太陽フレアとは何か、オーロラや停電との関係

2024年5月、北海道から沖縄まで、日本の各地でオーロラが写真に写りました。きっかけは太陽の表面で続けて起きた大きな爆発です。太陽フレアのニュースでは「通信障害」「停電」という言葉も出てきますが、何がどこまで起きるのでしょうか。わかっていることと、まだわからないことを分けて整理します。
3行でわかる
- 太陽フレアは太陽の表面で起きる爆発で、強い光(X線など)は約8分で地球に届き、昼側の短波無線を弱めることがある。
- オーロラや送電網への影響を起こすのは、主に太陽から飛び出すガスと磁場のかたまり(CME)が起こす磁気嵐。届くまで速くても15〜18時間かかる。
- 1859年のキャリントン・イベント級の磁気嵐が次の10年に起きる確率は、計算のしかたで約3%から約12%まで分かれ、まだはっきりしない。
01 わかっていること太陽フレアとは何?オーロラや停電と関係あるの?
太陽フレアは太陽の表面で起きる爆発で、強い光で無線を乱します。オーロラや停電を起こすのは、主にフレアのあとに届くガスと磁場のかたまり(CME)が起こす「磁気嵐」です。
NOAA(米国海洋大気庁)の宇宙天気予報センターによると、太陽フレアは数分から数時間続く、光(電磁波)の大きな噴き出しです[7]。光の速さで届くので、地球の昼側ではフレアが見えたときにはもう影響が出ています。太陽から地球までの距離を光の速さで割ると、約8分19秒です(計算)。太陽そのものの一生から見れば、フレアはごく短い出来事です。
強いフレアは、上空の電離層(電気を帯びた空気の層)を乱し、3〜30MHzの短波無線を弱めたり、使えなくしたりします[7]。遠くと交信する短波の無線が、昼側で一時的に聞こえにくくなるということです。
一方、オーロラや送電網に影響するのはCME(コロナ質量放出: 太陽の外側から飛び出すガスと磁場のかたまり)です[8]。CMEが地球にぶつかると、地球の磁場が大きく揺れる「磁気嵐」が起きます。大きなフレアとCMEは一緒に起きることがあり、1989年の大停電もそうでした[3]。
02 どうやってわかったのか過去の大きな太陽嵐では何が起きたの?
1859年、人類が初めて見た太陽フレアのあと、記録に残る最大級の磁気嵐が起き、電信が乱れました。1989年にはカナダの送電網が止まり、2024年には日本の広い範囲でオーロラが見えました。
わかっているCarrington(1859年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[1][2]
1859年9月1日、英国の天文学者キャリントンが、太陽の表面に、とても明るく光る部分が現れるのを見つけました。記録に残る最初の太陽フレアです。その17.5時間後に、とても大きな磁気嵐が始まりました。
どうやって: 太陽を望遠鏡で観察していて見つけ、学会誌に報告しました。同じ時刻に、ロンドンのキュー観測所やグリニッジ天文台の磁気の記録にも乱れが残っていました。
有力な仮説CliverとDietrich(2013年、Journal of Space Weather and Space Climate)[2]
1859年のフレアの強さはX45前後、磁気嵐の強さを表す指数(Dst)は約マイナス900ナノテスラと見積もりました。1989年の嵐(マイナス589)の約1.5倍です。このときの磁気嵐は電信(電線で文字を送る通信)を大きく乱しました。
どうやって: 当時の磁気の記録やオーロラの目撃を、今の観測機器でとらえた大きなフレア・磁気嵐と比べて推定しました。昔の記録からの推定なので幅があります。
わかっているBoteler(2019年、Space Weather)[3]
1989年3月13日の磁気嵐で、カナダ・ケベック州の電力会社ハイドロ・ケベックの送電網が停電しました。原因は2つのCMEで、3月10日のX4.5と12日のM7.3のフレアに伴うものでした。嵐が強まると、米国・英国・スウェーデンの電力設備にも問題が出ました。
どうやって: 当時の太陽・磁気・電力の記録を集め直し、何がいつ起きたかを時刻順に組み立てました。CMEが地球に届くまでは54.5時間と31.5時間でした。
有力な仮説片岡龍峰ら(2024年、Scientific Reports)[6][11]
2024年5月11日の磁気嵐で、日本の各地からマゼンタ色(赤紫)のオーロラが写されました。ふつう日本で見える赤いオーロラに、とても高いところで光る青い光が混ざったためだと説明しました。発表によると、オーロラの上の端は高さ1000km以上だった可能性が高いとされます。
どうやって: 市民がSNSで寄せた写真を集め、179地点の写真からオーロラの上の端の見える角度を求めて、光っていた高さを推定しました。人工衛星の観測や計算でも確かめています。
03 数字と例えでいうと太陽フレアや磁気嵐はどれくらいの強さなの?
フレアはA・B・C・M・Xの5段階で、1段上がるごとに10倍強くなります。地球に大きな影響が出うる最強のG5の磁気嵐は、約11年の太陽の活動周期に平均4回ほどです。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| フレアの光が地球に届く時間 | 約8分19秒(計算) | 見えたときには、もう届いている |
| フレアの強さの段階 | A・B・C・M・X、1段で10倍[7] | X1はC1の100倍、A1の1万倍 |
| CMEの速さ | 秒速250km未満〜約3000km[8] | 速いものは、東京から大阪(約400km)を0.2秒以下で進む(計算) |
| CMEが地球に届く時間 | 最も速いもので15〜18時間[8] | 1859年は17.5時間[2]、1989年は31.5〜54.5時間[3] |
| G5(最も強い磁気嵐)の回数 | 約11年の周期に平均4回[9] | G4は約100回、G3は約200回 |
| 2024年5月の磁気嵐 | G5、2003年以来[10] | 約20年ぶりの最強クラス |
NOAAの説明では、G5の磁気嵐では送電網で電圧の制御に広く問題が起き、一部で停電や変圧器の損傷が起こりうるとされます[9]。NOAAの宇宙天気予報センターなどが太陽を見張り、大きな磁気嵐の予報や警報を出しています。
04 まだわかっていないことキャリントン級の太陽嵐は、また来るの?
キャリントン級の磁気嵐がいつ来るかは、まだわかっていません。次の10年に起きる確率の見積もりは、計算の前提しだいで約3%から約12%まで大きく変わります。
- 次の10年に起きる確率Riley(2012年)は約12%と見積もりました[4]。その後RileyとLove(2017年)は、計算に使う分布によって10.3%とも3.0%ともなり、どちらにも大きな幅があると示しました[5]。極端な嵐は数が少なく、統計を取るのが難しいためです。
- 1859年に放射線はどれだけ降ったのか大きなフレアでは、高エネルギーの粒子が飛んでくることがあります。1859年については直接の証拠がなく、今のデータから推定した値は100倍ほどの幅があります[2]。
- 磁気嵐の強さを前もって知ることNOAAによると、CMEが運ぶ磁場が長いあいだ南向きだと、磁気嵐は強くなりやすいとされます[8]。同じ大きさのCMEでも、地球への影響の強さが変わるため、正確な予報はまだ難しいのです。
05関連する記事
06よくある質問
太陽フレアで停電は起きるの?
フレアそのものではなく、一緒に飛び出すことがあるCMEが起こす磁気嵐で、送電網に強い電流が流れて停電することがあります。1989年3月にはカナダのケベック州で送電網が止まりました。NOAAは最も強いG5の嵐を、約11年に平均4回ほどとしています。
日本でもオーロラは見られるの?
見られることがあります。2024年5月11日の大きな磁気嵐では、北海道から沖縄まで日本の各地からオーロラの写真が寄せられ、兵庫県のような緯度の低い地域でも観測されました。ふだんの日本では、肉眼で見られることはめったにありません。
太陽フレアのXクラスとは?
フレアの強さは、太陽から届くX線の強さでA・B・C・M・Xの5段階に分けられ、1段上がるごとに10倍強くなります。Xはいちばん強い段階で、X10のように数字が大きいほど強くなります。
キャリントン・イベントとは?
1859年9月1日にキャリントンが初めて太陽フレアを観測し、その17.5時間後に始まった、記録に残る最大級の磁気嵐のことです。各地でオーロラが見られ、電信が大きく乱れました。
出典
- Carrington, R. C. (1859). Description of a Singular Appearance seen in the Sun on September 1, 1859. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 20, 13–15. https://doi.org/10.1093/mnras/20.1.13
- Cliver, E. W., Dietrich, W. F. (2013). The 1859 space weather event revisited: limits of extreme activity. Journal of Space Weather and Space Climate 3, A31. https://doi.org/10.1051/swsc/2013053
- Boteler, D. H. (2019). A 21st Century View of the March 1989 Magnetic Storm. Space Weather 17, 1427–1441. https://doi.org/10.1029/2019SW002278
- Riley, P. (2012). On the probability of occurrence of extreme space weather events. Space Weather 10. https://doi.org/10.1029/2011SW000734
- Riley, P., Love, J. J. (2017). Extreme geomagnetic storms: Probabilistic forecasts and their uncertainties. Space Weather 15, 53–64. https://doi.org/10.1002/2016SW001470
- Kataoka, R., Reddy, S., Nakano, S., Pettit, J., Nakamura, Y. (2024). Extended magenta aurora as revealed by citizen science. Scientific Reports 14, 25849. https://doi.org/10.1038/s41598-024-75184-9
- NOAA Space Weather Prediction Center. Solar Flares (Radio Blackouts). https://www.spaceweather.gov/phenomena/solar-flares-radio-blackouts
- NOAA Space Weather Prediction Center. Coronal Mass Ejections. https://www.spaceweather.gov/phenomena/coronal-mass-ejections
- NOAA Space Weather Prediction Center. NOAA Space Weather Scales. https://www.spaceweather.gov/noaa-scales-explanation
- NASA Earth Observatory (2024). Historic Geomagnetic Storm Dazzles. https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/historic-geomagnetic-storm-dazzles-152815
- 国立極地研究所・統計数理研究所・東京大学(2024). 2024年5月に日本に現れたオーロラの色の謎を解明(プレスリリース). https://www.ism.ac.jp/ura/press/ISM2024-02/pr20241031.pdf


