太陽系

金星はなぜ地球より熱いのか、温室効果が暴走した星

約6分で読めます

探査機マゼランのレーダー観測から作られた金星の全体の画像
Photo: NASA/JPL / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

金星の表面は平均約464℃。水が沸く温度の4倍以上です。太陽に近いから熱い、と思われがちですが、実は金星が吸収する太陽の光は地球より少ないことがわかっています。熱さの正体は、厚い二酸化炭素の大気が熱を逃がさない「温室効果」です。

3行でわかる

  1. 金星の表面は平均約464℃で、太陽系でいちばん熱い惑星。大気の96.5%が二酸化炭素で、地表の気圧は92気圧で、地球の約90倍ある。
  2. 金星は白い雲で太陽の光の約77%を跳ね返すため、吸収する光は地球の約6割しかない。それでも熱いのは、大気が熱を閉じこめているから。
  3. 昔の金星から水が失われた跡は、探査機の測定で見つかっている。ただし、昔の金星に海があったかどうかは、研究によって答えが分かれている。

01 わかっていること金星はなぜ地球より熱いの?

金星の熱さは、太陽に近いことだけでは説明できず、厚い二酸化炭素の大気が熱を宇宙へ逃がさないことが大きな理由です。この温室効果で、表面は約510度も温められています。太陽に近く光が強いことは、昔の金星で温室効果が暴走するきっかけになったと考えられています(02)。

NASAのデータでは、金星の大気は96.5%が二酸化炭素です[5]。地表の気圧は92気圧で地球の約90倍あり、NASAは「水深900メートル以上の海の底と同じくらいの力」と説明しています[5][7]。空は硫酸の厚い雲におおわれています[7]。

金星は地球より太陽に近く、届く光は約1.9倍あります[5]。ところが白い雲が光の約77%を跳ね返すので、吸収する量は地球の約6割しかありません(計算)。大気がなければ、金星は約マイナス46℃の寒い星になるはずでした[5]。

それでも表面が約464℃なのは、温室効果(大気が地面からの熱を吸って、逃がしにくくするはたらき)がとても強いからです。地球の温室効果が温める分は約34度ですが、金星では約510度にもなります(計算)[5][6]。

02 どうやってわかったのかなぜ温室効果が「暴走」したと考えられているの?

太陽の光が強いと、海の水が蒸発し、水蒸気がさらに熱を閉じこめて、海がすべて蒸発してしまう。この「暴走温室効果」の考えは1969年の論文で示され、金星で水が失われた跡も測定されています。

わかっているNASAの惑星データ(金星・地球のファクトシート)[5][6]

金星の表面は平均737K(約464℃)、気圧は92気圧。大気がないと仮定した温度は226.6K(約マイナス46℃)で、地球の254K(約マイナス19℃)より低い値です。

どうやって: 金星に降りたり、周りを回ったりした探査機の測定をもとに、NASAがまとめている値です。「大気がないと仮定した温度」は、受ける光と跳ね返す割合から計算した値です。

有力な仮説Ingersoll(1969年、Journal of the Atmospheric Sciences)[1]

太陽の光がある強さを超えると、水蒸気が熱を閉じこめる働きが止まらなくなり、海は大気の中へ蒸発しきってしまう、と計算で示しました。金星の水が失われた歴史を説明する考え方のもとになりました。

どうやって: 大気の中で光と熱の出入りがつり合う条件を、理論の計算で求めました。水蒸気が太陽の光で分解されることにも触れています。

有力な仮説Donahueら(1982年、Science)[2]

金星の大気では、重水素(ふつうより重い水素)の割合が地球の約100倍ありました。軽い水素ほど宇宙へ逃げやすいので、重い水素が残ったと考えられます。少なくとも地球の海の0.3%にあたる水が、昔の金星の内部から出てきたことを示します。

どうやって: パイオニア・ビーナスの降下機が、雲を通り抜けるときに装置の口に付いた硫酸の中の水素を測りました。1回の降下での測定です。

03 数字と例えでいうと金星と地球はどれくらい違うの?

金星は地球より多くの光を受けるのに、吸収する光は少ない星です。それでも表面は地球より約450度熱く、地表の気圧は約90倍、1日は地球の約117日分あります。

項目金星地球と比べると
表面の平均温度約464℃[5]地球は約15℃[6]。水が沸く100℃の4倍以上
地表の気圧92気圧[5]水深約900mの海の底と同じくらい(10mで約1気圧として計算)
大気の二酸化炭素96.5%[5]地球の大気の主な成分は窒素と酸素
届く太陽の光1平方メートルあたり2601W[5]地球(1361W)の約1.9倍
光を跳ね返す割合77%[5]地球は29%。吸収する光は地球の約6割(計算)
温室効果で上がった温度約510度(計算)地球は約34度(計算)。約15倍
1日の長さ(日の出から次の日の出)地球の約117日[5]しかも地球と逆向きに自転している

「温室効果で上がった温度」は、NASAのデータにある表面温度から、大気がないと仮定した温度を引いて求めました。金星は737K−226.6K、地球は288K−254Kです[5][6]。

04 まだわかっていないこと昔の金星には海があったの?

昔の金星に海があったかどうかは、まだ決着していません。気候の計算でも「長く海があった」とする研究と「一度も海はできなかった」とする研究があり、答えが分かれています。

05関連する記事

06よくある質問

金星はなぜ水星より熱いの?

水星は太陽にいちばん近いものの、熱を閉じこめる大気がほとんどありません。金星は二酸化炭素が96.5%の厚い大気が温室効果で熱を逃がさないため、表面が平均約464℃と、太陽系でいちばん熱い惑星になっています。

金星の表面温度は何度?

NASAのデータでは、金星の表面の平均温度は737K、約464℃です。地球の平均(約15℃)より約450度高く、太陽系の惑星の中でいちばん熱い温度です。

地球も金星のようになるの?

太陽はゆっくり明るくなっていて、とても遠い将来には地球も住めなくなると考えられています。そのとき地球がどうなるかは、太陽の未来についての研究で調べられています。金星は、温室効果が止まらなくなると惑星がどうなるかを教えてくれる例です。

金星の1日はどれくらい?

金星は地球と逆向きに、とてもゆっくり自転しています。NASAのデータでは、日の出から次の日の出までが地球の約117日分です。1回転するのにかかる時間は地球の約244日分です。

出典

  1. Ingersoll, A. P. (1969). The Runaway Greenhouse: A History of Water on Venus. Journal of the Atmospheric Sciences 26, 1191–1198. https://doi.org/10.1175/1520-0469(1969)026%3C1191:TRGAHO%3E2.0.CO;2
  2. Donahue, T. M., Hoffman, J. H., Hodges, R. R., Watson, A. J. (1982). Venus Was Wet: A Measurement of the Ratio of Deuterium to Hydrogen. Science 216, 630–633. https://doi.org/10.1126/science.216.4546.630
  3. Way, M. J., Del Genio, A. D., Kiang, N. Y., Sohl, L. E., et al. (2016). Was Venus the first habitable world of our solar system? Geophysical Research Letters 43, 8376–8383. https://doi.org/10.1002/2016GL069790
  4. Turbet, M., Bolmont, E., Chaverot, G., Ehrenreich, D., Leconte, J., Marcq, E. (2021). Day–night cloud asymmetry prevents early oceans on Venus but not on Earth. Nature 598, 276–280. https://doi.org/10.1038/s41586-021-03873-w
  5. NASA Goddard Space Flight Center. Venus Fact Sheet. https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/venusfact.html
  6. NASA Goddard Space Flight Center. Earth Fact Sheet. https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/earthfact.html
  7. NASA Science. Venus Facts. https://science.nasa.gov/venus/venus-facts/