もし太陽が今すぐ消えたら、地球はいつ気づくのか

太陽が今この瞬間に消えたら、私たちはすぐに気づくでしょうか。答えは「約8分19秒後」です。空が暗くなるのと、地球が太陽の重力から外れるのは、ほぼ同時にやってきます。2017年の観測で重力波が光と同じ速さで進むと確かめられ、一般相対性理論では重力の変化も同じ速さで伝わるからです(太陽が突然消えること自体はありえない仮定で、その先は理論からの推論です)。
3行でわかる
- 太陽の光が地球に届くまで、平均で約8分19秒かかります。太陽が消えても、その間は太陽が見え続けます。
- 重力の変化も同じ約8分19秒で届きます。2017年、重力波とガンマ線が約1億3000万光年を旅して1.7秒差で届き、重力の速さと光の速さの差は1000兆分の3以下とわかりました。
- 8分19秒後、地球は秒速約30kmのまま、まっすぐ宇宙へ飛んでいきます。月は地球のまわりを回ったまま、一緒についていく計算です。
01 わかっていること太陽が消えたら、地球はいつ気づく?
約8分19秒後です。光も重力の変化も、同じ光の速さで伝わるからです。暗くなるのと、地球が太陽に引かれなくなるのは、ほぼ同時に起きます。
太陽から地球までは、平均で約1億4960万km。光は1秒に約30万km進むので、届くまで約499秒、つまり約8分19秒かかります。私たちが見ている太陽は、いつも約8分19秒前の姿です。
では重力はどうでしょう。もし重力が一瞬で伝わるなら、地球は暗くなる8分以上前に、太陽のまわりを回るのをやめるはずです。一般相対性理論は「重力の変化も光の速さで伝わる」と予言していました。
この予言は、2017年の観測で強く裏づけられました。重力の変化が波として伝わる「重力波」と、光の仲間であるガンマ線が、ほぼ同時に届いたのです。重力波そのものの話は重力波とは何かで説明しています。
02 どうやってわかったのか重力の速さは、どうやって測ったの?
2017年8月17日、2つの中性子星の合体から出た重力波とガンマ線が、約1億3000万光年を旅して1.7秒差で届きました。この差から、重力と光の速さはほとんど同じだとわかりました。
わかっているLIGOとVirgoの共同研究(2017年、Physical Review Letters)[1]
2017年8月17日、2つの中性子星が合体するときの重力波「GW170817」を初めてとらえました。距離は約40メガパーセク(約1億3000万光年)で、合体の1.7秒後にガンマ線のバーストが観測されました。
どうやって: アメリカのLIGOとヨーロッパのVirgoの重力波望遠鏡で、空間のごくわずかな伸び縮みを測りました。同じ方向から、フェルミ衛星などがガンマ線をとらえています。
わかっているLIGO、Virgo、フェルミ、インテグラルの共同研究(2017年、The Astrophysical Journal Letters)[2]
重力波とガンマ線の到着の差は1.74秒でした。この差から、重力の速さと光の速さの違いは、光の速さの「1000兆分の3遅い」から「1000兆分の0.7速い」の範囲に収まるとわかりました。
どうやって: 2つの信号の到着時刻の差と、距離の見積もりのいちばん近い値(26メガパーセク)から計算しました。ガンマ線が合体と同時に出た場合と、10秒遅れて出た場合を考え、慎重な範囲を求めています。
わかっているカーリップ(2000年、Physics Letters A)[3]
重力が光の速さで伝わるなら、地球は「8分19秒前の太陽の位置」に引かれて、軌道がずれていくのでは?という疑問に答えました。一般相対性理論では、動く天体の速さに関係する効果がずれをほぼ打ち消し、軌道は安定します。
どうやって: 理論の計算です。重力を単純な引っぱり合いとして考えると、軌道がずれないためには重力が光の200億倍以上速くなければなりません。一般相対性理論ではその必要がないことを示しました。
03 数字と例えでいうと気づくまでの時間と、その後の地球は?
気づくまでの時間は、地球と太陽の距離によって約8分11秒から約8分27秒まで変わります。気づいた後、地球は1日に約257万km進み、1年で地球と太陽の距離の約6.3倍まで離れる計算です。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 地球と太陽の平均距離 | 約1億4960万km [4] | 光で約8分19秒(計算) |
| いちばん近いとき | 約1億4710万km [4] | 光で約8分11秒(計算) |
| いちばん遠いとき | 約1億5210万km [4] | 光で約8分27秒(計算) |
| 重力と光の到着の差 | 速さの差は光の1000兆分の3以下 [2] | 8分19秒の旅で、ずれは最大でも約1兆分の1.5秒(計算) |
| 地球の公転の速さ | 秒速約29.78km [4] | 消えた後もこの速さで直進。1日に約257万km(計算) |
| 1年後の位置 | 元の太陽の位置から約6.3天文単位(計算) | 今の地球と太陽の距離の約6.3倍 |
最後の2行は、ほかの惑星の重力を無視して、地球がまっすぐ進むと仮定した計算です。ほかの惑星も、それぞれの速さでまっすぐ飛び去っていきます。
04 まだわかっていないことこの「もしも」で答えが出ないのは?
太陽が「消える」こと自体が物理の法則に反するので、消えた瞬間の重力の変わり方を、一般相対性理論でそのまま計算することはできません。また、気づいた後に地球がどこまで冷えるかも、確かな答えはありません。
- 消えた瞬間に何が伝わるのか一般相対性理論の式は、重さとエネルギーが保存されることを前提にしています。急に消える場合は式の前提から外れるため、伝わる変化の形は決められません。
- 重力を量子の世界で説明する理論重力波が光の速さで進むことは確かめられましたが、重力を量子の理論で説明する方法は、まだ完成していません。
- 地球はどこまで冷えるのか光と熱がなくなった後、地球がどれくらいの速さで冷えるかは、細かく追った研究が見つかっていません。冷え方の目安はもし太陽がブラックホールになったらで書いています。
05関連する記事
06よくある質問
太陽が消えたら、すぐに暗くなる?
すぐには暗くなりません。消える直前に太陽を出た光は、地球に届くまで約8分19秒かかるため、その間は太陽が見え続けます。暗くなるのと、地球が太陽に引かれなくなるのは、ほぼ同時です。
太陽が消えたら、月はどうなる?
月は地球の重力で地球のまわりを回っているので、回り続けたまま、地球と一緒にまっすぐ飛んでいく計算です。ただし太陽の光を反射しなくなるので、月は見えなくなります。
重力が光より速く伝わる可能性はないの?
2017年の観測では、重力と光の速さの違いは、光の速さの1000兆分の3より小さいとわかりました。重力が一瞬で伝わる、という考えは観測と合いません。
出典
- LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration, Abbott, B. P. et al. (2017). GW170817: Observation of Gravitational Waves from a Binary Neutron Star Inspiral. Physical Review Letters 119, 161101. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.119.161101
- LIGO Scientific Collaboration, Virgo Collaboration, Fermi Gamma-ray Burst Monitor and INTEGRAL, Abbott, B. P. et al. (2017). Gravitational Waves and Gamma-Rays from a Binary Neutron Star Merger: GW170817 and GRB 170817A. The Astrophysical Journal Letters 848, L13. https://doi.org/10.3847/2041-8213/aa920c
- Carlip, S. (2000). Aberration and the speed of gravity. Physics Letters A 267, 81-87. https://doi.org/10.1016/S0375-9601(00)00101-8
- NASA Goddard Space Flight Center. Earth Fact Sheet. https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/earthfact.html


