宇宙探査

はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウの砂から何がわかったのか

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小惑星に近づくはやぶさ2の想像図
Photo: DLR German Aerospace Center / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

2020年12月6日、はやぶさ2のカプセルがオーストラリアの砂漠に帰ってきました。中にあったのは、小惑星リュウグウの黒い砂5.4グラム。1円玉5枚ほどの重さです。分析の結果、この砂には昔ぬるい水が流れていた跡と、生命の材料になる有機物が含まれていることがわかりました。ただし、生き物そのものは見つかっていません。

3行でわかる

  1. リュウグウの砂は、炭素を多く含む「CI型」と呼ばれる隕石によく似ていて、化学組成はほかのどんな天然の試料よりも太陽の表面に近い。
  2. 砂には、体温くらいの水の中で鉱物が変化した跡と、15種類のアミノ酸、RNAの材料ウラシルが見つかった。どれも生き物なしでできたものと考えられている。
  3. 地球の海の水や生命の材料が、リュウグウのような小惑星から運ばれてきたのかは、まだわかっていない。

01 わかっていることリュウグウの砂は何でできている?

リュウグウの砂は、水と反応してできた鉱物が中心で、炭素を多く含む「CI型」の隕石によく似ています。化学組成は、ほかのどんな天然の試料よりも太陽の表面に近いと報告されています。

リュウグウは直径約900メートルのC型小惑星です[2]。C型とは、炭素を多く含む黒っぽい小惑星のことです。地球の近くを回る小惑星の1つでもあります(小惑星が地球にぶつかる可能性)。はやぶさ2は2014年12月3日に打ち上げられ、リュウグウに2回着地して砂を集め、約6年の旅を終えて帰ってきました[1]。

集めた砂は5.4グラムで、JAXAが掲げた目標を大きく超えました[1]。地球に落ちてくる隕石と違うのは、地球の空気や生き物にほとんど触れていないことです[8]。だから、中身が地球で汚れたのか、もともとあったのかを見分けやすくなります。

02 どうやってわかったのか砂から、どうやって昔の様子を読み取った?

粒の重さや形、鉱物、元素の割合、有機物を、日本と海外の研究チームが分けて調べました。その結果、リュウグウのもとの天体の誕生時期や、水の温度まで見積もられています。

わかっているYadaら(2022年、Nature Astronomy)[3]

砂粒の平均の密度は1立方センチあたり約1.28グラムで、地上の隕石より軽く、すき間が多いことがわかりました。とても暗く、水と反応した跡を示す光の吸収も見つかりました。

どうやって: カプセルから取り出した砂粒の大きさ・密度・光の反射を、JAXAの施設で調べました。CI型の隕石にいちばん似ていますが、より暗く、すき間が多く、もろいと報告されています。

わかっているYokoyamaら(2023年、Science)[5]

砂の鉱物の多くは、約37℃(前後10℃の幅)の水の中で変化してできていました。その時期は、太陽系で最初の固体ができてから約520万年後と見積もられています。

どうやって: 鉱物の種類と、元素や同位体(同じ元素で重さが少し違う原子)の割合を測りました。水で変化したあと、砂は約100℃より熱くなったことがないと考えられています。

有力な仮説Nakamuraら(2023年、Science)[4]

硫化鉄の結晶の中に、二酸化炭素を含む水の粒が閉じ込められていました。このことから、リュウグウのもとの天体は太陽系の外側で生まれたと考えられています。

どうやって: 1〜8ミリの砂粒17個を調べました。もとの天体が太陽系のでき始めから約200万年後に生まれたという年代は、砂の性質をもとにしたコンピューターの計算による見積もりです。

わかっているNaraokaら(2023年、Science)、JAXA(2023年)[6][7]

砂から15種類のアミノ酸(たんぱく質の材料など)が見つかりました。量はごくわずかで、多くは砂1グラムあたり1ナノモル(10億分の1モル)未満でした。

どうやって: 砂をお湯で抽出し、含まれる有機物を調べました。アミノ酸の左手型と右手型はほぼ1対1で、生き物ではなく化学反応でできたものと考えられています。

わかっているObaら(2023年、Nature Communications)[8]

RNA(遺伝情報を伝える物質)の4つの材料の1つであるウラシルが見つかりました。ビタミンB3の仲間であるナイアシンも見つかっています。

どうやって: 2か所の着地点で集めた砂を水で抽出し、窒素を含む有機物を探しました。著者らは、こうした分子が小惑星で広くでき、初期の地球に届いた可能性を示しています。

03 数字と例えでいうとどれくらいの量で、何が見つかった?

持ち帰った砂は5.4グラムで、1円玉5枚ほどの重さです。そのわずかな砂から、体温くらいの水の跡と15種類のアミノ酸が見つかりました。

項目値身近な例えでいうと
持ち帰った砂の量5.4グラム[1]1円玉(1枚1グラム)5枚と少し
リュウグウの大きさ直径約900メートル[2]東京スカイツリー(634メートル)の約1.4倍
砂粒の密度1立方センチあたり約1.28グラム[3]水(1.00グラム)より約3割重いだけ。ふつうの隕石より軽い
鉱物が変化した水の温度約37℃(前後10℃)[5]人の体温くらい
見つかったアミノ酸15種類[7]多くは砂1グラムあたり1ナノモル未満のごく微量
旅の期間2014年12月打ち上げ、2020年12月帰還[1]約6年

04 まだわかっていないことリュウグウの砂でも、まだ謎なのは何?

地球の海の水や生命の材料が、リュウグウのような小惑星から運ばれたのかどうかは、まだ決着していません。材料から最初の生き物がどう生まれたのかも、この砂だけではわかりません。

05関連する記事

06よくある質問

リュウグウの砂から生き物は見つかった?

見つかっていません。見つかったのはアミノ酸やウラシルなど生命の材料になる有機物で、量はごくわずかです。アミノ酸の左手型と右手型がほぼ1対1だったことから、生き物ではなく化学反応でできたと考えられています。

はやぶさ2が持ち帰った砂はどれくらい?

JAXAによると5.4グラムで、目標を大きく超えました。1円玉5枚ほどの重さです。砂と一緒に、カプセルの中のガスも集められました。

リュウグウの砂は、地球に落ちた隕石と何が違う?

地球の空気や生き物にほとんど触れずに分析できたことが大きな違いです。中身はCI型という隕石によく似ていますが、より暗く、すき間が多く、もろいと報告されています。

リュウグウの砂で、地球の水の起源はわかった?

まだわかっていません。リュウグウの砂には水と反応した跡があり、JAXAは水や有機物を原始の地球に運んだ候補の1つとしています。ただ、地球の水のどれだけが小惑星から来たのかは決着していません。

出典

  1. JAXA 宇宙科学研究所 (2021). 「はやぶさ2」観点で振り返る2021、そこからの展望. https://www.isas.jaxa.jp/missions/documents/files/doc_6.pdf
  2. JAXA Hayabusa2 Project (2018). Ryugu seen from 330-240km. https://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20180619je/index_e.html
  3. Yada, T. et al. (2022). Preliminary analysis of the Hayabusa2 samples returned from C-type asteroid Ryugu. Nature Astronomy 6, 214–220. https://doi.org/10.1038/s41550-021-01550-6
  4. Nakamura, T. et al. (2023). Formation and evolution of carbonaceous asteroid Ryugu: Direct evidence from returned samples. Science 379, eabn8671. https://doi.org/10.1126/science.abn8671
  5. Yokoyama, T. et al. (2023). Samples returned from the asteroid Ryugu are similar to Ivuna-type carbonaceous meteorites. Science 379, eabn7850. https://doi.org/10.1126/science.abn7850
  6. Naraoka, H. et al. (2023). Soluble organic molecules in samples of the carbonaceous asteroid (162173) Ryugu. Science 379, eabn9033. https://doi.org/10.1126/science.abn9033
  7. JAXA (2023). Soluble organic molecules in samples of the carbonaceous asteroid (162173) Ryugu(プレスリリース, 2023年2月24日). https://global.jaxa.jp/press/2023/02/20230224-1_e.html
  8. Oba, Y. et al. (2023). Uracil in the carbonaceous asteroid (162173) Ryugu. Nature Communications 14, 1292. https://doi.org/10.1038/s41467-023-36904-3