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もし月がなかったら地球はどうなるのか

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満月
Photo: Gregory H. Revera / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

夜空に月がなかったら、地球はどうなっていたでしょうか。「月がないと地球の傾きが暴れて、生き物が住めなくなる」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは1993年の計算から広まった説ですが、その後の研究で見直しが進んでいます。計算と観測で言えることと、想像を分けて見ていきます。

3行でわかる

  1. 潮の満ち引きを起こす力は太陽の分だけになり、今の大潮の約3分の1になる(計算)。夜は毎晩、新月の夜の暗さになる。
  2. 1993年の計算は、月がないと地軸の傾きが0〜85度の間で大きく揺れうると示した。
  3. 2012年と2014年の計算は、揺れは数億年で20〜25度ほどの幅に収まることが多く、変化もゆっくりだと見直した。ただし今の約2.6度の幅よりはずっと大きく、気候への影響は計算の条件しだいでわかっていない。

01 わかっていること月がないと潮の満ち引きはどうなる?

月がないと、潮の満ち引きは太陽が起こす分だけになります。太陽が潮を起こす力は月の約半分なので、潮の差は今よりずっと小さくなります。

今の地球では、月と太陽の両方が潮を起こしています。太陽は月よりずっと重いのですが、ずっと遠いため、潮を起こす力は月の約半分です[5]。月と太陽の力がそろう大潮のときと比べると、太陽だけの力は約3分の1になります(0.5÷1.5で計算)。

月の光もなくなります。月の満ち欠けに合わせて生きる生き物は多く、オーストラリアのグレートバリアリーフや沖縄などでは、サンゴとほかの無脊椎動物の数百種類が、満月の数夜後にいっせいに卵を産みます[6]。月の満ち欠けのしくみは月の満ち欠けの記事にあります。

ここでの「月がなかったら」は、最初から月がない地球を考える計算です。月が急に消える場合とは違います。月が急に消えても、地軸の傾きがすぐに変わるわけではありません。変わるのは数百万年以上かけてです[4]。

02 どうやってわかったのか月がないと地軸の傾きは暴れるの?

1993年の計算では、月がないと地軸の傾きが0〜85度の間で大きく揺れうるとされました。その後の計算では、揺れは思ったより小さく、ゆっくりだとわかってきました。

わかっているLaskarら(1993年、Nature)[1]

今の地球の地軸の傾きは、23.3度を中心にプラスマイナス約1.3度しか変わりません。月がこの安定を支えているという結果です。

どうやって: ほかの惑星の重力で地軸がどう揺さぶられるかを、長い時間について計算しました。月の重力が地軸のこまのような首振りを速めることで、ほかの惑星の影響と重ならずにすんでいる、という説明です。

有力な仮説Laskarら(1993年、Nature)[1]

月がないと、地軸の傾きがでたらめに変わる「カオス」の範囲が、ほぼ0度から約85度まで広がります。気候が大きく変わったかもしれない、と著者らは書きました。

どうやって: 地軸の揺れ方を周波数で分ける方法で、傾きが動きうる範囲を求めました。「動きうる範囲」であって、実際にそこまで動くかどうかは別の問題でした。

有力な仮説Lissauerら(2012年、Icarus)[2][3]

月のない地球を最長40億年分計算すると、傾きの揺れは数億年の間、20〜25度ほどの幅に収まることが多いという結果でした。惑星の軌道がふつうにふるまう計算では、1993年の方法で動きうるとされた範囲の65%を超えて傾きが動いた例はありませんでした。

どうやって: 地球の傾きの変化を、時間を追って直接計算しました。地球が逆向きに自転する場合や、1日が12時間より短い場合は、さらに揺れが小さくなりました。著者らは、大きな月は複雑な生き物が育つのに必ずしも必要ではないと結論しています。

有力な仮説Li・Batygin(2014年、The Astrophysical Journal)[4]

月のない地球の傾きは、0〜45度の範囲の中なら約750万年かけて動きます。45〜65度の壁を越えるには約20億年かかると見積もりました。

どうやって: 揺れがどれくらいの速さで広がるかを、式で見積もりました。月がなくても傾きの変化はゆっくりで、地球が長く住める星であることを妨げないと結論しています。

03 数字と例えでいうと月があるときとないときで何が違う?

月があると地軸の傾きの変化は約2.6度の幅ですが、月がないと数億年で20〜25度ほどの幅になると計算されています。潮の力は大潮の約3分の1になります。

項目月がある今の地球月がない地球(計算)
地軸の傾きの変化約22〜24.6度(23.3度プラスマイナス1.3度)[1]数億年で20〜25度ほどの幅[3]。動きうる範囲は約0〜85度[1]
潮を起こす力月+太陽(太陽は月の約半分)[5]太陽の分だけ。大潮の約3分の1(0.5÷1.5で計算)
1日の長さの変化100年で約0.0018秒ずつ長くなっている[7]潮のブレーキは太陽の分だけになり、長くなり方はずっと小さくなるはず(理屈からの推論)
夜の明るさ満月の夜は明るく、生き物の行動が変わる[6]毎晩、新月の夜と同じ暗さ
日食・月食起きる起きない

月は今も毎年約3.8センチずつ地球から離れています[8]。アポロ11号が月に反射板を置いた1969年から2026年までの57年で、約2.2メートル遠ざかった計算です。潮による1日の長さの変化は、計算では100年で約0.0023秒と予想されますが、昔の日食の記録から測ると約0.0018秒でした[7]。差は、氷河期のあと地面がゆっくり持ち上がる動きなどで説明しようとされています。

04 まだわかっていないこと月がない地球でも生き物は生まれた?

月がない地球で生き物が生まれ、育ったかどうかは、わかっていません。地軸の計算は進みましたが、潮や夜の暗さが生命の始まりや進化にどう効いたかは、確かめる方法がないためです。

05関連する記事

06よくある質問

月がなかったら地球に人は住めなかった?

わかっていません。1993年の計算では月がないと地軸の傾きが大きく揺れうるとされましたが、2012年と2014年の計算では、揺れは数億年で20〜25度ほどの幅に収まることが多く、変化もゆっくりだと見直されました。ただし20〜25度の揺れでも今の約2.6度の幅よりずっと大きく、気候への影響は計算の条件しだいで、住めたかどうかは決められません。

月がないと潮の満ち引きはなくなる?

なくなりません。太陽も潮を起こすからです。ただし太陽が潮を起こす力は月の約半分なので、月と太陽の力がそろう今の大潮と比べると約3分の1になります。

月が急に消えたらどうなる?

潮の満ち引きはすぐに太陽の分だけになり、夜は毎晩新月の暗さになります。地軸の傾きは急には変わらず、変わるとしても数百万年以上かけてと計算されています。なお、月が急に消える物理的な仕組みは知られておらず、これは思考実験です。

月は地球から遠ざかっているの?

はい。月に置かれた反射板にレーザーを当てる測定で、月は毎年約3.8センチずつ地球から離れていることがわかっています。潮の力で地球の自転のエネルギーが月に渡されているためです。

出典

  1. Laskar, J., Joutel, F., Robutel, P. (1993). Stabilization of the Earth’s obliquity by the Moon. Nature 361, 615–617. https://doi.org/10.1038/361615a0
  2. NASA Technical Reports Server. Lissauer, J. J., Barnes, J. W., Chambers, J. E. Obliquity variations of a moonless Earth(要旨). https://ntrs.nasa.gov/citations/20140011208
  3. Lissauer, J. J., Barnes, J. W., Chambers, J. E. (2012). Obliquity variations of a moonless Earth. Icarus 217, 77–87. https://doi.org/10.1016/j.icarus.2011.10.013
  4. Li, G., Batygin, K. (2014). On the Spin-axis Dynamics of a Moonless Earth. The Astrophysical Journal 790, 69. https://doi.org/10.1088/0004-637X/790/1/69
  5. NOAA National Ocean Service. Tides and Water Levels: What Causes Tides? https://oceanservice.noaa.gov/education/tutorial_tides/tides02_cause.html
  6. Kronfeld-Schor, N., Dominoni, D., de la Iglesia, H., Levy, O., Herzog, E. D., et al. (2013). Chronobiology by moonlight. Proceedings of the Royal Society B 280, 20123088. https://doi.org/10.1098/rspb.2012.3088
  7. Stephenson, F. R., Morrison, L. V., Hohenkerk, C. Y. (2016). Measurement of the Earth’s rotation: 720 BC to AD 2015. Proceedings of the Royal Society A 472, 20160404. https://doi.org/10.1098/rspa.2016.0404
  8. NASA (2020). Laser Beams Reflected Between Earth and Moon Boost Science. https://www.nasa.gov/missions/laser-beams-reflected-between-earth-and-moon-boost-science/