映画の小惑星帯はぎっしり詰まっているのか、本物はどれくらいスカスカか

SF映画には、宇宙船が岩だらけの小惑星帯をすり抜ける場面がよく出てきます。では、火星と木星の間にある本物の小惑星帯も、あんなにぎっしり詰まっているのでしょうか。答えは「いいえ、とてもスカスカ」です。全部集めても月の約3%の重さしかありません。
3行でわかる
- 小惑星帯(火星と木星の間で小惑星がたくさん回っている場所)の重さは、全部合わせて地球の約0.0004倍。月の約3%しかない。
- 直径1km以上の小惑星は約120万個と見積もられる。1個あたりの空間の一辺は約360万km。ランダムに散らばっているとすると、いちばん近い小惑星までは平均約200万km(どちらも計算)。地球と月の距離の約5倍。
- 1972年のパイオニア10号から、多くの探査機が小惑星帯を通り抜けて木星より外へ向かった。
01 わかっていること小惑星帯は本当にぎっしり詰まっている?
本物の小惑星帯は、ぎっしりどころか、ほとんどが何もない空間です。小惑星の数は多いものの、とても広い範囲に散らばっているため、いちばん近い小惑星どうしでも平均で約200万km(計算)離れています。
小惑星帯にある直径1km以上の小惑星は、約120万個と見積もられています[2]。NASAは110万〜190万個とし、もっと小さいものは何百万個もあるとしています[3]。
数は多くても、全部を集めた重さは小さいです。惑星や探査機の動きから量った小惑星帯の重さは、地球の約0.0004倍でした[1]。月の重さ(地球の約0.0123倍)と比べると、約3%です。
映画の小惑星帯は、場面を盛り上げるための絵です。本物の小惑星帯では、ひとつの小惑星の上に立っても、となりの小惑星は肉眼ではまず見えないほど遠くにあります(計算からの見立て)。地球にぶつかる小惑星の話は恐竜を絶滅させた小惑星の証拠と、地球に小惑星がぶつかる確率で書いています。
02 どうやってわかったのか小惑星帯の重さや数はどう量った?
重さは、小惑星帯の重力が惑星や探査機の動きをわずかにずらす量から計算しました。数は、望遠鏡で空の一部を深く調べ、全体に広げて見積もりました。
わかっているPitjeva・Pitjev(2018年、Astronomy Letters)[1]
小惑星帯全体の重さは、地球の(4.008±0.029)×10のマイナス4乗倍。さらに外側のカイパーベルト(海王星の外の小天体の集まり)は、小惑星帯の約50倍の重さでした。
どうやって: 惑星と探査機の位置の観測80万件以上を使い、小惑星帯の重力がその動きに与える影響から重さを求めました。
わかっているTedesco・Desert(2002年、The Astronomical Journal)[2]
直径1km以上の小惑星帯の小惑星は、(1.2±0.5)×10の6乗個、つまり約120万個と見積もられました。それまでの見積もりの約2倍です。
どうやって: ヨーロッパの赤外線天文衛星ISOで、黄道(惑星が通る道)の近くの小さな範囲を深く観測しました。その結果とほかの3つの見積もりを合わせて、全体の数を出しました。
わかっているNASA の記録(パイオニア10号)[4]
1972年7月、パイオニア10号は探査機として初めて小惑星帯に入りました。1973年2月15日、7か月かけて無傷で通り抜けました。
どうやって: 出発前は、探査機を壊すほどの粒がどれくらいあるか、わかっていませんでした。実際にいちばん近づいた小惑星の1つは、約550万マイル(約880万km)先の直径約0.5マイルのものでした。
有力な仮説Jewitt ら(2010年、Nature)[5]
2009年の初めごろ、小惑星帯の小惑星P/2010 A2がこわれ、ちりの尾を引いているのが見つかりました。核の直径は約120mでした。
どうやって: ハッブル宇宙望遠鏡でくわしく撮りました。小惑星どうしの衝突や、回転が速くなってこわれることは起きていると考えられていますが、めったに起きないため、直接の証拠は少ないと論文は書いています。
03 数字と例えでいうと小惑星同士はどれくらい離れている?
直径1km以上の小惑星だけで考えると、1個あたりの空間の一辺は約360万kmで、ランダムに散らばっているとすると、いちばん近い小惑星までは平均約200万km(どちらも計算)です。地球から月までの約5倍で、ふつうに飛んで小惑星にぶつかることはまずありません。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 小惑星帯全体の重さ | 地球の約0.0004倍[1] | 約2.4×10の21乗kg(計算)。月の約3% |
| 直径1km以上の数 | 約120万個[2] | 日本の人口の約100分の1の数が、広い空間に散らばる |
| 1個あたりの空間の一辺 | 約360万km(計算) | 地球と月の距離(約38万km)の約9倍 |
| いちばん近い小惑星までの平均の距離(ランダムに散らばっていると仮定) | 約200万km(計算) | 地球と月の距離の約5倍 |
| パイオニア10号がいちばん近づいた小惑星の1つ | 約880万km[4] | 地球と月の距離の約23倍 |
| カイパーベルトの重さ | 小惑星帯の約50倍[1] | 小惑星帯は太陽系の小天体の集まりの中でも軽い |
1個あたりの空間の一辺は、小惑星帯を太陽から2.2〜3.2天文単位(1天文単位は太陽と地球の距離で約1億5000万km)、厚さ1天文単位の輪とみなし、その体積を120万個で割った値の立方根です。小惑星がランダムに散らばっているとすると、いちばん近い小惑星までの平均の距離は、この一辺の約0.55倍になります(約200万km)。範囲や厚さの決め方で数字は変わり、1kmより小さい小惑星まで数えればもっと近くなります。あくまで目安です。
04 まだわかっていないこと小惑星帯で、まだ謎なのは何?
小さな小惑星が全部で何個あるか、小惑星帯がなぜこれほど軽いのか、小惑星がこわれる原因は何かは、まだ答えが出ていません。
- 小さな小惑星は何個あるのか直径1km以上でも「約120万個、前後50万個」と幅があります[2]。もっと小さいものは暗くて見つけにくく、数の見積もりはさらに不確かです。
- なぜ小惑星帯はこんなに軽いのか小惑星帯の小惑星は、場所や大きさによって成分が思ったより混ざり合っていることがわかりました。惑星が移動して小惑星帯をかき回したという説があり、くわしい筋書きは研究が続いています[6]。太陽系のでき方は太陽系はどうやってできたのかへ。
- 小惑星はぶつかってこわれるのか、回ってこわれるのかP/2010 A2のように小惑星がこわれた例は見つかっています。ただ、原因が衝突なのか、回転が速くなったせいなのかは、決めるのが難しいとされています[5]。
05関連する記事
06よくある質問
小惑星帯は映画のようにぎっしり詰まっている?
いいえ。本物の小惑星帯はほとんどが何もない空間です。直径1km以上の小惑星は約120万個ありますが、広い範囲に散らばっているため、ランダムに散らばっているとすると、いちばん近い小惑星までは平均約200万km(計算)。地球と月の距離の約5倍です。
小惑星帯の小惑星を全部集めるとどれくらいの重さ?
惑星や探査機の動きから量った重さは、地球の約0.0004倍です(Pitjeva・Pitjev 2018年)。月の重さの約3%で、月1つにもまったく届きません。
探査機は小惑星帯を通るとき、よけながら飛ぶの?
ふつうはよける必要がないほどスカスカです。1972〜1973年にパイオニア10号が初めて通り抜け、無傷でした。その後もボイジャーやニュー・ホライズンズなどが小惑星帯を通って、木星より外へ向かいました。
小惑星帯の小惑星同士はぶつからないの?
ぶつかることはありますが、めったに起きません。2009年には小惑星P/2010 A2がこわれてちりの尾を引いているのが見つかりました。ただ原因が衝突か、回転が速くなったせいかは決めにくいとされています。
出典
- Pitjeva, E. V., Pitjev, N. P. (2018). Masses of the Main Asteroid Belt and the Kuiper Belt from the Motions of Planets and Spacecraft. Astronomy Letters 44, 554–566. https://doi.org/10.1134/S1063773718090050
- Tedesco, E. F., Desert, F.-X. (2002). The Infrared Space Observatory Deep Asteroid Search. The Astronomical Journal 123, 2070–2082. https://doi.org/10.1086/339482
- NASA Science. Asteroids: Facts. https://science.nasa.gov/solar-system/asteroids/facts/
- NASA (2022). 50 Years Ago: Pioneer 10 Launches to Explore Jupiter. https://www.nasa.gov/history/50-years-ago-pioneer-10-launches-to-explore-jupiter/
- Jewitt, D., Weaver, H., Agarwal, J., Mutchler, M., Drahus, M. (2010). A recent disruption of the main-belt asteroid P/2010 A2. Nature 467, 817–819. https://doi.org/10.1038/nature09456
- DeMeo, F. E., Carry, B. (2014). Solar System evolution from compositional mapping of the asteroid belt. Nature 505, 629–634. https://doi.org/10.1038/nature12908


