惑星は肉眼で見えるのか、星と惑星の見分け方

夕方の空に、ほかの星より先に光りだす「一番星」。それは恒星ではなく、金星や木星のこともあります。国立天文台も、金星や木星はとても明るく見えることがあると説明しています。肉眼で見える惑星はどれか、星とどう見分けるのかを、論文と公式の情報で確かめます。
3行でわかる
- 肉眼で見やすい惑星は、水星・金星・火星・木星・土星の5つ。天王星は肉眼で見える限界の6等級前後で、とても暗い空でないと難しい。海王星は肉眼では見えない明るさ。
- 見分けるコツは、明るさ(金星と木星は、夜空でいちばん明るい恒星シリウスより明るい)、星座の中を少しずつ動くこと、またたきが少ないことの3つ。
- 惑星がまたたきにくいのは、小さな円盤として見えて空気のゆらぎがならされるため。地平線の近くでは惑星もまたたくことがあるので、「またたかない=惑星」は傾向として使うとよい。
01 わかっていること肉眼で見える惑星はどれ?
肉眼で見やすいのは、水星・金星・火星・木星・土星の5つです。天王星は平均約5.7等で肉眼の限界の6等級に近く、海王星は約7.7〜8等で肉眼では見えません。
MallamaとHilton(2018年)は、50年以上の期間について惑星の明るさを計算し、それぞれの平均やいちばん明るいとき・暗いときをまとめました[1]。金星・木星・火星・土星・水星は、平均すると1等星と同じかそれより明るく見えます[1]。
明るさを表す「等級」は、数字が小さいほど明るく、1等級ちがうと明るさは約2.5倍ちがいます。くわしくは等級のしくみの記事で紹介しています。
水星は太陽のすぐ近くにいるので、日の入り直後か日の出前の低い空でしか見られず、見つけにくい惑星です[6]。惑星は星座をつくる恒星の間を移動するので、星座早見盤には描かれていません[5]。
惑星の見える場所や時間は、月ごとに変わります。見る前に、国立天文台の「ほしぞら情報」でその月の惑星を確かめるのが確実です[6]。例として、2026年10月(この記事を書いた時点)の東京の夜空の惑星は次のとおりです[6]。
- 土星: くじら座にいて、10月4日に地球をはさんで太陽と反対側に来る「衝」を迎えました。ほぼ一晩中見られ、明るさは0.3〜0.5等。
- 木星: しし座にいて、明け方に東から南東の空で見られます。明るさは約−1.9〜−2.0等。
- 火星: かに座からしし座へ動いていて、真夜中ごろに東の空から昇ります。明るさは1.1〜0.9等。
- 水星と金星: どちらも太陽に近く、10月は観察が難しい時期です(金星は10月24日に地球と太陽の間を通ります)。
02 どうやってわかったのか星と惑星はどうやって見分けるの?
明るさ、動き、またたき方の3つで見分けられます。決め手になるのは動きで、数日から数週間おきに見比べると、惑星は星座の中で位置が少しずつ変わっていきます。
わかっているMallamaとHilton(2018年、Astronomy and Computing)[1]
金星は最も明るいとき−4.92等で、ほかのどの惑星よりも約2等級明るくなります。木星は−2.94〜−1.66等、火星は−2.94〜+1.86等と、火星は時期によって明るさが大きく変わります。
どうやって: 1950年代からの観測をもとに惑星の明るさの式を作り直し、少なくとも50年分の明るさを計算して統計をとりました。天体暦『The Astronomical Almanac』で使うための式です。
わかっているNASA(Imagine the Universe!)[3]
恒星はとても遠いので、点のような光に見えます。惑星も肉眼では点に見えますが、実際の見かけの大きさは大気のゆらぎの大きさより大きいので、ゆらぎの効果がならされて、落ち着いて見えます。
どうやって: NASAの天文学者が、読者の「なぜ星はまたたき、惑星はまたたかないのか」という質問に答えた解説です。
わかっているOsbornら(2015年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[2]
星の光のちらつき(シンチレーション)は、真上から離れて地平線に近づくほど強くなります。よく使われる近似の式では、ちらつきの分散(明るさのゆれの大きさを2乗した量)が、真上からの角度の余弦(cos)の3乗に反比例して大きくなります。
どうやって: 大きな天文台での大気のゆらぎの測定と、望遠鏡での星の明るさの測定を比べた研究です。肉眼での見え方を直接調べたものではありません。
わかっている国立天文台[4]
明るい光がほとんど動かず、数分から数十分見え続けるなら惑星かもしれません。星の間をゆっくり動く光の点は、たいてい人工衛星です。
どうやって: 「明るい光を見たが何だったのか」という質問への国立天文台の回答です。動く光の点については国際宇宙ステーションが見える記事も参考になります。
03 数字と例えでいうと惑星はどれくらい明るく、大きく見えるの?
金星は最も明るいとき、夜空でいちばん明るい恒星シリウスの約25倍明るく見えます(計算)。木星は最も暗いときでもシリウスより明るい一方、見かけの大きさは最大でも満月の約38分の1です。
| 惑星 | 明るさ(等級) | 見かけの直径 | 例えでいうと |
|---|---|---|---|
| 金星 | −4.92〜−2.98(平均−4.14)[1] | 9.7〜66.1秒角[7] | 最も明るいとき、シリウス(−1.44等[8])の約25倍(計算) |
| 木星 | −2.94〜−1.66(平均−2.20)[1] | 30.5〜50.1秒角[7] | 最も暗いときでもシリウスの約1.2倍明るい(計算) |
| 火星 | −2.94〜+1.86(平均+0.71)[1] | 3.5〜25.6秒角[7] | 明るい時期と暗い時期で、明るさが約83倍ちがう(計算) |
| 土星 | −0.55〜+1.17(平均+0.46)[1] | 14.5〜19.9秒角(本体)[7] | 平均すると明るい1等星と同じくらい |
| 水星 | 平均+0.23[1] | 4.5〜13.0秒角[7] | 明るいが、太陽のそばの低い空にしか見えない |
| 天王星 | 5.38〜6.03(平均5.68)[1] | 3.3〜4.1秒角[7] | 肉眼の限界の6等級前後 |
| 海王星 | 7.67〜8.00(平均7.78)[1] | — | 肉眼では見えず、双眼鏡や望遠鏡が必要 |
1等級の差は約2.512倍として計算しました。たとえば金星とシリウスの差は3.48等級なので、2.512を3.48回かけて約25倍です。月の見かけの直径は平均約1896秒角なので[9]、最も大きく見えるときの木星(50.1秒角)でも約38分の1、金星(66.1秒角)でも約29分の1です(計算)。
Osbornらの近似の式で計算すると、高さ30度(真上から60度)の星のちらつきは、分散で真上の約8倍、明るさのゆれの大きさ(標準偏差)で約2.8倍です。高さ20度では、分散で約25倍、標準偏差で約5倍になります(計算)。これは望遠鏡で測るちらつきの式で、肉眼の見え方をそのまま表すものではありませんが、低い空ほど光がゆれやすいことを示しています[2]。
04 まだわかっていないこと惑星の見え方について、まだわからないことは?
「惑星はまたたかない」は大気のゆらぎで説明されていますが、肉眼でどれくらい違って見えるかを数字で比べた研究は、今回確かめた範囲では見つかりませんでした。惑星の明るさの式にも、観測のない条件で推定に頼る部分が残っています。
- 肉眼で、惑星のまたたきは恒星よりどれくらい少ないのか恒星が点に見え、惑星が小さな円盤に見えるので、惑星はゆらぎがならされると説明されています[3]。ただ、ちらつきの研究は望遠鏡での測定が中心です[2]。人の目で見たときにどれくらい差があるのかを数字で示した研究は、今回確かめた範囲では見つかりませんでした。地平線近くの惑星がまたたいて見えることがあるのも、このためにはっきりした線引きができません。
- 観測できない角度での惑星の明るさMallamaとHiltonの式は、地球から見える範囲の角度を中心に作られています。水星のいちばん明るい値や暗い値は、観測された範囲の外まで式をのばした推定にもとづいています[1]。太陽のすぐそばにいるときの惑星の明るさは、まだ観測で確かめきれていない部分があります。
05関連する記事
06よくある質問
肉眼で見える惑星はいくつ?
肉眼で見やすいのは、水星・金星・火星・木星・土星の5つです。天王星は肉眼で見える限界の6等級前後で、とても暗い空でないと難しく、海王星は約7.7〜8等で肉眼では見えません。
惑星は本当にまたたかないの?
空の高いところでは、恒星よりまたたきにくく、落ち着いて見えます。惑星は小さな円盤として見えるので、大気のゆらぎがならされるためです。ただし地平線の近くでは光が通る空気が厚くなり、惑星もまたたいて見えることがあります。
一番星は惑星なの?
金星や木星のことがあります。金星は最も明るいとき−4.92等で、夜空でいちばん明るい恒星シリウスの約25倍明るく見えます(計算)。夕方の西の空でひときわ明るい光は、金星であることがあります。
2026年10月に見える惑星は?
国立天文台の星空情報では、土星がほぼ一晩中、木星が明け方の東から南東の空、火星が真夜中ごろに昇ってから見られます。水星と金星は太陽に近く、観察が難しい時期です。惑星の位置は月ごとに変わるので、ほかの月は国立天文台の「ほしぞら情報」で確かめてください。
星と惑星を見分けるいちばん確かな方法は?
数日おきに同じ時刻に見て、近くの星との位置が変わるかを確かめる方法です。惑星は星座の中を少しずつ動きます。国立天文台の「ほしぞら情報」でその月の惑星の位置と照らし合わせると、さらに確かになります。
出典
- Mallama, A., Hilton, J. L. (2018). Computing apparent planetary magnitudes for The Astronomical Almanac. Astronomy and Computing 25, 10–24. https://doi.org/10.1016/j.ascom.2018.08.002
- Osborn, J., Föhring, D., Dhillon, V. S., Wilson, R. W. (2015). Atmospheric scintillation in astronomical photometry. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 452, 1707–1716. https://doi.org/10.1093/mnras/stv1400
- NASA Goddard. Ask an Astrophysicist: Why do the stars appear to twinkle while the planets don’t? Imagine the Universe! https://imagine.gsfc.nasa.gov/ask_astro/night_sky.html
- 国立天文台. 明るい光を見たのですが、なんだったのでしょう? よくある質問. https://www.nao.ac.jp/faq/a1003.html
- 国立天文台. 惑星がどこに見えるのかはどうすればわかるの? よくある質問. https://www.nao.ac.jp/faq/a0503.html
- 国立天文台 (2026). 東京の星空・カレンダー・惑星(2026年10月). ほしぞら情報. https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2026/10.html
- NASA NSSDCA. Planetary Fact Sheets(Mercury / Venus / Mars / Jupiter / Saturn / Uranus). https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/
- ESA (1997). The Hipparcos and Tycho Catalogues(カタログ I/239、VizieR). https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/239
- NASA NSSDCA. Moon Fact Sheet. https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/moonfact.html


