太陽系

冥王星はなぜ惑星でなくなったのか

約8分で読めます

探査機ニュー・ホライズンズが撮影した冥王星
Photo: NASA / Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory / Southwest Research / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

冥王星は1930年に見つかってから76年間、9番目の惑星でした。2006年8月24日、国際天文学連合(IAU)が惑星の条件を初めて決め、冥王星は「準惑星」になりました。冥王星が変わったのではありません。まわりに似た天体が次々に見つかり、どこで線を引くかを決める必要が出てきたのです。

3行でわかる

  1. 2006年、IAUは惑星の条件を3つ決めた。太陽を回る、自分の重さで丸くなっている、軌道のまわりからほかの天体を片づけている。
  2. 冥王星は3つ目を満たさない。まわりには似た氷の天体がたくさんあり、2005年には冥王星より重いエリスも見つかった。
  3. この定義に反対する研究者は今もいる。2015年の探査で、冥王星は地表が若く、今も活動している天体だとわかった。

01 わかっていること冥王星はなぜ惑星でなくなったの?

冥王星は、惑星の3つ目の条件「軌道のまわりからほかの天体を片づけている」を満たさないからです。2006年に国際天文学連合がこの条件を決め、冥王星を準惑星に分けました。

2006年8月24日、チェコのプラハで開かれたIAUの総会で、太陽系の惑星の定義が決まりました[1]。IAUは、天体の名前や分け方を決める天文学者の国際団体です。決まった条件は次の3つです。

惑星の条件(IAU 2006年)地球冥王星
1. 太陽のまわりを回っている満たす満たす
2. 自分の重さで、ほぼ丸い形になっている満たす満たす
3. 軌道のまわりから、ほかの天体を片づけている満たす満たさない

1と2を満たし、3を満たさず、衛星でもない天体は「準惑星」と呼ぶことになりました[1]。冥王星は準惑星であり、海王星より遠くを回る天体の新しい種類の代表とされました。惑星は水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8つです。

決める必要が出たのは、冥王星の近くに似た氷の天体がたくさん見つかったからです[2]。2005年には、冥王星より重いエリスの発見が発表されました[3][4]。冥王星を惑星と呼ぶなら、似た天体をどこまで惑星に入れるかを決めなければなりませんでした。

02 どうやってわかったのか冥王星と惑星の違いは、どうやって確かめたの?

惑星と冥王星の違いは、軌道を共有する天体の重さを比べるとはっきりします。冥王星の大きさや姿は、2015年に探査機ニュー・ホライズンズが近くを通って詳しくわかりました。

わかっている国際天文学連合(2006年、総会決議)[1]

冥王星を準惑星とする決議(6A)は、賛成237、反対157、棄権17で可決されました。惑星の定義の決議(5A)は、数える必要がないほどの大多数で可決されました。

どうやって: プラハの総会で、出席した会員が投票して決めました。決議には、境目にある天体をどちらに分けるかの手続きを今後作る、という注も付いています。

有力な仮説Soter(2006年、The Astronomical Journal)[2]

ある天体の重さを、同じ軌道の帯を通るほかの天体の重さの合計で割った値を比べました。地球は約170万倍、冥王星は約0.07倍でした。8つの惑星とそれ以外の天体の間には、1万〜10万倍の差が開いていました。

どうやって: 小惑星や彗星などの数と重さの見積もりから計算しました。1人の研究者による大まかな見積もりですが、惑星とそれ以外の差があまりに大きいので、線を引く場所はあまり迷わないと述べています。

わかっているBrownら(2005年)、Brown & Schaller(2007年、Science)、Sicardyら(2011年、Nature)[3][4][5]

エリスの重さは冥王星の1.27倍でした。半径は約1163kmで、冥王星とほぼ同じ大きさです。大きさがほぼ同じで、重さは冥王星より重い天体が見つかったことになります。

どうやって: 重さは、エリスを回る衛星ディスノミアの軌道から計算しました。大きさは、エリスが遠くの星の前を横切って星を隠した時間を、複数の場所で測って求めました。

わかっているSternら(2015年、Science)、Nimmoら(2017年、Icarus)[6][7]

2015年7月14日、ニュー・ホライズンズが冥王星に最も近づきました。冥王星の半径は約1188kmで、エリスより少し大きいとわかりました。地表には、氷の流れ、新しい地形、全体を包むかすみの層がありました。

どうやって: 探査機のカメラで冥王星のふちの位置を測り、半径を求めました。地表の地形や大気は、画像と分光(光を色に分けて成分を調べる方法)で調べました。

有力な仮説Nimmoら(2016年、Nature)[8]

冥王星の大きなくぼ地「スプートニク平原」の位置は、氷の下に海があると考えるとうまく説明できます。海がないと、厚さ40kmを超える窒素の氷が必要になり、無理があるとしています。

どうやって: くぼ地の位置と、冥王星の回転や衛星カロンから受ける力の関係を計算しました。海を直接見たわけではありません。

03 数字と例えでいうと冥王星はどれくらい小さくて遠いの?

冥王星の重さは地球の約0.0022倍で、地球は冥王星の約450個分です。太陽を1周するのに248年かかるので、1930年の発見から1周するのは2178年です。

項目値例えでいうと
冥王星の半径約1188km[7]直径は約2377km
冥王星の重さ地球の約0.0022倍[2]地球は冥王星の約450個分(計算)
エリスの重さ冥王星の1.27倍[4]半径は冥王星の約98%なのに、重さは3割近く重い(計算)
太陽からの平均の距離約59億km(地球と太陽の距離の39倍)[10]地球の39倍遠い
太陽を1周する時間248年[10]1930年の発見から1周するのは2178年(計算)
軌道を片づけている度合い地球 約170万、冥王星 約0.07[2]地球は冥王星の約2400万倍(計算)
冥王星の決議(6A)の投票賛成237・反対157・棄権17[1]合計411票のうち賛成は約58%(計算)

04 まだわかっていないこと冥王星について、まだ決着していないことは?

惑星の定義そのものに反対する研究者がいて、議論は続いています。冥王星の氷の下に海があるのか、小さな天体がなぜ今も活動しているのかも、まだわかっていません。

05関連する記事

冥王星のような天体がどこから来たのかは太陽系のでき方の記事で書いています。

06よくある質問

冥王星はいつ惑星でなくなったの?

2006年8月24日です。チェコのプラハで開かれた国際天文学連合(IAU)の総会で惑星の定義が決まり、冥王星は準惑星に分けられました。1930年の発見から76年間、冥王星は9番目の惑星とされていました。

準惑星とは何?

太陽のまわりを回り、自分の重さでほぼ丸くなっているが、軌道のまわりからほかの天体を片づけておらず、衛星でもない天体です。冥王星やエリスが準惑星です。

冥王星はまた惑星に戻る可能性はある?

IAUの定義が変わらない限り、冥王星は準惑星のままです。一方で、定義に反対して大きな衛星や冥王星も惑星に含めるべきだと主張する研究者もいて、議論は続いています。

冥王星の大きさはどれくらい?

探査機ニュー・ホライズンズの画像から、冥王星の半径は約1188km、直径は約2377kmと測られました。重さは地球の約0.0022倍です。

エリスとはどんな天体?

2005年に発見が発表された準惑星です。半径は約1163kmで冥王星とほぼ同じ大きさですが、重さは冥王星の1.27倍あります。この発見が、惑星の定義を決めるきっかけの1つになりました。

出典

  1. International Astronomical Union (2006). IAU 2006 General Assembly: Result of the IAU Resolution votes(決議5A・6Aの本文と投票結果). https://www.iau.org/IAU/Iau/News/PR2006/iau-2006-general-assembly-resolution-votes.aspx
  2. Soter, S. (2006). What Is a Planet? The Astronomical Journal 132, 2513–2519. https://doi.org/10.1086/508861
  3. Brown, M. E., Trujillo, C. A., Rabinowitz, D. L. (2005). Discovery of a Planetary-sized Object in the Scattered Kuiper Belt. The Astrophysical Journal 635, L97–L100. https://doi.org/10.1086/499336
  4. Brown, M. E., Schaller, E. L. (2007). The Mass of Dwarf Planet Eris. Science 316, 1585. https://doi.org/10.1126/science.1139415
  5. Sicardy, B., Ortiz, J. L., Assafin, M., et al. (2011). A Pluto-like radius and a high albedo for the dwarf planet Eris from an occultation. Nature 478, 493–496. https://doi.org/10.1038/nature10550
  6. Stern, S. A., Bagenal, F., Ennico, K., et al. (2015). The Pluto system: Initial results from its exploration by New Horizons. Science 350, aad1815. https://doi.org/10.1126/science.aad1815
  7. Nimmo, F., Umurhan, O., Lisse, C. M., et al. (2017). Mean radius and shape of Pluto and Charon from New Horizons images. Icarus 287, 12–29. https://doi.org/10.1016/j.icarus.2016.06.027
  8. Nimmo, F., Hamilton, D. P., McKinnon, W. B., et al. (2016). Reorientation of Sputnik Planitia implies a subsurface ocean on Pluto. Nature 540, 94–96. https://doi.org/10.1038/nature20148
  9. Metzger, P. T., Grundy, W. M., Sykes, M. V., Stern, A., Bell, J. F., et al. (2022). Moons are planets: Scientific usefulness versus cultural teleology in the taxonomy of planetary science. Icarus 374, 114768. https://doi.org/10.1016/j.icarus.2021.114768
  10. NASA Science. Pluto: Facts. https://science.nasa.gov/dwarf-planets/pluto/facts/