡で、ふつうの星と同じ点に見える
Gaia BH3(わし座)[6][8]相手の星はGバンドで約11.2等。距離は約1900光年(590パーセク)肉眼の限界の約120分の1。望遠鏡で星の点として見えるだけ
Gaia BH1(へびつかい座)[5]相手の星はGバンドで約13.8等。距離は約1600光年肉眼の限界の約1300分の1。小さな望遠鏡では難しい暗さ
いて座A*(天の川銀河の中心)[9]いて座の方向。影の輪の見かけの大きさは約52マイクロ秒角見えない。EHTが波長1.3mmの電波で、世界の電波望遠鏡をつないで撮った

はくちょう座X-1は赤緯が約+35度なので、東京(北緯約35.7度)では南の空を通るとき、高さ約89.5度とほぼ真上に来ます(計算)。9月上旬なら夜9時ごろ(地方時)がその時刻です。明るさは「5等級違うと100倍」の決まりで計算しました。

04 まだわかっていないこと見えないブラックホールは、あといくつあるの?

天の川銀河にブラックホールがいくつあるかは、わかっていません。X線を出さず、回り合う星もいないものは、今の方法ではほとんど見つけられないからです。

05関連する記事

06よくある質問

ブラックホールは望遠鏡で見える?

直接は見えません。ブラックホールは光を出さず、見かけの大きさもごく小さいからです。はくちょう座X-1では、望遠鏡で見えるのはブラックホールと回り合う8.9等の青白い星(HDE 226868)だけです。

はくちょう座X-1はどこにある?

はくちょう座の白鳥の首にある3.9等の星η(イータ)星から、北東へ約26分角(満月の直径より少し小さい)の所です。η星は、くちばしのアルビレオと胸のサドルのほぼ真ん中にあります。日本では夏から秋の夜、頭の真上近くを通ります。

いちばん近いブラックホールはどこ?

2022年に発表されたGaia BH1は、約1600光年先のへびつかい座にあり、発表時点で知られている中でいちばん近いブラックホールでした。太陽に似た13.8等の星と回り合っています。

家の望遠鏡でブラックホールの写真は撮れる?

撮れません。2019年と2022年に公開されたブラックホールの影の画像は、世界各地の電波望遠鏡をつないで地球ほどの大きさの望遠鏡として使い、波長1.3mmの電波で撮ったものです。口径10cmほどの家庭の望遠鏡より、数万倍も細かく見る必要がありました(計算)。

出典

  1. Bowyer, S., Byram, E. T., Chubb, T. A., Friedman, H. (1965). Cosmic X-ray Sources. Science 147, 394–398. https://doi.org/10.1126/science.147.3656.394
  2. Bolton, C. T. (1972). Identification of Cygnus X-1 with HDE 226868. Nature 235, 271–273. https://doi.org/10.1038/235271b0
  3. Miller-Jones, J. C. A. et al. (2021). Cygnus X-1 contains a 21-solar mass black hole—Implications for massive star winds. Science 371, 1046–1049. https://doi.org/10.1126/science.abb3363
  4. Orosz, J. A. et al. (2011). The Mass of the Black Hole in Cygnus X-1. The Astrophysical Journal 742, 84. https://doi.org/10.1088/0004-637X/742/2/84
  5. El-Badry, K. et al. (2022). A Sun-like star orbiting a black hole. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 518, 1057–1085. https://doi.org/10.1093/mnras/stac3140
  6. Gaia Collaboration, Panuzzo, P. et al. (2024). Discovery of a dormant 33 solar-mass black hole in pre-release Gaia astrometry. Astronomy & Astrophysics 686, L2. https://doi.org/10.1051/0004-6361/202449763
  7. ESA. Observing the Universe in X-ray light. https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Observing_the_Universe_in_X-ray_light
  8. SIMBAD Astronomical Database (CDS). Cyg X-1(HD 226868)・eta Cyg・Gaia BH3(LS II +14 13)の座標と明るさ. https://simbad.cds.unistra.fr/simbad/sim-id?Ident=Cyg+X-1
  9. Event Horizon Telescope Collaboration (2022). First Sagittarius A* Event Horizon Telescope Results. I. The Shadow of the Supermassive Black Hole in the Center of the Milky Way. The Astrophysical Journal Letters 930, L12. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ac6674
  10. Event Horizon Telescope Collaboration (2019). First M87 Event Horizon Telescope Results. I. The Shadow of the Supermassive Black Hole. The Astrophysical Journal Letters 875, L1. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ab0ec7