ビッグバンとは何か、「爆発」ではなく空間が広がったということ

「ビッグバン」と聞くと、真っ暗な空間の一点で起きた大爆発を思い浮かべがちです。でも、宇宙の研究でいうビッグバンはそうではありません。宇宙全体がとても熱く詰まっていた状態から、空間そのものが広がって冷えてきた、という考え方です。
3行でわかる
- ビッグバンとは、約138億年前の宇宙が今よりずっと熱く密度が高く、そこから空間全体が広がって冷えてきたという考え方(ビッグバン理論)。
- 爆発ではないので、宇宙に「中心」はない。どの銀河から見ても、遠くの銀河ほど速く遠ざかって見える。
- 「ビッグバン」という名前は、1949年に天文学者ホイルがラジオで使ったのが始まり。悪口として付けたという話は、歴史の研究では疑われている。
01 わかっていることビッグバンとは何?
ビッグバンとは、宇宙がかつて熱く詰まった状態にあり、そこから空間全体が広がりながら冷えてきたという考え方です。始まりは約138億年前とされています。
ポイントは「空間の中で物が飛び散った」のではなく「空間そのものが広がっている」ことです。銀河どうしの間の距離が、時間とともにのびていきます[1][5]。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の解説も、ビッグバンは空間の一点で起きた「爆発」ではなく、宇宙のどこでも同時に空間が現れたものだとしています[6]。
| よくある思い込み | 研究でわかっていること |
|---|---|
| 空間の一点で大爆発が起きた | 一点の爆発ではない。宇宙のどこでも空間が広がった[6] |
| 爆発の中心がどこかにある | 膨張の中心はない。どこから見ても、まわりの銀河が同じように遠ざかる[6] |
| 銀河は空間の中を飛んで遠ざかっている | 遠い銀河の光が赤くずれるのは、空間がのびたため。ふつうのドップラー効果では説明できない[5] |
| 光より速く遠ざかる銀河はない | 遠くの銀河は光より速く遠ざかっている。それでも相対性理論とは矛盾せず、昔の光は届いて見える[5] |
| 「ビッグバン」は悪口でつけられた名前 | 名付け親のホイル自身は否定しており、歴史の研究でも悪口説は疑わしいとされる[7] |
02 どうやってわかったのかなぜ宇宙が広がっているとわかったの?
遠い銀河ほど速く遠ざかっていることが、1920年代に観測でわかったからです。理論からの予測と観測が合い、今は宇宙の膨張の速さや年齢まで測られています。
わかっているLemaître(1927年発表、英訳1931年、MNRAS)[1]
アインシュタインの重力の理論から、大きさが時間とともに大きくなる宇宙の解を導きました。銀河が遠ざかって見えるのは、この膨張のためだと説明しました。
どうやって: 理論の計算に、当時わかっていた銀河の遠ざかる速さを合わせて考えました。ルメートルは1931年、宇宙はただ1つの原子のような状態から始まったという考えも発表しています[2]。
わかっているHubble(1929年、PNAS)[3]
銀河までの距離と、遠ざかる速さの関係を調べ、遠い銀河ほど速く遠ざかっていることを示しました。
どうやって: 明るさの目安になる星で銀河までの距離を測り、光のずれから速さを測って並べました。当時の距離の目盛りには大きなずれがあり、後に直されています。
わかっているPlanck Collaboration(2020年、Astronomy & Astrophysics)[4]
宇宙の膨張の速さは、約326万光年(1メガパーセク)離れるごとに秒速67.4km速くなる割合でした。宇宙の年齢は約137億8700万年と計算されました。
どうやって: ビッグバンの名残の光(宇宙マイクロ波背景放射)の細かなむらを、プランク衛星で全天にわたって測り、宇宙の模型と比べました。
わかっているDavis・Lineweaver(2004年、PASA)[5]
宇宙の膨張についてのよくある誤解を、教科書や論文の記述から集めて整理しました。遠い銀河の光の赤いずれを、ふつうのドップラー効果とみなす考え方は、超新星の観測から非常に高い確かさ(23シグマ)で否定されました。
どうやって: 一般相対性理論の標準的な計算と、遠くの超新星の明るさの観測を比べました。
03 数字と例えでいうとどれくらい昔で、どれくらいの速さで広がっている?
宇宙の年齢は約138億年です。今の膨張の速さでは、1億光年離れた銀河は秒速約2070kmで遠ざかっています(計算)。地球1周を約19秒で回る速さです。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 宇宙の年齢[4] | 約137億8700万年 | 宇宙の歴史を1年に縮めると、1秒が約437年(計算) |
| 膨張の速さ(ハッブル定数)[4] | 秒速67.4km/1メガパーセク | 1億光年先の銀河は秒速約2070km。地球1周(約4万km)を約19秒(計算) |
| 光の速さで遠ざかる距離 | 約145億光年(計算) | 今の膨張の速さで、遠ざかる速さが光の速さになる距離。これより遠い銀河の昔の光も見えている[5] |
| 今の宇宙の温度[8] | 2.725K(約−270℃) | ビッグバンの名残の光の温度。空間が広がって冷えた |
| 名残の光が出たころの温度 | 約3000K(計算) | 宇宙が今より約1100分の1の大きさだったころ。温度は大きさに反比例する |
計算は、ハッブル定数67.4km/s/Mpcと、1メガパーセク=約326万光年を使いました。名残の光が出たころの大きさは、プランク衛星の結果(赤方偏移 約1090)から求めています[4]。
04 まだわかっていないことビッグバンについて、まだわからないことは?
ビッグバンの「始まりの瞬間」に何があったのか、宇宙全体は有限か無限か、膨張の速さの測定値がなぜ合わないのかは、まだわかっていません。
- 始まりの瞬間に何があったのかビッグバン理論が説明するのは、熱く詰まった宇宙が広がって冷えていく流れです。時間の始まりそのものや、その前については、理論も観測もまだ答えを出せていません。
- 宇宙は何の中に広がっているのかNASAの解説は、宇宙が「何の中へ」広がっているのかを考えることは、ビッグバンの模型の範囲を超えているとしています[6]。
- 膨張の速さが測り方で合わない名残の光から求めた値(秒速67.4km)と、近くの銀河の距離から求めた値がずれています。測定の問題か、新しい物理が必要なのか、決着していません。
05関連する記事
06よくある質問
ビッグバンは爆発なの?
ふつうの意味の爆発ではありません。空間の一点から物が飛び散ったのではなく、宇宙全体がとても熱く詰まった状態から、空間そのものが広がって冷えてきたという考え方です。NASAの解説も、一点で起きた「爆発」ではないとしています。
ビッグバンはどこで起きたの?
特定の場所ではありません。宇宙のどこでも同時に空間が広がり始めたと考えられており、膨張の中心はありません。どの銀河から見ても、遠くの銀河ほど速く遠ざかって見えます。
銀河が光より速く遠ざかることはある?
あります。とても遠い銀河は、空間の膨張によって光より速く遠ざかっています。物が空間の中を光より速く動くわけではないので、相対性理論とは矛盾しません(Davis・Lineweaver 2004年)。
ビッグバンという名前は誰がつけたの?
イギリスの天文学者フレッド・ホイルが、1949年3月28日のBBCのラジオ番組で使ったのが始まりとされています。悪口としてつけたという話が広まっていますが、ホイル本人は否定しており、歴史の研究でもその説は疑わしいとされています(Kragh 2013年)。
出典
- Lemaître, G. (1931). A Homogeneous Universe of Constant Mass and Increasing Radius accounting for the Radial Velocity of Extra-galactic Nebulae. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 91, 483–490.(1927年の論文の英訳) https://doi.org/10.1093/mnras/91.5.483
- Lemaître, G. (1931). The Beginning of the World from the Point of View of Quantum Theory. Nature 127, 706. https://doi.org/10.1038/127706b0
- Hubble, E. (1929). A relation between distance and radial velocity among extra-galactic nebulae. Proceedings of the National Academy of Sciences 15, 168–173. https://doi.org/10.1073/pnas.15.3.168
- Planck Collaboration (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics 641, A6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833910
- Davis, T. M. & Lineweaver, C. H. (2004). Expanding Confusion: Common Misconceptions of Cosmological Horizons and the Superluminal Expansion of the Universe. Publications of the Astronomical Society of Australia 21, 97–109. https://doi.org/10.1071/AS03040
- NASA Goddard Space Flight Center. Cosmology FAQ(John Mather のページ、アーカイブ). https://asd.gsfc.nasa.gov/archive/mather/faq/cosmology.html
- Kragh, H. (2013). Big Bang: the etymology of a name. Astronomy & Geophysics 54, 2.28–2.30. https://doi.org/10.1093/astrogeo/att035
- Fixsen, D. J. (2009). The Temperature of the Cosmic Microwave Background. The Astrophysical Journal 707, 916–920. https://doi.org/10.1088/0004-637X/707/2/916


