太陽系

月はどうやってできたのか、ジャイアント・インパクト説の証拠

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月
Photo: NASA / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

毎晩見上げる月は、いつ、どうやって生まれたのでしょうか。今いちばん有力なのは、できたばかりの地球に火星くらいの大きさの天体がぶつかり、飛び散ったかけらが集まって月になった、という「ジャイアント・インパクト説」です。ただし、この説にもまだ解けていない大きな謎が1つ残っています。

3行でわかる

  1. 月は、できたばかりの地球に火星くらいの天体がぶつかってできた、という説が最も有力。NASAもこの説を紹介している。
  2. アポロが持ち帰った382kgの石から、月は遅くとも約45億1000万年前にはできていたと考えられることと、成分が地球によく似ていることがわかった。
  3. 計算では月の材料の多くはぶつかった天体から来るはずなのに、月の石は地球とそっくり。この食い違いはまだ決着していない。

01 わかっていること月はどうやってできたの?

月は、できたばかりの地球に火星くらいの大きさの天体がぶつかり、宇宙に飛び散ったかけらが集まってできた、とするジャイアント・インパクト説が最も有力です。

この考えは1975年、ハートマンとデイビスが論文で出しました[1]。地球ができるころ、まわりには大きな天体がいくつも飛び回っていました。そのうちの1つが地球にぶつかり、地球の外側の岩を宇宙へはじき飛ばした、という考えです。

ぶつかった天体は、ギリシャ神話の女神の名前から「テイア」と呼ばれています。NASAも、月は火星くらいの天体が地球にぶつかってできた可能性が高いと説明しています[6]。

ただし、これは誰も見ていない45億年前の出来事です。石の分析とコンピューターの計算を組み合わせて「いちばんつじつまが合う説」として選ばれている、と考えてください。

02 どうやってわかったのかジャイアント・インパクト説の証拠は何?

証拠は2つあります。アポロが持ち帰った月の石の年齢と成分、そして衝突をコンピューターで再現すると今の地球と月の重さや回り方が説明できることです。

有力な仮説Hartmann・Davis(1975年、Icarus)[1]

地球が育つ途中、半径500〜3000kmほどの大きな天体ができていたはずだと計算しました。それが地球にぶつかると、鉄の少ない外側の岩が飛び出し、月の材料になりうると提案しました。

どうやって: 惑星が小さな天体の衝突でどう育つかを計算しました。月の石に鉄が少ないことや、蒸発しやすい成分が少ないことを説明できる点が、この説の強みでした。

有力な仮説Canup・Asphaug(2001年、Nature)[2]

地球に斜めにぶつかる衝突をコンピューターで再現しました。その結果、鉄の少ない月と、今の地球と月の重さ・回転の勢いをまとめて説明できる衝突のパターンが見つかりました。

どうやって: 衝突を細かい粒の集まりとして計算しました。この研究では、月ができたのは地球がほぼ育ちきった最後のころだと考えられます。

有力な仮説Barboniら(2017年、Science Advances)[4]

アポロ14号が持ち帰った石の中の鉱物(ジルコン)を調べ、月の表面の岩は約45億1000万年前にはできていたとわかりました。岩の年齢なので、月が生まれたのはそれより前です。ここから、月は太陽系が生まれてから約6000万年以内にできたと考えられています。月の年齢の見積もりは研究によって幅があります。

どうやって: ウランが鉛に変わる速さを時計にして年代を測りました(放射年代測定)。

わかっていないZhangら(2012年、Nature Geoscience)[3]

月の石のチタンの種類の割合(同位体比)は、地球の石と見分けがつきませんでした。酸素でも、地球と月の石は同じだと知られています。

どうやって: 月の石を質量分析計という装置で測りました。一方、衝突の計算では月の材料の4割以上がテイアから来るはずです。成分が地球とそっくりな理由は、まだ決着していません。

03 数字と例えでいうと月はどれくらい大きく、どれくらい遠い?

月の半径は約1740km、地球からの平均距離は約38万4400kmです。そして月と地球は、今も年に約3.8cmずつ離れています。

項目値身近な例えでいうと
月の大きさ半径 約1740km[6]直径にすると約3480km
地球からの距離平均 約38万4400km[6]地球の赤道(1周約4万km)を約9周半した長さ
離れていく速さ年に約3.8cm[7]爪がのびる速さくらい。100万年で約38km
月ができた時期約45億1000万年前まで[4]太陽系が生まれてから約6000万年以内
アポロが持ち帰った石と砂合計382kg[6]体重60kgの大人6人分あまり

月が少しずつ離れているのは、地球と月が重力で引っぱり合っているためです[7]。この距離は、アポロが月に置いた鏡にレーザーを当て、光が往復する時間から測っています。

04 まだわかっていないこと月の誕生で、まだ謎なのは何?

いちばんの謎は、衝突説なのに月の石が地球の石とそっくりなことです。テイアの成分がどこへ行ったのかを説明する案はいくつもあり、まだ決着していません。

太陽系のほかの天体の成り立ちは、リュウグウのサンプルや小惑星の衝突の証拠からも調べられています。

05関連する記事

06よくある質問

月はどうやってできたの?

今いちばん有力なのは、約45億年前、できたばかりの地球に火星くらいの大きさの天体(テイア)がぶつかり、飛び散ったかけらが集まって月になったというジャイアント・インパクト説です。NASAもこの説を紹介しています。ただし直接見た人はおらず、石の分析と計算から最もつじつまが合う説として選ばれています。

月はいつできたの?

アポロ14号が持ち帰った石の鉱物を調べたBarboniらの研究(2017年)では、月の表面の岩は約45億1000万年前にはできていました。太陽系が生まれてから約6000万年以内です。

ジャイアント・インパクト説の問題点は?

衝突の計算では月の材料の4割以上がぶつかった天体から来るはずなのに、月の石のチタンや酸素の種類の割合は地球とそっくりです。この食い違いを説明する案はいくつもあり、まだ決着していません。

月は地球から離れているって本当?

本当です。アポロが月に置いた鏡にレーザーを当てて測ると、地球と月は年に約3.8cm、爪がのびるくらいの速さで離れています。地球と月が重力で引っぱり合っているためです。

出典

  1. Hartmann, W. K., Davis, D. R. (1975). Satellite-sized planetesimals and lunar origin. Icarus 24, 504–515. https://doi.org/10.1016/0019-1035(75)90070-6
  2. Canup, R. M., Asphaug, E. (2001). Origin of the Moon in a giant impact near the end of the Earth's formation. Nature 412, 708–712. https://doi.org/10.1038/35089010
  3. Zhang, J., Dauphas, N., Davis, A. M., Leya, I., Fedkin, A. (2012). The proto-Earth as a significant source of lunar material. Nature Geoscience 5, 251–255. https://doi.org/10.1038/ngeo1429
  4. Barboni, M., et al. (2017). Early formation of the Moon 4.51 billion years ago. Science Advances 3, e1602365. https://doi.org/10.1126/sciadv.1602365
  5. Ćuk, M., Stewart, S. T. (2012). Making the Moon from a Fast-Spinning Earth: A Giant Impact Followed by Resonant Despinning. Science 338, 1047–1052. https://doi.org/10.1126/science.1225542
  6. NASA Science. Earth's Moon: Facts. https://science.nasa.gov/moon/facts/
  7. NASA (2020). Laser Beams Reflected Between Earth and Moon Boost Science. https://www.nasa.gov/missions/laser-beams-reflected-between-earth-and-moon-boost-science