星座と星空

北極星は変わるのか、1万2000年後はベガ

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北極星(ポラリス)
Photo: Heyzeuss / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

北極星は「いつも北にあって動かない星」として知られています。でも、ずっと北極星でいられるわけではありません。地球の回る軸の向きがゆっくり変わるので、約1万2000年後には、こと座のベガが北の空の中心近くに来ます。

3行でわかる

  1. 地球の自転軸(地球が回る軸)は、こまの首振りのように、約2万6000年かけて向きを一回りさせる。これを歳差という。そのため、北の空の目印になる星は入れかわる。
  2. 長い期間に使える歳差の式(Vondrákら、2011年)とヒッパルコス衛星が測った星の動きで計算すると、ベガが北の空の中心にいちばん近づくのは西暦1万3600年ごろ。ただし離れ方は約5.7度で、今の北極星ほどぴったりではない。
  3. 今の北極星(ポラリス)は西暦2100年ごろに北の空の中心に最も近づく(約0.46度)。北極星までの距離は、研究によって約320〜520光年と食い違ったまま決着していない。

01 わかっていること北極星はずっと同じ星なの?

いいえ。地球の自転軸の向きは約2万6000年で一回りするので、天の北極の近くにある星は入れかわります。約5000年前はりゅう座のトゥバン、今はポラリス、約1万2000年後はベガが北の目印に近づきます。

夜空の星は、ある1点を中心に回って見えます。この中心が天の北極(地球の自転軸を北へのばした先の空の点)です。今はそのすぐ近くにポラリスがあるので、北極星はほとんど動かないように見えます。

ところが、地球の自転軸の向きは少しずつ変わります。地球は赤道のあたりが少しふくらんだ形で、太陽と月の引力がこのふくらみを引くため、自転軸がこまの首振りのように回ります。国立天文台の解説では、この周期は約2万6000年です[3]。

同じ解説によると、今から5000年ほど前、自転軸はりゅう座のトゥバンの方向を向いていました[3]。江戸時代の天文学者、渋川春海のころは、北極星と天の北極が約2.5度離れていたとされます[3]。この動きで春分点もずれていくため、星占いの星座と実際の星座のずれも同じ理由で生まれます。

02 どうやってわかったのか何千年も先の北極星を、どうやって計算するの?

地球の自転軸の動きを表す式と、星そのものの動きを測ったカタログを組み合わせて計算します。数千年以上先を計算するには、長い期間でも使えるように作られた式が必要です。

わかっているVondrákら(2011年、Astronomy & Astrophysics)[1]

国際天文学連合(IAU)が使っている歳差の式は、2000年の前後数百年しか正しく使えず、遠い時代では計算がずれていくことが知られていました。Vondrákらは、長い期間でも使える新しい式を作りました。この記事の計算は、この式を使っています。

どうやって: 地球や惑星の動きを数値計算した結果と比べながら、自転軸の向きと地球の公転面の動きを、長い期間でも表せる式にまとめました。

わかっているvan Leeuwen(2007年、Astronomy & Astrophysics)[2][6]

ヒッパルコス衛星の観測データを解析し直し、星の位置・距離・1年ごとの動き(固有運動)のカタログを作りました。ベガは1年に約0.35秒角(1度の約1万分の1)ずつ空の上を動いています(カタログの値から計算)。

どうやって: 宇宙から星の位置を何度も測り、地球が太陽の周りを回ることで生じる見かけのずれ(年周視差)から距離を求めました。

わかっている国立天文台 暦計算室(歳差の解説)[3]

自転軸は約2万6000年の周期で回ります。今のポラリスも、天の北極の周りを半径40分角(約0.67度)ほどの小さな円を描いて回っています。

どうやって: 暦を計算する部署が、歳差のしくみと歴史(紀元前2世紀ごろのヒッパルコスによる発見など)を公式に解説しています。

03 数字と例えでいうと北の目印の星は、どう移り変わるの?

計算では、北の目印はトゥバン、ポラリス、ケフェウス座の星、はくちょう座の星をへて、西暦1万3600年ごろにベガへ移ります。ただしベガは天の北極から満月約11個分離れます。

時期(いちばん近づくころ)北の目印に近い星と、天の北極からの離れ方身近な例えでいうと
紀元前2800年ごろトゥバン(りゅう座)約0.1度満月の5分の1ほど。ほぼ真上の中心
西暦2100年ごろポラリス(こぐま座)約0.46度満月1個分ほど。2026年は約0.63度
西暦4100年ごろエライ(ケフェウス座γ星)約1.9度満月約4個分
西暦7500年ごろアルデラミン(ケフェウス座α星)約1.9度満月約4個分
西暦1万1600年ごろはくちょう座δ星 約3.2度満月約6個分
西暦1万3600年ごろベガ(こと座)約5.7度満月約11個分。今から約1万1600年後

計算の条件: 歳差はVondrákらの式[1]、星の位置と動きはヒッパルコス衛星の再解析カタログ[2][6]を使い、星は今の速さのまま真っすぐ進むとしました。北の空(赤緯20度より北)にある、ヒッパルコス等級で3.7等より明るい星から選んでいます。大気による見え方のずれは入れていません。満月の見かけの大きさは約0.5度として例えました。

星そのものの動きも効きます。ベガの動きを入れずに計算すると、いちばん近づくのは西暦1万3700年ごろで、離れ方は約6.5度になりました。明るさでは、ベガ(0.03等)は今のポラリス(1.97等)の約6倍明るい星です(ヒッパルコス衛星のカタログ[7]の等級から計算)。等級のしくみは1等星と6等星の明るさの違いで説明しています。

04 まだわかっていないこと北極星について、まだ決着していないことは?

今の北極星ポラリスまでの距離は、研究によって約320光年から約520光年まで食い違っています。何万年も先の星の位置も、星が今の動きのまま進むという仮定に頼っています。

05関連する記事

06よくある質問

北極星は何年後に変わるの?

北の目印になる星は少しずつ入れかわります。長い期間に使える歳差の式とヒッパルコス衛星のデータで計算すると、ケフェウス座の星(西暦4100年ごろと7500年ごろ)をへて、ベガが北の空の中心に最も近づくのは西暦1万3600年ごろ、今から約1万1600年後です。

北極星は真北にあるの?

ほぼ真北ですが、ぴったりではありません。2026年の北極星は天の北極から約0.63度離れていて、天の北極の周りを小さな円を描いて回っています。最も近づくのは西暦2100年ごろで、約0.46度です。

ベガが北極星になったら、ずっとそのままなの?

いいえ。地球の自転軸は約2万6000年で一回りするので、ベガのあとも北の目印は入れかわり続けます。星が今の動きのまま進むと仮定した計算では、西暦2万7000年ごろにポラリスがふたたび天の北極の近くに戻ります。

5000年前の北極星は何だったの?

りゅう座のトゥバンです。国立天文台の解説では、今から5000年ほど前、地球の自転軸はトゥバンの方向を向いていたとされます。計算では、紀元前2800年ごろに天の北極から約0.1度まで近づきました。

出典

  1. Vondrák, J., Capitaine, N., Wallace, P. (2011). New precession expressions, valid for long time intervals. Astronomy & Astrophysics 534, A22. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201117274
  2. van Leeuwen, F. (2007). Validation of the new Hipparcos reduction. Astronomy & Astrophysics 474, 653–664. https://doi.org/10.1051/0004-6361:20078357
  3. 国立天文台 暦計算室. 暦Wiki「歳差」. https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/BAD0BAB9.html
  4. Turner, D. G., Kovtyukh, V. V., Usenko, I. A., Gorlova, N. I. (2013). The Pulsation Mode of the Cepheid Polaris. The Astrophysical Journal Letters 762, L8. https://doi.org/10.1088/2041-8205/762/1/L8
  5. Bond, H. E., Nelan, E. P., Remage Evans, N., Schaefer, G. H., Harmer, D. (2018). Hubble Space Telescope Trigonometric Parallax of Polaris B, Companion of the Nearest Cepheid. The Astrophysical Journal 853, 55. https://doi.org/10.3847/1538-4357/aaa3f9
  6. van Leeuwen, F. (2007). Hipparcos, the New Reduction of the Raw Data(カタログ I/311、VizieR). https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/311
  7. ESA (1997). The Hipparcos and Tycho Catalogues(カタログ I/239、VizieR). https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/239