太陽系

土星の環はいつできて、いつ消えるのか

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探査機カッシーニが撮影した土星と環
Photo: NASA/JPL-Caltech/SSI/Cornell / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

土星の環は、太陽系と同じくらい古いのか、それともずっと新しいのか。探査機カッシーニの測定から、環は1000万〜1億年前にできた若い環だという見積もりが出ました。一方で、古い環が若く見えているだけだという研究もあり、議論は決着していません。

3行でわかる

  1. カッシーニが測った環の重さは、土星の衛星ミマスの約0.41倍と軽かった。これをもとに、環は1000万〜1億年前にできたという見積もりがある。
  2. 環の物質は少しずつ土星に落ちている。NASAは、環が3億年、速ければ1億年以内になくなる可能性を示している。
  3. 2024年の研究は、環の粒は外から来たちりで汚れにくく、古くても若く見えると指摘した。環の年齢はまだ議論中。

01 わかっていること土星の環は何でできているの?

土星の環は、ちりのように小さな粒から家ほどの大きさまでの、氷と岩のかけらの集まりです。土星から最大28万2000kmまで広がりますが、主な環の厚さは10mほどしかありません。

NASAによると、土星の環は数えきれないほどの氷と岩のかけらでできています[7]。大きさは、ちりほどの氷の粒から家ほどの塊までさまざまです。主な環はA環・B環・C環の3つで、A環とB環の間には幅4700kmのすき間(カッシーニの間隙)があります[7]。

環の成分は90〜95%以上が水の氷です[5]。岩の成分がとても少なく、きれいな氷でできていることが、環の年齢を考える大事な手がかりになっています。

02 どうやってわかったのか環の年齢は、どうやって見積もったの?

環の年齢は、環の重さと、外から降ってくるちりでどれだけ汚れたかから見積もられました。軽くてきれいな環は若いと考えられますが、この考え方の前提を疑う研究もあります。

有力な仮説Iessら(2019年、Science)[1]

環全体の重さは1.54×1019kg(誤差±0.49)で、土星の衛星ミマスの約0.41倍でした。この軽さから、環は1000万〜1億年前にできた可能性があるとしています。

どうやって: カッシーニは最後の時期に、土星と一番内側の環の間を通り抜けました。そのうち6回、地球との電波のやりとりを記録し、土星と環の重力を分けて測りました。重さは測定で、年齢はそこからの推定です。

有力な仮説Kempfら(2023年、Science Advances)[2]

土星に外から降ってくる細かいちりの量を測りました。環に混じる氷以外の物質は体積で0.1〜2%ほどです。ちりが降る速さから計算すると、環がさらされてきた時間は約1億〜4億年以下になりました。

どうやって: カッシーニのちり分析器で、土星のまわりに入ってくるちりの量を最後まで測り続けました。ちりが当たるほど環は汚れるので、汚れの少なさから年齢の上限を出しました。

有力な仮説Hyodo・Genda・Madeira(2024年、Nature Geoscience)[3]

ちりが環の粒に高速でぶつかると、ちりは蒸発して細かい粒やイオンになり、環から取り除かれやすいと計算されました。ちりが環に残る割合は1%以下とみられ、古い環でも若く見える可能性があります。

どうやって: ちりが環の粒にぶつかる様子をコンピューターで計算しました。環の粒のすき間や強さは考えていないなど、モデルには限界があると著者ら自身が書いています。

わかっているWaiteら(2018年、Science)[4]

土星と一番内側の環の間で、環から土星へ物質が流れ込んでいました。その量は1秒あたり4800〜4万5000kgでした。メタンや有機物を含む粒も混じっていました。

どうやって: カッシーニが土星と環の間を通ったとき、質量分析計(物質を重さで分けて調べる装置)でその場の成分を直接測りました。

有力な仮説O'Donoghueら(2019年、Icarus)[6][8]

環の氷が、土星の磁場にそって「環の雨」として土星に降っています。NASAによると、その量は30分でオリンピックのプール1杯分。この雨だけで環は3億年でなくなり、カッシーニが測った流れ込みも足すと1億年もたたずになくなるとしています。

どうやって: ハワイのケック望遠鏡で、環の雨が土星の上空に作る光(赤外線)を観測して量を見積もりました。量には幅があります。

03 数字と例えでいうと土星の環はどれくらい重くて、薄いの?

環を全部集めて氷の玉にすると、直径は約320kmになります。広がりに比べてとても薄く、厚さ0.1mmの紙なら幅約2.8kmの紙と同じ割合です。

項目値例えでいうと
環全体の重さ1.54×1019kg[1]全部を氷の玉にすると直径約320km(計算)
衛星ミマスとの比0.41倍[1]小さな衛星1つの半分にも届かない
環の年齢の見積もり1000万〜1億年[1]、約1億〜4億年以下[2]太陽系の年齢(45億6700万年)の約0.2〜9%(計算)
広がりと主な環の厚さ土星から最大28万2000km、厚さ約10m[7]厚さ0.1mmの紙なら、幅約2.8kmと同じ割合(計算)
環の雨30分でオリンピックのプール1杯分[8]1秒に約1.4トン(計算)
内側から土星への流れ込み1秒に4800〜4万5000kg[4]1秒に約5〜45トン
環がなくなるまで環の雨だけで3億年、流れ込みも足すと1億年未満[8]—

氷の玉の直径は、氷の密度を1立方メートルあたり917kgとして計算しました(重さの誤差を入れると約280〜350km)。プールは50m×25m×深さ2mの2500立方メートル、水1立方メートルを1トンとして、30分(1800秒)で割りました。紙の例えは28万2000kmを10mで割った約2800万倍で計算しました。

04 まだわかっていないこと土星の環について、まだ謎なのは何?

環がいつ、どうやってできたのかは決着していません。若い環だという測定と、古くても若く見えるという計算が対立しています。環がなくなる時期の見積もりにも幅があります。

05関連する記事

土星の衛星エンケラドスの氷の下の海はエウロパとエンケラドスの記事で、太陽系そのものの年齢は太陽系のでき方の記事で書いています。

06よくある質問

土星の環はいつできたの?

決着していません。カッシーニが測った環の重さからは1000万〜1億年前、ちりの量からは約1億〜4億年以下という若い見積もりがあります。一方で、環の粒は汚れにくいため、古い環でも若く見えるという研究もあります。

土星の環はいつ消えるの?

NASAは、環の氷が土星に降る「環の雨」だけで環は3億年でなくなり、カッシーニが測った流れ込みも足すと1億年もたたずになくなる可能性を示しています。量の見積もりには幅があります。

土星の環の厚さはどれくらい?

NASAによると、主な環の厚さはふつう10mほどです。一方、環は土星から最大28万2000kmまで広がっています。厚さ0.1mmの紙にたとえると、幅約2.8kmの紙と同じ割合です。

土星の環は何でできているの?

ちりほどの小さな粒から家ほどの塊までの、氷と岩のかけらです。成分の90〜95%以上は水の氷で、岩の成分がとても少ないことがわかっています。

出典

  1. Iess, L., Militzer, B., Kaspi, Y., et al. (2019). Measurement and implications of Saturn's gravity field and ring mass. Science 364, eaat2965. https://doi.org/10.1126/science.aat2965
  2. Kempf, S., Altobelli, N., Schmidt, J., et al. (2023). Micrometeoroid infall onto Saturn's rings constrains their age to no more than a few hundred million years. Science Advances 9, eadf8537. https://doi.org/10.1126/sciadv.adf8537
  3. Hyodo, R., Genda, H., Madeira, G. (2024). Pollution resistance of Saturn's ring particles during micrometeoroid impact. Nature Geoscience 18, 44–49. https://doi.org/10.1038/s41561-024-01598-9
  4. Waite, J. H., Perryman, R. S., Perry, M. E., et al. (2018). Chemical interactions between Saturn's atmosphere and its rings. Science 362, eaat2382. https://doi.org/10.1126/science.aat2382
  5. Canup, R. M. (2010). Origin of Saturn's rings and inner moons by mass removal from a lost Titan-sized satellite. Nature 468, 943–946. https://doi.org/10.1038/nature09661
  6. O'Donoghue, J., Moore, L., Connerney, J., et al. (2019). Observations of the chemical and thermal response of 'ring rain' on Saturn's ionosphere. Icarus 322, 251–260. https://doi.org/10.1016/j.icarus.2018.10.027
  7. NASA Science. Saturn: Facts. https://science.nasa.gov/saturn/facts/
  8. NASA Science (2018). NASA Research Reveals Saturn is Losing Its Rings at Worst-Case-Scenario Rate. https://science.nasa.gov/solar-system/planets/saturn/nasa-research-reveals-saturn-is-losing-its-rings-at-worst-case-scenario-rate/
  9. Wisdom, J., Dbouk, R., Militzer, B., et al. (2022). Loss of a satellite could explain Saturn's obliquity and young rings. Science 377, 1285–1289. https://doi.org/10.1126/science.abn1234