金星の1日はなぜ1年より長いのか、逆向きに回る惑星のなぞ

金星は、自分で1回まわるのに約243日かかり、太陽のまわりを1周するのは約225日です。つまり「1回転」は「1年」より長い。しかも金星は、ほかの多くの惑星と逆向きに回っています。ただし、太陽が昇ってからまた昇るまでの「1日」は約117日で、こちらは1年より短くなります。
3行でわかる
- 金星が星を基準に1回まわる時間は約243.02日、太陽を1周する時間は約224.70日。1回転は1年より長い。
- 金星は逆向きに回るので、太陽は西から昇る。日の出から次の日の出までは約116.75日で、1年に約2回しか朝が来ない。
- なぜ逆向きになったのかは決着していない。厚い大気の潮の力が関わったという説が有力だが、どの道筋だったかはわかっていない。
01 わかっていること金星の1日は本当に1年より長い?
金星が星を基準に1回転する時間(約243日)は、1年(約225日)より長いのは本当です。ただし日の出から日の出までの1日は約117日で、1年より短くなります。
「1日」には2つの数え方があります。1つは、遠くの星を目印にして1回転する時間です。もう1つは、太陽が昇ってから次に昇るまでの時間で、太陽日(たいようじつ)と呼びます。
地球ではこの2つの差は約4分しかありません。ところが金星は回転がとても遅いので、差が大きくなります。星を基準にした1回転は243.0226日と測られています[1]。1年は224.701日、太陽日は2802時間(約116.75日)です[2]。
金星が逆向きに回るため、2つの動きが打ち消しあわず、足しあわされます。そのため太陽日は1回転よりずっと短くなります。「金星の1日は1年より長い」は半分正しく、半分は言い方しだいの話です。
02 どうやってわかったのか金星の回転はどうやって測った?
金星は厚い雲に覆われていて地面が見えません。そこで地球から電波を当て、はね返った電波の模様を追いかけて、地面の回転を測りました。
わかっているMargotら(2021年、Nature Astronomy)[1]
2006〜2020年の平均で、金星が1回転する時間は243.0226日でした。回転の速さは一定ではなく、1回転の長さが約20分ほど変わることも見つかりました。
どうやって: 地球の電波望遠鏡で、金星の地面からはね返った電波の細かい模様を受け取り、その模様が通り過ぎる時刻から回転を計算しました。自転の軸の傾きは約2.64度で、ほぼまっすぐ立っています。回る向きが逆なので、軸の向きで表すと約177度、つまり逆さまです[2]。
有力な仮説Correia・Laskar(2001年、Nature)[3]
厚い大気を持つ金星のような惑星は、最後には4つの回転の状態のどれかに落ち着きます。今の金星の状態には、2つのまったく違う道筋でたどり着けることが計算で示されました。
どうやって: 太陽の潮の力、大気の潮の力、内部の核とマントルのこすれ、ほかの惑星の重力による軸のゆらぎを入れて、回転の変化を長い時間計算しました。1つ目の道筋は、自転の軸が少しずつひっくり返る道。2つ目は、初めは順向きに回っていたのに、回転が遅くなって逆向きに変わる道です。
有力な仮説Leconteら(2015年、Science)[4]
太陽に温められた大気がつくる「熱の潮」は、惑星がいつも同じ面を太陽に向ける状態になるのを妨げます。金星の逆回転はこの大気の潮で説明されてきたことを踏まえ、地球ほどの薄い大気でも同じことが起きうると示しました。
どうやって: 大気の流れを計算する気候モデルで、大気が惑星の回転に与える力を求めました。金星そのものを観測した研究ではなく、仕組みの計算です。
03 数字と例えでいうと金星の1日と1年はどれくらい?
金星の1年(約225日)のあいだに、朝は約1.9回しか来ません。日の出から日の入りまでは約58日で、昼だけで地球の2か月近く続きます。
| くらべるもの | 金星 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 星を基準にした1回転 | 243.0226日[1] | 地球の約8か月。1年より約18日長い |
| 1年(太陽を1周) | 224.701日[2] | 地球の約7か月半 |
| 日の出から日の出まで(太陽日) | 約116.75日[2] | 1年に約1.9回(224.70÷116.75で計算) |
| 日の出から日の入りまで | 約58日(太陽日の半分で計算) | 約2か月、ずっと昼が続く |
| 回転の長さのゆらぎ | 約20分[1] | 大気とのあいだで回転の勢いがやりとりされていると考えられている |
太陽日は「1÷(1÷243.02+1÷224.70)」で計算でき、約116.75日になります。逆回転なので、2つの動きの速さを足すのがポイントです。
04 まだわかっていないこと金星はなぜ逆向きに回るの?
金星が逆向きに回る理由は、まだ決着していません。大気の潮の力と内部のこすれで説明する説が有力ですが、金星がどの道筋をたどったかを確かめる記録は見つかっていません。
- 軸がひっくり返ったのか、回転が逆転したのか計算では、軸が傾いていってひっくり返る道と、回転が遅くなって逆向きに変わる道の両方がありえます[3]。生まれたときの金星の回転の速さや傾きがわからないため、どちらかは決められません。
- 今も回転は変わり続けているのか1回転の長さが、大気とのやりとりで約20分ゆらぐことがわかりました[1]。長い目で見てどちらへ変わっていくのかは、まだ観測の期間が短すぎてわかりません。
- 金星の中はどうなっているのか回転の測定から核の大きさのおおまかな見積もりは出ましたが[1]、核が固体か液体かはわかっていません。内部のこすれの強さが分からないと、逆回転の歴史も計算しきれません。
05関連する記事
06よくある質問
金星の1日は1年より長いって本当?
星を基準にした1回転(約243日)は1年(約225日)より長いので本当です。ただし日の出から次の日の出までの太陽日は約116.75日で、1年より短くなります。どちらの「1日」かで答えが変わります。
金星では太陽が西から昇るの?
はい。金星はほかの多くの惑星と逆向きに回っているため、地面に立てたとすると太陽は西から昇り、東に沈みます。日の出から日の入りまでは約58日かかります(太陽日の半分で計算)。
金星が逆回転なのは何かがぶつかったから?
逆回転の理由はまだ決着していません。研究でよく調べられているのは、厚い大気の潮の力と内部のこすれで、軸がひっくり返ったか、回転が遅くなって逆転したという説明です。どの道筋だったかを確かめる記録は見つかっていません。
金星の1回転の長さは変わるの?
変わります。2021年の電波観測で、1回転の長さが約20分ほどゆらいでいることがわかりました。厚い大気と地面のあいだで回転の勢いがやりとりされているためと考えられています。
出典
- Margot, J.-L., Campbell, D. B., Giorgini, J. D., Jao, J. S., Snedeker, L. G., Ghigo, F. D., Bonsall, A. (2021). Spin state and moment of inertia of Venus. Nature Astronomy 5, 676–683. https://doi.org/10.1038/s41550-021-01339-7
- NASA Goddard Space Flight Center. Venus Fact Sheet. https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/venusfact.html
- Correia, A. C. M., Laskar, J. (2001). The four final rotation states of Venus. Nature 411, 767–770. https://doi.org/10.1038/35081000
- Leconte, J., Wu, H., Menou, K., Murray, N. (2015). Asynchronous rotation of Earth-mass planets in the habitable zone of lower-mass stars. Science 347, 632–635. https://doi.org/10.1126/science.1258686


