もし地球が赤い小さな星のまわりにあったら、どんな世界になるのか

太陽より小さく、暗く、赤い星「赤色矮星」のまわりにも、地球くらいの大きさの惑星が見つかっています。もし地球がそんな星のまわりにあったら、空も1日も1年も、今とはまったく違う世界になります。実在する惑星TRAPPIST-1eを例に、観測と計算でわかっていることと、想像でしかないことを分けて見ていきます。
3行でわかる
- TRAPPIST-1eは地球の0.92倍の大きさで、星から受ける光は地球の約65%。星は空で太陽の約4倍の幅に見え、1年は約6日(星の大きさと軌道からSEADICEが計算)。
- 星のすぐそばを回るため、いつも同じ面を星に向ける「潮汐固定」になっている可能性が高い。そうなら、ずっと昼の側とずっと夜の側に分かれる。
- JWSTの観測で、内側の惑星bとcには厚い大気がなさそうだとわかってきた。eに大気があるかは、まだ決まっていない。
01 わかっていること赤い小さな星の惑星は、地球と何が違う?
赤色矮星は暗いので、水が液体でいられる惑星は星のすぐそばを回ります。そのため1年がとても短く、星は空で大きく見え、いつも同じ面を星に向けやすくなります。
TRAPPIST-1は、地球から約12パーセク(約39光年)の所にある赤色矮星です[1]。重さは太陽の約9%、半径は約12%、明るさは約0.055%しかありません[2]。
この星のまわりを、地球くらいの大きさの岩の惑星が7つ回っています[1]。どれも星にとても近く、内側の6つは1.51日から12.35日で1周します。水が液体でいられるくらいの温度の惑星も含まれます[1]。水が液体でいられる範囲(ハビタブルゾーン)については地球に似た惑星の記事に、赤い星が赤い理由は星の色の記事にあります。
その中でeは、大きさ・重さ・受ける光が地球に近い惑星です[2]。ここからは、eを「赤い星のまわりの地球」として見ていきます。
02 どうやってわかったのかそこはどんな世界だと考えられているの?
惑星の大きさと重さは、星の前を横切るときの暗くなり方と時刻のずれから正確に測られています。回り方や気候はシミュレーション、大気の有無はJWSTの観測で調べられている途中です。
わかっているAgol ほか(2021年、The Planetary Science Journal)[2]
eの大きさは地球の0.920倍、重さは0.692倍、表面の重力は0.817倍です。星から受ける光の量は地球の0.646倍で、星からの距離は0.02925天文単位でした。
どうやって: スピッツァー宇宙望遠鏡などで4年分の「惑星が星の前を横切る時刻」を集めました。惑星どうしが引っぱり合って時刻がずれる様子から重さを、暗くなり方から大きさを求めています。
有力な仮説Leconte ほか(2015年、Science)[3]
暗い星の近くの惑星は、潮汐固定(いつも同じ面を星に向ける状態)と考えられることが多いです。ただ、薄い大気でも大気の動きが回転を固定からずらすことがあると計算されました。それが起きるのは、太陽の0.5〜0.7倍より重い星のまわりです。
どうやって: 地球の気候モデルと同じしくみの計算を使いました。TRAPPIST-1は太陽の約9%の重さなので、この計算の範囲から外れ、eは固定されている可能性が高いと考えられます。ただし、eの回り方を直接測った観測はありません。
有力な仮説Yang, Cowan, Abbot(2013年、The Astrophysical Journal Letters)[4]
いつも星を向く昼の側の真ん中では、強い上昇気流で厚い雲ができ、星の光をはね返して地表を冷やします。この働きで、潮汐固定の惑星は、これまでの見積もりの2倍の光を受けても水が液体でいられる可能性があります。
どうやって: 雲のでき方まで計算する気候シミュレーションです。観測で確かめたものではなく、JWSTで確かめられるかもしれないと書かれています。
わかっているVida ほか(2017年、The Astrophysical Journal)[5]
TRAPPIST-1では、ケプラー宇宙望遠鏡(K2)の観測中に42回のフレア(星の表面の爆発)が調べられました。約12%は、何度も山のある複雑な爆発でした。
どうやって: 星の明るさを短い間隔で測り、急に明るくなる回数とエネルギーを数えました。フレアが惑星の大気を変え続け、生命には不利かもしれないという点は、論文の考察です。
有力な仮説Greene ほか(2023年、Nature)・Zieba ほか(2023年、Nature)・Ducrot ほか(2025年、Nature Astronomy)[6][7][8]
いちばん内側のbは、昼の側だけが熱を出していて、熱を運ぶ大気がほとんどないと考えるのがいちばん素直な結果でした。cも、二酸化炭素の厚い大気は否定されました。ただbについては、別の波長も加えた2025年の分析で、厚い大気がある説明も残りました。
どうやって: JWSTの中間赤外線の装置で、惑星が星の裏に隠れる前後の明るさの差から、昼の側の温度を測りました。bは地球の4倍、cは約2倍の光を受ける、eより熱い惑星です[2]。
わかっていないEspinoza ほか・Glidden ほか(2025年、The Astrophysical Journal Letters)[9][10]
eについては、水素の多い大気は否定されました。しかし、窒素が多く二酸化炭素とメタンを少し含む大気でも、大気のない岩でも、データを説明できました。大気があるかどうかは、まだ決まっていません。
どうやって: eが星の前を横切るとき、大気を通った光の色の変化をJWSTで4回調べました。星の表面の模様による変化が混ざり、それを取り除くのが難しいことも報告されています。
03 数字と例えでいうとTRAPPIST-1eは地球とどれくらい違う?
大きさは地球とほぼ同じですが、重力は約8割、受ける光は約65%です。星までの距離は地球と太陽の約34分の1で、星は空で太陽の約4倍の幅に見え、1年は約6日です。
| 項目 | TRAPPIST-1e | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 大きさ(直径) | 地球の0.920倍[2] | 地球とほぼ同じ |
| 表面の重力 | 地球の0.817倍[2] | 体重50kgの人が体重計に乗ると約41kgと出る(計算) |
| 星から受ける光 | 地球の0.646倍[2] | 地球が受ける日光の約3分の2 |
| 星までの距離 | 0.02925天文単位[2] | 約440万km。地球と太陽の約34分の1(計算) |
| 1年(1周) | 約6日[1] | 1週間たたずに1年が終わる |
| 空の星の見かけの幅 | 約2.2度(計算) | 地球から見る太陽(約0.53度)の約4倍 |
| 星の表面温度 | 約2,566K[2] | 光がいちばん強い波長は約1.1マイクロメートルで、目に見えない赤外線(計算) |
星の見かけの幅は、星の半径(太陽の0.1192倍)[2]と軌道の大きさから、SEADICEが計算しました。星は太陽の8分の1ほどの大きさでも、惑星がとても近いため大きく見えます。光のいちばん強い波長は、表面温度からウィーンの法則で求めました。
星の寿命も違います。いちばん軽い赤色矮星は、水素を燃やして約10兆年輝き続けると計算されています[11]。太陽の0.2倍より軽い星は、赤色巨星にもならないとされます[11]。
ここから先は想像です。もし潮汐固定なら、昼の側では星がいつも同じ場所に浮かび、夜の側では星が昇りません。空の色や、植物がどんな色になるかといった話は、観測にもとづくものではなく、想像の段階です。
04 まだわかっていないこと赤い星の惑星で、まだ謎なのは何?
TRAPPIST-1eに大気があるかどうかは、まだわかっていません。本当に潮汐固定なのか、強いフレアの中で大気が残れるのかも、観測では確かめられていません。
- eに大気はあるのか2025年の観測では、窒素の多い大気でも大気のない岩でも説明できました[10]。eとbが続けて星の前を横切る機会を使う観測が進んでいて、星の模様の影響をもっと正確に取り除けると期待されています[10]。
- 本当にいつも同じ面を向けているのか潮汐固定は計算からの予想で、eの回り方は測られていません[3]。昼と夜の気候も、雲のでき方などでシミュレーションの結果が変わります[4]。
- フレアの中で大気と生命は守られるのか赤色矮星の惑星に生命がすめるかは、長く議論されてきた問題です[12]。フレアが大気を変え続けるという考えは有力ですが[5]、どれくらい大気が失われるかは決着していません。生命がいるかどうかは、まったくわかっていません。
05関連する記事
06よくある質問
赤色矮星のまわりに地球に似た惑星はある?
あります。約40光年先の赤色矮星TRAPPIST-1には、地球くらいの大きさの岩の惑星が7つあり、そのうちいくつかは液体の水がありうる温度とされています。ただし、海や生命が確かめられた惑星はまだありません。
潮汐固定とは何?
星の重力で惑星の回り方がそろい、いつも同じ面を星に向けるようになることです。月がいつも同じ面を地球に向けているのと同じしくみです。赤色矮星の近くを回る惑星は、こうなりやすいと考えられています。
TRAPPIST-1eに大気はあるの?
まだわかっていません。2025年に発表されたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測では、水素の多い大気はほぼ否定されましたが、窒素の多い大気でも、大気のない岩でも説明できる結果でした。星そのものの模様が信号に混ざることが、判定を難しくしています。
赤色矮星の惑星から見る星はどんな大きさ?
TRAPPIST-1eから見ると、星の見かけの幅は約2.2度で、地球から見る太陽(約0.53度)の約4倍です。星は小さいのですが、惑星が星にとても近いため大きく見えます。これは2021年の研究の星の半径と軌道の大きさからSEADICEが計算した値です。
出典
- Gillon, M., Triaud, A. H. M. J., Demory, B.-O., Jehin, E., et al. (2017). Seven temperate terrestrial planets around the nearby ultracool dwarf star TRAPPIST-1. Nature 542, 456–460. https://doi.org/10.1038/nature21360
- Agol, E., Dorn, C., Grimm, S. L., Turbet, M., et al. (2021). Refining the Transit-timing and Photometric Analysis of TRAPPIST-1: Masses, Radii, Densities, Dynamics, and Ephemerides. The Planetary Science Journal 2, 1. https://doi.org/10.3847/psj/abd022
- Leconte, J., Wu, H., Menou, K., Murray, N. (2015). Asynchronous rotation of Earth-mass planets in the habitable zone of lower-mass stars. Science 347, 632–635. https://doi.org/10.1126/science.1258686
- Yang, J., Cowan, N. B., Abbot, D. S. (2013). Stabilizing Cloud Feedback Dramatically Expands the Habitable Zone of Tidally Locked Planets. The Astrophysical Journal Letters 771, L45. https://doi.org/10.1088/2041-8205/771/2/L45
- Vida, K., Kővári, Z., Pál, A., Oláh, K., Kriskovics, L. (2017). Frequent Flaring in the TRAPPIST-1 System—Unsuited for Life? The Astrophysical Journal 841, 124. https://doi.org/10.3847/1538-4357/aa6f05
- Greene, T. P., Bell, T. J., Ducrot, E., Dyrek, A., et al. (2023). Thermal emission from the Earth-sized exoplanet TRAPPIST-1 b using JWST. Nature 618, 39–42. https://doi.org/10.1038/s41586-023-05951-7
- Zieba, S., Kreidberg, L., Ducrot, E., Gillon, M., et al. (2023). No thick carbon dioxide atmosphere on the rocky exoplanet TRAPPIST-1 c. Nature 620, 746–749. https://doi.org/10.1038/s41586-023-06232-z
- Ducrot, E., Lagage, P.-O., Min, M., Gillon, M., et al. (2025). Combined analysis of the 12.8 and 15 μm JWST/MIRI eclipse observations of TRAPPIST-1 b. Nature Astronomy 9, 358–369. https://doi.org/10.1038/s41550-024-02428-z
- Espinoza, N., Allen, N. H., Glidden, A., Lewis, N. K., et al. (2025). JWST-TST DREAMS: NIRSpec/PRISM Transmission Spectroscopy of the Habitable Zone Planet TRAPPIST-1 e. The Astrophysical Journal Letters 990, L52. https://doi.org/10.3847/2041-8213/adf42e
- Glidden, A., Ranjan, S., Seager, S., Espinoza, N., et al. (2025). JWST-TST DREAMS: Secondary Atmosphere Constraints for the Habitable Zone Planet TRAPPIST-1 e. The Astrophysical Journal Letters 990, L53. https://doi.org/10.3847/2041-8213/adf62e
- Laughlin, G., Bodenheimer, P., Adams, F. C. (1997). The End of the Main Sequence. The Astrophysical Journal 482, 420–432. https://doi.org/10.1086/304125
- Shields, A. L., Ballard, S., Johnson, J. A. (2016). The habitability of planets orbiting M-dwarf stars. Physics Reports 663, 1–38. https://doi.org/10.1016/j.physrep.2016.10.003


