宇宙でいちばん大きい星は何か、たて座UY星は本当に一番か

「宇宙でいちばん大きい星」として、たて座UY星の名前をよく見かけます。2013年に、半径が太陽の約1700倍と測られたからです。ところがその後、星までの距離が近く測り直され、今は太陽の約900倍という値も出ています。星の大きさのランキングは、距離の測り方しだいで入れ替わってきました。
3行でわかる
- たて座UY星の「太陽の約1708倍」は、距離を約9500光年と仮定した2013年の値。ガイア衛星で距離が近くなり、2024年の論文では約909倍。
- 測られた中で大きいのは、半径が太陽の1400〜1500倍ほどの赤色超巨星。研究者は、赤色超巨星の大きさの上限を太陽の約1500倍と見ている。
- 一番大きいとされたWOH G64は、最近の観測で性質が変わってきたと報告された。どの星が一番かは決まっていない。
01 わかっていること宇宙でいちばん大きい星は何?
はっきり一番と決まった星はありません。測られた中で大きいのは、半径が太陽の約1400〜1500倍の赤色超巨星(年老いてふくらんだ重い星)で、おおいぬ座VY星や、大マゼラン雲のWOH G64がその候補です。
とても大きな星は、ほとんどが赤色超巨星です。太陽よりずっと重い星が、燃料を使い終わりかけて大きくふくらんだ姿です。オリオン座のベテルギウスもその仲間です。
Levesqueら(2005年)は74個の赤色超巨星を調べ、いちばん冷たく明るい星でも半径は太陽の約1500倍(約7天文単位)だと報告しました[7]。これは星の進化の理論が予想する最大の大きさとよく合います。
02 どうやってわかったのかたて座UY星の大きさはなぜ変わった?
星の半径は、見かけの大きさや明るさに距離を掛けて計算します。たて座UY星は2013年に距離を約9500光年として約1708倍とされましたが、ガイア衛星で距離が約6100光年と近くなり、2024年の論文では約909倍になりました。
有力な仮説Arroyo-Torresら(2013年、Astronomy & Astrophysics)[1]
たて座UY星の見かけの直径は5.48ミリ秒角。距離を2900パーセク(約9500光年)とすると、半径は太陽の約1708倍(誤差は約192倍)になりました。
どうやって: チリにあるヨーロッパ南天天文台の望遠鏡を何台もつなぎ、1台の巨大な望遠鏡のようにして(干渉計)、星の円盤の大きさを測りました。半径は、この角度と、ほかの研究から借りた距離を掛けて出しています。
有力な仮説Healyら(2024年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[2]
ガイア衛星のデータからの距離(約1867パーセク、約6100光年)を使うと、たて座UY星の半径は太陽の約909倍になります。
どうやって: 近くで超新星になりそうな赤色超巨星の一覧を作る研究で、星の明るさと表面温度から半径を計算しました(公開されている一覧の数値)。2013年の見かけの直径に新しい距離を当てはめると、約1100倍になります(計算)。方法によっても値は変わります。
わかっているWittkowskiら(2012年、Astronomy & Astrophysics)[3]
天の川銀河の中では、おおいぬ座VY星の半径が太陽の約1420倍(誤差は約120倍)と測られています。
どうやって: 同じく干渉計で見かけの直径(11.3ミリ秒角)を測り、精度の高い距離の測定と組み合わせました。
わかっていないLevesqueら(2009年 The Astronomical Journal)、Ohnakaら(2024年 Astronomy & Astrophysics)、Muñoz-Sanchezら(2026年 Nature Astronomy)[4][5][6]
大マゼラン雲(約16万光年先の小さな銀河)のWOH G64は、半径が太陽の約1540倍とされました。ところが2024年に発表された観測では、星が新しくできたちりに包まれて暗くなり、2026年の論文では、赤色超巨星から黄色極超巨星(表面がより熱い姿)に変わったと報告されました。
どうやって: 大マゼラン雲までの距離はよくわかっているので、距離による誤差は小さい星です。2024年に発表された観測では、天の川銀河の外の星として初めて、干渉計で星のまわりの画像が撮られました。ヨーロッパ南天天文台の発表では「太陽の約2000倍」と紹介されていて、使う値で数字が変わります。
03 数字と例えでいうといちばん大きい星はどれくらい大きい?
半径が太陽の約1500倍の星を太陽の位置に置くと、表面は木星の軌道より外まで届きます。体積は太陽の約30億倍以上で、光が表面を1周するのにも約6時間かかります(計算)。
| 星(測った年) | 半径(太陽を1として) | 身近な例えでいうと(計算) |
|---|---|---|
| WOH G64(2009年) | 約1540倍[4] | 約7.2天文単位。太陽の位置なら木星の軌道(約5.2天文単位)の外まで |
| おおいぬ座VY星(2012年) | 約1420倍[3] | 約6.6天文単位。体積は太陽の約29億倍 |
| たて座UY星(2013年、距離約9500光年) | 約1708倍[1] | 約7.9天文単位。光で1周すると約7時間 |
| たて座UY星(2024年、距離約6100光年) | 約909倍[2] | 約4.2天文単位。火星の軌道より外、木星の軌道より内側 |
| ベテルギウス(2020年) | 約764倍[9] | 約3.6天文単位。たて座UY星(2024年)はその約1.2倍 |
太陽の半径は約69万5700km[11]、1天文単位(地球と太陽の距離)は太陽の半径の約215倍として計算しました。半径が2倍ちがうと、体積は8倍ちがいます。
距離の影響も大きく、見かけの大きさが同じなら、距離が1.5倍になると半径も1.5倍、体積は約3.4倍になります。たて座UY星の順位が大きく動いたのは、このためです。
04 まだわかっていないこと一番大きい星が決まらないのはなぜ?
赤色超巨星は遠く、表面がはっきりせず、明るさも変わるため、距離と大きさの両方に誤差が出やすいからです。星そのものが短い間に姿を変えることもあり、一番はまだ決まっていません。
- 星の「表面」はどこか赤色超巨星のまわりには水やCOの層が広がり、見る光の色(波長)によって大きさが1〜3割も変わって見えます[1]。どこを表面とするかで半径が変わります。
- 大きさの上限はどこかDaviesら(2018年)は、大小マゼラン雲の赤色超巨星を調べ、明るさの上限は太陽の約30万倍(10の5.5乗倍)と、それまで考えられていたより低いと報告しました[8]。明るさの上限が低いほど、大きさの上限も小さくなります。
- WOH G64はこの先どうなるのか黄色極超巨星への変化が、ふたつの星がからみ合った結果なのか、30年以上続いた大爆発が落ち着いたのかは、まだわかっていません[6]。
05関連する記事
06よくある質問
宇宙でいちばん大きい星は何?
はっきり一番と決まった星はありません。測られた中で大きいのは、半径が太陽の約1400〜1500倍の赤色超巨星(おおいぬ座VY星、大マゼラン雲のWOH G64など)です。研究者は、赤色超巨星の大きさの上限が太陽の約1500倍だと考えています。
たて座UY星は本当にいちばん大きい星?
2013年の測定では半径が太陽の約1708倍で、一番大きい星としてよく紹介されました。しかしこの値は距離を約9500光年と仮定したものです。ガイア衛星の測定で距離が約6100光年と近くなり、それをもとにした2024年の論文では約909倍とされています。
星の大きさはなぜ測り直すたびに変わるの?
星の半径は、見かけの大きさや明るさに距離を掛けて計算するからです。距離が1.5倍違えば半径も1.5倍違います。赤色超巨星はとても遠く、表面もはっきりしないため、距離と大きさの両方に誤差が出やすいのです。
ベテルギウスとたて座UY星はどちらが大きい?
今の値で比べると、たて座UY星のほうが少し大きいと考えられます。ベテルギウスの半径は太陽の約764倍という計算(Joyceら、2020年)があり、たて座UY星の約909倍(Healyら、2024年)はその約1.2倍です。ただしどちらも誤差が大きく、測り方で値が変わります。
出典
- Arroyo-Torres, B., Wittkowski, M., Marcaide, J. M., Hauschildt, P. H. (2013). The atmospheric structure and fundamental parameters of the red supergiants AH Scorpii, UY Scuti, and KW Sagittarii. Astronomy & Astrophysics 554, A76. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201220920
- Healy, S., Horiuchi, S., Colomer Molla, M., Milisavljevic, D., Tseng, J., et al. (2024). Red supergiant candidates for multimessenger monitoring of the next Galactic supernova. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 529, 3630–3650. https://doi.org/10.1093/mnras/stae738(一覧の数値: https://github.com/SNEWS2/candidate_list)
- Wittkowski, M., Hauschildt, P. H., Arroyo-Torres, B., Marcaide, J. M. (2012). Fundamental properties and atmospheric structure of the red supergiant VY Canis Majoris based on VLTI/AMBER spectro-interferometry. Astronomy & Astrophysics 540, L12. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201219126
- Levesque, E. M., Massey, P., Plez, B., Olsen, K. A. G. (2009). The Physical Properties of the Red Supergiant WOH G64: The Largest Star Known? The Astronomical Journal 137, 4744–4752. https://doi.org/10.1088/0004-6256/137/6/4744
- Ohnaka, K., Hofmann, K.-H., Weigelt, G., van Loon, J. Th., Schertl, D., et al. (2024). Imaging the innermost circumstellar environment of the red supergiant WOH G64 in the Large Magellanic Cloud. Astronomy & Astrophysics 691, L15. https://doi.org/10.1051/0004-6361/202451820
- Muñoz-Sanchez, G., Kalitsounaki, M., de Wit, S., Antoniadis, K., Bonanos, A. Z., et al. (2026). The dramatic transition of the extreme red supergiant WOH G64 to a yellow hypergiant. Nature Astronomy 10, 702–713. https://doi.org/10.1038/s41550-026-02789-7
- Levesque, E. M., Massey, P., Olsen, K. A. G., Plez, B., Josselin, E., et al. (2005). The Effective Temperature Scale of Galactic Red Supergiants: Cool, but Not as Cool as We Thought. The Astrophysical Journal 628, 973–985. https://doi.org/10.1086/430901
- Davies, B., Crowther, P. A., Beasor, E. R. (2018). The luminosities of cool supergiants in the Magellanic Clouds, and the Humphreys–Davidson limit revisited. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 478, 3138–3148. https://doi.org/10.1093/mnras/sty1302
- Joyce, M., Leung, S.-C., Molnár, L., Ireland, M., Kobayashi, C., et al. (2020). Standing on the Shoulders of Giants: New Mass and Distance Estimates for Betelgeuse through Combined Evolutionary, Asteroseismic, and Hydrodynamic Simulations with MESA. The Astrophysical Journal 902, 63. https://doi.org/10.3847/1538-4357/abb8db
- ESO (2024). Astronomers take the first close-up picture of a star outside our galaxy(eso2417). https://www.eso.org/public/news/eso2417/
- Prša, A., Harmanec, P., Torres, G., Mamajek, E., Asplund, M., et al. (2016). Nominal Values for Selected Solar and Planetary Quantities: IAU 2015 Resolution B3. The Astronomical Journal 152, 41. https://doi.org/10.3847/0004-6256/152/2/41


