クエーサーとは何か、宇宙でいちばん明るい天体

1963年、夜空で星のように見えていた点が、実ははるか遠くにある、とてつもなく明るい天体だとわかりました。これがクエーサーです。2024年には、太陽の500兆倍を超える明るさのクエーサーが、これまで見つかった中でいちばん明るい天体として報告されました。
3行でわかる
- クエーサーは、銀河の中心にある巨大なブラックホールに、まわりのガスが落ちこみながら強く光っているもの。光っているのはブラックホールではなく、落ちこむガス。
- 2024年に報告されたJ0529-4351は、太陽の500兆倍を超える明るさ。ブラックホールは太陽の約170億倍で、1日に太陽約1個分のガスを飲みこんでいると見積もられた。
- 明るいクエーサーが最も多かったのは、宇宙の年齢が20億〜30億年ほどのころ。宇宙の初めに巨大なブラックホールがなぜ早く育ったのかは、まだわかっていない。
01 わかっていることクエーサーとは何?
クエーサーは、銀河の中心の巨大なブラックホールに、ガスが渦を巻いて落ちこみ、熱くなって強く光っている天体です。遠すぎて点にしか見えず、星のように見えたので「準恒星状天体」と呼ばれました。
ブラックホールからは光も出られません。けれども、そのまわりを回るガスは別です。ガスは円盤(降着円盤)を作り、こすれ合って熱くなり、強い光を出します。ESAは、クエーサーのエネルギー源を、巨大ブラックホールのまわりのガスの円盤だと説明しています[8]。
クエーサーの中心のブラックホールは、太陽の何億倍、何十億倍という重さです。重さを量る方法の基本は「ブラックホールはどうやって見つけたのか」で書いています。
1969年、リンデン=ベルは、近くの銀河の中心には、光り終えた昔のクエーサー(つぶれた重い天体)が残っているはずだと提案しました[2]。天の川銀河の中心にも、太陽の約400万倍のブラックホールがあります(天の川銀河の中心のブラックホール)。
02 どうやってわかったのかクエーサーはどうやって見つけたの?
星のような点の光を虹のように分けたところ、光の波長が大きくのびていて、とても遠いとわかりました。遠いのに明るく見えるので、本当の明るさは桁外れだと考えられるようになりました。
わかっているSchmidt(1963年、Nature)[1]
電波を出す星のような天体「3C 273」の光を分けると、水素などの光の線が、ふだんの位置から赤い側へずれていました。ずれの大きさ(赤方偏移)は0.158で、光の波長が約16%のびていたことになります。
どうやって: アメリカのパロマー山天文台の口径5mの望遠鏡で、光を波長ごとに分けました。宇宙が膨張しているため、遠い天体ほど光の波長が大きくのびます。
わかっているLynden-Bell(1969年、Nature)[2]
クエーサーの光は、銀河の中心でつぶれた、とても重い天体にガスが落ちこむことで生まれると考えました。今では、巨大ブラックホールにガスが落ちこむという考えが、クエーサーの説明として広く受け入れられています。
どうやって: 重力でガスが落ちこむときに出るエネルギーを計算し、クエーサーの明るさを説明できると示しました。
わかっているRichardsら(2006年、The Astronomical Journal)[3]
1万5343個のクエーサーを数えると、明るいクエーサーの数(同じ体積あたり)は、赤方偏移2〜3のころが最も多くなっていました。宇宙の年齢でいうと、約21億〜33億年のころです。
どうやって: スローン・デジタル・スカイサーベイで光を分けて確かめたクエーサーを、距離と明るさごとに数えました。ピークがこの範囲のどこにあるかまでは、絞り込めていません。
わかっているBañadosら(2017年、Nature)[4]/Wangら(2021年、The Astrophysical Journal Letters)[5]
宇宙の年齢が約6.9億年のころのクエーサーJ1342+0928には、太陽の約8億倍のブラックホールがありました。約6.7億年のころのJ0313-1806では太陽の約16億倍で、2021年の発表時点で最も遠いクエーサーでした。
どうやって: 遠いクエーサーの光を分け、ブラックホールのまわりのガスの動きから重さを見積もりました。J0313-1806からは、光の速さの約20%で吹き出すガスも見つかりました。
有力な仮説Wolfら(2024年、Nature Astronomy)[6][7]
クエーサーJ0529-4351のブラックホールは太陽の約170億倍で、1日に太陽約1個分のガスを飲みこんでいると見積もられました。明るさは太陽の500兆倍を超え、これまで見つかった中でいちばん明るい天体とされています。光が届くまでに120億年以上かかっています。
どうやって: ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTで光を分けました。1980年の写真にも写っていましたが、明るすぎて星だと自動で分類され、2023年まで見落とされていました。
03 数字と例えでいうといちばん明るいクエーサーは、どれくらいすごいの?
J0529-4351は、太陽の500兆倍を超える明るさで、1日に太陽約1個分のガスを飲みこんでいます。地球に直すと、1秒に地球約4個分です。光る円盤の直径は約7光年あります。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| J0529-4351の明るさ | 太陽の500兆倍超[7] | J1342+0928(太陽の約40兆倍[4])の10倍以上(計算) |
| 飲みこむガスの量 | 1日に太陽約1個分[6] | 1秒に地球約4個分(太陽=地球の約33万倍として計算) |
| ブラックホールの重さ | 太陽の約170億倍[6] | 天の川銀河の中心(太陽の約400万倍)の約4000倍(計算) |
| 光る円盤の大きさ | 直径約7光年[7] | 太陽から海王星までの距離の約1万5000倍[7] |
| 3C 273のジェット(ガスの噴き出し) | 長さ約20万光年[8] | 光の速さで進んでも端から端まで約20万年 |
| 明るいクエーサーが多かった時代 | 赤方偏移2〜3[3] | 宇宙の年齢は約21億〜33億年(計算)。138億年の歴史を1年にすると、2月下旬〜3月下旬 |
宇宙の年齢は、プランク衛星の値(ハッブル定数67.4、物質の割合0.315)を使って計算しました。「1年にすると」は、138億年を365日に置きかえた日付です。
04 まだわかっていないことクエーサーでまだわからないことは?
宇宙の初めのクエーサーで、ブラックホールがなぜ短い時間で巨大に育てたのかは、まだわかっていません。遠いクエーサーのブラックホールの重さの測り方にも、確かめが必要な前提があります。
- なぜそんなに早く巨大になれたのかビッグバンから約6.7億年後に太陽の約16億倍のブラックホールがあることは、成長の理論にとって大きな難問だとされています[5]。最初の「種」が重かったという説などがあります(宇宙で最初の巨大ブラックホール)。
- 遠いブラックホールの重さは正しく測れているか遠いクエーサーの重さは、近くの天体で確かめた「光る雲の大きさと明るさの関係」を、明るい側へのばして見積もっています。J0529-4351は、この関係を直接確かめる試金石になると、論文は書いています[6]。
- J0529-4351は本当にこの明るさか手前の天体の重力で光が強く曲げられて(重力レンズ)明るく見えている場合、本当の明るさは小さくなります。論文の数字は、強いレンズがないとした場合の値です[6][7]。
- 明るいクエーサーが最も多かった正確な時期赤方偏移2〜3のどこが山なのかは、探し方のくせ(どのクエーサーが見つかりやすいか)の不確かさのため、まだ絞り込めていません[3]。
05関連する記事
06よくある質問
クエーサーとは何?
銀河の中心にある巨大なブラックホールに、まわりのガスが渦を巻いて落ちこみ、熱くなって強く光っている天体です。とても遠く、点にしか見えないため、星のように見える天体という意味で「準恒星状天体(クエーサー)」と呼ばれました。
クエーサーとブラックホールの違いは?
ブラックホールそのものは光を出しません。クエーサーは、ブラックホールのまわりを回りながら落ちこむガスが光っているものです。中心にあるのは、太陽の何億倍、何十億倍もの巨大なブラックホールです。
いちばん明るいクエーサーは?
2024年に報告されたJ0529-4351です。明るさは太陽の500兆倍を超え、ブラックホールは太陽の約170億倍、1日に太陽約1個分のガスを飲みこんでいると見積もられました。光が地球に届くまでに120億年以上かかっています。
最初に見つかったクエーサーは?
1963年にSchmidtが、おとめ座の3C 273の光を分け、赤方偏移0.158の遠い天体だと示しました。ESAによると3C 273は、知られている中で地球に近いクエーサーの1つで、約20万光年のジェットを出しています。
クエーサーはいつの時代に多かった?
明るいクエーサーの数は、赤方偏移2〜3のころが最も多かったと報告されています。宇宙の年齢でいうと約21億〜33億年のころ(プランク衛星の値での計算)です。
出典
- Schmidt, M. (1963). 3C 273: A Star-Like Object with Large Red-Shift. Nature 197, 1040. https://doi.org/10.1038/1971040a0
- Lynden-Bell, D. (1969). Galactic Nuclei as Collapsed Old Quasars. Nature 223, 690–694. https://doi.org/10.1038/223690a0
- Richards, G. T., Strauss, M. A., Fan, X., Hall, P. B., et al. (2006). The Sloan Digital Sky Survey Quasar Survey: Quasar Luminosity Function from Data Release 3. The Astronomical Journal 131, 2766–2787. https://doi.org/10.1086/503559
- Bañados, E., Venemans, B. P., Mazzucchelli, C., et al. (2017). An 800-million-solar-mass black hole in a significantly neutral Universe at a redshift of 7.5. Nature 553, 473–476. https://doi.org/10.1038/nature25180
- Wang, F., Yang, J., Fan, X., Hennawi, J. F., et al. (2021). A Luminous Quasar at Redshift 7.642. The Astrophysical Journal Letters 907, L1. https://doi.org/10.3847/2041-8213/abd8c6
- Wolf, C., Lai, S., Onken, C. A., Amrutha, N., et al. (2024). The accretion of a solar mass per day by a 17-billion solar mass black hole. Nature Astronomy 8, 520–529. https://doi.org/10.1038/s41550-024-02195-x
- ESO (2024). Brightest and fastest-growing: astronomers identify record-breaking quasar (eso2402). https://www.eso.org/public/news/eso2402/
- ESA/Hubble (2013). Best image of bright quasar 3C 273 (potw1346a). https://esahubble.org/images/potw1346a/


