木星の大赤斑は小さくなっているのか

木星の大赤斑(だいせきはん)は、太陽系の惑星でいちばん大きな渦です。1879年には長い方向に約3万9000kmありましたが、今は約1万4000kmまで縮み、丸くなってきました。このまま消えてしまうのかは、まだわかっていません。
3行でわかる
- 大赤斑の長い方向の大きさは、1879年の約3万9000kmから、2024年の発表時点で約1万4000kmまで縮んだ。
- 探査機ジュノーの重力の観測では、大赤斑は木星の大気の上から500km以内に収まると見積もられ、幅に比べてとても薄い渦と考えられている。
- このまま消えるのか、ある大きさで落ち着くのかは、まだわかっていない。
01 わかっていること木星の大赤斑は本当に小さくなっているの?
小さくなっています。長い方向の大きさは1879年の約3万9000kmから、2024年の発表時点で約1万4000kmになりました。ハッブル宇宙望遠鏡などの観測で、縮みながら丸くなっていることが確かめられています。
大赤斑は、木星の南半球にある赤っぽい巨大な渦です。渦のふちでは、風が時速約450kmに達します[6]。今の大きさは、地球の直径とほぼ同じくらいです[6]。
NASAによると、ボイジャー1号・2号が近くを通った1979年には約2万3300km、ハッブル宇宙望遠鏡が写した2014年には約1万6500kmでした[4](マイルからkmに換算)。2012年からは、アマチュアの観測でも縮み方が速くなっていることがわかり、形も楕円から円に近づいています[4]。
Simonら(2018年)の分析では、長い方向で1年に約0.19度、南北の幅で1年に約0.05度ずつ縮み続けていました[1]。ここでの「度」は、木星の経度・緯度で測った大きさです。
木星の衛星エウロパの話は氷の下の海の記事で、夜空で木星を探す方法は肉眼で見える惑星の記事で紹介しています。
02 どうやってわかったのかどうやって大きさや深さを調べたの?
大きさは、150年ほど前からの望遠鏡の記録と、探査機やハッブル宇宙望遠鏡の画像で追ってきました。深さは、木星を回る探査機ジュノーが、重力と電波(マイクロ波)で測りました。
わかっているSimonら(2018年、The Astronomical Journal)[1]
大赤斑は、長い方向で1年に約0.19度、南北の幅で1年に約0.05度のペースで縮み続けていました。西へ流れる速さは、1980年代の1日約0.26度から、約0.36度に速まっていました。2014年以降、色も変わり、中心の暗い部分は小さくなっていました。
どうやって: 昔からの観測記録と、探査機やハッブル宇宙望遠鏡などの最近の画像を合わせ、大きさ・動き・色の変化を調べました。
わかっているNASA(2014年、ハッブル宇宙望遠鏡の観測の発表)[4]
1800年代の終わりには、長い方向に最大約4万1000kmあったとする記録があります。1979年に約2万3300km、1995年に約2万1000km、2009年に約1万7900km、2014年に約1万6500kmと、測るたびに小さくなっていました。
どうやって: ボイジャーの画像と、ハッブル宇宙望遠鏡が1995年・2009年・2014年に写した画像で、長い方向の大きさを比べました。
有力な仮説Parisiら(2021年、Science)[3]
大赤斑は、木星の大気の上から500km以内に収まっていると結論しました。幅が1万km以上あるのに比べると、とても薄い渦です。
どうやって: ジュノーが木星に12回近づいたときの記録(うち2回は大赤斑の真上を通過)を使い、渦が重力に与えるわずかな影響を、2つの方法で計算しました。
有力な仮説Boltonら(2021年、Science)[5]
大赤斑などの渦の「根」は、水が雲になると考えられる高さよりも深くまでのびていました。雲の上に見える模様だけの浅い現象ではないことになります。
どうやって: ジュノーのマイクロ波の装置で、雲の下から出てくる電波を深さごとに測りました。
有力な仮説Sánchez-Lavegaら(2024年、Geophysical Research Letters)[2]
1665年にカッシーニが見つけた「永続斑」は1713年まで観測されましたが、今の大赤斑とは別のものだった可能性が高いとしました。今の大赤斑が最初に記録されたのは1831年です。計算では、渦が合体してできた説や巨大な嵐でできた説は合わず、北と南で向きが反対の2本の強い風の流れにはさまれた、流れの乱れからできた可能性が高いとしました。
どうやって: 昔のスケッチや記録から大きさと動きの変化を読み取り、コンピューターで渦のでき方を再現しました。
03 数字と例えでいうと大赤斑はどれくらい大きくて、どれくらい縮んだの?
1879年には地球の直径の約3倍ありましたが、今は約1.1倍です。145年で平均すると、1年に約170kmずつ縮んだ計算になります。深さは幅に比べてとても浅く、薄い円盤のような形です。
| 年 | 長い方向の大きさ | 地球の直径(約1万2742km)と比べると |
|---|---|---|
| 1879年 | 約3万9000km[6] | 約3.1個分(計算) |
| 1979年(ボイジャー) | 約2万3300km[4] | 約1.8個分(計算) |
| 1995年(ハッブル) | 約2万1000km[4] | 約1.6個分(計算) |
| 2009年(ハッブル) | 約1万7900km[4] | 約1.4個分(計算) |
| 2014年(ハッブル) | 約1万6500km[4] | 約1.3個分(計算) |
| 2024年の発表時点 | 約1万4000km[6] | 約1.1個分(計算) |
| 深さ | 上から500km以内[3] | 幅1万4000kmと比べると、直径28cmで厚さ1cm以下の円盤くらいの割合(計算) |
NASAの数字はマイルで発表されているので、1マイルを約1.609kmとしてkmに直しました[4]。地球の直径は、NASAの平均半径6371kmの2倍です[7]。1年に約170kmは、1879年の約3万9000kmから2024年の約1万4000kmまでの差を145年で割った平均で、実際の縮み方は年によって違います。測り方の違いで、出典によって数字に幅があります(1800年代の終わりは約3万9000km[6]と約4万1000km[4])。
04 まだわかっていないこと大赤斑はいつか消えるの?
わかっていません。縮み続けてある大きさで崩れるのか、その大きさで落ち着いて長く続くのかは、研究者もまだ予測できていません。いつどうやってできたのかも、決着していません。
- このまま消えるのか2024年の研究チームは、大赤斑がある大きさまで縮んだところで崩れるのか、その大きさで安定して長く続くのかを、これから予測したいとしています[6]。昔の「永続斑」のように、いつか見えなくなる可能性も、残り続ける可能性もあります。
- いつ、どうやってできたのか今の大赤斑が最初に記録されたのは1831年で、少なくとも190年は続いています[2][6]。風の流れの乱れからできたという説はコンピューターの計算による結果で、できる瞬間を見た人はいません[2]。
- 深いところはどうなっているのか深さの数字がついたのは、2021年のジュノーの観測が初めてです[3][5]。「上から500km以内」という上限は出ましたが、渦の底の形や、深いところでどう動いているかはまだ細かくはわかっていません。
05関連する記事
06よくある質問
木星の大赤斑は消えるの?
わかっていません。大赤斑は1879年の記録と比べて大きく縮んでいますが、ある大きさで崩れるのか、そこで安定して長く続くのかは、研究者もまだ予測できていません。
大赤斑はどれくらい大きいの?
2024年の発表時点で、長い方向に約1万4000kmです。地球の直径(約1万2742km)の約1.1倍にあたります(計算)。1879年には約3万9000kmあり、地球の約3倍でした。
大赤斑はいつからあるの?
今の大赤斑が最初に記録されたのは1831年で、少なくとも190年は続いています。1665年にカッシーニが見た「永続斑」は、2024年の研究では今の大赤斑とは別のものだった可能性が高いとされました。
大赤斑はどれくらい深いの?
探査機ジュノーの重力の観測をもとにした2021年の研究では、大気の上から500km以内に収まると見積もられました。幅1万km以上に比べると、とても浅い渦です。
出典
- Simon, A. A., Tabataba-Vakili, F., Cosentino, R., Beebe, R. F., Wong, M. H., Orton, G. S. (2018). Historical and Contemporary Trends in the Size, Drift, and Color of Jupiter's Great Red Spot. The Astronomical Journal 155, 151. https://doi.org/10.3847/1538-3881/aaae01
- Sánchez-Lavega, A., García-Melendo, E., Legarreta, J., et al. (2024). The Origin of Jupiter's Great Red Spot. Geophysical Research Letters 51, e2024GL108993. https://doi.org/10.1029/2024GL108993
- Parisi, M., Kaspi, Y., Galanti, E., et al. (2021). The depth of Jupiter's Great Red Spot constrained by Juno gravity overflights. Science 374, 964–968. https://doi.org/10.1126/science.abf1396
- NASA (2014). Jupiter's Great Red Spot is Shrinking. https://science.nasa.gov/science-research/planetary-science/15may_grs/
- Bolton, S. J., Levin, S. M., Guillot, T., et al. (2021). Microwave observations reveal the deep extent and structure of Jupiter's atmospheric vortices. Science 374, 968–972. https://doi.org/10.1126/science.abf1015
- AGU (2024). Jupiter's Great Red Spot is not the same one Cassini observed in 1600s(Sánchez-Lavegaらの論文の発表). https://news.agu.org/press-release/jupiters-great-red-spot-reborn-1800s/
- NASA. Earth Fact Sheet(NSSDCA). https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/earthfact.html


