地球の電波はいまどこまで届いたのか、宇宙人は地球に気づけるか

ラジオやテレビの電波は、光と同じ速さで宇宙へも漏れ出しています。定時のラジオ放送が始まった1920年から数えると、いちばん先の電波はもう約100光年先です。でも「届いている」と「気づかれる」は別の話です。遠くでは電波がとても弱くなるため、研究者の計算では、携帯電話の基地局の電波は、地球と同じくらいの望遠鏡なら約4〜8光年先の近い星からでも見つけられないとされています。
3行でわかる
- 人が出した電波は光の速さで広がり、いちばん先はラジオ放送の始まりから数えて約106光年先にある(計算)。
- 電波は距離の2乗で弱まる。携帯電話の基地局の電波は、地球最大級の電波望遠鏡と同じ装置では、約4〜8光年先の3つの星からでも見つけられないと計算されている。
- 宇宙人がいるか、どんな装置を持つかはわかっていない。電波ではなく、地球が太陽の前を横切る様子で気づける位置の星は数えられている。
01 わかっていること地球の電波は宇宙のどこまで届いた?
人が出した電波は光の速さで進むので、出してからの年数がそのまま届いた距離(光年)になります。1920年11月に始まった定時のラジオ放送から数えると、2026年の時点でいちばん先の電波は約106光年先です(計算)。
アメリカのラジオ局KDKAは、1920年11月2日の大統領選挙の速報から定時の放送を始めました[6]。その後、テレビやレーダーの電波も宇宙へ漏れるようになりました。こうして地球のまわりには、半径およそ100光年の「電波の泡」が広がっていると考えることができます。
ただし泡の中身は均一ではありません。電波は距離の2乗で弱まるので、距離が10倍になると強さは100分の1になります。1978年の研究では、宇宙から見て特に目立つのは、弾道ミサイルを見張る大型レーダーと、ふつうのテレビ放送だとされました[2]。
02 どうやってわかったのか宇宙人は地球の電波に気づけるの?
研究者は、地球から漏れる電波の強さを計算し、近くの星にある望遠鏡で受け取れるかを調べています。携帯電話の基地局の電波についての結果は「今の地球と同じくらいの望遠鏡なら、約4〜8光年先の近い星からでも見つけられない」というものです。
有力な仮説Saideら(2023年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[1]
携帯電話の基地局から宇宙へ漏れる電波は、最も強い向きで約40億ワット(4ギガワット)。アメリカのグリーンバンク望遠鏡と同じくらいの装置では、約4〜8光年先の3つの星からでも見つけられないという結果でした(論文は、10光年以内の文明なら今は見つけられないとまとめています)。
どうやって: 世界の基地局の場所と出力のデータから、地球が自転するにつれて約4.2〜8.3光年先の3つの星(ケンタウルス座アルファ星A、バーナード星など)へ届く電波の強さを計算しました。スマホ本体の電波や反射は入れていないので、少なめの見積もりです。観測で確かめたものではなく、仮定をおいた計算です。
有力な仮説ForganとNichol(2011年、International Journal of Astrobiology)[3]
次世代の電波望遠鏡SKAなら、軍のレーダーのような強い電波を約300光年先まで見つけられるとされます。それでも、人類のように電波で「にぎやか」な時代が約100年しか続かないなら、文明どうしが偶然気づく確率は約1000万分の1と低いという計算でした。
どうやって: 天の川銀河の中で文明が生まれては電波を出す様子を、乱数を使って何度もまねる計算(モンテカルロ法)をしました。地球はデジタル化などで電波を無駄に漏らさなくなり、静かになってきているとも指摘しています。300光年や1000万分の1という数字は、「文明は人類と同じく約100年だけ電波を出す」などの仮定をおいた計算で、観測で確かめたものではありません。
わかっているKalteneggerとFaherty(2021年、Nature)[4]
約326光年(100パーセク)以内で、地球が太陽の前を横切る様子を、人類の文明が始まった約5000年前から見られる位置にあった星は1715個。そのうち75個には、人が出した電波がもう届いています。
どうやって: ガイア衛星が測った星の位置と動きから、過去と未来の星の位置を計算しました。地球が横切ると太陽がわずかに暗くなるので、相手がトランジット法を使えば地球を見つけられる位置です。
03 数字と例えでいうと電波の泡の中に星はいくつある?
太陽から約32.6光年以内には339の星系が数えられています。半径100光年の球はその約29倍の体積なので、同じ割合なら約1万の星系が電波の泡の中にあります(目安の計算)。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| いちばん先の電波 | 約106光年先(1920年11月から2026年まで、計算) | いま届いている先の星では、地球のラジオ放送が始まったところ |
| 約32.6光年(10パーセク)以内の天体 | 540個(星・褐色矮星・惑星)、339の星系[5] | 電波の泡の半径の約3分の1の球 |
| 100光年以内の星系 | 約1万(上の数を体積の比で約29倍した目安) | ただし星は均一に散らばっていないので、けたの目安として見る |
| 電波の強さ | 距離の2乗に反比例 | 4.2光年先と42光年先では、同じ電波でも強さが100分の1 |
| 基地局の電波(最大) | 約4ギガワット[1] | それでも約4〜8光年先の3つの星から、地球最大級の電波望遠鏡で見つけられない(計算) |
「約1万」は、近い星の数え方をそのまま広げた単純な計算です。星の数そのものは、ガイア衛星の観測でより遠くまで数えられています[5]。
04 まだわかっていないこと地球に気づいた宇宙人はいるのか?
電波の泡の中に、電波を受け取れる文明があるかどうかは、まったくわかっていません。相手の望遠鏡の大きさも、そもそも生命がいるかもわからないため、「気づかれた」とも「気づかれていない」とも言えません。
- 電波の泡の中に文明はあるのか今のところ、人工の電波だと確かめられた宇宙からの信号は見つかっていません。くわしくは宇宙人からの信号は届いているのかにまとめています。
- 相手はどんな装置を持っているのか計算は「相手の望遠鏡が地球のものと同じくらい」と仮定しています。もっと大きな装置があれば見つかる距離は延びますが、どこまで延びるかは仮定しだいです。
- 地球の電波で一番遠くまで目立つのは何かモデルにはまだ入っていない電波(5G、レーダー、人工衛星の通信など)もあり、研究者は今後の計算で足すとしています[1]。
05関連する記事
06よくある質問
地球の電波は宇宙のどこまで届いている?
定時のラジオ放送が始まった1920年から数えると、いちばん先を進む電波は2026年の時点で約106光年先にあります(計算)。ただし最初のころの放送は弱く、遠くへ行くほど電波は薄まるので、その全体で地球の電波が聞き取れるわけではありません。
宇宙人は地球のテレビやスマホの電波を受信できる?
Saideら(2023年)の計算では、携帯電話の基地局から漏れる電波は、地球最大級の電波望遠鏡と同じくらいの装置では、約4〜8光年先の3つの星からでも見つけられないという結果でした(論文は、10光年以内の文明なら今は見つけられないとまとめています)。地球の今の技術より大きな装置を持っている場合だけ、見つかる可能性があります。
地球の電波が届いている範囲に星はいくつある?
太陽から約32.6光年(10パーセク)以内には、ガイア衛星などのデータで339の星系が数えられています。100光年の球は体積がその約29倍なので、同じ割合なら約1万の星系になります(目安の計算)。
地球はだんだん電波で静かになっている?
はい。テレビがケーブルやデジタル放送に変わり、電波を無駄に宇宙へ漏らさない技術が進んだため、地球は電波の上では静かになってきていると、ForganとNichol(2011年)が指摘しています。
出典
- Saide, C., Garrett, M. A., Heeralall-Issur, N. (2023). Simulation of the Earth's radio-leakage from mobile towers as seen from selected nearby stellar systems. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 522, 2393–2402. https://doi.org/10.1093/mnras/stad378
- Sullivan, W. T., Brown, S., Wetherill, C. (1978). Eavesdropping: The Radio Signature of the Earth. Science 199, 377–388. https://doi.org/10.1126/science.199.4327.377
- Forgan, D. H., Nichol, R. C. (2011). A failure of serendipity: the Square Kilometre Array will struggle to eavesdrop on human-like extraterrestrial intelligence. International Journal of Astrobiology 10, 77–81. https://doi.org/10.1017/S1473550410000236
- Kaltenegger, L., Faherty, J. K. (2021). Past, present and future stars that can see Earth as a transiting exoplanet. Nature 594, 505–507. https://doi.org/10.1038/s41586-021-03596-y
- Reylé, C., Jardine, K., Fouqué, P., Caballero, J. A., et al. (2021). The 10 parsec sample in the Gaia era. Astronomy & Astrophysics 650, A201. https://doi.org/10.1051/0004-6361/202140985
- IEEE / Engineering and Technology History Wiki. Milestones: Westinghouse Radio Station KDKA, 1920. https://ethw.org/Milestones:Westinghouse_Radio_Station_KDKA,_1920


